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第5話 決意

朝日が差し込む 翌朝の校舎。

窓の影が強いコントラストで照らされている廊下。

その背後を行き交う生徒たち。

一人茫然と歩くエレナ。 


何? これは何?

何が起きたか、わからない。

私は、何をしているのか、わからない。」

自分の身に何が起きているのか理解できず悩むエレナ。


知らない。

私はこの人たちを知らなかった。

昨日あそこで、初めて会った人たちだ。

いつから私と同じ学校の生徒として

かよっていたのだろう?」


回りを見るエレナ。

気がつけば、自分の回りにいる生徒たちの中に、

昨日の場所で見かけた人をあちこちで見かける。


「おはよう! 今日も暑いね!」

いつものように親友が話しかけてくる。

戸惑いがあるものの、何とか自分を保とうと親友に対応するエレナ。

「おはよう。」

親友がニコニコしながら話しかけてくる。

「あれ? どうしたのエレナ、今日はまた雰囲気がいつもと違うね。」

「そう? 気のせいじゃない?」

とりあえずとぼけて見せるエレナ。

親友が先ほどより一層の笑顔を見せる。

「何か元気になったみたいだね。」

「私は昔から元気だよ。」


「おはようございます。」

カールお嬢様が朝の挨拶と共に歩み寄ってくる。

その方向を見るエレナと親友。

見ると二人の人物が歩み寄ってくる物。

一人は会った事がないはずの馴れ馴れしいカールお嬢様。

そしてもう一人は、こちらも会った事がないはずの体育会系女子であった。


カールお嬢様は相変わらずズケズケと突っ込んでくる。

「昨日はどうしたんです? 練習に参加せず、ずっとぼうっとしていて。」

エレナは軽くいなして言葉を返す。

「いえ、ちょっと、まあ。」


カールお嬢様の横にいる体育会系女子がするどくぶっ込んでくる。

「鍛錬のプログラム、ちゃんと履修しないとダメよ。

それをサボった結果は、結局自分に帰ってくるのよ。」


そうだ。

そりゃそうだ。

勉強も物事も、結局努力せずサボった場合、そのしっぺ返しがある。

だが今はそれが重要ではない。

今重要な話題は、体育会系女子が誰だ?という事だ。

自分はこの体育会系女子に会ったこともない。

全く知らない人だ。

カールお嬢様もそうだが、この体育会系女子も会ったことないのに馴れ馴れしい。

ズケズケと物を言ってくる。

不愉快だ。


エレナは体育会系女子に探りを入れてみる。

「そういえば私、あなたの名前忘れちゃったんだけど、何てお名前だったっけ?」

その問いに親友が納得した返事を私に返してくる。

「仕方ないよね。最近あなた」休みがちだし。」

カールお嬢様も続けて口を開く。

「彼女は転校生たちですわよ。あなた憶えていらっしゃらないの?」

エレナはその言葉に素直に驚く。

「っ? 転校生?」

親友が半ば呆れたようにエレナに答える。

「先週、うちの学校に転校してきたじゃん。」


納得いかない。

カールお嬢様もそうだけど、何で先週に転校してきたばかりの体育会系女子がタメ口なんだ。

そもそもエレナは体育会系女子が転校生だってこと、たった今知ったわけだし。

自分は体育会女子の事も良く知らない。


エレナが不安と不満が混ざった表情をしているとカールお嬢様がフォローを入れる。

「夏バテなんですわ、きっと。

先週のホームルームでちゃんと転校の挨拶がありましたわよ。

なかよくするようにって、先生もおっしゃってましたわ。」


体育会系女子がうんうん言って首を縦に振っている。

そんな事自体身に覚えのないエレナ。

そもそも、そんな記憶のないエレナは『先生』と言う単語に一層混乱する。

昨日?自分が見た先生の姿。

昨夜?あのどこかの広い部屋で見た先生の姿。

理解に苦しむエレナ。

「えっ、先生、が…….?」


授業の開始を告げるチャイムが鳴る。

先生がやってくる。

「おはよう。授業だぞ~。教室に入れ~。」

その声かけに親友やカールお嬢様、体育会系女子が元気に返事する。

「おはようございますー!」

エレナは先生の姿を見て思わずフリーズしてしまう。

「行くよ、ほら!」

親友が教室に入っていく。

カールお嬢様がそれに続く。

「行きますわよ。」

体育会系女子が強めにエレナに声をかける。

「遅刻になるぞい。」


茫然と立ち尽くすエレナ。

エレナ、先生の顔をマジマジと見る。

その視線を感じて先生、さわやかにエレナに声をかける。

「おはよう。どうした? 元気なさそうだな。夏バテか?」

エレナは戸惑いを何とか隠して返事する。

「......いえ、違います......。」

「そうか、早く教室に入れ。授業が始まるぞ。」

「......あの、先生。」

「うん、なんだ?」

「......いえ、なんでもありません...。」


教室に入るエレナ。

それを見送る先生。


放課後。

行き交う生徒たち。

校舎の一角で一人たたずむエレナ。


何、何が起こっているの?

いったい私に何が起きてるの?

私は夢遊病なのかな?

私は多重人格なのかな?

それとも記憶障害なのかな?

憶えてない。

記憶に無い。

あの転校生が、先週からうちの学校に来ていたなんて、

私、全く憶えてない!

それにあの時見た先生の姿。

まるで全くの別人みたい。

さっきと違ってとっても怖い表情をしていた。

まるで『鬼』のように。

それに親友やカールお嬢様だってそうだ。

あの時まるで別人の、武闘家っていうか、まるで兵士のような雰囲気だった。


気がつくとエレナはいつもの保健室の前に来ていた。

保健室の先生はいつものように優しく迎えてくれた。

「あら、いらっしゃい。」

エレナはその言葉に導かれるかのように保健室に入っていく。


「おやまあ、どうしたね。こりゃまたいつも以上に元気がない。

悩み事が変えって、増大したみたいだね。」


エレナは慣れた感じでいつものルーティーンのように保健室の先生の前に歩み寄る。

「……そう。そうなの。そうなんです。私、どうやら夢遊病じゃなさそうだし、

記憶障害かも知れない。いえ、どちらかと言うと、私、多重人格なのかも。」


真剣な眼差しで見つめるエレナ。

保健室の先生はいつものノリで答えを濁すように返す。

「多重人格。さあ、どうなのかしらね?」

「......私、いったいどうしたらいいですか?」


エレナの表情を見た保健室の先生。

エレナの精神状態が限界に達したと判断し、ひとつの導きを表示する。


「......うーん、それじゃあ、直接聞くんだね。」

「...え?」

「いや、そういう事は直接答えを導けそうな、確信人物にダイレクトに聞いてみるのが一番、かな。」

「...確信? 人物?」

「そう。あなたの悩みの状況をわかってくれそうな、確信人物に直接、自分の悩みをうちあけるのが、一番かな。」


深く考え込んで言葉を絞り出すエレナ。

「……そう、ですよね。」

保健室の先生はここで初めて他人事ではなく、親身になり諭すように助言する。

「...そう。まあ、長い人生いろいろあるわ!

若いんだから、いろいろ悩んで考えて、当たってくだけろ、ね。」


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