敗北
夜が明けて太陽が昇り、灼熱の日差しがマンションの屋上に照らされる。
「ん?もう朝か…」
「あら起きた?もう朝食出来てるわよ」
黒豹が驚いてハンモックから飛び起きると近くのテーブルの上には熱々に焼けて良い香りを漂わせる食パンが皿の上に置いてあった。レタス、ベーコン、の上に目玉焼きがあり、黒豹のお腹は限界を迎えたかのように音を鳴らした。
「な、なんだよ…俺、朝は少食なんだよ」
「ダメでしょ?朝からしっかり食べないと元気出ないわよ」
エプロン姿で表れた白猫に思わず2度見する、どこからそのエプロンを取り出したんだよってセリフをぐっと抑えて、椅子に座り目の前のトーストを頬張る。
「う、旨い…ホントにお前が作ったのか!?」
「当たり前でしょ?私を舐めて貰っちゃ困るわ」
お世辞とか抜きに本当に美味しかった。今まで朝は節約でレーションや雑な物で済ましてたが、これは思わず悪くないと思ってしまった。
「気に入ってくれて良かったわ、それで1つ相談があるの」
「なんだよ?」
「私が西国に戻るまで組まない?」
突然の取引に俺の目は少し鋭くなる。しかし、いつも取り引きをしている連中との交渉とは違い、俺もその交渉には同感だ。正体不明の組織を相手に1人で殺り合う方が自殺行為に等しいからな、協力者は1人でも欲しい。
「あぁ…良いが1つ俺からも条件がある」
「なにかしら?」
「俺達を狙う組織を潰すのに協力する事だ」
「正式に契約って事ね、分かったわ」
こうして俺と白猫は互いに手を取り、俺達を狙う組織について調べる提案を出して情報を集め始める。先日の情報屋の場所は恐らく敵に見張りを付けられているだろうと言う俺達の予想から、もう1個の箇所の情報屋のアジトに行く事にした。
ー町外れの廃工場ー
「"鯨殺しのルーベェルト"」
「良く来たな…」
「あら、それって暗号?」
「あぁ…昨日のうちに予約しておいたんだ、恐らくまだここはバレて無いだろうし…おっちゃん客は?」
「勿論、お前達だけだ」
昨日のうちから例の組織がここに入り込む事を懸念して、この暗号の知る人物しか通さないでくれと報酬を倍で払うのを引き換えに取引してて正解だった。
「お前さん達の探しとる情報は恐らくこれに書かれてある筈だ…」
「これは鍵か?」
「あぁ…極秘に入手した情報のみを記載している書の金庫のキーだ。」
そして、俺達は図書館のように多く並ぶ書の列の一番後に行きそこにポツンと置かれてある金庫に鍵を差し込む。
金庫の中には1冊の辞典が置かれてあった。
ここでは現状最も価値の高くて貴重な本が置かれる、俺の頼んでいた本は現在その価値に値するらしい。
俺は内ポケットから手袋を取り出して着ける、そして丁寧に置かれている本を手に取り、ページを開くとそこには世界の情勢、勢力、組織などがびっしりと語られていた。
「凄いな…この本一冊で今の世界の情勢が丸分かりだ。」
「ねぇ、これって不自然と思わないかしら?」
白猫の指差す場所には各国で利益を出している組織の名前が上から並んでいる、そのほとんどのTOPに…
「運送会社シリウス?」
「他の大企業を押し退けてこの会社が…?」
初めて聞く名前に俺と白猫は困惑するが、それと同時に東国、西国、南国の産業ラインをほぼ占める勢いだそう、しかもその勢いはここ数年で急激に伸びているらしい。
「確かにこれは調べる価値がありそうだな」
「そうね、そこまで利益を出せた理由、何故、私達を消そうとするのか…」
カラカラカラカラ…と背後から音がして2人が後ろを振り向くとそこには黒いマスクを被った大男が大剣を引きずりながらこちらに向かって来ていた。
「もう特定して来たか!」
「ウオォォォォ!!!」
「黒豹!ここで迎え撃ちましょ!」
黒マスクの男は大剣を振り回し、本棚を次々と壊しながら迫り来る、黒豹は間一髪で刃を回避し蹴りを当てるがビクともしない。
「硬った!こいつの体鉄かよ!?」
その硬さに俺が驚いている間に大男は俺に迫り顔面をおもいっきり捕まれて動けない…!
「黒豹!目と耳を閉じて!!」
咄嗟に俺は顔を伏せる、白猫が前に飛び出し大男の顔に閃光弾を放たれる。
苦しむ大男は黒豹の首を掴んでいた手を思わず離した。
俺は透かさずその隙に胸にナイフを差し込み、蹴りを入れて吹っ飛ばした。
初めてその巨体を動かし切り傷も見えようやく明確なダメージを与えた。
「黒豹!これ使って!!」
「は?消火器!?」
白猫が大男に向けて投げた消火器を撃ち爆発させた。
燃え盛る炎の中からは黒いマスクは吹き飛び、顔が溶けて所々に骨が見えるが、一切怯まず俺目掛けて走って来る、間一髪で棚の上に登り回避した。
しかし、不安定な本棚に飛び乗ったせいかバランスを崩して倒れるが、幸いな事に大男に向かって倒れてその後に瓦礫で追い討ちをかけられて動かなくなった。
「ここは…もうダメだ!逃げるぞ!」
2人は全速力で崩れ落ちる瓦礫や本を交わしながら出入口に駆け込む。
「あらあら~本当に逃げきれるなんてね」
「誰だ?お前…」
「さっきの中々の木偶だったでしょ?あなた達の強さを考慮して送ったつもりだったんだけどね。」
俺達は黒服の集団に囲まれていた、そしてその真ん中で余裕の笑みを浮かべながら悠々としている幹部らしき服を着た女。
「くっ…詰みか」
「あなた達良く頑張ったわね、アレを倒したご褒美に楽に殺してあげるわ」
ーパンッー
発砲音が響き、静寂が流れる。
さっき本棚から落ちた時に足を挫いていた俺には避けるなんて不可能だった。悔しいがどうやら俺はここまでみたいだな…。




