表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界行って、騎士団長やります!   作者: 神崎冬花
鬼王降臨編
25/64

21話 対 オークその2

お待たせしました。

いや、ホントにごめんなさい。

 マーガレットは決められた配置に素早く移動し、敵の姿を確認する。

 前方100メートル辺りに万と聳え立つ巨漢。

 猪と同系色の厚い毛皮を持ち、顔には豚の鼻。

 ゴブリンの3倍はあるであろう背丈と、横に大きく肥え太った腹。

 オークである。

 大半のオークの装備はボロボロで色褪せた腰布と錆びがへばり付いている長包丁。

 口からは異臭を放ち、ボタボタと涎を溢している。

 マーガレットはそんな姿に一瞬顔を顰めるも、聞き慣れた声が聞こえた。

 

「第1部隊、放て!」


 まったく動じずセレナはマーガレットのいる第1部隊に命令した。

 マーガレットは慌てて詠唱していた魔法を発動させた。

 横一列に並んだ200人の一流の魔道士達による一斉射撃。

 それぞれの魔道士達が持つ杖の鋒に紅い光りが煌々と輝いた。


「「「『爆炎大魔砲(クリムゾン・ドライブ)』‼」」」


 そして放たれるのは大口径の熱線砲。

 数千度の熱量を持った半径2メートルの円柱型の魔法。

 第4階位『爆炎大魔砲(クリムゾン・ドライブ)』。

 戦術級の魔法が200人同時に放たれたのだ。

 下級の魔物程度には勿体ない高火力であった。

 魔法に直撃したオークは悲鳴を上げることすら許されず、一瞬で溶かされ消滅した。

 魔法はそのまま勢いを緩めず、突き進んでいく。

 運良く当たらなかったオーク達も無事では無かった。

 当たらなくともこの魔法の周りの温度は数百度と高温であった。 

 死なぬとも、かなりのダメージを受けていた。

 魔法が通り過ぎた後の泥地はガラス状に物質変化し固まっていた。

 そのせいで身動きが取れなくなったオークが数名。

 たった一回の攻撃で1000匹以上のオークが戦闘不能になってしまった。

 だが、攻撃はこれで終わりではない。


「第1部隊後退。

 第2部隊前へ! 放て!」


 攻撃の手を緩める事無く、すぐさまセレナは声を上げた。

 マーガレット達第1部隊はすぐさま最後方に移動した。

 部隊は第10部隊まであり、全部隊が第4階位の魔法を保持している。

 撃ち終わったら後ろの部隊と交代し、息つく暇無く魔法を放つ。

 負ける事など有り得ない。仮に相手がドラゴンであったとしても、すぐさま討伐出来たであろう。

 アストレイト王国の四騎士団の一角の力であった。

 



「――第10部隊、放て!」


 そして、最後の部隊が魔法を放つ。

 結果は一目瞭然。圧倒的な数であったオークは今や100にも満たない程数を減らしていた。

 そこでようやく敵の首魁が姿を現した。

 体長6メートル程の高さの獣。

 オークロードである。

 他のオーク達は既に皆ボロボロであった。

 だが、オークロードだけは無傷であった。

 身に纏っているのは他のオークと違い骨で出来た鎧。

 右手に持つのは血がこびりついた両刃剣。

 左手にはオークロードと同程度の大きさの盾。

 盾には焦げた痕が全体に拡がっており、攻撃の凄まじさを見透せる。

 攻撃が止んだのを確認したオークロードは前に進み始めた。

 黄色く濁った目からは光が灯っておらず、知性が無いことが窺える。

 魔法兵団との距離は50メートル程。

 行進速度は極めて遅いが、魔法有効射程距離まで入るのにそう時間はかからないだろう。

 そう判断したセレナは再び前列に戻ってきた第1部隊に命令しようとし……。


いきなり前に進み出た兵士に目を見張り、思わず声を張り上げかけたが、その兵士――いや、騎士の鎧に見覚えがあったため、口を閉ざした。


「え? ちょっとレイスさん!?」


 マーガレットは何の前触れも無く進み出したレイスを止めようとしたが、セレナから待ったが入る。


「好きにやらせておけ。どうせ止めたって聞かんだろう」

「で、でも1人でなんて無茶です」

「まあ見ておけ。人の皮を被った怪物の実力を」


 そこまで言われればマーガレットは引き下がるしかない。

 それにレイスとオークロードの距離は後数メートルしかない。止めるだけ無駄であった。

 人は足を止め、獲物を見定める。


「へえー、流石にロードと言うべきことはあるな。久しぶりに本気が出せそうだぜ」


 レイスは煽るように笑う。

 オークロードは無言だが、返事の代わりに大剣を全力で振りかざした。

 必殺の大剣はレイスを両断し、その刀身を紅く染め上げる......ことなく、地面に突き刺さった。

 オークロードは困惑した。渾身の一撃は確かにレイスを切り裂いた。

 だがそれはレイスではなく、レイスの形をした幻であった。

 スキル『幻影』。かつてキノを惑わせたレイスのスキルだ。

 本物のレイスは既にオークロードの背中にまわっており、ハルバードを横なぎに振るった。

 ハルバードはオークロードの鎧を破壊し、僅かだが血を噴出させる。

 不意に背中から痛みを感じたオークロードは後ろに倒れ込んだ。

 危うく潰されかけたレイスは転んだ拍子に口の中に入った泥を吐き出す。


「ゲホゲホッ。危ねぇ、危うく圧死するとこだったぜ。面白れえ!」


 ハルバードと大剣が交差する。

 優勢なのはレイスだが決定打に欠ける。オークロードは防戦一方だが剣と盾で最初の一撃以外は上手く交わしている。

 互角の戦いであったが、時間の問題であろう。

 そう判断したセレナはマーガレットの方に振り返る。


「マーガレット。魔法の準備をしろ」

「......あ、はい! 第1階位ですか?」

「違う。第5階位だ」

「え、えええ!?」


 マーガレットは思わず叫んでしまった。

 それもそのはずマーガレットは第4階位までしか扱えず、第5階位はまだ習得していなかった。

 仮に成功したとしてもレイスを巻き込んでしまう可能性が高い。


「そ、そんな。無理です!」

「ほう......私の前で弱音を吐くとは。随分と偉くなったなマーガレットよ」

「え、あ」

「どうやら修行が足りなかったようだな。お前の力量に合わせて手加減していたんだが、どうやら要らぬ優しさだったようだ___」

「やらせて頂きます!」


 マーガレットはすぐさま魔法の詠唱に取りかかった。

 セレナが指定したのは第5階位の魔法。マーガレットが特訓中の位だ。

 成功回数は0。

 第5階位ともなると魔力暴走したときの被害は計り知れない。

 それを戦場で使うなど言語道断の極みであったが、セレナは至って真面目な顔で命令したのだ。

 高度に練り上げられる魔力。

 それに追随するように、杖の先に付いている宝石が爛々と紅く輝く。

 だが、マーガレットは限界間近であった。


(このままじゃ、暴発しちゃう!)


 マーガレットが焦ると共に、記憶の奥底から1つの情景が浮かび上がってきた。

 それは、マーガレットとキノが会ってから間もない日。

 マーガレットを鍛えると言ったキノだったが、当初はまったく進展がなかったのだ。

 落ち込んでいたマーガレットにキノが近づき、


『ええと、マーガレットってどういうイメージで魔法唱えてる?』

『えっ、普通に魔法の完成形をイメージしてるだけですけど……』

『マーガレットってさ、一手先のことを考えちゃってるんだよね。それより詠唱してる間はもっとこう、一言一言噛みしめて言うっていうか、簡単に言えば焦らず丁寧にやることが大切なんだよね。そうしたらもっと簡単に出来ると思うんだけど、どうかな?』


 その助言を聞き、マーガレットは少しずつ魔法の成功回数が上がってきたのだ。

 それを思い出し、マーガレットは深く深呼吸する。


(そうだ。焦らず丁寧にやるんだ。魔法が完璧になったあの頃のように!)


 マーガレットは瞑っていた瞼をカッ、と開いた。

 そして先程よりもゆっくりと、詠唱していく。

 だが、それでも少しずつ、魔法は完成に近づいてゆく。


「ほう、やれば出来るじゃないか」


 セレナは面白いとばかりに呟いた。

 そして最後の1文を唱え終えたマーガレットの周りには紅いオーラが迸り、凄まじい魔力が一点に集まっていく。

 キッ、とオークロードを睨み付け、杖を前に突き出す。

 オークロードの足下に複雑な魔方陣が描かれる。

 それに気づいたレイスはその場から退避した。

 不意に足下に描かれた魔方陣を訝しむように眺めていたオークロードはその危険性に気づくまもなく――


「『豪炎之牢獄(インフェルノ・ゲージ)』‼」


 マーガレットの魔法を許してしまった。

 瞬間、魔方陣の縁に幾つもの火柱が出現する。

 それはオークロードの身の丈まで昇り、空いていた上部を塞いだ。

 炎の牢獄に閉じ込められたオークロードは灼熱の熱波を喰らい、鎧事皮膚を爛れさせてゆく。

 この魔法は使用者が魔法を切るまで永遠に残り続け、対象を塵と化すまでその猛威を振るい続ける。

 悲痛の叫びを上げるオークロードは右手に持っていた大剣を振り上げ、マーガレットに投げつけた。

 炎を纏いながら超速で接近する大剣にマーガレットは反応出来ず、頭部に突き刺さる――

 

 ――その直前にレイスがマーガレットの前に割り込み、迫り来る大剣に向かい、


「『物体反射(カウンターミラー)』!」


 その声と共に出現した光の壁に剣が振れた瞬間――

 ――まったく同じ速度でオークロードに向かって跳ね返っていった。

 

「え、えぇえ⁉」


 マーガレットが思わず驚きの声を上げる。

 それはレイスの魔力『反射』による効果であった。

 迫り来る物体攻撃を無条件で跳ね返すという恐るべき能力であった。

 炎の大剣は主の元に一直線に向かい、その頭を貫いた。

 溢れ出る血は一瞬の内に蒸発し、オークロードはガクッ、と項垂れた。

 そして地獄の業火がオークロードを包み込み、やがてその場には何も残っては居なかった。



 豚の王は命を落とし、今、沼地での決着は付いたのである――


 

 

魔法兵団が強すぎてその2で終わってしまった……。

その3までやる予定だったのに……。



ブックマーク、ポイントよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ