お茶会
遂にこの日がやって来たのね。
3日前にヒルデの合格の報告を受けた両親が、お茶会の日を決定しました。
エリーは大丈夫でしょうか?
若干の不安を抱えつつエリーを訪ねます。
あれ?
部屋の隅に輝く何かがあります。
輝きだけでエリーだと分かるのですが…。
震えて小さくなっているではありませんか。
予想以上に酷い状況です。
「エリー、お茶会に行きますよ。早めに行って落ち着きましょう」
「アア、アリー王女様、お、お、落ち着きますかね」
重傷ですね。
ここまで緊張してしまうと会話も難しいでしょう。
「両親が私の初めての友達と話がしたいだけです。何も緊張する必要は無いのよ」
「そうなのですか?面接みたいなものだと思っていたのですが…」
面接…。
何の面接だと思ったのでしょう。
「お父様が私の事を溺愛しているのは有名でしょ?女の子か確認したいだけだと思うわよ」
「その話は有名ですね。私は面接に合格しているという事ですか?」
まだ面接を引きずってますね。
何も心配は必要無いと言いたいのですが。
「恐らく学園に行く際の注意もあると思うけど、本当に緊張しないで」
「分かりました。私は合格したのです。問題はありませんね」
私の友達は男性だと不合格なのでしょうか?
確実に不合格ですね。
考えるまでもありませんでした。
「そう。エリーは既に合格しているの。後は遅刻せずに会場に行くだけよ」
「そうですよね。遅刻は駄目です。急ぎましょう!」
良かったです。
やっと動いてくれました。
けど、かなり前もって来ているのです。
あれ?
あれれ?
両親が席に座っているのですが…。
「遅刻ですか…。私は遅刻をしてしまったのですね」
「違うわ。両親が楽しみで早く来ただけよ。約束の時間には十分余裕があるわ」
「そうですよね。遅刻はしていないのですよね。では頑張ります」
「頑張らなくても良いの。普段通りのエリーで良いの。別に怖くないから」
お父様が手を振っています。
早く来いと言う事でしょうか?
女の子だったから安心しただけですか?
ご機嫌なのは助かりますけど。
エリーは緊張しながらも訓練の成果をきっちりと披露してくれました。
誰が見ても何も出来なかった孤児だとは思いません。
綺麗なカーテシーを披露し挨拶をします。
「お初にお目にかかります。エリエッタです。本日はよろしくお願い致します」
素晴らしいですね。
物凄い頑張ったのでしょう。
私の我儘でしたが、やり遂げてくれたのですね。
「エリー、さあ席に座って。緊張しなくても良いのよ。学園の話と、これからの話を少ししたいだけ」
「そうだぜ。緊張する必要なんて何もないさ。さあ席に座ってくれ」
「はい。失礼します」
両親は機嫌が良さそうですね。
特にお父様がですが…。
「まず、エリーにはきつい話になるかもしれないけど、学園では辛い思いをするかもしれないわ。でも決して手を出したりしないで、アリーに相談して。こちら側で解決するから」
「そうよ。貴族はエリーを虐めようとするかもしれないけど私に言ってね」
「はい。虐め程度でしたら問題ありません。昔の孤児院に比べたら小石に躓いた程度ですから」
ちょっと待って下さい。
昔の孤児院に比べたらとは?
知らない情報です。
両親も気になった様ですね。
「エリー、良かったら昔の孤児院の事を話してくれない?私達の責任でもあるのだから」
「何も責任はありませんよ。私は物心ついた時、既に孤児院にいました。ずっと番号で呼ばれていたのですが、まだ幼い頃、目の前で人が死ぬのが当たり前でした。餓死で死ぬ子や孤児院長が殴り殺したりもしていました。外に出て草を食べたり、通りすがりの人に食べ物を譲ってもらったりしていたのです。ただ、孤児がお金になると孤児院長が知った頃から死なない程度にご飯を食べられる様になりました。その頃から孤児を外に出さないように扉は固定されました。それに比べれば虐めなんて本当に何て事ありません」
余りにも壮絶な話です。
最近の事情しか知りませんでした。
本当に地獄じゃないですか。
何故そんな環境にいてエリーの心は輝けるの?
どうして未だに人を信じる事が出来るの?
私よりエリーの方が強い心を持っていると思いました。
両親と私が頭を下げて謝りました。
侍女達が慌てています。
国王夫妻が頭を下げたのです。
国が頭を下げたに等しい行為です。
エリーが慌てます。
「頭を上げて下さい。今は本当に天国にいるみたいで幸せです。学園の貴族が何かしてきても隣にアリー王女様がいれば安心ですから」
「エリー、絶対に同じ思いをしないように私が本気で頑張るから」
「そうね。アリー、あなたがしっかりとエリーを守りなさい」
「そうだな。国としても孤児をしっかりと守っていく対策をするつもりだ。だから安心してくれ」
お父様が改めて話を始めました。
「今後の話をしよう。貴族達が綺麗にいなくなったらアリーとエリーをこの国の中心に邸宅を建てて住んでもらおうと思っている。そこから王都に負けない都市を作って欲しいんだ。教育の街でも医療の街でも何でも良い。好きな様に発展させていってほしい」
その様な案があったのですか。
エリーと一緒に住めるのは悪くないですね。
「私はアリーとエリーに期待しているの。この国をより良くしてくれると思っているわ。気負う必要は無いわよ。自然で良いの。普通にやりたいと思った事を実現していって欲しいだけだから。エリーは今まで苦しい思いをしてきたのだし、楽しんでみて」
「分かりました。アリー王女様と楽しんで生活したいと思います」
「それが良いわ!2人で楽しんで生活しましょう」
お茶会は終始、和やかな雰囲気でした。
両親は本当にエリーと会話を楽しみたいだけのようでした。
何か感じるものがあるのかもしれません。
両親の提案は意外な物でしたが悪くない話です。
遂に【他人行儀な王女様】という肩書が私から外れる日が来るかもしれません!
お父様はご機嫌です。
女の子だったからです。
お母様は何かを感じている様です。




