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異世界行って、騎士団長やります!   作者: 神崎冬花
千草王女編
37/64

30話 二度目の遭遇

『な、なんで……?』

『ん? まあたいした用は無いんじゃがな』


 時刻は草木も眠る丑三つ時。

 『念話』という未知なるスキルによって、私の頭に流れてくるのは他でもない、私を八割方死に体にしてくれた酒呑童子だった。

 しかも酒呑童子はたいした用も無く私に念話をよこしたらしい。

 ――たいした用も無く話すとか恋人かよ……。


 ……いや、何考えてんの私⁉

 魔物と人が恋愛関係にあるとか聞いたことっ――元の世界だったら割と聞いたことあるな。いやいや、付き合ってないし‼


『……んで、世話話するために話しかけてきたの? 悪いけど私あんま余裕無いんだけど』

『ほう。なにか困ってるようじゃな』


 いや、なんでわかんだこの鬼。イケメンかよ。

 現実にいたら絶対モテるやつだよ。


『深層眼、というスキルがあってな。相手の考えている事がある程度読み解けるのよ』

『へー……。……ん⁉ え、ちょっと待って。じゃあさっきまで私が考えてた事も……?』

『ん? 魔物と人が恋愛関係とかなんとかってところか?』

「バレてるぅうぅううぅあっっっっ‼」


 思わず叫んでしまった。

 まさか頭の中を読み取られてるとわ。

 これからは迂闊なことはなるべく考えないようにしよう。


 私が床に転げ回って悶絶してる間も、酒呑童子は私の頭の中を読み取っているようだ。


『ふーむ。アウロラに、千年草? それに死の森か。なんじゃお主、こっちに来るのか』

『来るのかって……。酒呑童子死の森に住んでんの?』

『これでも死の森の統括者をやっておるぞ』


 この鬼、実は魔王なんじゃ……。

 

『儂は魔王ではないぞ。実力的には遜色ないじゃろうがな』

『ホントに見透かされてる……。あんま人の考え覗かないでくれます?』

『これでも苦労して読み取ってるのじゃぞ? こっちの方が話が早いじゃろうて。それにお主、さっきから抵抗しとるじゃろ』

「あ、それ多分ナビ子さんっす」


 心で応えれば読み取られるので口で応える。

 私にそんな高度な事できんわ。


『ふむ……。お主が良かったらだが儂直々に死の森を案内してやろうか?』

『え……。マジ?』

『マジじゃ。まあ、お主がスリルを味わいたかったら歩いてくればいいんじゃが』

『是非お願いします』


 マジか……マジか。

 大事なことなので三回言う。

 マジか。

 異世界イベント最高かよ。これで気苦労だった半分は消えたわ。


『あの……千年草は、死の森にあんの……?』

『あるぞ。お主の大火傷を癒やしたのも千年草が混じった酒じゃからな』

「マジかよ⁉」


 一気に心が躍る感覚。

 思わず驚きが口に突いて出てしまった。

 アウロラを見る。

 ベッドの上で寝るアウロラは穏やかな寝顔を浮かべている。

 その顔がこれ以上無く愛おしく見える。

 

 私はベランダから部屋に入り、アウロラの頭を起きない程度に優しく撫でる。

 目頭が緩んでいるのか強張っているのか解らないほど、私は顔を歪めているだろう。

 嬉しさでどうにかなってしまいそうだ。

 

『酒呑童子。明日、お願いね』

『うむ。任せよ』


 明日は。

 アウロラの鳥かごが壊れる日だ。




 △▼△▼△▼




「なにこれ怖」


 私は死の森の入り口付近に来ていた。

 死の森の木にはカラスのような黒い鳥が何匹も止まっているし、なんか闇のオーラを感じる。


 死の森には一人で行くとハンスに言い、軽く三十分は口論してようやく一人で行く権利を勝ち取ったのだ。

 まあミュウが私の首飾りとしているのだが。


「ミュウ、私の合図があるまで出てきちゃだめだよ」

『了解でス。ゴブウンを』


 私の装備は懐かしの冒険者時代の装備だ。

 近衛騎士の鎧がまだ来てないのもあるが、こちらの方が防御力が高かったのだ。

 私は意気揚々と入り口に足を踏み入れ……。


「おい、そこの! ここから先は関係者以外立ち入り禁止だ! 即刻立ち去れ!」


 詰め所の兵士に阻まれた。

 そうだった。今近衛騎士の鎧を着ていない上に、こんな小娘がなんか金ピカの鎧着てたらどっかの成金と勘違いするよね。

 私は仕方なく近衛騎士の紋章を見せる。

 それを見た兵士は一気に顔を青ざめさせ、その場に跪いた。


「こ、近衛騎士のキノ様とは露知らず……。大変な失礼を! どうぞ、お通りくださいませ!」


 兵士はササッと道を空け、詰め所内にいた他の兵士も一斉に出てきて跪いた。

 気分は水戸黄門。

 ふはははは! この紋章が目に入らぬかあ!

 私は優越感に浸り、堂々と闊歩した。


 ……


 …………


 ………………


 ヤバい、めっちゃ怖い。

 意気揚々と歩いていたのは最初だけ。

 歩を進める度深まる不安感を刺激する霧。

 しかも何匹もの鳥が皆私を凝視している。

 これ夜だったら目が光る系のやつだ。私には解る。やっぱ解りたくない。

 もし夜に来てたら私漏らす自信しかないぞ。いやいっそもう漏らしてる。

 酒呑童子と待ち合わせしているのは……いや待てよ。

 私ら特に待ち合わせしてないぞ。

 確か酒呑童子が『歩いてたらそのうち迎えに行ってやる』的な会話で昨日は終わったんだった。

 酒呑童子よ、速く来てくれ。私の、主に下半身が大惨事になる前に速く来てくれ。

 ちくしょう。こんなことなら余裕ぶっこいて紅茶飲んでくるんじゃ無かった。


 ガサッ、と音がした。


「ななんあななな⁉」


 何⁉ と格好良く言うつもりだったのだが盛大に失敗した。

 シャッ、と細剣を鞘から引き抜く。

 

「ふぁ、でゃれ⁉」


 だ、誰⁉ と言うつもり以下略。

 いや出るならはよ出ろ! 私はドラゴンを倒した女だぞ!

 

 そしてそれは飛び出した。

 それは、そう。あれだ。いつかに倒したジャイアントキャタピラーの幼体の様な物だった。

 それも例に洩れず気持ち悪……いや、むしろこっちの方が気持ち悪い!


「きゃああああああぁぁあああああ‼ こ、こここおおおおおおこっち来ないで―――――!」


 まさかこのご時世、推しのライブ以外でこんな女の子っぽい叫び声上げるとは思わなかったぜまったく。

 あ、ここ異世界か。AHAHAHAHAHAHAHA。

 まあそんなジョーク言ってられる余裕無いんですけどね!

 あの虫速い。成体より速い。

 『加速』フル動員してるのに同じスピードってなんなんだろう。

 しかも細剣驚いた衝撃で落としちゃったし。

 ごめんガゼル。なくしちゃった。


「ふあ、こ、来ないでえええええぇぇぇえええぇ‼」


 走ること数百メートル。

 大きな川が見えた。

 

「い、行き止まりぃ⁉」


 この幅は飛び越えられない。

 ものすごく流れ速いしこの川。

 翼を使う? いや、使ったらカラス共に襲われそうだ。

 そしてこんな時、神様ってのはホントに居るんだなって思い知らされる。

 

 ガッ、と。

 盛大にこけた。


「ぎゃふ!」


 思いっきり鎧に守られてない鼻を打ち付ける。

 痛さに顔を顰めていると、後ろから煙りを吐くような音。

 ギギギと音がしそうな動作で首を後ろに向ける。

 そこには一メートルも無い距離に構えるスモールキャタピラー。

 フシュー、と口を開ける度紫なのか緑なのかよく解らない液体が飛び出る。


「い、ヒッ――」


 やはりこの魔物は根源的な恐怖を煽るのが得意なようだ。

 

「ま、魔法――」


 私が魔法を放つより速く、キャタピラーは私に襲いかかってきた。

 その姿はなんとも恐ろしく、検索してはいけない用語に出てきそうな……。


「あ――」

「――まったく。何をやってるのじゃ、お主は」


 私に向かってきていたキャタピラーは粉微塵になって消えた。

 そして私を見下ろし、呆れた表情で酒呑童子は右手を差し出した。

 その左手には私が落とした細剣が握られている。

 

「この儂と遊べるような奴が、こんな最弱な魔物に恐れをなすなど……。まったく。ほれ掴まれ。行くぞ」

「…………」

「? 何をしておる。腰でも抜かしたか?」

「……あ、あの。酒呑童子さん――」

「ん?」




「――流れが緩やかな川って近くにあります?」




 △▼△▼△▼




「――まったく。お主にはほとほと呆れたわ。勇壮な女じゃと思う取ったが、まさかあの程度の虫けらに失禁するなど……」

「………………」


 私は酒呑童子に連れられて、小さな泉で身体を洗っていた。

 酒呑童子は私が身体を洗っている間、好機とばかりに嫌味をグチグチと垂れている。

 ……うん。公に失禁――漏らしたって言われるとものすごく恥ずかしいな。死にたい。

 年頃の女子が漏らすなど……お笑い物だあはははは死にたい。

 

「も、もう大丈夫です……」

「――む? 終わったか。では行くぞ」


 そう言って酒呑童子は手を差し出してくる。

 私はその手を素直に握ると、


「転移」


 一瞬空間が歪んだと思うと、目の前には立派な和風日本邸の様な建物が出現した。

 心の中でえ? と思うと同時にナビ子さんが、


《スキル『転移』です。『転移』の習得に失敗。代用として『物質収納』を習得しました》


 説明ご苦労さまです。後勝手にスキル習得するの出来たらやめてね。

 

「ほれ上がれ上がれ。儂の住処じゃ。遠慮なく寛ぐがいい」

「お、お邪魔します」


 一階立てだが、奥行きがあり面積が広い。

 ますます日本の和風館だ。

 酒呑童子の後に続き、やがて茶の間とおぼしき所に到着し、座布団に座る。

 私が座ると綺麗な女性が二人、私と酒呑童子の前にお茶を置く。

 ……よく見るとこの人達も酒呑童子と同じ鬼だ。

 私多分この鬼の女性と互角くらいだぞこれ。魔物怖っ。


「粗茶じゃ」

「い、頂きます。……あ、緑茶だこれ」


 日本を思い出すところだな、ここ。

 

「そ、それで酒呑童子――」

「童子丸」

「んえ?」

「童子丸が儂の真名じゃ。そう呼べ。酒呑童子じゃ長いじゃろう」

「わ、わかった。童子丸。千年草の事についてだけど……」

「ああ。まあかなり貯蔵しとるから好きなだけ持ってけ」

「……え、終わり?」

「終わり。と、言いたいところだが、一つ条件、頼みがあるのじゃ」


 来た! と、私は心の中で身構える。

 あの酒呑童子――童子丸のことだ。

 絶対にまた儂と戦えとかそう言ってくるに違いない。

 もう一回戦えとか、ぶっちゃけ心底拒否したいが。

 

(アウロラのためだ。覚悟を決めよう!)


 今の私はどんな条件を出されても請け負える自信しかない。さっきの漏らす漏らさないとは訳が違う。


「キノよ」

「は、はい!」











「儂の妻となれ」

 


今まで書いてきた中で一番スムーズに書けました。


ブックマーク、ポイントよろしくお願いします。

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