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異世界行って、騎士団長やります!   作者: 神崎冬花
人魔衝突編
44/64

36話 開戦

どうでもいいけど、キノの腐女子設定いらなかった気がする……。

まあ反省も後悔も無いんすけどね!((殴

 チョキ、チョキ。

 部屋に物を切る音が生じる。

 一度音が起こる度に宝石の様な黄金が、シートを引いた床に落ちてゆく。

 私は手に持った銀色の器具を机に置き、手鏡を私とは逆方向に向ける。


「――うん。こんなんでどう? アウロラ」

「これでいいよ。ありがとね」

「よし。じゃあ片付けるからちょっとどいてね」

「はーい」


 アウロラは少し短くなった髪の毛先を嬉しそうに弄っている。

 散髪なんて軽く二年ぶりくらいだったから、ちゃんと上手くいったか不安だったのだが、どうやらお気に召したようだ。


「アウロラこの二年で背伸びたよねぇ。私いつか抜かされるんじゃないかって思ってるよ」

「お母様もお父様も背が高いもの。私もいつかお母様みたいなるわ」

「私抜かされるじゃんそれ」


 アウロラは二年前、140cmくらいだったのだが、この二年で160まで伸びていて流石に身の危険を感じた。

 私の身長がギリギリ165くらいなので、本当に抜かされそうでちょっと怖い。

 胸はなんか、うん。完全に威厳を失った。


「――キノも髪凄い伸びたわよね。切ったら?」

「あー……。ここまで伸びたんだし、切るの勿体ないかな」


 二年前は肩甲骨くらいだった私の髪は、今や腰に届くまでになっている。

 髪は兜の中で纏めればいいし、せっかく伸びたのだから切るのは勿体ない。

 

「ふう。片付け終わりぃっと。そろそろお昼ご飯……おっ!」

「わっ……。また地震……」


 散髪の道具を片付け終わった矢先に、そこそこ強い揺れが襲った。

 アウロラの言うとおり、最近地震が多発している。

 地震が起こり始めたのが二週間くらい前で、今週に至っては一日一回は地震が起きている。

 そろそろ本震が来そうだから、国の方でも対策を取っているのだが、


「……今回もすぐ終わったね」

「一瞬揺れるだけだけど、日に日に強くなってる気がするわね」


 揺れはいつも一瞬。

 日に日に揺れが強くなって行っているのだが、これは地震というよりむしろ――


『おい、キノよ』

「ふぅぐ……⁉」

「キノ? どうしたの?」

「あ、いや何でも……。ちょっと団長の所行ってくる」


 唐突に童子丸から念話が届き、私はそそくさと部屋を出る。

 自室を目指しながら童子丸に返答する。


『急に念話してくんのやめてくんない?』

『む? じゃあお主は念話をするのを伝えるために念話を使うのか?』

『…………んで、用件は? 急に話しかけてきたって事は何かあったんでしょ?』

『うむ。それがな、魔王がそっちに攻めてくるかもしれんのだ』

『は? まお、なんで?』

『さあ? 儂も知らん。どうせ領土拡大とかじゃろ』


 童子丸は他人事の様に話しているが、無視出来ない案件だぞこれは。


『ちょ、ちょい待ち。魔王が攻めてくるって、なんでわかんの?』

『最近地震が多いじゃろ? あれは海底でリヴァイアサンが暴れてるせいなんじゃ』

『じゃあ海から来るって事? アストレイト王国は大陸の南側だけど、こっちに攻めてくる前に童子丸の方に行くんじゃ無いの?』

『大規模転移という術式があってじゃな……』

『あ、解ったんでいいっす』


 自然と真顔になる私。

 異世界小説で大規模転移がどんだけ凶悪かなんて予習済みだ。

 て言うか、これヤバくないか? いやガチで。


『て、敵勢力とか解る⁉』

『ふぅむ……。探知出来るだけでも、リヴァイアサンが四匹。海洋駆動騎士(マリンシュバリエ)が200体。そして魔王、これは……レヴィアタンじゃな』

『レヴィアタン……えと、嫉妬の悪魔だっけ』

『よく知っておるな。レヴィアタンは三百年前に魔王になったばかりじゃが、実際は千年以上生きる大蛇じゃ。それが人間の姿をしたものじゃな』

『後どれくらいで攻めてくる?』

『大規模転移はどんな術者でも最低五日はかかる術式じゃ。一週間以内にはそっちに行くぞ』

『マジか……』


 唐突に告げられる危機。

 最近平和に現を抜かしていた感はあるが、いきなり魔王が攻めてくるとか反応に困るぞ。

 とにかく、今できることは……。


『……ありがとう、童子丸。なんとか頑張ってみるよ』

『うむ。死ぬでないぞ』

『勿論』


 念話が切られる。

 私は自室へと向けていた足を止め、ハンスがいる部屋に走った。





 △▼△▼△▼





「――という訳なんです」

「――マジかよ……。確かにそれらしい魔力は感じちゃぁいたが、まさかこの時期に来るとは……」

「最悪のタイミングですね。もういつ聖戦が始まってもおかしくないというのに……」


 ハンスとケレスは、私の発言にこれ以上無いほどの苦悶の表情を浮かべた。

 二人は何かに悩まされている様子だが、私に解らない事を聞いても仕方ない。


「ど、どうしましょう」

「どうするもこうするも、迎え撃つしかないだろう……。どこに転移してくるかは解らんが、そこはセレナに任せれば良い」

「キノ、貴女は元帥にこれを伝えてきてください。その後に会議を始まるはずです」

「は、はい!」


 ケレスに命じられるまま、元帥のいる執務部屋に向かう。

 部屋の前まで辿り着き、扉を慌ただしく叩く。


「ドイル元帥閣下! 至急お伝えしたい義がございます!」


 私が早口で伝えても、中からは反応がない。

 少しばかりして、ようやく中から返事が来た。


「――入れ」


 よく言えば厳か、悪く言えば機嫌が悪そうな声を聞き、扉を開く。

 ドイルは仕事椅子に座ったまま私を見る。

 鋭い視線が私を刺す。

 元帥としては正しい姿なのだろうが、少し怖い。

 

「用件はなんだ? 私も忙しいのだが」

「そ、それが……!」


 私は事の重大さをドイルに伝える。

 ドイルは終始資料様な物に目を通していたが、話し終えるとコメカミを抑えた。


「――そんな事が起きているのか。情報感謝する。今すぐ会議を始める。貴様も準備をしておけ」

「了解!」


 ドイルはそれから事務机に置いてあった水晶玉にブツブツと喋る。

 おそらく誰かと連絡を取っているのだろう。

 私はそれを横目に、鎧を取りに部屋へ急いだ。





 △▼△▼△▼





 それから緊急会議が始まり、半日以上の長時間の会議となった。

 

 海洋駆動騎士(マリンシュバリエ)の迎撃は守衛騎士団の上級兵五百名。魔法兵団からは四千人の四千五百名が対処する。

 戦場には回復術士団は二千名も後続で待機。

 あとの残った守衛騎士団九千五百と、魔法兵団の四千人、回復術士団の千名は国で待機。

 もしかしたら戦う予定の場所とは違う所から出てくるかもしれないからだ。


 そしてリヴァイアサン4体だが、これは各騎士団の団長が排除する事となった。

 リヴァイアサンは並の怪物を凌駕する魔物で、ドラゴンの亜種なのだとか。

 海で真の力を発揮するのだが、地上でも暴風の様な被害を巻き起こすらしい。

 下手な物理や魔法も効かず、全長四十メートルを超える蛇。

 手っ取り早く倒すには団長達が戦った方が速い。

 団長達が自ら動くのは些か言い合いが生じたが、最終的には承認された。


 そして、ハンスを抜いた近衛騎士だが、王国待機である。

 最強の団長達が居ない分、国の守りは手薄になる。

 なので、今回は近衛騎士から動くのはハンスのみ。

 ちなみに戦場にはマーガレット達三人組も行くらしい。

 

 六日後。


「三人とも、死んじゃ駄目だよ」

「はい、勿論です!」

「バンバン活躍しますよー!」

「キノさんも、国を頼みます」


 出発の直前に三人を見送る。

 悔しいが、私は今回何も出来ない。ただ皆の無事を祈ることしか出来ない。

 私は行軍する兵士を見るアウロラの肩にそっと手を置いた。





 △▼△▼△▼





「……よし、ここだな」


 ハンスは国の東側にあるだだっ広い荒野の真ん中に立ち呟く。

 ハンスはスッとセレナに目配せをする。


「了解だ。ここいらで魔法の真髄を見せてやろう」


 セレナは冷淡な笑みを浮かべ、地面と空中に大規模な魔方陣を描く。

 そして、セレナの意識は現実とは全く違う場所。精神界と粒子界の狭間に移された。

 この場所は魔粒子界と呼ばれ、魔法を発動するとき、誰でも必ずこの世界に干渉する。

 魔力が漂う場所から魔力を少し受け取り、行使する。

 第一階位の魔法では、魔粒子界に及ぼす影響など微弱な物だが、大規模転移ともなると魔粒子界の魔力が荒れに荒れている。

 故に、その術式に干渉することは容易に出来た。

 セレナは出来上がっている術式の性質を変化させ、術式の内容を変更した。


「行くぞ。『浸食された転移術式(ディファレントゲート)』‼」


 セレナが立つ位置から三百メートル離れた場所で、空間がひび割れる。

 そのひび割れは中心からどんどん崩れていき、巨大な空間の穴が開く。

 そして、その奥から凄まじい魔力を持った敵が多数出現する。

 ハンスは後ろの兵士達に向き直り、声を張り上げる。


「お前等ぁ! ここが正念場だ‼ 死ぬことは許さねえ、さっさとあいつらをぶっ飛ばすぞ‼」

『おおおおおおおおおぉぉぉおお‼』


 四千五百名の兵士達は、自らの武器を持ち、荒野を駆けた。


大規模戦闘なのにまさかの主人公不在という……。

これから先どうなるんでしょうね。

気になります(作者)。


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