閑話 リーゼロッテ 姉
私の姉は天才だ。
ただの天才ではなく努力の桁も違う。
常に隣で見ていたから分かる。
真似出来る事ではない。
実際に真似して死んだ人が多くいたからのだから。
そんな姉は未来を見通す事が出来る。
「リーゼ。私達の存在がこの国の貴族を増長させているわ」
「え?私達は国の為に働いているのよ?」
姉さんの言葉が理解出来なかった。
何を見てそう思ったのかが分からない。
「リーゼ。この里は腐っている。特に根が悪いと思うわ」
「どうしたの?何故そう思ったの?」
一族は任務に忠実だ。
しかし、任務で殺した人間について知らない。
それが一番駄目な事だったと今なら分かる。
「色々と改善して目立つ人間は掃除したけど、やはり駄目ね。私が王妃になるわ」
「何で?そもそも王妃になれるの?」
姉さんの話はいつも飛躍する。
どうして、その結論にたどり着くのかが分からない。
そして、それを実行出来るのかが分からなかった。
「私が王妃になってお城の中を綺麗に掃除してくるわ。心配しないで。もう段取りは終わってる」
「王妃ってそんなに簡単になれるの?それに終わっているって、任務と修行の毎日じゃない」
姉さんが外に出るのは任務の時だけ。
殆どの時間を修行に費やしていた。
そして多くの人が死ぬ修行内容を改善していった。
「簡単よ。長老達も喜ぶでしょう、今わね。時が来れば全て分かる。楽しみにしていなさい」
「本当に分からない事ばかりよ。とりあえず任務で死なない様に頑張るわ」
そして姉さんは国王と結婚した。
当時は王子だった気がするが、結婚と同時に国王になった。
姉さんが当時の国王と王妃を掃除したのかもしれないと思った。
私も結婚して子供を産んだ。
母になると姉さんが改善してくれた修行の有難さが良く分かる。
姉さんも出産したみたいだから子供達はほとんど同じ年齢ね。
姉さんの子に私の娘が護衛に就くのかしら?
私はそんな事を思っていた。
出産して10年。
全てが動き始めた。
姉さんが里に仕事の依頼をする。
皆が喜んで戦場に向かう。
母として見ると異常だと思う。
どんどん、依頼の内容が過激になっていく。
貴族の数が急激に減り始めた時、初めて長老達は焦ったのかもしれない。
計画が狂い始めていると。
姉さんが王妃になって任務をくれる。
戦場を楽しんでいた人間も多くいた。
姉さんが今後も戦場を作ってくれると思っていたのかもしれない。
長老達は陰で何回姉さんの暗殺を実行しようとしたのかしら?
任務が無いのに里の人間が減っていく。
姉さんの暗殺とか笑えるわ。
本当に理解していないのね。
私は里の様子が面白くて仕方が無かった。
姉さんの娘に感情を見える目があるのは運命かも知れない。
孤児院で同じ能力の子を見つけたのも運命かも知れない。
長老たちは感情を隠すのが上手い。
長年蓄積された技術で感情に膜を張る様だ。
でも、全ての感情を見通す目には関係ない。
里での散歩を姉さんと久しぶりに出来たのは楽しかった。
指された瞬間に死んでいる人達。
理由が分からなければただの殺人だ。
これで里が綺麗になる。
戦場がなくなる。
最後の任務を終えて休んでいた私におかしな報告が入った。
姉さんが馬に乗って伯爵家を掃除していると。
爆弾を運んだ里の人間がいたから警戒したのでしょう。
実際に多くの爆発音が聞こえたと諜報部から聞いた。
私は子供を産んだ時、普通の母親になったと思った。
里の天才と言われた姉さんも、同じだったのかもしれない。
娘の為に少しでも危険を排除したかった普通の母親の様だと思った。
妹なりの考え方です。




