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異世界行って、騎士団長やります!   作者: 神崎冬花
騎士就任編
17/64

13話 洗礼

「少し脅しすぎではありませんか?」


 前を歩くハンスにそう問うのは、副団長であるケレスだ。

 小柄ではあるが、その実力はまさしく一騎当千である。

 ハンスは顔だけをケレスに向ける。


「ドラゴン如きで自分は強いと思われると面倒だからな。それにお前も解っているんだろう? もうすぐ“聖戦”が始まるってな」

「…そうですが」


 ケレスは痛いところを突かれたとばかりに渋面を作る。

 キノは決して弱くない。

 ケレスはもちろん、あの場にいた者はキノの実力に少なからず驚いていた。

 15歳という若さでドラゴンを討伐したというのは今まで聞いたことがなかったからだ。

 だからケレスを始め、他2人の騎士は少し脅しすぎだと思ったのだ。

 だが、聖戦という言葉を聞いては、キノでは実力不足だとケレスは思い至ったのだ。

 キノは強い。故に挫折を知ることになる。

 強者だからこそハンス達の強さを正しく看破したのだ。いや、してしまったのだ。

 圧倒的なまでの格の差。

 2名の騎士はまだしも、ハンスとケレスだけにはどう転んでも勝てないと理解し、絶望した。

 ドラゴンを倒した程度で自分は強者だと思っているのならば、この先戦えないだろう。ハンスはそう判断し、キノに現実を教えたのだ。

 厳しいように見えて、あれはハンスなりの激励だったのだ。


「確かに、末端兵ならまだしも、軍団長クラスとなると厳しいかもしれませんね」

「だろ? 聖戦まで、恐らくあと2年も残っちゃいない。この2年でどれほど成長するか見物だな」


 






 キノは運が悪かった。最悪な時期に異世界から()()()()()()()()のだ。

 ドラゴンなど虫けら以下の存在であると、嘲笑うかのように世界は動き出す。

 運命は、混沌と絶望に渦巻く世界をゆっくりと創り上げているのだった。




△▼△▼△▼




 一体どれぐらいそうしていたのだろうか。

 涙は自然と止まっており、体中から流れていた汗は納まっていた。

 現実を知った。

 ドラゴンを倒したぐらいで粋がっていた自分が嫌になる。

 ハンス。強い。あれが人一人に納まる力なのかと疑ってしまうほどだった。

 

「ふぅ…」

「大丈夫?」

「あ、はい。なんとか…」


 いる。


「わあああぁああ‼」

「きゃあああぁあ⁉」


 そこにいたのは先程退出していった女騎士だった。

 訓練室に行ったのかと思っていたのだが、どうやら私が心配で戻ってきてくれたらしい。

 私が急に叫んだから驚いたのか、同じく絶叫しながら床に座り込んでしまった。


「び、びびびびびっくりしたぁ! 急に叫ばないでよ!」

「あ。ご、ごめんなさい…。私1人だと思ってたので…」

「いや、なにも言わなかったワタシも悪いし…」


 女騎士は立ち上がり、フルフェイス型の兜に手をかけ、カチッという音と共に兜を持ち上げた。

 そこに現れたのは、まだ少女と言って良い顔立ちの美少女だった。

 濃い蒼色に黒色を少量足したような短く揃えた髪。曇り一つない大きな水色の瞳。餅のようにふっくらした頬。それは同じ女である私でも多少ときめいたのは認めなければならない。

 

「ワタシの名前はマイ。先輩…って言っても、キノちゃんより少し速く来たぐらいだから、適当にマイでもマイちゃんでもいいよ!」


 ニコリと、幼さが残る顔に満面の笑みを浮かべながらマイは私に手を差し出してきた。


「は、はい。よろしくお願いします。マ、マイ…さん?」

「うぅーん。まあそれでもいいか。ヨロシクね、キノのん!」


 さん付けが微妙に気に入らない様子だったが幸いにも了承してくれ、いきなりあだ名呼びをされた。

 友達がいなかった私にとっては初めてのあだ名呼びだったので何だかむず痒い様な、嬉しいような、そんな気持ちになった。


「それにしても団長ってばひどいよね! あんなに脅さなくても良かったのに」

「あ、あはは…」


 マイがハンスを批判するが、私はあれはハンスなりの激励だったのではと思う。

 強烈なプレッシャを放ってはいたが、その目は至って穏やかだった。

 現にさっきまでは怯えていたが、今はもうなんともない。


「マイ…さん。訓練室ってどこ…ですか?」

「え、行くの? 体調が優れないならワタシが団長に言ってきても良いけど…」

「いえ、行きたいんです。ここで折れるぐらいだったらこの騎士団の足手まといになってしまうので」

「…解った。付いてきて」


 マイは一瞬迷い、訓練室へと案内してくれた。

 そう。この程度で折れるくらいならば私はこの騎士団に相応しくない。

 そうじゃなければ、あの子に顔向けができな…






 …()()()って誰のことだろう?




▼△▼△▼△




「お、やっときたな。遅かったじゃないか」


 訓練室で待っていたハンスは私を見るなりニヤリと口角を上げた。


「すいません。遅くなりました」


 ハンスに平謝りをしながら辺りを見回す。

 広い。ギルドにも訓練室があったがここまで広くなかった。

 それに、いくつもの武器が立てかけられている。この施設だけで何シルかかったのだろうか。

 そう考えているとハンスはゴホンと咳払いをし、私は意識をハンスへと向ける。


「さっきも言ったとおり、嬢ちゃんと行動する班員を紹介する。

まず副団長でもあるケレス。使う武器はランスだな。

次にレイス。ハルバード使いだ。女好きな奴だから気をつけろよ。

んでマイ。弓使い。以上」

「団長俺は別に女好きって訳じゃないぞ⁉」

「団長ワタシの説明なんか適当じゃない⁉ さっきからワタシの扱いが不当なんだけど‼」

「やかましい‼ 文句があるならオレに勝ってからにするんだな!」

「言ったな! 今日こそ負かしてやる‼」

「負けても言い訳しないでよね!」

「ちょっ! 2対1は卑怯だぞお前等‼」

「3人共、キノさんが戸惑ってるので喧嘩は後にしてください…」


 危うく喧嘩になりそうな所をケレスが溜め息を吐きながら止めていた。

 新人がいるのに喧嘩するとは、本当に自由なんだなと再認識した。


「すまんすまん。こいつらは後で叱っとくから許してやってほしい」

「団長も後で説教ですよ?」

「…さ、さあ早速本題に入ろう! オレが確認したいのは嬢ちゃんの実力だ」


 何事もなかったかのように話しを進めるハンスだが気になるところがあった。


「私の実力?」

「そうだ。ドラゴンを倒したと言っても、実際の戦闘を見ていないからな。レイスと戦ってほしいんだよ」

「え、俺が?」

「ああ、ケレスは強すぎるし、マイは弓使いだから相性が悪い。必然的にお前しかいないんだよ。それで嬢ちゃん、レイスと戦ってほしいんだが、いいか?」


 私は一瞬迷った。

 レイスは少なからずスキル持ちだからだ。

 ひょっとしたら負けるかもしれないし、さらに今はいつもの鎧を着ていない。

 勝てるかと問われれば、解らないとしか答えられない。

 

 だが、戦いたい。今の私の全力を出せる相手だからだ。

 ――勝ちたい。

 

 私はハンス大きく頷き答えた。


「やります!」




△▼△▼△▼



「ルールは単純。相手に参ったと言わせるか気絶させた方が勝者となる。では始め!」


 ハンスの一言で私達は互いに動いた。

 今私が着ているのは動きやすさを重視した訓練室に置いてあった鎧だ。

 いつもの鎧よりも少し重く動きづらいが、行動に支障はない。

 

 レイスはハルバードを大きく振り上げ、私を叩き潰すべく、凄まじい速度で振り下ろしてきた。

 視界に映った『攻撃予測』のリングが私の右肩に差し掛かった。

 『思考加速』と『加速』を併用し、攻撃範囲から最小限の動きで離脱し、レイスの右腹にレイピアを突き出した。

 私のレイピアはレイスの右腹に突き刺さった…

 …かのように見えた。貫いた感触がない。レイスをよく見れば微かに透けている。

 これは――


《スキル『幻影』です。幻影を残し個体名:キノの攻撃を避けたと思われます》


 ――スキル。初めて見る私が持っているスキル以外のスキル。

 幻影か、道理で感触がないわけだ。

 じゃあ、レイスは、と言えば…

 その瞬間固有スキルの『天使の翼』の気配察知が働き、私は咄嗟にその場から跳躍した。

 跳ぶのとほぼ同時に私がいた位置に凄まじい破壊力を持った剣戟が降ってきた。

 ハルバードの斬撃が床に当たり、床が大破した。

 もし喰らっていたら『強靱』があったとしてもただではすまなかっただろう。

 

 余力を残している暇などない!

 

 そう判断した私は『天使の翼』と光魔法『光の剣』を発動させた。

 私の背から翼が生えたことにレイスは驚き、一瞬動きを止めた。

 私はその隙を逃さず、大剣を振り上げ、


「“天地断絶撃(カオティックブレイク)”‼」


 レイスに向かい思い切り振り下ろした――






 ――瞬間発動させていたスキルが全て途切れた。


《…⁉》


 常時発動型の『怪力』、『加速』、『強靱』まで消え、今まで感じなかった鎧の重さが私を襲った。

 一体何が⁉ そう思い辺りを見回すと、いつの間にかハンスが目の前に来ていた。

 

「そこまで。この勝負引き分けだ」

「な、何故です?」

「あのまま続けていたら死んでいたからだ」

「で、でも…」

「あぁ、勘違いするな」

「…え?」


 ハンスは私の目を見て、












「あのまま戦っていたら死んでいたのはお前さんだ」

「…ぇ?」


 意味が解らない。あのまま戦っていたら勝っていたのは間違いなく私だったはず。

 動揺しているとハンスはレイスへと目を向け。


「レイス。お前『反射』を使おうとしたな」

「…すいません。必死だったもので…」

「『反射』?」


 思わず呟くとハンスは独り言のように。


「レイスには『幻影』以外にも『反射』っていうスキルがある。このスキルは自分に向かう致死の攻撃を一度だけ全て反射出来る技だ。レイスはそれを使おうとしたんだよ」

「…そんな」


 つまりあのまま続けていたら私は今頃、死――


「まあ、結果はどうあれ、嬢ちゃんの強さは解った。訓練を積めば更に強くなる。今日はもう疲れただろうし、今日は解散だ。ゆっくり休めよ!」


 そう言ってハンスは出て行った。

 私は絶句していた。

 あのまま戦っていたら私が死んでいた――












 ――所ではなく。

 私のスキルを全て無力化したハンスに驚愕していた。

 『光の剣』ならともかく、『天使の翼』どころか常時発動型の3つのスキルさえも無力化してみせたのだ。

 私は戦慄し、同時にハンスに恐怖していた。


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