47話 行進途中
先週は投稿できずすみませんでしたぁあああああぁあぁぁ!!!!!!!
アストレイト王国からエルフの国までは早馬でも一週間以上はかかるという。
それなのに魔道具で脚力を底上げされたこの馬は3日でエルフの国に到着できるそうな。
その時点で気づくべきだった。
今私達が乗ってる馬は車よりも速いんだと。
「――ああああああああぁあぁああぁああ! はっや! 事故らない⁉ これ絶対事故るよねユーリ⁉」
「え⁉ すいません、もっと大きく言ってもらって良いですか⁉」
嘘……。この馬、速すぎ……?
ブレーキも曲がることも出来なそうだ。
まさかエルフの国まで直線上に道を敷いてるわけでも無いだろう。
進行方向上に木やら人やらがいたら大事故間違い無しである。
「安心してくださいキノさん! 車内にも魔法が掛けられており、どんな衝撃が加わっても絶対に揺れることはありません!」
「それ、気づいたら馬車ごと川の中にボッシュートされてたりしないよね⁉」
「………」
「何か言って⁉」
そう。ユーリの言っている通り、車内にはなんの揺れも起こっていない。
マーガレット達は窓の外の景色を見ながら楽しそうに談笑していることから、とくにこの速さに怖がっていないのが見て取れる。
まあ操縦席にいる私達にはなんの意味もなしていないけどね!
「――あ、ユーリ! ちょい暗くなってきたから今日はここまでにしよう!」
「解りました! 揺れに備えてください!」
「うん! うん? え、待って。このスピードでブレーキはヤバ――」
ユーリが手綱を内側に引っ張り、馬たちは命令通りに足を止め始めた。
背中から台風のような突風に襲われたような、誰かに思い切り突き飛ばされたような気がした。
「~~~~~~‼」
思わず隣のユーリの腰にしがみつき、馬車から振り落とされないように必死に踏ん張る。
馬車は私が予定していたところより百メートルは遠い場所で止まり、数時間ぶりに揺れの無い時間が戻ってきた。
「着きましたよ、キノさん。……あの、もう大丈夫ですから離れて……」
「……あ、足が動かないぃ……」
死ぬかと思った。
今までで一番死を感じたとすら言っていい。
半泣きどころか全泣きの状態の私をどうすればいいのかと、ユーリは手を空中で右往左往させている。
やがて窓の景色が移り変わらなくなったのに気づいたのか、ドアからマーガレットが出てきた。
「兄様、キノさん。お疲れ様でし……。……キノさんに何をしたんですか、兄様?」
「あ……。ま、マーガレット。こ、これは違くてだな……」
「ぶぇええぇ……。マーガレットォ……。ユーリが、ユーリがぁあ……」
「……兄様?」
「ち、違っ。ホントに違――」
必死に弁明しようとしたユーリの脳天に、杖が振り下ろされた。
遅れて顔を車内から出したマリアとアウロラは、頭を抑えて土下座しているユーリを杖の先っぽでグリグリしているマーガレットを見て、そっと車内に顔を引っ込めた。
△▼△▼△▼
その後は何事も無く夕食を終えて、皆は早めに寝静まった。
荷台の椅子は最高級のソファで出来ているので、座って寝てもたいして問題はなかった。
ドアがキィッと小さく音をたてて開いた。
浅く眠っていた私は、ゆっくりと瞼を開けて周りを確認する。
隣にはアウロラ。対面にあるソファにはユーリとマーガレットが寝息をたてて眠っていた。
だが、一人いない。
私の隣にもう一人、マリアが寝ていたはずだ。
何処にいったのだろうと、毛布を肩に掛け荷台の外に出る。
辺りは真っ暗で、先が見えない。
だが、満天の星が仄かに辺りを照らしていた。
「「わぁ……」」
思わず漏れ出た声に、誰かと重なった。
声のした方を見ると、荷台の屋根でマリアも同じように空を見上げていた。
私もマリアにならって屋根に登りマリアの隣に腰掛ける。
「……凄い星だね」
「はい。それに、月も綺麗です」
「――っ! そ、そだね……」
少し意識してしまった。
異世界の住人であるマリアは、勿論知っているはずが無い。
でも、なんでか。
少し、心が疼いた気がする。
「……眠れないの?」
「ええ。少し。……私、怖いんでしょうね」
「怖い?」
「はい。戦争なんて、初めてのことですから。それに、相手は帝国です。恐らく、尋常じゃ無い程の被害が出ます。……なんででしょうね。なんで、私達が生きてる時代にこんなことが起きるんでしょうね」
「……なんでだろうね」
「でも、キノさんに会えたのは本当に嬉しかったんです。それだけで、この時間に生きていることに神に感謝するほどです」
「わ、私こそ、皆にいっぱい助けられたし、それから、その……。……? そのネックレスは?」
「ああ。これはですね、亡くなったお母様が私にくれたんです。凄いんですよこれ。この十字架には悪魔とか、魔の適正がある者の攻撃を、一度だけ無効化することが出来るんですよ」
「へー。……ねえ、マリア。私が、戦うのが怖いとか言ったら、どう思う?」
「どう思う、ですか? ……とくになにも。むしろ、キノさんにも怖い物があったんだなぁって、きっと親近感が湧くと思います」
「そ、そうなの?」
「はい。キノさんは、どこか無茶をしている気がします。私達のために頑張ってくれるのはとても嬉しいんですが、キノさんのそれは、自分の幸せが勘定に乗っていない。だから、その、ですね? もっと弱音を吐いても良いと思います。月並みなことしか言えないですけど、キノさんも人間なんですから、たった一人で多数を救う必要はないんです。多数で多数を救えば良いんですから」
「……そっか。うん。そうだよね」
「はい。きっとそうです」
「……それじゃ、そろそろ寝ようか。明日も速いんだから」
「はいキノさん。――それじゃあ、おやすみなさい」
「うん。オヤスミ……」
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