閑話 パスカル 地雷を避け続けた男
僕は知っていました。
王妃様が最強だと言う事を。
何を今更になって騒いでるのか良く分かりません。
相手を見て何も感じない時、格上の可能性が高いのです。
今絶対に関わっていけないのはエリエッタ様。
別に彼女が悪い訳ではありません。
ただし、彼女に遊びで絡んだ場合は確実に半殺しです。
確実にセバスさんが制裁に決ますから。
2人の空気が似てきています。
恐らく一緒に訓練しているのでしょう。
それを僕の上司は理解出来ないらしいのです。
騎士をやってて良く生き残れたと素直に思います。
今も危険な会話を繰り広げています。
「パスカル、お前も隊長に言ってくれ。王国最強は王妃様だって」
良かった。
そんな当たり前の話でしたか。
「隊長、今更です。王妃様が最強です」
「じゃあローレンツ、次に強いのは誰なんだ?騎士隊長はどうなんだ?」
「知りませんよ。次に強いのはセバスさんあたりでしょう。王女様の護衛をしていますから」
副隊長の視野が広くて安心ですね。
「おいおい、セバスさんが強かったらエリエッタ様だって強くなるぞ」
最悪ですよ隊長。
早速地雷を設置です。
「強いと思いますよ。最近の雰囲気を見ていたら隙が無いですからね」
副隊長は理解していますね。
本当に駄目ですよ。
それ以上興味を持ったら半殺しですから。
「おい、パスカル。お前はどう思ってるんだ?騎士隊長は強く無いのか?」
面倒ですね。
近衛騎士より弱いから騎士隊長でしょう。
「強さを比べる話は危険ですからもう止めましょう」
「お前エリエッタ様にびびってるのか?おい、冗談だろう?」
冗談じゃないですよ。
本気でやばいんですから。
これ以上地雷を設置しないで下さい。
僕を巻き込まないで下さい。
「隊長、パスカルは強さに敏感です。つまりエリエッタ様も隊長より強いですよ」
「お前らいい加減にしろよ。俺が王女様の友達に負けると言いたいのか?」
自殺ですか…。
でも、もう止められません。
正直に言うしかないでしょう。
「はっきり言いましょう。エリエッタ様はお城の中で3番目に強いです」
「完全に俺を馬鹿にしているな。ちょっと呼んでくるから騎士全員呼んでおけよ」
あー、やっぱり死にに行くんだ。
「僕は知りませんよ。死にたくありませんから」
「そこまでビビる事はないだろ?俺が集めてやるよ」
何でこの人達はこんなに地雷を設置するんだ?
本気で力量差が分かっていないのでしょうか?
騎士として生き残れたのは王妃様達の援助が裏であったからです。
もしかして気が付いていないのですか?
信じたくないのですか?
どっちでも良いですね。
エリエッタ様は本気でまずいですよ。
「どうぞ来て下さい。訓練するだけですから」
「そうですか。騎士の方と訓練するのは初めてですから楽しみです」
本当に連れて来てしまった!
何故会話の違和感に気が付けないのですか?
セバスさんが動きますよ。
エリエッタ様に殺されないようにしないと。
「僕は帰りますね」
「待て、パスカル!お前に模擬戦開始の合図をしてもらいたいのだが?」
隊長の自殺に付き合ってられません。
「いやいや、エリエッタ様を訓練所まで連れてくるなんて。隊長は本当に大丈夫ですか?」
「何だと?本気の様だな。エリエッタ様。模擬戦を良いですか?」
「はい。私は何時でも良いですよ」
駄目ですね。
本気で分からないんだ。
相手は常在戦場ですよ。
隊長とは覚悟が違うんです。
「おい、パスカル合図してやれよ。隊長が待ってるぞ」
「副隊長。これは命がかかっているんですよ?」
「早く合図しろ、パスカル!」
もう良いです。
勝手に死んで下さい。
「では、構えて。・・・・始め!」
「は?」
何を抜けた声を出しているんですか副隊長。
動く姿が見えなかったんでしょ?
僕も見えませんよ。
結果以外は。
地雷を踏んだ隊長が倒れているだけですからね。
「すみません。隊長が軽い一撃で起きて来ないのです。もしかして、ふざけていますか?」
「いいえ。隊長が弱いのです。僕が断言します。エリエッタ様に問題はありません」
「おいおい、どうしたパスカル?せっかくだ。300対1でもやれば、はっきりするだろ?」
「私は大丈夫ですが、どうしますか?」
相手は大丈夫なんですよ?
副隊長も馬鹿だった様ですね。
さようなら。
僕は関係無いですから。
300人もいて誰も危機感を持っていない。
この騎士団は馬鹿しかいないのですか?
「合図だけ出しますよ。全員構えて下さい。・・・・始め!」
ああ、さようなら皆様。
理解不能の激痛の中、目か覚めれば良いですね。
「おい、パスカル。俺はどうなった?」
「隊長は瞬殺じゃないですか?何を言っているのですか?」
起きた瞬間から煩いですね。
「この激痛は本物だが、彼女は本気だったのか?」
物凄く手加減してくれたに決まっています。
訓練の初手で自分より弱い相手に全力は出しません。
エリエッタ様はそもそも優しい方ですから。
「思いっきり手加減しています。だって本気出していたら死んでいますから」
「そこまで強いのか?エリエッタ様はそこまで強かったのか?」
「何度も注意したでしょう?訓練場に馬鹿な300人が散らばってますよ」
「あ!隊長やっと起きてくれましたね。皆が起きないんです。新しい訓練ですか?」
どうします?
300対1とか馬鹿な事を部下がした結果ですよ?
「おや。エリエッタ様が訓練場にいる気配がしたので来てみれば、どういう状況ですか?」
やはりセバスさんが来た。
誠実に頭を下げておこう。
最悪な状況になりましたよ。
確実に弟子を馬鹿にされたと思っています。
「隊長に誘われたんです。訓練に参加しないかって。でも起きてくれないんですよ」
「300対1で起きないのは情けないですね」
あっ!
セバスさんが視界から消えた。
これは全員、無理矢理起こされますね。
「さあ、全員起きましたからもう一度出来ますよ。隊長も当然参加するのでしょう?」
「い、いや、そんな事は…」
「パスカル様、合図をお願いしますね」
「勿論ですセバスさん。全員構えて。・・・・始め!」
あっという間の瞬殺ですね。
さて、どういう結末を迎えるのでしょう。
「直ぐに起きてこないんです。悪戯かと思ったのですが違うのですか?」
「エリエッタ様。これは戦場で生き抜く為の死んだ振りです。誰も動かないのは大変でしょう?1人でも動いたらやり直しという訓練ですから」
「なるほど。戦場で生き抜く術ですか。勉強になりますね」
「さあ、エリエッタ様。王女様がお呼びですよ」
「訓練ありがとうございました。失礼します」
「こちらこそ。ご迷惑をお掛けしました」
良かったですね。
死んだふりで許してもらえて。
「騎士が訓練で動けないとか、情けないと言っていませんでしたか?」
「パ、パスカル。な、何故おまえは無事だ?」
セバスさんが来ると思っていましたから。
隊長や副隊長とは違うのです。
「セバスさんに頭下げておきましたから」
「何だと!あの強制的に立たされて、ぶちのめされる地獄から逃げたのか?」
逃げるより、地雷を踏まないだけです。
自分から踏みに行く人から距離を取っただけです。
「隊長も副隊長も面白い事を言いますね。自分から地雷を踏んだだけなのに。もちろん騎士が全員地雷を踏むとか馬鹿過ぎて笑い話にもなりません。僕はちゃんと注意しましたよ」
本当に馬鹿な人達ですよ。
地雷を踏んで命が助かった事が物凄く幸運なのに気が付いていない様です。
パスカルは地雷を踏まない男です。
騎士は格上との戦闘経験がありません。
残念ですが隊長はアルベルトにも勝てないでしょう。




