リーゼロッテ 一族の里の根
姉さんに呼び出される理由か…。
最後の仕事でしょうね。
「姉さん、最後の仕事があるって事かしら?」
「察しが良いわね。来年の夏に一族最後の仕事があるわ。私の予測では、もう隠れ里は必要の無い時代がやってくる。アリーとエリーが作る国は騎士がいれば十分。島の外の世界から攻められたら分からないけど、その時は武器が違うと思うのよ。兵器が勝敗を分ける時代が来ると思う。だからこそ、最後の仕事をきっちりとやり遂げて欲しいのよ」
「次はどうするの?」
「子爵関係者を綺麗に掃除して文官は捕縛。男爵の時と一緒よ。あなた達なら難しい任務じゃないわ。それよりエリーゼはどうかしら?」
「かなり頑張っているわよ。姉さんが教えてあげなければ死んでいたわ」
「そうよね。若い子は何でも無理をしてしまうから。ディアナを見ていてあげて。妹を見て勘違いをしてしまわないように。真似をしたら確実に死ぬわよ」
「ええ、ディアナは足を洗わせたわ。本人も悔いはないでしょう。それに、妹に責任を押し付けると思わなかったわ。反抗期なのか自信なのか分からないけど、仲良くして欲しかった」
「そうね。ただ報告をしていたのがディアナで聞いていたのがエリーゼだから、もしかしたらという思いもあった。ディアナは王女と孤児を差別して護衛していたけど、エリーゼはそもそも何もしていない。だから自分は仕事をしたと思ったのかもしれないわね」
「そういう事ね。何もしていないエリーゼは何も言えない、言い返せない。そしてディアナと話している時に気が付いてしまったのね」
「そうでしょうね。だから1人で話に来た。エリーの訓練を見てしまった。だから気が付いたのよ。エリーは言葉に出来ない人生を歩んできた、自分とは違うと。もし事前に知っていたら同じように護衛をしたのか?とね」
「子供同士だけど歩んできた道が違いすぎる。あの子は異常よ。付いて行くのは無理。セバスで止まってくれるのならそれで良いわ。あの子には死の恐怖が無い、死ぬ事について迷わないでしょう。だからぎりぎりまでいってしまう。死の一歩手前じゃない、直前まで。それが日常だったのでしょう」
「そうね。とても悲しい生き方。でも、まだ大丈夫よ。これから幸せになれば良い。エリーゼには死なない事を教えるし、アリーは死ぬ事を考えていない。だから大丈夫。ディアナの根底に差別意識があったのを指摘してあげるべきだったかもしれないわね。けど、反発したでしょうね」
「姉さん、仕方が無かったのよ。ディアナは差別をして、エリーゼは差別をしなかった。それだけよ。ディアナが貴族だったら殺されていたのだから、運が良かったと思うわ。エリーを殺されていたら処刑されてたでしょうし、十分に恵まれている。それを自分で蹴ったの、もう少し大人になれば理解するわ」
「そうね、そもそも小さい頃から任務をさせる里の在り方が問題かもしれないわね。人の命を躊躇いなく奪う、自分の命も奪われる。普通は歪んでしまうわ。最後の仕事を終えたら国の諜報部として残れば良いわ。子供の殺し合いはもう無いのだから」
「長老や頭の固い人は置いてきて、中央に在籍するのが一番幸せね。何か企んでもセバスか姉さんが掃除するでしょう?」
「娘達の国造りの邪魔をするなら掃除するわ。戦場が好きなら私が戦ってあげる。国に戦場を残そうとするならね。貴族に手を貸した里の人間がいるでしょう?」
孤児院に爆弾をしかけようとした人間を疑っていたけど、やはり里の人間の可能性が高いのね。
エリーゼが殺したから良かったけど、成功していたら悲惨な事になっていた。
「恐らくいるでしょうね。命令されたのか、戦場を長引かせたいのか、そこが自分の生きる世界だと思っているのか知らないけど、迷惑で仕方が無いわね。でもエリーゼに殺されたわ。エリーを狙ったからね。里は根が深いわ。今は姉さんに怯えているだけかもしれない。見極めが必用かもしれないわよ?」
「私とセバスとアリーで散歩した方が良いかしら?最後の任務に紛れて何かされると困るのよ」
「そうしましょう。新しい時代に似合わない人達はいらないでしょう。今から行く?」
「そうね。早く終わらせましょう。アリーとセバスを呼んできて頂戴」
「かしこまりました」(専属護衛)
「お母様と叔母様まで、どうしたのですか?」
「何か御用ですか?ああ、お掃除をするのですね」
セバスは流石に気が付くわね。
アリー王女様には酷い現場を見せる事になるかもしれないわ。
「ええ。セバスはアリーの護衛をお願い。私が掃除するわ。アリーは人を見て頂戴。敵意がある人を一層するわ」
「分かりました」
こうやって歩いていると本当に散歩ね。
子供の頃を思い出すわ。
「こうやって姉さんと里を歩くと懐かしいわね」
「本当にそうね。綺麗にしたつもりだったけど、やっぱり根っこが残ったのね」
「おや、姉妹で珍しい。どうしましたか?」
「長老達に会いたいのだけど、奥にいる?」
「ええ、奥にいますよ。最後のお掃除ですね」
本当に綺麗にするの事が出来なかった。
姉さんでも長老達の心の奥は見えなかった。
「おお。我が里の天才児、何か様かな?」
「アリー、どうかしら?」
「皆様、私達が邪魔な様です」
やはりそうだったのね。
根っこが腐っていたから、常に腐敗した人が出て来ていたのね。
「だそうよ。死ぬ準備は出来ているのかしら?」
「まさか気が付かれていたとはのう。これだから厄介じゃよ。皆出て来い」
長老達の目も曇ったわね。
これで姉さんを止めるつもり?
セバスで終わらせる事が出来るじゃない。
「姉さんを、僅か30人で止めるつもりなの?」
「精鋭じゃぞ。任務をするだけの奴らとは違い特別に鍛えてある」
姉さんの凄いのは正確さと速さ。
30人位には即座に毒針を投擲出来るわ。
話しながらも投擲し続けているのね、きっと。
私には見えない速さだから。
「精鋭なの?でも毒には弱いでしょ?人間ですもの」
「毒を使うのはお互い様じゃ」
「最長老。あなたしか生きていないわ。幻でも見ているの」
本当に馬鹿な人。
国を操っているつもりになっていた。
そして戦場が無いと生きていけないと思っている。
「そ、そこまでの力がありながら、戦場を捨てるのか?」
「ええ。娘達の時代まで戦場は残したくないのよ。じゃあね」
「アリー今から里の中を歩くから敵意がある人は指だけで教えて」
「分かりました」
本当に散歩ね。
娘には殺害の指示も出させたくないのね。
それにしても…。
まだこんなにも残っていたのね。
あえて爆弾を使って人を誘き出しているのね。
それとも爆弾で狙われた事を分かっていると教えているのかしら。
「アリー、綺麗になったかしら?」
「はい。濁っている人はいません」
ここまで腐っていたの!
流石に想像以上だわ。
壊滅状態じゃない。
姉さんを恐れて身を潜め、命令を聞いていたのね。
自分達の時代が来るのを信じて、待っていたのかしら。
「リーゼ、これで任務出来るかしら?」
「ここまで減ると、暗殺は出来ると思うけど、文官の捕縛は厳しいわね」
「そうよね。暗殺だけお願いして捕縛は衛兵を使いましょう」
「全員集まりなさい!」
「はっ!」
今後は中央で情報を集める仕事をすれば良い。
殺し合いは来年の夏で最後よ。
「死体の処理をお願い。そして来年の夏に最後の任務を終えたら再来年に中央に行くわよ」
「かしこまりました」
「アリーもセバスもお疲れ様。これで古い時代が1つ終わったわ」
「姉さんの苦労もこれで報われるわね。本当に時間が掛かったけど良かったわ」
新しい時代を嫌った人達です。




