3 結局悪いのはいつも私
我が家の玄関ホールで揉めた挙句、結局妹は無理矢理馬車に乗り込み、一緒に城へ。
最悪な事に、城で文官として働く兄の出勤時間と被っていたのが運の尽きでした。
『私も一緒に行こう』の一言さえ無ければ、妹を押し付けてさっさと登城出来ましたのに。
「意地悪なお姉様より、やはりお兄様ですわ!」
「可愛い事を言ってくれるね。ほら、ミラージュも私に習ってシシリーに優しくしなきゃね」
(………は?甘やかすの間違いでは?)
私の向かいの席でイチャつく兄妹に、平然とした態度を作る私。
だっていちいち構ってられませんわ。
度がすぎる程兄が甘やかすから、調子に乗った妹は、何かにつけて彼を味方に私に対し意見をする。
兄は兄で、頼られるのが嬉しいのか妹にデレデレで、私に無理を押し付ける。
まぁ、これは両親にも言える事ですわね。
家の中で唯一厳しかった祖母に似た私。
母ソックリな兄と妹。
父は母を溺愛している。
私達の共通点と言えば、父から受け継いだ紫の瞳だけ。
祖母が苦手だった父母は、必然的に私との間に線を引き、必要最低限の繋がりしか持とうとしなかった。
一応、親としての最低限は守ってくれていますから、生活環境には不自由していませんが、明らかに兄妹と扱いが違いますのよね。
「私もカル様と婚約出来たらいいのに……お姉様ばかり“いつも狡い”ですわ」
車窓から外を見ながら現実逃避していると、妹からの「いつも」の発言ですわ。
私が「狡い?」。
「狡いも何も、姉妹で王家に嫁げる訳がないでしょ?だいたい、側妃だって婚姻後2年目以降でないと持てませんのよ?どちらにせよ、貴女が殿下に嫁ぐのには無理がありますわ」
無視しようかと思いましたが、それをしたらしたで煩いので、正論を叩き込みましたが…まぁ、無理でしょうね。
「だったらお姉様が婚約辞退してくだされば解決ですわ?お姉様が卑しくもカル様との婚約にしがみつくから、私にお声が掛からないのです。カル様だって“シシリーと婚約したかった”って言ってくださいました!」
あっ……そ。
カル様……殿下がねぇ?
あの方にもほとほと困りますわ。
陛下が何故「私」を婚約者としたか、まるで分かっていらっしゃらないのですから。
王家の婚姻は遊びではありませんのよ?好き嫌いで決まるなら苦労しませんわ。
しかも、次期国王の妃を選ぶとなると、それ相応の女性に限られますわ。
文武両道は当たり前の事、マナーなども完璧でないとなりません。
自慢ですが、私、これだけは同世代の女性の中で一番だと思っています。
貴族学園も二年前に飛び級で主席卒業しましたしね。
学園在学中は、新しいオリジナル魔法や魔道具で幾つか特許をとりましたし、魔獣討伐ではソロでダンジョンを一つ制覇しましたわ。
まぁ、そのせいで陛下に目をつけられ、去年王命がくだされたのですが。
私に興味がなかった両親は、いつか私を「何処かの貴族の後妻にでもすればいい」など考えていたみたいで、積極的に婚約者を探す事をしていませんでした。
それが、かえって仇になりましわ。
私としてはいい迷惑です。
後妻にせよ、さっさとお相手を決めてくだされば、こんな思いをしなくて済みましたのに。
あんな面倒な王太子に比べたら、後妻の方がまだマシと言うものですわ。
「シシリーは本当に昔からミラージュから被害を受けているな…可哀想すぎる。ミラージュも、妹なんだからシシリーに優しくしなきゃダメじゃないか。婚約の事は王命だから仕方ないとは言え、殿下からの寵愛はシシリーに渡すべきだよ?お前は立場を頂いたのだから、それ以上望むのは我儘と言うものだ」
(……ほんっと、何言っていますの?お兄様)
殿下の婚約者である私に、妹と殿下の恋路を応援しろと?
そもそも、私自身は殿下からの愛など必要ないとは言え、お兄様が言われた通り王命ですのよ?どこに結婚前から浮気を推奨する婚約者がいますの?
だいたい、妹の年齢なら婚約者がいて当たり前ですのに、シシリー可愛さのあまり、選り好みしまくり、未だお相手を見つけれない両親にも問題大有りですわ。
「婚約者も作らず、姉の婚約者に横恋慕…又は、姉を蹴落としたい妹…など、社交界で醜聞になってもよろしいなら、二人を応援させて頂きますわ」
もう、溜息しか出ませんわ。
「お前は、何故そんな事しか言えないんだ?」
「お姉様酷い!自分が愛されてないからって、私を虐めるなんて」
あー、ハイハイ。
お兄様、本当に宮仕の文官ですの?色々足らなすぎですわ。
シシリーは相変わらずの妄想癖ですし…。
「…………はぁ」
(はぁ、本当に……クソ面倒)




