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だいきぼ★ウチュウ  作者: こなるちゃん
第二部 貧乏で、無力で。
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天井が貧乏

「んむ……どこ、ここ……?」


目ぇ開けた瞬間、まず天井が貧乏やった。


白かったんか灰色やったんかもようわからん板が、微妙に波打っとる。端っこの塗装は剥げとるし、どっかから湿った木と古い布の匂いがする。昨日まで城の部屋で、天蓋だの金だの薔薇だの見せられとった身体には、あまりにも急な現実やった。


あと、身体が重い。


腹の底に、昨日のエクスプロージョンの残りカスみたいなんが沈んどる。寝たはずやのに、全身が「いや、まだ精算終わってへんで」みたいな顔しとる。


「やっと起きた」


横から、()むうの声がした。


いつもの、眠そうで温度のないやつ。


うちは首だけ動かして、部屋を見た。


ベッドが二つ。間に、やる気をなくしたナイトテーブルみたいなんが一個。その上に、袋入りのパンと水差し。壁際には、荷物を置く棚というより「置けるなら置け」くらいの板。床には誰かのブーツ跡が薄く残っとるし、毛布は見ただけで肌が負けそうな固さやった。


窓は小さい。朝の光だけは一応入ってきとるけど、それすら何か安い。


住めんことはない。


けど、ここに住め言われたら魂が先に家出する。


「……何ここ。部屋がもう節約しとるやん」


「公営の冒険者用宿舎でございます」


足元のほうから、マイルズの声がした。


見ると、毛玉が浮いとった。昨日と同じようにきっちりしとる。こいつ、どんな部屋でも自分だけ宮廷の空気持ち込むんやな。腹立つ。


その後ろで、フルカフトは壁際に座って、革紐みたいなんを点検しとった。朝から静かに仕事の顔や。獣人のくせに生活音が薄い。でかいのに。


「ギルド公認の臨時宿泊施設です。登録者および同行者は、一定条件下で無料使用が認められます」


「無料」


その単語だけ、寝起きの脳にすっと入った。


「……無料なら、まあ……」


うちは起き上がろうとして、腰の奥がきしんだ。


「っだ……」


「昨日、床で倒れてたから」


気むうが淡々と言うた。


「倒れたんやない。神として一時的に地上へ還元されただけや」


「寝てる時、腰動いてた」


「は?」


気むうは、こっちを見た。


「あと、『そこやない……もうちょい下……』って言ってた」


「待て待て待て待て待て」


一気に目ぇ覚めた。


「ちゃう。絶対ちゃう。あれは、その……夢の中でスライムと戦いながら機械修理しとってん。ドライバーがな、角度ミスったら変なとこ入るタイプのやつで――」


「『あかん、奥まで入らへん』とも言ってた」


「ドライバーの話や言うてるやろが!!」


沈黙。


マイルズが、すっと視線を逸らした。


「夢の内容につきましては、記録対象外といたします」


「記録する気ぃあったんかい!」


フルカフトは革紐を結び直しながら、ほんの少しだけ口元を緩めた。


「無事に起きたなら問題ない」


「今うちの尊厳が無事ちゃうねん、フルカフト」


「尊厳は怪我に含まれん」


「この世界、判定が雑!」


気むうは袋入りのパンをひとつ取って、うちの膝へぽんと置いた。


「飯」


「急に優しい」


「食べたら静かになるかと思って」


「理由が冷たい」


せやけど腹は減っとった。袋を破ってかじる。ふかふかしとる。味は薄い。腹に入ることだけを目的に生まれてきたパンやった。


「……で、風呂は?」


パンを噛みながら聞く。


「髪、限界やねん。昨日から汗と土と爆発と貧乏が絡まっとる」


浴場棟(よくじょうとう)が下にございます」


マイルズが言うた。


「浴場棟」


「共用です」


一拍。


「……共用?」


「はい」


気むうが、隣で水を飲みながら補足した。


「公衆浴場」


パンが喉で止まった。


「んなもん行くかアホ!! うちはそこ通らへんからな!!」


「完全な大浴場だけではありません」


マイルズがすぐ言う。


「個室の洗浄室もございます。ただし順番制で、使用時間は長く取れません」


「つまり何? 股んとこ洗っとる最中でも急げってこと!?」


フルカフトが立ち上がった。


「朝は混む。行くなら今だ」


「みんなで?」


「浴場棟までは同じだ。中は区画が分かれている」


「まあ、それは最低ラインやろ」


「施設によっては混合区画もございます」


マイルズが余計なことを足した。


「黙れ」

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