閑話 アルベルト 孤児院の空気
俺は剣を振り続ける。
護衛騎士として王女様を守る為に。
いつの間にか当たり前になっていた行為だ。
周りの皆がそうだろう。
どの職業になりたい奴もそうだ。
王女様の近くで働く為に努力している。
エリエッタも同じ王女様になると考えている奴も多くいる。
王女様と一緒にいるだけでは無いのだろう。
想像出来ない程、努力をしているはずだ。
この前のテストで1位を取っていた。
本当に驚愕だった。
孤児が、教師、文官、国の役人、全てを抜いて王女様と並んだ。
意外と驚いている奴が少ないのがその証拠だろう。
エリエッタならやるかもしれないと思っていたに違いない。
王女様と2人で国を背負って行くのかもしれないと感じている。
つまり俺は2人の王女様の為に剣を振っているのか…。
剣が少し重たく感じるぜ。
しかし、俺達は何の仕事に就くんだ?
護衛騎士といえば国の役職だ。
この国に港はあるが他国から攻められた事は無い。
王都にある港に船が来る事がほとんどない。
港に寄った船は遭難船しかない。
王国としては争う気も無いので飲食物の補給を手助けしただけだ。
何故かこんな情報まで勉強させられた。
クリスタの知識の範囲も相当だな。
クリスタも相当上の役人に違いない。
そんな人間を孤児院長に抜擢して、引っ張って来た王女様の権力がおかしいのだろう。
いいや、違うだろうな。
権力で引っ張ってきたら、こんなにも上手く回らない。
皆の適性を見極めているに違いない。
孤児を見下している人間が1人も孤児院にいないのがその証拠だ。
本来なら有り得ない状態だ。
王都の連中にどれだけ見下されて生きて来たか。
それを考えれば違和感がある程だ。
何か理由があるのかもしれないが別に良いだろう。
俺達の為にやっている事に文句を言う方がおかしいからな。
それにしても今日は空気が軽い。
孤児院全体が浮ついているような気さえする。
何かあったのだろうか?
「ケヴィン、今日は何かあったか?妙に雰囲気が軽い気がするが?」
「ああ。皆が浮ついているからな。今日は御馳走だぞ」
「それは嬉しい報告だが、何故御馳走が出るんだ?」
「この国から貴族が消滅したからだ」
何だって?
あの演説から1年程しか経っていない。
王女様は貴族の討伐の話は知っていたはずだ。
つまり、貴族を討伐する事は当然で失敗すら考えていないのか。
その後の失敗も考えていない。
おいおい!
まじで演説の時代が来るじゃねえか。
つまり1年後、一回テストを実施したら中央か。
とんでもない計画の早さだ。
普通なら計画は失敗を考える。
当然の事だ。
失敗した損失は自分が負うからだ。
王女様は失敗を考えていないのか?
違うな。
失敗しないと分かっている。
だから演説もしたんだろう。
あの話を聞いていない状況で貴族が討伐されたのを知ったらどう考える?
付いて行けると考える奴と、置いて行かれると考える奴。
今はそれが1つにまとまっているんだ。
先読みで動いているのか?
違う気がするな。
なんか生まれ持った物の様な感じだ。
つまり時代が選んだのか?
次の王女様じゃない。
女王様になるんだ。
エリエッタも女王様になるんじゃないのか?
それは浮つくに決まっている。
「国を改革と言っていたが、文官以外に仕事はないのか?」
「ああ。まず文官を派遣して各領の民の把握をしながら中央の建築を始めるからな。中央に行った後、俺達は孤児院に残っても良いし、王女様達が住む中央の護衛をしても良いぞ」
「とんでもない計画の早さだな。どこまで見通しているんだ?」
「見通して無いと言っていたじゃないか。永遠に続く発展を目指してるんだよ」
「ああ、終わらない研究とか言ってた気がするな」
「そうだ。どこまでも研究して国を発展させていく仕組みを考えていると思う」
俺がここに来てからどれだけ経った?
約4年か?
めちゃくちゃな早さだな。
貴族から逃げていたんだぞ。
孤児院から逃げて暮らしていた時間より短い。
王女様が訪ねて来た段階で孤児院改革で終わらせるつもりが無かったのか?
もしかしたら逆なのかもな。
孤児達を助けようと思ったら全ての貴族が邪魔になったから討伐した。
本当にお転婆な王女様だぜ。
王女様はお転婆です。
アルベルトは賢いですからね。




