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異世界行って、騎士団長やります!   作者: 神崎冬花
人魔衝突編
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33話 二年の月日

 アウロラの病気を治し、アウロラの専属騎士になってから二年の月日が経っていた。


 ……え? そこは一週間とか一ヶ月とかじゃないのかって?

 馬鹿を言ってはいけない。

 考えてみよう。主人公が転生、転移しただけで国家滅亡級の問題がポンポン起こるだろうか。

 答えはNOだ。

 あってたまるかそんなこと。

 たった一人の人間が転移してきただけで魔王軍幹部が数名攻めてくるなんて、ちゃんちゃら可笑しい話だ。

 何で今までこの国、と言うか世界滅亡してないんだよって疑問が生じてしまう。

 というわけでこの二年間、何も大事が起きていなかった。

 強いて言えば、マーガレットとマリアが腐女子同盟に入ったり、アウロラの要望で一ヶ月間メイド服姿でいたって事くらいだ。

 後掘り下げて話すべき事は……一つくらいだ。

 アウロラの病気を治して一ヶ月経った辺りのこと――




 △▼△▼△▼




「あれ? マーガレット……。ユーリにマリアまで」


 私はアストレイト王国統治下の岩山に足を運んでいた。

 私がアウロラの世話役になっていたのは、童子丸との戦いで傷ついた体の療養のため、過度に動かない程度の仕事を任されたのだ。

 それから一ヶ月も経ったので、流石に鍛錬しようと思った矢先、ハンスから「鍛錬はいいから岩山に行ってくれや」と強権じみた事を言われ、先程の台詞に至る。

 マーガレット達は私に気づき、嬉しそうに駆け寄ってくる。

 何だか子犬の様な動作だな。


「キノさん! キノさんも来てたんですね!」

「うん。久しぶりマリア。私からしたら三人が来てた事に驚いてるんだけど……」

「それが、私達は各団長に命じられ、この岩山に招集されたんです。そこで今から特別な訓練を行うとあの近衛兵方から」


 ユーリが指し示した場所には確かに近衛兵が四名。

 全員兜を装着しておらず、何かを話していた。

 

「あ、シギルさん達が訓練相手なのか」

「シギルさんってどなたのことですか?」

「ほら、あの一番がたい良くて荘厳そうな人」


 シギルとは私が王宮に招集された時に迎えに来た三名の近衛兵の内の一人。

 ハンスを超える体格の良さに、武人前とした風格。

 多分男が惚れる男、というヤツだ。

 確かモーニングスターを使うと言ってたはずだが、肝心の武器が見あたらない。

 後の三人は説明すれば長くなるので簡潔に行こう。まだそんな話したことないしね。


 細身で眠そうな目をしており、どこか侮りがたい雰囲気を醸し出している男。

 ハルトマン。糸使いと言っていたが、某地獄からの使者のような戦いなのだろうか。

 

 地味。申し訳無いがこれくらいしか感想はない。ただ、一度手合わせをしたとき、単純に剣で圧倒された事がある。

 ゾイル。片手直剣使い。是非もう一本剣を持ってスターバーストなストリームをしてほしい。


 私を迎えに来たのは以上三名。

 次、少しくすんだ金髪で、爽やかイケメン。イケメンというよりはハンサムの方が合ってる。

 カジマ。同じく片手直剣。こっちの方が強そう。


 そんな四人が何故ここに……。

 そう思ってると四人がこっちに近づいてきた。

 

「よし。全員集まったな。今からお前達には一週間ここで生活してもらう」

「は? 一週間、ですか? 山の中で?」

「シギル殿、何故我等四人だけがその訓練を受けるのでしょうか?」

「いや、何もお前達だけではない。というより、お前達が最後だ」

「「「「?」」」」


 私達は揃って頭の上に疑問符を浮かべた。

 先程シギルが言ってた事の一から十が意味不明なのだが。

 そこでハルトマンが溜め息を吐き、シギルの肩に手を置いた。

 

「あー、シギル。あんたは口下手すぎるからちょい下がって。俺が説明するわ」

「む……」

「あー、嬢ちゃん達。今からする訓練はよ。新規に入った四騎士団全員が受けた修練なんだよ。んで嬢ちゃん達が最後ってわけだ」

「はあ……。それで私達は一週間サバイバルしろってことですか?」

「んー、一週間ってのはシギルが言った願望だ。大体の奴は一ヶ月は掛かったか、リタイアした奴ばっかだ。サバイバルってのもあながち間違ってないな。ここは“選定の霊峰”っつー名称でな。お前等には特殊な能力を獲得してもらう」

「能力……スキルですか? スキルなら私とユーリがもう持ってますよ」

「いや、スキルじゃない。お前達にはこれから称号を獲得してもらう」


 称号?

 称号なら国民からいつか適当に付けられたりすると思うが……。


「称号ってのはこの世界にあるシステムの一つだ。唯一神クロノスが定めた条件に達した者は、称号が与えられる。称号は言ってみれば自分の能力の底上げだ。称号は複数あって、それぞれ性能は違うんだが、例えば守衛騎士が得た称号は『聖輝士』だ。これは自分の能力が全て一・五倍されるっつー性能だ」

「「「「一・五⁉」」」」

「あぁ。破格の性能だろ? ちなみに近衛兵はキノ以外は皆称号を持ってるぜ」

「ま、マイちゃんもですか……?」

「おう。あいつなんて名前だったか……確か『流麗なる一矢』とかそんなんだったな」

「魔力を込めて撃った矢は絶対貫通が付与されるヤツだったよな確か」

「あー、そうだそうだ。あいつそれでめっちゃ調子こいてた時期あったな……」


 ゾイルが会話に加わり、ハルトマンはまるで過去を懐かしむような顔で空を見上げた。

 ていうか時期って。マイちゃんの見た目って私より幼そうだが、一体幾つの時から近衛兵になっていたのだ?


「あー、後。称号を得たら寿命が延びるぜ」

「へえー。じゃあマイちゃんって幾つなんですか?」

「あー、入ったときが確か二十だったから……三十五くらいだったか」

「さ、三十五⁉ あの見た目で⁉」

「称号は得た瞬間の見た目から変わらねえからな。あいつの称号めっちゃ強えから多分後……五百年は大丈夫なんじゃないか?」

「「「「………」」」」


 衝撃の事実に私達は完全に押し黙った。

 マイちゃんじゃなくてマイさんだった……。

 後五百年生きられると言うことは、マイはいつかロリババアになってしまうのか?

 それはそれで何か格好いいな。いややっぱ格好良くない。


「あ、でも私アウロラの世話が……」

「ああ。アウロラ様の世話ならマイに任せておいたぞ。だから安心するがいい」

「あ、ありがとうございます……」


 マイに任せたらアウロラにも悪影響が及びそうなのだが……。

 友人に対して酷い言いぐさだが、マイならアウロラと仲良くやってくれるだろう。


「さて、別に時間が迫ってる訳でも無いんだが、訓練を開始するぞ」

「俺達はそれぞれお前達を監視する。お前等の命に危険があった場合のみ助けるぜ」

「飢え死にされたら困るからな。危なくなったら問答無用でリタイアしてもらう」

「まあ、苦しんでるところを見るのは面白いから存分に無理をしてほしいな」


 四人はこの訓練の説明を……おい、最後のハンサムやべえ事言ったぞ!

 



 △▼△▼△▼




「うーん。岩山に住んでるだけで称号なんて獲得出来るのかな?」

「他の新兵さん達も獲得出来たようですし大丈夫だと思いますよ?」

「そうですよ! それにこの四人で野宿するのはもう慣れてるじゃないですか!」

「もう半年くらい前だがな」


 シギル達より十歩くらい後ろで私達は好き勝手駄弁っていた。

 こんな風に四人で喋るのは久しぶりだ。

 マリアの言うとおり、冒険者時代には野宿もしたし、それぞれ役割分担も出来ている。

 のだが……。


「問題は食糧調達だよね」

「猪でもいればいいんですが……」

「岩山だしねー」

「一応三日分の非常食持ってますが、足りるでしょうか……」


 岩山。しかも私達が向かってる一層高い山は、視認できるだけでも木々が数えられるくらいしか生えてない。

 食べられる動植物は果たしてあるのだろうか。


「……よし。ここから先が“選定の霊峰”だ。心の準備はいいな?」

「「「「はい!」」」」

「よし。無事生きて帰ってこい」


 私達は霊峰の土に足を踏み入れた。




 △▼△▼△▼




 霊峰に足を踏み入れ、登ること数分。

 さして何も起こらないのだが、本当にこれからどうしたらいいんだ?


「頂上に行くとかですかね?」

「あー、それあるかも」

「だとしたらこのペースで登っていったら後五時間くらいで着きそうですね」

「断崖などがあったらどう登る?」

「私が飛んで連れてくよ」


 なんて、明るく登頂を目指す私達。

 だが、当たり前のようにそんな半日で登頂出来るはずも無く……。

 異変はすぐに起こった。




 

「‼」


 先陣を切っていたユーリは急に止まったかと思えば、地に膝を付き苦しそうに悶え始めた。


「ゆ、ユーリ⁉」

「お兄様、大丈夫ですか⁉」


 ユーリは咳き込んだと思えば、目や口から血を流し始めた。


「な⁉」

「マリア、回復を!」

「は、はい! 『治癒(ヒール)』!」


 回復魔法を数回掛け、ユーリはようやく落ち着いたようだった。


「は、はあはあ……」

「ユーリ、一体どうしたの?」

「あ、あの白い線の先……あそこを超えたら急に胸が苦しく……」

「白い線……」


 ユーリが言うとおり、先には白い線がある。

 だが、それは何の変哲もない自然に出来たような物で普通に歩いていたら気づかなそうなくらいだ。

 私はグッ、と奥歯を噛みしめ、その白い線を踏み越えようとする。


「き、キノさん!」

「危険です! 戻ってきてください!」


 マーガレットとマリアの警告を耳にしながら白い線を越える。

 数秒、何も起きないと思えば……。


《警告。魔力濃度が劇的に向上しました。一刻も早く立ち去る事を推奨します》


 ナビ子さんの声が聞こえたと思えば、次の瞬間私に何かが襲いかかった。


「う、っぐっ! ぉうえ……」

「き、キノさん!」

「ひ、『治癒(ヒール)』!」


 私は後ろに尻餅をつきその場に胃液を散布した。

 目や鼻から血が垂れてくる。

 私はここに至って、ようやく攻略期間が長いことに思い至った。

 皆これに苦しんだのか。いや、むしろクリア出来た人がいることに驚いてしまう。

 それくらい強烈なのだ。この先は。

 アウロラと同じく、魔力が身を蝕もうとしてくる。

 アウロラはこれを耐えてたのかと思うと、アウロラを待たせた自分に嫌気が指してくる。

 

「……なるほど……。これが修練かくそったれ……!」


 マズイな。







 攻略の糸口が全く見えない。



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