閑話 ヨーゼフ インメル侯爵家討伐
「隊長仕事だ!ヨーゼフ起きろ仕事だ!」
夜勤明けで、まだ眠たい目を擦り体を起こす。
「ローレンツ副隊長、仕事の内容は?」
「インメル侯爵家の関係者を皆殺しだ。私兵を100人以上隠している。さらに洗脳された子供が300人以上いるようだ。騎士300人、衛兵300人で侯爵家の関係者を殲滅し、子供を全員保護だ。直ぐに出兵しろと命令が出されている」
とんでもない仕事だ。
侯爵家の関係者を殲滅して洗脳された子供達を助けるのか。
「ローレンツは部下300人を直ぐに集めてくれ。強い奴優先で訓練所に集合だ。俺は衛兵隊長と話をしてくる」
「分かった!直ぐに集める」
犠牲者を出したく無いからな。
国王様もそのつもりで、私兵の倍以上の騎士で出兵なのだろう。
俺は衛兵隊長の元へ急いだ。
衛兵は準備に忙しいようだ。
話をするまでも無かったか?
「マルコ、準備してるって事は話は伝わってるんだな?子供達の保護は任せたぞ」
「ああ、まさか子供達を薬で洗脳するとな。本当に狂っていやがる」
本当にそうだぜ。
俺にも息子がいるが同じ事をされたら確実に相手を殺す。
貴族の考えている事は理解出来ない。
「直ぐに出兵する。準備が整ったら訓練所に集まってくれ」
「分かった!」
俺は柔軟体操をして甲冑を着る。
インメル侯爵家までは休憩しながら歩いても1日で着く。
関係者を皆殺しにするのに2日かかったとしても4日だ。
5日の仕事と考えておこう。
相手は侯爵家だ油断する気は無い。
俺は訓練所に騎士と衛兵が集まるのを待った。
やはり衛兵の準備に時間がかかっている様だな。
洗脳された子供達の保護だからな。
かなり大変だろう。
マルコが俺の横に立つ。
「洗脳された子供は縄で手と足を縛り口を塞ぐ、それでも薬が切れたらかなり暴れるらしい。お前達にも運ぶのを手伝ってもらうかもしれない。頼む」
「ああ。2人で1人運ぶつもりで行こう」
皆揃った様だな。
「インメル侯爵家の討伐に向かう!関係者は皆殺しだ。騎士は私兵の相手を優先しろ。必ず2人以上でかかれ。1人も犠牲者を出すつもりは無い。5日程度の仕事だと考えろ。絶対に油断はするな。帰りは子供を運ぶのを手伝う事も忘れるな」
「はっ」(騎士一同)
マルコも話すようだ。
「騎士隊長から話があったが、衛兵は子供達の保護を優先だ。戦いは騎士に任せるように。一人残らず保護するぞ。洗脳された子供だから適当に扱って良いとは考えるな。分かったな!」
「はっ」(衛兵一同)
「よし、出兵だ!インメル侯爵家に向かうぞ」
「はっ!」(一同)
道中に妨害は無しか。
貴族様は常に上から目線だからな。
自分達が襲撃されるとは考えていないのだろう。
しかし近づくにつれて不気味な雰囲気がして来た。
何かあるのか?
嫌な予感がする。
「ローレンツ、騎士100人を連れてマルコの指示に従ってくれ。嫌な予感がする」
「分かったぜ隊長」
「マルコ、俺達は本館を襲撃する。少し様子を見た後、ローレンツに先を行かせ別館を頼む」
「子供達は別館にいそうだからな。騎士も借りて悪い。何か嫌な予感がするから助かる」
マルコも何かを感じ取ってるようだ。
何をする気なんだ?
俺達は直ぐに本館に突入した。
私兵100人以上という話だったな。
ここに揃っているから別館は大丈夫か?
いや、嫌な予感が頭から離れない。
「2人ペアになって私兵を殲滅しろ。関係者については後回しだ。別館の様子を見に行くぞ」
「かしこまりました」
鍛えてもいないな。
盗賊崩れの連中か。
これなら楽勝だ。
急いで別館に向かった方が良い。
胸騒ぎがする。
「私兵の殲滅は終わったな。パスカル、50人連れて関係者の皆殺しを頼む。俺達は別館に向かう」
「かしこまりました」
俺達は急ぎ別館に向かった。
何だこれは?
状況が分からない。
「マルコ、どういう状況か説明してくれ」
「ヨーゼフ、こっちに来てくれたか。1人子供達の管理人みたいな奴が【テストを開始します】と号令をかけたら突然子供達が剣を持って襲い掛かって来たんだ。しかも相手が誰でも関係ない、子供同士ですら争う。かなり面倒だ」
なるほど。
洗脳した子供達を動かす合図か。
強くは無いが無傷で抑えるのは大変だな。
「騎士2人で1人ずつ無力化しろ。剣さえ落とせば何も出来ないはずだ。衛兵は剣を落とされた子供達から保護していってくれ」
「はっ」
本当に酷い。
何だこれは。
完全に壊れた人形みたいだ。
ここから何とかなるのか?
健康な状態に戻せるのか?
いや、何とか出来るから保護の命令が出ているんだ。
子供達の保護は済んだな。
「今から騎士は関係者の殲滅に移る。この様な行為を絶対に許すな」
「かしこまりました」
「マルコ、子供達を抑えて待っててくれ。やはり2人で運ぶ必要がありそうだ」
「ああ、助かる。まるで暴れる猛獣だ。ここまでの事を何故出来る」
パスカルが俺の元に当主を連れて来た。
「お前達、何をしているか分かっているのか?侯爵家当主の俺にこの様な事をよくも…」
「知らんな。それよりも子供達に使った薬の資料は無いのか?」
「子供達に使った薬?孤児に何をしようがどうでも良いだろ。適当に強い薬を使って生き残った子供を集めただけだ」
「じゃあ死ね」
話を聞くまでも無かった。
死んでしまった子供達もいるって事じゃないか。
腐ってやがる。
本当に腐ってやがるぜ!
関係者の殲滅も終わったな。
だが、子供達を運ぶのに時間がかかった。
大人2人でも抑えるのが大変な力だ。
子供にこれ程の力が出せる物か?
薬の影響か?
訓練所に着くと王妃様が指示を出している。
この酷い状況の中、的確に指示を出す姿を見て俺は感心してしまった。
お嬢様だと思っていたのだが…。
王女様もそうだが、今代の王家は何か違うのかもしれない。
俺はこの惨状を見ながら、国が豊かになって行く未来を想像した。
インメル侯爵家の私兵は子供を攫う為に使うだけで、戦力としては低いです。




