白猫
俺は西国の有名な暗殺者"白猫"と手を組むことになった。
誰かは分からないが俺たちの命を脅かそうとする奴らが現れた、西、東で見えない脅威として俺たちが恐れられているのが多分原因だろう。
今までも何度か襲撃、奇襲には会って来たが今回のは恐らく今まで以上の可能性がある。
白猫の奴は分からんが俺は命が惜しいからな、絶対に死ぬ訳にはいかない。
そうして俺たちは奴らから逃走した後、俺の隠れ家でもある店に来た。
「え?ここって廃ビル…?」
「あぁ…ここなら人もほとんど通らない、それにこの建物は特殊な設計で作られているから、壊したくても壊せない建物なんだ…」
「え、でも廃ビルって汚そうじゃない…」
「ま、嫌なら1人で逃げてれば良いじゃねぇか、それにここは俺が昔から住んでるんだ。手入れは欠かして無いぜ?」
確かに私が中を覗くと外見とは裏腹に中はそれなりに綺麗だった、物はほとんど無いが。
臭い匂いもしないし、ここでなら隠れられるかもって正直思ったわ。
中に入って少し進んだ先にあったカウンターの上の物が気になった。
それは写真立てだ、その写真の中には黒豹に似た男の子が父親と母親らしき人達と笑顔にピースをしていた。
「ねぇ…これって?」
「あぁ…唯一残ってた昔の写真だ、まあ小さすぎてほとんど覚えて無いけどな。親の名前も声も…」
「そう、あなた昔ここに住んでたって事じゃないの?」
「多分そうだろうな、何があってこうなったかは知らんけどな。」
「え?黒豹ってここに1人で住んでたの!?」
俺は両親と3人で暮らしていたらしいが、何故か覚えていない6歳くらいまでは一緒に暮らしていた筈なのに記憶が無い、俺が1人になってから俺を保護すると言って1人の男が里親になったがろくでも無い奴だった。
俺を引き取った理由も自分の世話をする駒が欲しかったからだ、飯なんてほとんど貰った事なんて無いし、口答えすればまぁ…お察しの通りのクズ野郎。だから俺は自分1人で強くなると誓い日々の特訓と食料の強奪で生きて生きて立ち回って何よりも強さを求めて生きた。
それからしばらくしてソイツに復讐したら何もして来なくなった。そしてこの場所に帰って来て暗殺の仕事を引き受けるようになってから10年以上の時は経つ。
そうやって生計を立てて居たら気付けば俺は周囲から"黒豹"と呼ばれるようになっていた。勝手に呼び名を付けられて少し思うところはあったが、元々名前の無い人間だ分かりやすい呼び名が出来て良かった。
「ま、とにかく今日のところは食べてけよ作ってやるから、今日は肉しか無いが我慢しろ」
「あ、ありがとう…」
炭火の上で焼かれた肉が、じゅうっと音を立てた。
滴り落ちた脂が火に触れ、香ばしい煙が立ち上る。その匂いだけで腹が鳴りそうだった。
「もう食べていいの?」
待ちきれずに尋ねると、黒豹は苦笑しながら頷いた。
私は分厚い肉をナイフで切り分ける。刃が入った瞬間、透明な肉汁がじわりと溢れ出した。
一口。
噛んだ瞬間、表面の香ばしさの奥から濃厚な旨味が広がる。柔らかな肉は歯を立てるだけでほぐれ、甘い脂が舌の上で溶けていった。
「……なにこれ、初めて食べる肉料理だわ…」
思わず言葉を失う。
二口目、三口目と口へ運ぶ手が止まらない。
肉汁が溢れ、噛むたびに旨味が押し寄せてくる。塩だけの味付けだというのに、素材そのものの力強い味わいが舌を満たした。
気づけば皿の上には何も残っていなかった。
「おかわりはあるかしら?」
「ほぉ?焼き肉がそんなに物珍しかったか?」
「私、そもそも肉を食べた事があまり無いのよ」
「それで俺とあそこまで殺り合えてたのかよ…」
俺は体の力を抜いて少し息を落とす。
「別に特別好きでも嫌いでも無かったのよ…でもこんなにも美味しかったなんてね、ありがとう」
その今までの敵を見る目では無く、ただ俺の事を真っ直ぐに見てくるその目に思わずドキッ…っとした。
「別に褒めたっておかわりの量増やすとか無いからな?」
「それくらい分かってるわよ//」
白猫は顔を少し赤くして俺の事をポコポコと叩いた。
「おいおい、照れてるのかよ!?」
「うっさい!早くおかわり丁度!」
「分かった分かった、頼むから暴れないでくれよ?」
こうして廃ビル屋上から煙が立ち上って、美味しい焼き肉を食べる幸せ空間に2人は浸るのだった。
「せめてもの御礼って事で、少し私の過去を話すわ」
元々私の一族は暗殺を生業に生きて来た。
自分達が生き残る為に他人を殺している犯罪者。
一度そんな生活が嫌になって逃げ出した事があるの、今から10年近く前…その日は土砂降り雨で私はいつも通り、自主鍛練をしながら父の帰りを待っていた。
「レミ、ただいま」
「お帰りなさいお父さん!お仕事お疲れ様~」
「あぁ…いつもありがとうね、訓練はちゃんとしてるかい?」
「うん!でもこの訓練って何の意味があるの?」
「レミには将来私の後を継いで欲しいんだ、お姉ちゃんの分までレミがね」
そう、私には姉が1人いた。
私よりも6つも上で3年くらい前から父さんの仕事の手伝いをしていた、でも何があったのか分からなかったけど、姉はいつも1人で部屋にいた。
虚ろな目をしながら窓の奥の景色を眺めていた。
小さい頃はよく一緒に遊んでたけど、お姉ちゃんがあんな風になってからは話すらしなくなった。
お姉ちゃんは私が話し掛けても何の反応もしない無視してるのか聞こえていないのか、だから私は直接お姉ちゃんのベッドの前にまで来て頬っぺたをつねったけどそれでも無反応、それ以降私はお姉ちゃんと話すのを諦めたわ。
でも、ある日父さんの仕事内容について知った時は父さんに問い詰めたわ、そして口論の果てに私は家を飛び出した。
けどね、1人では生きていけない、1人で生きていくには力が必要と気が付いた時には私は家に戻って来ていたの。
それから私は父の後を継ぎ今に至るわ。
それらをほとんど黒豹に話した。
「なるほどな、力を求めるその気持ち良く分かる…俺もガキの頃からただひたすらに鍛えてたからな。」
「あれ?なんだか私たちって似てる?」
「かもな」
そう微笑む2人の空間に僅かな安らぎが流れる、さっきまで敵対していたとは思えないくらいに。しかし、彼らに迫る魔の手は徐々にその首元に近づきつつあった。




