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異世界行って、騎士団長やります!   作者: 神崎冬花
鬼王降臨編
28/64

23話 圧倒的暴力

復活しました!

これからもよろしくお願いします!

  オーガロードの討伐も終わり、撤退の準備を始めていた、その時。


《固有能力『天使の翼』の気配察知に強力な個体が索敵されました。対象個体が降下を開始。残り5秒でこちらに到達します》


  ナビ子さんからのお告げがかかる。

  私はどういう意味かを問い質す暇も無く。


「全員、退避──ッ!」


  慌てて張り上げた声をかき消したのは、後方から鳴り響く破壊音と地響きだった。

  凄まじい程の風圧が私達を襲い、思わず半開きになってしまった視界には逃げ遅れた兵士が宙を舞う姿が入った。


「一体何が──!?」

「キノのん、どうしたの!?」


  遥か上空まで昇った土煙を見て駆け付けたのか、一足先に山を降っていたマイが私の元までやって来た。


「わかんない。……でも、とにかくあそこにいるのはヤバいって事ぐらいしかわかんない」


  朦々と立ち込めていた土煙が徐々に晴れ、そこには薄らと人影が見えていた。

  間違いなく投擲物ではない。かと言って、人間でもない。

  何故ならその人影からは、この場にいる者全員を足した魔力よりも遥かに大きい魔力を感じるからだ。

  そのまま誰も動かずに土煙の奥を注意深く覗く。

  そして幾ばくか時間が経過したところでそれの全貌が明らかになった。

  目を見張る。

  肘あたりまである白銀色の髪は一本一本がそれこそ宝石の様に輝いていた。

  スラッとした顔はこの世界では見かけなかった、日本人の顔立ちに似ている。

  ボタっとした灰色のズボンの腰には確かな重量を持った瓢箪。

  女性かと勘違いしそうな程の美形だが、羽織っているものは胸がはだけており、男だと判明する。

  これだけだと人間かと判断しかけたが、その額には先程まで戦っていたオーガの角とひどく酷似する。血の様な紅い角が2本。天に向かって突き出ていた。

  この場にいる者はタップリ数秒間その者……鬼に見蕩れてしまった。


《対象の種族名を検索した結果、該当は無し。オーガ突然変異種であると推測します》


  冷静なナビ子さんの声が冷水の様に私の脳に浸透する。

  私は自分が先程までちゃんと息をしていたのかも忘れてしまい、緊張で震える舌を懸命に動かそうとしたところ。


「ふ、む。思った通りじゃったな。おーいそこの黒髪、言葉は通じるか?」


  思わず自分の耳を疑った。

  魔物が喋ること自体驚愕すべき事態なのに、あちらから接触してきたことにより、こちらは皆動揺してしまった。

  それから辺りを見回し、黒髪が自分しかいないことがわかると、私は暫く開かなかった口を開いた。


「……はい。何でしょう……」


  掠れながらも何とか声を出せた自分を褒め讃えたい気持ちになった。

  鬼はウム、と頷くと。


「我が眷属達が迷惑をかけたようじゃな。ついさっき気付いたから呼び戻そうと飛んできたんじゃが、まさか全部倒されているとは……」

「……それで私達を殺しに?」

「いやいや、そうではない。寧ろ謝罪しに来たのじゃ。眷属達が迷惑をかけたこと、謝ろう」


  その一言で場がザワついた。

  魔物と人間は本来相反する関係であり、そこに友好関係等生まれるはずがない。

  それなのにこの鬼は私達に向かって謝罪した。これは恐らく人類史史上初めての事だろう。

  何て答えればいいかわからずに立ち尽くしていると鬼が。


「申し遅れた。儂の名は……まあ、酒呑童子とでも呼んでくれ。酒ばっか呑んでるからかいつの間にかこんな名がついてのう」

「は、はあ……。あ、えと。私の名前はキノ……です」

「おう、そうかキノか。それで聞きたいんじゃが、ウチのオーガロードを倒したのはお主か?」

「はい、そうです……」


  息付く暇もなく鬼──酒呑童子との会話が進む。

  今私は深く考えられずに頭に出てきた言葉をただ喋る事しか出来なかった。

  それが、どんな方向に進むかも知らずに。


「おう、そうか。そこで頼みがあるんじゃが、いいか?」

「……何ですか?」

「ちと儂と戦ってくれんか? どうもこの数百年骨のある奴がおらんでのう。暇じゃったんじゃ」


  その一言で場に緊張感が走る。

  忘れていたがここは戦場なのだ。本来絶対に気を抜いちゃいけないところ。

  私は鞘に戻していた剣の柄を握る。


「何か、条件付きですか……?」

「んー、そうさなぁ。儂は絶対本気を出さん。とかどうじゃ? お主が勝てたらお主の配下にでもなってやるわい。お主が負け……いや、儂を楽しませれなかったら全員殺す、というのはどうじゃ?」

「……! 勝負を受けなかったら……?」

「全員殺す」


  選択肢はどうやら1つしかないようじゃ、あ間違った。ないようだ。

  それに少なくとも酒呑童子を楽しませれば良いのだ。

  私は大きく息を吐き出し、


「……わかりましたお相手します」

「キノのん!」

「大丈夫。多分何事もなく終わる」

「よう言った! そうでなきゃ面白くない。1対1の勝負。加勢は許さんからなぁ」


  酒呑童子は大層楽しそうにケラケラ笑った。

  次いで辺りを1回見回し、


「──狭いな。少し拡げるから離れておれ」


  意味がわからずに兵士達と共に後退する。

  それを見計らって酒呑童子は軽く右腕を振り抜いた。

  瞬間、ズッ、というこれまで聞いたどんな音よりも重い音が響き、ミサイルが落ちたのではと錯覚してしまう程の爆破音が発生した。

  先刻よりもずっと強い風圧と揺れが私達を襲う。

  それに耐えていると上から「もういいぞぉ」と声がした。

  先程の大音量と比べたら思わず聴き逃してしまいそうになってしまう。

  言われた通りに上に上がり、絶句した。

  先程まであった木々や岩肌はあら方消し飛び、盛り上がっていた地面はステージの様になっている。

 

「さあ、これでステージが出来上がったぞ。速く始めよう」


  呆然としている暇もなく、私は整地された地面の上に立ち、細検を抜いた。


「先程言った通り儂は本気を出さん。お遊び感覚でやってやろう。そちらは何でもしてくるがいい。どんな卑怯な手を使っても構わんし、初手から大技でもいい。さあ、かかって来るがいい」


  自分は絶対に本気を出さない。更にこちらはどんな手を使ってもいい。完全に舐められているが反論は出来ない。

  何しろそれほどの余裕をかます実力があるからだ。


(勝てるとは思えないけど、要は楽しませてあげればいいんでしょ。だったら遠慮なく行かせてもらいます! ナビ子さん、全力戦闘モード!)

《了解しました》


  最初から全力。後の事等一切考えない。

  この3ヶ月間私はただ闇雲に剣を振っていた訳ではない。

  新たな力を得て、以前とは比べ物にならない程の力を手に入れたのだ。


《固有能力『天使の翼』発動。続いて光魔法第2階位『光の鎧』を発動。武器に『雷光魔撃(ライトニング)』を付与。『思考加速』を発動しました》


  光魔法第2階位『光の鎧』は新たに手に入れた魔法だ。薄皮1枚分の薄らとした光が私を覆う。これだけ見ると何の役にもたたなそうだが、この状態だったらビルの20階から落ちても無傷なのだ。

  準備は万端。『天使の翼』と『加速』で強化されたスピードで一息に距離を詰める。

  剣に雷を纏わせて攻撃するのは必殺技゛雷獣刺突撃(ボルティックブラスト)゛でやっていたが、こちらは常に纏っている。名付けて『雷鳴剣舞』。名前を考える方が苦労したのは秘密の話だ。

  そして音速に近い攻撃が酒呑童子を襲う。

  酒呑童子は顔色1つ変えずに私の攻撃を全て捌いている。

  このまま攻撃し続けたらいつか疲れてくれて勝てるかなと思ったのだが、


《このまま攻撃し続けて勝てる可能性は0%。攻撃を継続するのは危険です》


  と何とも当たり前な答えが帰ってきた。

  流石にこれで勝てるなんて都合が良すぎる話だ。

  ……いや、私は何を勝とうとしているのだ。相手を楽しませればそれでいいのだ。

  ならばこれ以上攻撃する必要は無い。最大攻撃でケリを着ける。

  そう思った私は剣に纏わせていた魔法を解除し、光魔法『光の剣』を発動し、空高く舞い上がる。

  この攻撃で手傷を負わせられればきっと楽しんで帰ってくれる。これで怒ったら……その時は皆に謝罪しよう。

  そして私は勢いよく真下──正確に言えば酒呑童子の左腕目掛け降下し剣を振り上げた。


「゛天地断絶撃(カオティックブレイク)゛!!」


  光の刃が酒呑童子に直撃し、この山4回目の爆発が発生した。

  この技は私の最強の技。死んではいないだろうが重症は免れない。

  そう判断し剣を下ろそうと──



  ボギュッ。



  不意にそんな音が私の腹部から聞こえ、確認する前に背中に強烈な痛みが生じる。

  視界には細かい岩の破片と、金色の破片──私の鎧の破片だった。


「──!? ────ぁアがッ……!!!!」


  腹部から内臓が飛び出たのではないかと錯覚する程の痛み。

  何だ? 何が起きた? 何をされた? いや、そもそもぶつかる壁なんて無いはず……

  ヘルムが壊れ明るくなった視界には80メートルは離れた酒呑童子とマイ達の姿。

  酒呑童子は握った右拳を前に翳している。

  つまり殴られた。たった一発殴られた。

  言葉にすればこれだけだがその威力はどんな言葉でも形容出来なかった。

  あまりの痛みに意識が刈り取られるその寸前。

  聞こえるはずのない距離で、酒呑童子の声が聞こえた気がした。








「──痒いな」

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