第4話 違う世界に来たような
バイブと音楽がなる。
声がする。
「エレナ。」
あわててスマホのめざましとバイブを止めるエレナ。
気を取り直し、エレナは自分のいる場所を見回す。
心配した親友が立ち尽くすエレナに声をかけている。
「どうしたの?」
「えっ?」
気がつくとエレナはトレーニングウエアを着ていた。
声をかけた親友はエレナと同じにトレーニングウエアを着ている。
「エレナ、大丈夫? 最近つかれているみたいだし。」
「え? ええ……。」
起きたことがわからず戸惑っていると、きれいなカール髪型のお嬢様風の女子が話しかけてくる。
「そうよね。学校でのあなた、最近ふさぎ込みですわね。少し問題ですよ。」
エレナは驚く。
え?
誰?
私この人知らない。それに非常に馴れ馴れしい……。
戸惑うエレナを無視して、カールお嬢様がズケズケと口うるさく突っ込んでくる。
「覚醒前の人格が、最近あなたの異変に気がついているみたいだから、
気をつけてくださいましね。私の時も結構混乱はしたんですけどね。」
「えっ? ……ええ。」
エレナはとりあえず話を合わせて『自分』を演じてみる。
その表情を見て親友がやさしく声をかけてくれる。
「意識集中させないと、こないだみたいに、大けがしちゃうよ。気をつけてね。」
親友が心配そうに、包帯をしていたエレナの腕を見る。
「ケガ? え、ああ、そうね……。」
カールお嬢様がエレナを諭すように口を開く。
「ケガの修復の具合どう? 細胞組織の修復、最大限で処理したから、
後遺症はないと思うけどね。」
エレナはそれに合わせて答える。
「えっ? あ、まあ、まあまあ、かな。」
親友がやさしくフォローする。
「最近は敵も強力になり、激戦一方だからね。でも大丈夫。
こちらがボロボロにやられても、すぐに蘇生できるし!」
カールお嬢様が鍛えられた上腕二頭筋に手を当てて自慢する。
「私は、ようやく慣れたかな。」
広い館内に放送が響き渡る。
「まもなく稽古の時間です。全員ホールに集まるように」
カールお嬢様がまるでリーダーの如く、エレナと親友に指示を出す。
「行きますわよ。」
そそくさと歩き出す親友、カールお嬢様。
その後を続き、驚きながらも平静さを保つエレナ。
先導して先を歩いて行くカールお嬢様を見るエレナ。
「誰? カールお嬢様の子……。私、会った事、ない.......。
それに、ここはどこかで見たような……。」
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遅れて部屋に入ってくるエレナ。
すると驚きの光景を目の当たりにする。
この場所がどこだかはわからないけれど、とても大きくて広い部屋だ。
室内に大勢集まった人たちが格闘技系の練習をしている。
ほとんどの人を学園内で見かけたことはない。
ほとんど知らない人たちばかりだ。
エレナは困惑した。
「この人たち、いったいどこから湧き出てきたの?」
何が起こったかわからず、少し困惑するエレナ。
見ると、先程の親友、カールお嬢様、体育会系女子も格闘技系の自主練をはじめている。
全員が格闘技の練習をしている広いホールをあらためて見渡してみる。
どこかで見たような場所。
エレナは気がつく。
そうだ、スマホに録画した映像の場所だ。
この場所は自分がスマホで録画した場所と全く同じであった。
自分はここに来た記憶はない。
だけど録画した内容では自分はここに来たことになる。
おかしい。
何かがおかしい。
エレナが一人悩む中、大勢の人たちの格闘技系の自主練が続く。
声が響く。
どこか聞き慣れている声だ。
「全員、集合!」
一斉に動きを止め、 その方向を見るその場にいる全員。
視線を追うエレナ。
そこに立っていたのは「先生」であった。
「......あれ? あれは、先生......?」
十戒のように割れた道を進み、大勢の中央に陣取り、ブリーフィングをはじめる先生。
「みんな、聞いてくれ。みんなにも伝わっていると思うが、
今の我々に必要なのは、負けることない不屈の精神だ。
何があっても負けない強い根性。絶える事がない不屈の精神。
それが一番重要だ。
精神を鍛える事。
根性を鍛える事。
それは鍛錬、訓練、練習の日々だ。」
大真面目な表情を浮かべて真剣に聞く人々、そして親友、カールお嬢様。
エレナにはそれが信じられなかった。
エレナが今まで知っている先生ではない。
だけど、外見や声その物は先生と全く変わらない。
「本日のメニューは正拳突きだ。正拳突きの打撃腰が精神を鍛える重要な要素だ。」
力を込めて自分の正面に正拳付きをする先生。
そこにいる一同がこだまのように鬨の声で返す。
「おう!」
エレナはその鬨の声で押しつぶされそうになる。
先生は鋭い目つきで続ける。
「全員気を抜く事なく、意識を集中して行う事!」
「おう!」
室内に、全員の気合いがこだまする。
自分が見ている「物」が理解できないエレナ、
壇上に立つ親友、カールお嬢様。
親友がゲキを飛ばす。
「お互い注意して訓練にはげむように!」
それに答えるように一同が声を張り上げる。
「おう!」
カールお嬢様が上目遣いであたりを見下ろし、ゲキを飛ばす。
「みなさん、気を抜いてはいけませんよ!」
一同が先ほどよりも一層強く声を張りあげる。
「おう!」
その様子に納得した先生が開始を告げる。
「ようし、開始だ!」
各自、打撃系の自主練にはげむ人々。
その影に埋もれて、一人悩むエレナ。
......何? これはいったい、何?
何でみんなこんな訓練してるの?
......何で? 私は何でここにいるの?
......もうひとつの私は、いったい何をしてたの?」
エレナの混乱は以前より一層強く増していった。




