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乞食姫と呼ばれた王女  作者: 大介
第4章 貴族の粛正

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閑話 ヒルデ 見えない綱引き

お城に長年勤めてきましたが、初めて国王様の暗殺を相談する現場に立たされてしまいました。


事の発端は、エリエッタ様が悩まれていた事です。

「エリエッタ様、最近お顔が優れませんが、お悩み事がありますか?」


エリエッタ様は私を見ると苦笑いをしました。

「ヒルデさんに隠し事は出来ませんね。私の目の話は王女様から聞いていますよね?」


なるほど。

感情にまつわる話ですか…。

正直に嫌な予感しかしませんが教育長です。


聞かない訳にはいきません。

「勿論知っております。まだ未発達だそうですね。それでお悩みですか?」

「いいえ。未発達なのは良いのです。実はずっとアリー王女様に引っ張られていたような感覚はあったのです。それは安心出来るものだったのです。しかし、少しずつ強くなっていく違う人の感情が私を反対方向へ引っ張っている感じがするのです。心が張り裂けそうな程に強いので、偶に苦しいのです」


大問題です。

犯人は国王様でしょう。

溺愛対象が王女様からエリエッタ様に移ったらしいですから。


しかし、心が張り裂けそうな程はかなりまずいです。

王女様が懸念していたエリエッタ様の心に何か異常が起きるかもしれません。

それが起きてしまえば国の未来は暗いものになってしまうかもしれません。


「分かりました。直ぐに対応しますので、少しだけ我慢していて下さいね」

「ありがとうございます。少しでも楽になると嬉しいです」


相当に苦しいのですね。

エリエッタ様は基本的に、ご自分から辛いとは言いません。

恐らく、どんなに苦しい状況でも我慢してしまうでしょう。


これほど教育長として難しい生徒も初めてです。


今回の問題を解決するには王妃様が一番でしょう。

私は階段を急いで上り、王妃様の部屋の前に立つ侍女に声を掛けます。


「王妃様と面会をしたいです。エリエッタ様の緊急事態と伝えて下さい」

「か、かしこまりました」


侍女の方が慌てて中に入って行きます。

エリエッタ様については事前に何か言われているのかもしれませんね。


「今から大丈夫だそうです。どうぞお入りください」

「ありがとうございます」


王妃様がソファーで寛いでいます。

本当に様になります。


そういう状況ではありませんでした。

「ヒルデ、早速ですが聞かせてもらえるかしら」

「はい。エリエッタ様の心が張り裂けそうになっています。原因は王女様と国王様が強い力で引きあっている為だと思われます。本人は相当に苦しそうです」


王妃様は机の引き出しから数十枚の手紙を取り出しました。

内容が何となく分かります。


王妃様もかなり問題視されているのでしょう。

事前に止めているのにも関わらず今の状況になってしまっているのですね。


「これが何か分かるかしら?国王からエリーへの面談要請よ」

「流石にそれはやり過ぎでは…」


国王様からの面談要請をエリエッタ様が断るのは無理でしょう。

これほど強制的に会う機会を作ろうとしている訳ですか。

エリエッタ様も苦しいはずです。


王妃様が侍女に声を掛けます。

「アリーを呼んできて」

「かしこまりました」


確かに心が見えるアリー王女様なら、対処法もご存じかもしれませんね。

王女様が早歩きで入って来られました。


「お母様どうしました?ヒルデまでいるという事はエリーに何かあったのですか?」

「良く分かったわね。エリーの心が張り裂けそうになっているの。原因は国王と王女がエリーの心を引っ張りあっているからよ。エリーはかなり苦しんでいるみたいだから何か手はないの?」


「お父様を昏睡させれば良いと思いますよ。中央に行くまで眠り続けても問題は起きないでしょう」

「流石にそれだと死んでしまわよ。でも、1つの手ではあるわね」


私はここにいて良いのでしょうか?

王妃様と王女様が国王様を暗殺しようとしています。


聞きたく無いです。

直ぐにでも逃げたいですが、我慢します。


「でも、お城に1人残ってもらう必要がありましたね。復帰した宰相に残ってもらいますか?」

「アリーの中では昏睡前提なの?他に方法はないのかしら?」


王女様はかなり国王様を敵視していますね。


「一度会えば次もと続く可能性が高いですし、エリーは困っているとお父様に言う事は出来ないでしょうから面談は無理ですね。お母様の説教が一番ですよ」

「アリーにした事をすれば良いのかしら?本当に困った親子ね。ヒルデはエリーの様子を気にしておいてね。私はちょっとお仕置きに行ってくるわ」

「かしこまりました」


何故しょう。

王妃様のお仕置きが恐ろしく感じるのですが…。


王女様は経験されたみたいですし気になります。

しかし、聞くのは止めておきましょう。


世の中、知らない方が良い事もありますからね。


「では、私は戻らせて頂きます」

「お父様の説教されているところを見学します!」


王女様がご機嫌ですね。

とても嬉しい事が今から起きるのでしょう。


私は直ぐにエリエッタ様の所に戻りました。

説教にどれ程の効果があるか分かりませんが、直ぐに改善していると思ったからです。


「エリエッタ様、どうですか?まだ苦しさは続きますか?」

「いいえ。もう何とも無いのです。一瞬で消えたみたいです」


国王様は死の恐怖を味わっているのでしょう。

私の直感がそう告げています。


「そうですか。今後も同じような苦しさに襲われたら直ぐに相談して下さいね」

「分かりました。ヒルデさん、ありがとうございます」

王女様は楽しみながら見学中です。

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