表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界行って、騎士団長やります!   作者: 神崎冬花
鬼王降臨編
23/64

19話 対 ゴブリンその3

 ユーリは油断せずにゴブリンロードに斬りかかった。

 スキルは使用せず、純粋な力だけで攻撃した。

 “秘剣――風魔――”で使った魔力がまだ完全に回復しておらず、不用意に使えなかったのだ。

 それでも、騎士に相応しい威力と速度であった。

 だが、ゴブリンロードはユーリの攻撃を戦斧で難なく受け止め、逆にユーリを吹き飛ばした。

 兵士の包囲網の間をすり抜けて、木の幹に背中から勢いよく激突した。

 

「がっ――!」


 あまりの衝撃に一瞬息が止まり、視界がチカチカと点滅した。

 

(強いな。だが、ドラゴン程の威圧感は無い。

 厄介なのは、ドラゴンと違って知性があるということか…)


 ドラゴンに限らず、普通の魔物はほとんどが生存本能だけで生きている。

 住家を建てる程の技術も知識も無く、ただ生きる為に動いているのだ。

 だが、目の前のゴブリンロードは明確な知性がある。

 そして、スキルである『念話』も使える。

 ある意味ドラゴンよりも手強い相手だった。

 だが、そこで活躍したのはケレスだ。

 高速の突きを繰り出し、ゴブリンロードを翻弄している。

 ゴブリンロードの体に無数の切り傷が付いていく。

 それに顔を歪めたゴブリンロードは、一度距離を取った。

 すると瞬く間にゴブリンロードに付いた傷が次々に消えていった。


「なっ――⁉」

「ちっ、『自己再生』持ちか……厄介だな」


 ケレスは吹き飛ばされたユーリに顔を向ける。


「司令官殿! いつまで寝てるんだ。軍務を預かってる立場ならいつまでも休んでいるんじゃ無い‼」

「あ、ああ!」


 ユーリは慌てて跳ね起き、再びゴブリンロードに向かっていった。

 正面から向かっても適わない事は解っているので、無闇に攻撃することは止め、相手の出方を窺い、慎重に行動するようにした。

 ここで、初めてゴブリンロードが仕掛けてきた。

 巨大な戦斧をユーリを目掛け振り上げた。

 まともに斬り合っても自分が負けることは重々承知している。

 ユーリは最小限の動きでゴブリンロードの攻撃を躱す。

 戦斧は地面を抉り、ユーリの鎧に石礫が当たる。

 力は凄まじいが、スピードはキノの方が疾い。

 圧倒的だが、勝機はある。

 そう判断したユーリは相手の左脇腹に、移動と共に斬撃を繰り出す。

 ユーリの剣は軽々と脇腹を切り裂き、剣先には赤黒い血が付いている。

 そのまま数歩離れ、移動しながらゴブリンロードの動きを観察する。

 ゴブリンロードは戦斧をまるで小枝を振り回すかの如く、操っている。

 その力はまるで暴風の様で地面が次々に抉れ砂埃を起こしている。

 ケレスはその攻撃をくぐり抜け、逆にゴブリンロードに攻撃を与えている。

 だが、その攻撃は致命傷にはならず、傷が出来ていく所から回復――再生――していっている。事実、ユーリが付けた傷は既に治っている。

 互いに相手に有効打を与えられていない。

 先にそれに業を煮やしたのはゴブリンロードだった。

 

『グハハ!

 ヤルデハナイカ。

 デハ少シ本気ヲ見セテヤロウ!』


 頭にひび割れた声が響くのと同時に、ゴブリンロードの周りに青白い球体が無数に浮かび上がった。

 そしてその球体はゴブリンロードの中に入って行き、全てがゴブリンロードの中に入り終えた途端、変化が起きた。

 痩せこけたゴブリンロードの体にますます筋肉が付いていき、肩甲骨辺りから新たに2本の巨大な腕が生えてきた。

 魔力量も桁違いに増量し、もはや魔物の枠内を超え、先程までとは別格となっていた。


『ぐわはははははは‼

 どうだ? 

 これが儂のスキル『怨念』!

 この場には殺された儂の同胞の魂が漂っておる。

 その者共の怒りや憎しみが儂の力となったのだ!

 さあ、ここからが真の戦いだ‼』


 『念話』の効力も強烈になり、ひび割れた声はクリアになっていた。

 その場にいた者はその魔力量に大半の者が気絶した。

 辛うじて意識を保った者も、立つことすらままならなくなっていた。

 唯一スキル保持者であるユーリとケレスは動けていたが、その力に脂汗を流していた。


「ふむ。これは少し想定外だったな。全く、団長はどこまで見通していたのやら……」


 ケレスが溜め息を吐くも、ユーリにとっては楽観視出来ずにいた。


(何だ、この魔力量は! ドラゴンと同等か、それ以上の。この場にケレス殿が居なければ我々はとっくに全滅していた。だが、こんな化け物どうやって倒す?)


 ユーリが内心葛藤していると、ケレスが『念話』を放ってきた。


『おい、司令官殿。聞こえるか。聞こえたら返事をくれ』

『え、あ、ああ。聞こえているぞ。何だ?』

『想像以上に強くなったから作戦変更だ。私が奴を相手する』

『なっ⁉ 一人であの化け物を倒すつもりか⁉』

『勘違いするな。時間稼ぎをするだけだ。その隙に貴殿がスキルを用いて倒せ』

『は、はあ⁉ い、嫌無理だ! 私は今魔力がほとんど残っていないのだぞ?』

『なんとかしろ。期待しているぞ司令官殿』

『ちょっ、待っ⁉』


 ユーリの返事も待たずにケレスはさっさと『念話』を切り、ゴブリンロードに向かっていった。

 

(まったく。どっちが司令官か解らんな)


 ユーリは小さく微苦笑し、残り少ない魔力を強く練り上げた。

 その間にも視線の先では激闘を繰り広げていた。

 先程とは比べものにもならない程のパワーと速度。

 今のゴブリンロードはキノでさえも勝てるかどうか解らない相手となっていた。

 そんな化け物に、軽々と応対しているケレスは何なのだろうか――ユーリは頭の中でそう思った。

 相手が強くなったにも関わらず、相手に傷を負わせている。

 この世には人の枠組みを外れた人間は何人も存在している。

 ユーリもその一人なのだが、その力量には天と地程の格差があった。

 その事を嘆きつつもユーリは嬉しく思った。


(まだ私は強くなれる。長い時間を掛けてでも、絶対にこの世界の強者の一角となろう‼)


 強い信念と共に、ユーリの魔力量は上昇した。

 この世界の魔力は己の素質。そして想いの強さが反映するのだ。先程までのユーリの限界魔力量の2倍程となり、スキルを発動するまでの魔力を得た。

 ユーリの魔力が上がった事に気づいたケレスは空高く飛翔した。

 ゴブリンロードはそれを追おうとするも、一瞬ユーリに気を取られ、足を止めた。

 それを見逃すユーリではない。

 ユーリは渾身の力を込めた一撃を一直線上に振り下ろした。


「“秘剣――風魔――”ッ‼」


 剣から巨大な風刃が出現し、凄まじい速さでゴブリンロード目掛けて駆けていった。

 ゴブリンロードは慌てて回避しようとするも、間に合わずに体の左半分を切り裂かれた。


「ぐああああぁあああぁ‼」


 『念話』ではないゴブリンロードの叫びは森中に響き渡った。

 ドゥ、と音を立てながらその巨体は地面に崩れ落ちた。

 こんどこそ魔力を使い果たしたユーリは地面に膝を付き、ゴブリンロードを見つめていた。

 その隣にケレスがストッ、と着地し、ユーリに手を差し出した。


「見事だったぞ、司令官――いや、ユーリ殿」

「あんたが言うと皮肉にしか聞こえないな……」


 ユーリはケレスの手を取り、力無く立ち上がった。

 そして何も言わずに甲高くハイタッチをした。

 それを見た兵士達は一瞬の沈黙の後、大きな歓声を上げた。

 勝利という文字を頭の中に思い浮かばせ、思い思い言葉を挙げていた。

 それを遮ったのはゴブリンロードの笑い声だった。


「ぐ、クく。

 やルではナいカ、人族よ。

 儂の負ケだな」


 息も絶え耐えに、ゴブリンロードは賞賛の言葉を掛ける。

 誰もが押し黙った後、動いたのはユーリだ。


「お前も凄まじく強かった。私一人では間違いなく勝てなかっただろう」

「フっ。

 今はどうカ解ラんがナ」

「お前に聞きたいことがる。なんでゴブリンの軍勢を率いていたんだ? 我等を襲うつもりでは無かったんだろう?」

「ああ。

 それ二は理由ガある。

 ソれは……」

「帝国、だろう?」


 そう問いかけたのはケレスだ。

 ゴブリンロードは再び小さく笑った。


「くクく。

 やはリ貴様にはバレていタか。

 そノ通リだ。

 最近帝国が軍事活動をしてルようでナ。

 対策を立ててオッタ所ナのダ」

「そうか。済まなかったな。あんたらは私達にとっては脅威なんだ。討伐させてもらった」

「ヨイ。

 解ってオル。

 儂等ハソウ言ウ運命ジャ。

 ……モウ儂ハ長クナイ。

 オ主等二伝エナケレバナラン事ガアル……」

「オークとオーガの事か?」

「ソレモアル……。

 ダガ、警戒スベキハソコデハナイ……」

「じゃあ何だ?」


 ゴブリンロードはそこで一息吐き、


()()二注意セヨ――」


 そこでゴブリンロードは息を引き取った。

 その遺体は端から光りの粒となり、空に消えていった。


「魔物とは思えなかったな……」

「そうだな」


 ユーリとケレス、その場に居た兵士達は光りの粒を最後まで見届けていた――

 

 






 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ