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異世界行って、騎士団長やります!   作者: 神崎冬花
鬼王降臨編
26/64

22話 山岳帯での決着。そして――

次の投稿は来年じゃなかったのかだって?

あれは嘘だ(ゴミボ)

 険しい山道を何台もの馬車が駆ける。

 山岳帯に入り、山の中枢まで馬車で昇ってきたが、流石に障害物が多くなってきたのでここからは徒歩で進むことにした。

 約200人もの兵士が進むには山道は狭く、どうしても行進速度が落ちる。

 後方部隊は補給物資を運んできているので尚更だ。

 が、ここは熟練された兵士達だ。

 先頭を歩く私とマイに遅れなく付いてきている。

 早朝に出発したが、途中休憩も入れても、まだ昼前だろう。

 この調子なら野宿の心配もなさそうであった。

 

 

 一時間が経過した。

 そろそろ山の頂上だろう。

 報告では今昇っている山からオーガの群れを発見したらしいので、そろそろ一体ぐらい見つかっても良いのだが……。

そう思った矢先に、岩山の奥に蠢く物体を発見した。

 真っ赤な体表を持つ人型の異形な化け物。

 頭頂部にはバラツキがあるが、角が生えており、ヒョウ柄の腰布を巻き付け、棘混紡を持ったオーガがおよそ100体近く。

 オーガロードらしき個体は見当たらないが、とりあえず発見された群れはこれで全てであろう。

 

「探す手間が省けたね」


 私の後ろでオーガの挙動を観察していたマイがポソリと呟く。


「一纏めになってるからかえって危険かもよ?」

「大丈夫じゃない? 見たところオーガロードはいないみたいだしさ」

「うーん、ならいいか。マイちゃん、今矢何本持ってる?」

「今持ってるのは50本くらいかな。後ろに行けばまだあるけど、とりあえずこの矢筒に入ってるのは50本かな。上手く当たれば一撃で倒せるよ」

「わかった。じゃあ安全面を考慮して40匹でお願い。私も40匹相手するから、後の20匹は兵士さん達に任せよう」

「りょーかーい」


 そこまで話し終え、私とマイは兵士達の方に向き直る。

 じっと音を立てないようにしゃがんでた兵士達にハンドサインを送る。

 

『まだ、気づかれていない、私と、マイが、40匹、相手する、貴方達は、20匹、お願い』


 戦闘訓練以外にも、指揮系統の練習があったのでハンドサインを手早く行えた。

 それに対する兵士達の反応は無言の首肯であった。

 

「マイちゃん、やって」

「行くよー!」


 マイは背中に掛けてあった、マイと同じくらいの大きさがありそう弓を取り出し、同じく普通の矢にしては巨大な矢を一本取り出した。

 矢を個定式の籐頭(とがしら)に掛け、弦を引き絞る。

 ギリギリ、と弦が絞られる音が響き、それに気づいた一体のオーガがこちらを振り向いた瞬間、オーガの脳天を矢が刺し貫いた。

 ドウ、と突然仲間が頭から血を流しながら倒れるのを呆然と眺めていたオーガ達に再び音速の攻撃が降り注ぐ。次々と仲間達が倒れていく状況をようやく認識したのか、オーガ達が叫びこちらに向かって突撃してくる。

 岩山に隠れていた兵士達も同時に突撃し、その場はそのまま乱闘となった。

 私も『天使の翼』を一瞬使い、オーガ達の後ろに降り立つ。

 それに気づいたオーガ数体が混紡を振り上げてくるが、『攻撃予測』の御陰で攻撃地点は丸見えであった。

 『加速』を使い軽々と躱し、一番近くにいたオーガの眼球にレイピアを突き出す。

 右目を押さえて蹲るオーガに立て続けに刺突を繰り返し、オーガはそのまま地面に伏した。

 2体目のオーガが再び混紡を振り上げるが、その後頭部に遠くから飛来した矢が突き刺さり絶命した。

 マイは驚くべき事に、全ての攻撃が相手の急所に命中しているのだ。

 これがマイのスキル『見識』。相手の弱点や情報を的確に見抜く能力である。

 上位者には通用しないが同格や格下には無類の強さを誇るスキルである。

 それでも本人の技術が無ければ宝の持ち腐れであるが、一発でオーガを仕留めるマイの弓術は神業であった。

 安全面を考慮して、とは言ったが、これは50匹倒せるのでは無かろうか。

 

《……警告》


 心の中で感心していたが、ナビ子さんの声で我に返った。

 目の前に迫り来る混紡。それは酷くゆっくりとして見えた。

 死を覚悟した走馬燈などでは無く、ナビ子さんが自動発動した『思考加速』である。

 その御陰で私はオーガの攻撃を易々と受け流せ、逆に反撃を喰らわせオーガは後ろに倒れた。

 ナビ子さんナイス、と心の中で感謝を述べつつ『加速』と『怪力』を使い、オーガ達の間をすり抜け、次々に手傷を負わせていく。

 殺せている訳ではないが、死角からの攻撃に動きが鈍ったオーガは兵士とマイの良い的であった。

 そのまま続けていると奥から猛スピードで近づいてくる巨体の姿が目に入った。

 そのオーガは頭だけでは無く、体の所々から天を指す角が生えており、体は古傷だらけ。

 両手には錆びだらけの棘混紡が握られており、歴戦の勇士の証明となっていた。

 間違いなく別格。オーガロードであろう。

 私は攻撃の手を止め、オーガロード目指して掛けてゆく。

 オーガロードは最初から私狙いだったのか、速度を緩めずに突進してくる。


「ウガアアァアァアッ‼」


 オーガロードは叫びながら混紡を交差させ振り下ろしてきた。

 大きく横に回避したが、先程まで私が立っていた場所は轟音をまき散らしながら大きく爆ぜた。

 石礫が鎧に当たり、カツン、と音を立てる。

 想像以上のパワーに内心冷や汗を流しながら連続の刺突攻撃を慣行する。

 普通のオーガと違い体表も硬いため、『怪力』を持ってしてもほんの切り傷を付けることしか出来ない。

 マイの弓矢攻撃でも、刺さりはしたが致命傷では無かった。

 このままじゃジリ貧。そう判断した私は『光の剣』を発動させる。

 大きく振りかぶり迫ってくる二つの混紡に光の剣を当てる。

 交差する剣と混紡の間に火花が走り、互いに硬直状態となる。

 が、それは一瞬で光の剣に負けた混紡は2本とも溶けたように折れた。

 剣は勢いそのままにオーガロードの体に大きな傷を作る。


「ガアアアアァアアアアァッ‼」


 オーガロードは大きくよろめき、尻餅を着く。

 そこに追い打ちを掛けるようにマイの攻撃が地面事オーガロードの両足に突き刺さり、その体を固定する。

 オーガロードとなれば一瞬で抜け出せるだろうが、その隙をついた私は『天使の翼』で高く飛翔する。

 雲に触れるまで飛んだ私は、そこから急降下を開始する。

 オーガロードに向け光の剣を大きく振りかぶり叫ぶ。


「“天地断絶撃(カオティックブレイク)”っ‼」


 光の剣はオーガロードを両断し、その輝きを霧散させ、再びレイピアへと戻る。

 オーガロードは視界が割れた事に訝しみその正体に気づくまもなく、その生に永遠の闇が降りた。

 一度飛翔しスタッ、と衝撃無く着地した私はいつの間にか近くまで来ていたマイに片腕を挙げた。


「お疲れー」

「おっつー」


 つい先程まで死闘を繰り広げていた場での言葉に相応しくないが、私とマイは手甲を外してハイタッチした。

 追随してオーガを討伐し終えた兵士達も歓声を上げ、戦友達と勝利を祝っている。

 


 山岳帯での戦いはこれで終了した――かに見えた。

 この場にいる誰も気づいていない。

 気づけなかった。

 遙か彼方から、超速で飛行してきている者――








 ――鬼王の存在に。





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