第156話 ハードゲーマー・ネロア
満月家のリビングには、半年前くらい発売の、どちらかというと大型のテレビがある。この家にあるのは、この一台だけ。
これを譲り合って使うのが、一家の暗黙のルールだ。
観たい番組などを賭けた激しい取り合い(※第11話参照)があったのは過去の話。
最近ではサブスクや動画サイトの存在もあって、各々のスマホで観たいものを観られるので、そこまでのことはもう起こらなくなった。
一部の人のテレビ利用時間が定まっているのも、この平和に一役買っている。
例えば、月曜日のだいたい午後六時半からおおよそ午後八時半まで。
この時間はネロアがテレビを使う。リビングでゲームをするための時間だ。
この日やっているのは『CHIZAKURA2』。
ゲーマーたちを地獄に追いやった和風死にゲーの続編。
前作の後半に一段上の強大なボスとして登場した妖怪をテーマとしている。
敵の強化もさることながら、プレイヤー自身も妖怪の力を使えるというのが本作最大の変更点だ。
これによって、相手の大技をただ見切るだけでなく、逆に大ダメージを与えて反撃するという、死にゲーらしからぬアグレッシブなゲーム性を生み出すことに成功した。
これを十月末頃に買ったネロアは、かれこれ一週間ほどでクリアし、現在は二周目に突入していた。
「ほんとよくそれやってられるよね、ネロア」
と、ネロアが真剣にプレイしている後ろで、マジナはソファに寝っ転がりつつ言った。
ボスの攻撃の音、回避モーションの音、自キャラの攻撃の音……このローテンションが数回リビングに響いた後、疲弊したボスへの強烈な一撃が炸裂し、和風なファンファーレが鳴る。
「面白いですよ? やります?」
そしてネロアはコントローラーをひょいと背後に突き出し、マジナに問いかけた。
「やらないよ」
まるでボスと事前リハーサルをしていたように、威力も範囲も理不尽なボスの強烈な攻撃をほとんど回避し、開発側が想定していた敵行動の間隙を無駄無く突く様……
自分も反射神経は非常にいい方だと自負しているが、あそこまでは出来ない。
だからマジナはネロアのコントローラーに触れなかった。
……というのは気持ち上の建前で、実情としては、
(あんな仕打ち受けて楽しいわけないでしょ)
と、心の中で激しく首を振っていた。
「というより、こっちはもうやらないんだ?」
と、横からしゃしゃり出てきたピコリが、『END EDEN』のパッケージをネロアに見せる。
本作も理不尽な敵配置やボスで話題の死にゲー。こちらはオープンワールドのダークファンタジー風の世界観を持つ。
「こっちのほうが今、ゲーム界隈だと熱いらしいよ? 未だにあっちこっちの配信者がやってるし」
ネロアはコントローラーを持ち直し次のステージを選択した。
そのロード中にネロアは言った。
「それもいいですけど……今はこっちのほうが僕は好きです」
「やっぱ二週間前に発売されたやつだから?」
「ですね。あと、『END EDEN』は裏ボスまで全員倒してしまいましたから」
「「でしょうね!!」」
ネロアは異世界『アンド・ロジスティクス』に転生していた頃、そこで流行しているVRMMOゲーム『ロジスティクス・サーガ』で、トップクラスのプレイヤーとして君臨していた。
世間一般では鬼激ムズとされるゲームも、彼女にとっては鬼と激の字が取れてしまうのだ。
*
翌日――火曜日の昼休み。
ネロアとマジナは学食に行き、二人でテーブルを挟んだ。
ネロアが麻婆丼、マジナがオムライスを注文して持ってきている。
「それでさ、今作ろうとしてるそれに、ちょい古めのカードが合いそうだと思って、あれこれストレージを探して回ってるんだけど……」
「はい、そうですか、はい」
お互いの料理を食べながら、そうした他愛のない話をする。
と、
「薬莢のほうがまだ溶かして使えるぜ、こんなのッ!」
「アーハッハッハーッ! おい誰かカメラ持ってねぇか! ウヒャヒャ!」
昼休みは人がごった返し騒がしくなる学食の中でも、看過できないほどうるさい男子二人が、隣のテーブルに座っていた。
二人の声のトーンもあって、マジナは運悪くマナーの悪い卓が頻発したカードゲームのショップ大会のことを思い出した。
しかし無関係の人にキレるのは、それはそれでヤバいヤツだと思われる。これもショップ大会の経験だ。
「ストレージって数十円のカードをろくに整理しないで……」
「おやおや、心外にも良質なラーメンじゃないかこれは。中にベアリングローラーメンマが入っていることを除けばねぇぇぇ!」
「……詰めてるわけだから、全部めくってみなきゃ……」
「オイ見ろ新兵ども! メンチカツの中身が半端なゴミ埋め立て地みたいだぜ! ゲヘヘヘヘ!」
「……わからないから全部見なきゃいけないの……」
「「とにかく我が社だけが運営されていればよいのだ!!」」
「……そしたら足音もなく知らないおじさんが横に立ってて、私にこういったんだ……」
「「やっぱ『RH』おもしれーなぁ! ギャハハハッ!!」」
「……ちょーっともう少し静かにしてくれないかなあ君たち!?」
と、隣のテーブルに向かって叫びつつ、マジナは目を三角にして立ち上がった。
それに合わせてネロアも立った。
突然の横槍に、横の男子二人はあたふたして返す。
「わっ、はにっ!? どしたん!?」
「おおおおれたち、どうにかなりました?」
そして謎に、二人も立ち上がった。
マジナは気にせず続ける。
「こんだけうるさいところなら自分たちもいいかなーっとは思いたくなる気持ちもわからなくもないけどね、やりすぎは禁物って自覚を持っておくれよ」
「そうだ。二人とも。マジナ姉上がこの世の真理を説いている刻だったのだぞ」
これはネロアの変なクセ、時折厨二病じみた台詞が混じることである。
何やら元いた異世界で、威厳を出すために演じていたキャラだが、そんなことしなくてもいい、こののどかな世界でも、たびたび意味不明なタイミングでオンオフが切り替わるのだ。
「うす、すいません……」
「は、はい……」
二人はその辺は気にせず、ペコリと頭を下げた。
「というより、君たち、あそこまで騒ぐ必要あった? ただご飯食べてるだけだよね?」
「何やら『ベアリングローラー』とか『新兵』とか聞こえましたが……流行りのロボットアニメですか?」
二人は顔を上げ、反射的に訴える。
「アニメじゃないです! ゲームです!」
「え、知らないんですか!? 『レアメタル・ハート』ですよ!?」
「『レア……」
「……アメタル・ハート』ですか。それはどういうゲームですか?」
「……私と地味にタイミングズレたね、ネロア」
ゲーム好きのネロアは、この初耳の重厚なタイトルに興味津々だった。
彼女の目の輝きを察知し、仲間に引き込めるかもしれないと邪知した二人は、饒舌に語る。
「ほら、よくネットで見るじゃないですか! 『魂が武装したがってるんだ』ってフレーズ! あの元ネタですよあれ!」
「ものすごくハードなSFの世界のゲームなんですよこれ!
まず南極と北極の氷が全部溶けて、そこから未知のエネルギーとウイルスが発見されます。
そのせいで国家が消滅したり戦争したりして、製薬会社と武器製造会社とかの大企業十二社が地球を分割統治するようになるんです!」
「他にもメチャクチャ名台詞が出てきてるんですよ! さっき改変してたんですけど、『新本社ビルが半端なゴミ埋め立て地みたいだぜ!』とか」
「そのうちの『エクストリーム・コーポ』って総合企業がものすごい悪いやつで……!」
十二分後。
「要するに、『ロボットをカスタムして戦うゲーム』ということでしょうか?」
「「そうですそうです! はい!」」
男子二人は声を揃えて、三角形の残る一角に座ったネロアに言った。
(君は本当に優しいね……あんな支離滅裂な解説をキチンと聞き届けるなんて)
と、マジナは三人の様子を横目にして思った。
元いたテーブルに一人座り、オムライスも完食し、さっきの騒がれた怒りすらも冷めている。
「して、これは面白いんですか!?」
「あ、はい、なんかクソ難しいですけど、ストーリー面白いですよ!」
「すげえよく観てるライバーとかもいっぱいプレイしてるんで! はい!」
「わかりました! 覚えておきます! 今日はありがとうございました!」
「あざす! ありがとうございます!」
「これでまた開発会社が潤う……」
そしてネロアはマジナのいるテーブルに椅子を戻し、
「それで、ストレージを探してたらどうなったんですか? マジナお姉さん?」
「よくこんな切り替えできるよね、ネロア」
*
五時半頃。
部活を終えて帰宅したネロアは、すぐにリビングにあるゲーム機『BC5』を起動した。
ほぼ同じ時間に帰ってきていたサバキが、ダイニングテーブルから声をかける。
「すまないがネロア殿。ゲームは今はやめてくれないか。今日は七時半以降なら空いているはずだろうからそちらで頼む」
「ああ、すみません。ほんの数分だけ、触らせてもよろしいですか? 本当に数分で終わらせますから」
「わかった。本当に数分で頼むぞ」
ネロアはゲーム機のメーカーが提供しているオンラインサイトを開き、そこで『レアメタル・ハート』のページに行く。
奇遇にも、今RHがオンラインで四割引されていたのだ。
これを学校にいた時に知ったネロアは、帰り道に買ったプリペイドカードを入力して残高をチャージし、そして購入ボタンをプッシュ。
あとはBC5を起動さえしていれば、勝手に本体にダウンロードされる。
ネロアはテレビを、本来のテレビ画面に戻して、サバキにリモコンを渡した。
「はい、お待たせしました。どうぞ、サバキお姉さん」
「三分で終わったな……感謝する。だが、別にリモコンまでこちらによこさなくてもよかったのだが」
この後、ネロアは姉妹たちと一緒に夕ご飯を食べ、お風呂などを済ませ、七時半を迎えた。
テレビの表示をゲーム機側に変えると、無事、ホーム画面にRHのアイコンが表示されている。
ネロアはクッションを敷いて床に座り、コントローラーを持ち、ついにソフトを起動する。
「本当にやるんだね……ネロア」
ソファに座っていたマジナは、一周回って呆れてつぶやいた。
「あ、ネロアがRHやってる。急にどったの?」
ついでに、風呂上がりのピコリも、ソファに座って言った。
ちなみにややお伝えするのを忘れてしまったが、他の姉妹や母親のチヨは、二階でそれぞれのことをしている。
ネロアのゲーム時間が嫌われるとかそういうわけではなく、偶然である。マジで。
「なんか学食でお昼食べてたら、横にいたうるさい男子がいてさ、それを注意したら、ネロアがその話にハマって、で、おすすめされたこれを買ったと」
「なるほど。これは一年前のソフトだけど、未だに盛り上がってるからね」
同じ会社が大作『END EDEN』を発売した後、人気はそちらへと持っていかれた。
しかし、『END EDEN』をクリアした配信者などがその人気にあやかって、一年戻ってこちらに触れ始めたことで人気は再燃し、今は二作横並びでその会社の最新作として売れているらしい。
と、ピコリは、あの二人が説明してなかった部分を補足した。
「あの二人、こういう主軸に迫ったことも教えてくれたらよかったのに。途中から流し聞きだったけど、あからさまに豆知識的な話しかしてなかったじゃないか……」
「まあまあ、そこはファン特有の過剰熱だとして……」
マジナとピコリは、ネロアのプレイ画面を見る。
チュートリアルを兼ねたストーリー冒頭のところで、今はちょうど、このゲームの核となるロボットのカスタマイズの画面だった。
まだ出だしということで、使えるパーツはあまりなく、軽量・中量・重量の三パターンに組める程度しかない。
その中でネロアはパッパと中量の武装を選択した。
「あんまりカスタマイズを楽しんでないようだね、ネロア」
「はい。まだそれをしていい時じゃないかと思いまして。まだゲームに慣れる段階ですから、操作のしやすさと安定感を重視したロボットが最適かと思いまして。
パーツカスタマイズはある程度種類が揃ってからのほうが楽しいでしょうし」
些細なつぶやきを拾ったこと。あまりにもプレイヤー目線で現実的判断を取ったこと。
この二つの意味で、マジナはネロアの感性に驚いた。
(でしょうね)
ピコリは、いつものネロアの変人気質が出たと思い、特にリアクションはとらなかった。
カスタマイズ終了後、チュートリアル特有の強制進行はなくなり、自由に行動ができるようになった。
ここからネロアは一気にテンポを上げてストーリーを進めていった。
次々と無人機を掃除していった後、画面上には無骨な武装ヘリが飛んでいた。
ピコリは指を画面に向けて言った。
「出た! 初心者卒業試験!」
隣のマジナは尋ねる。
「卒業試験……?」
「うん。これネットで見た。最初の中ボスとしては強過ぎるって話題になってたらしいよ」
一見すると、主人公が使うロボットと同じくらいのサイズの、ギリギリ現実にもいそうな武装ヘリだ。
ここで問題となるのは、SF仕様に改造された、ヘリとは思えない異様な機動力と小回りの良さ。
空に浮くブースターのゲージを大きく消耗しないと届かない距離に常にとどまり、チョロチョロ場所を変えて、火力の雨を撒き散らす。
これになす術無く蜂の巣にされて死んだプレイヤーは数知れず。まさに初心者卒業試験の風格を漂わせるボスだ。
実際、画面にはあのヘリの質量に合わないような武装の連射が降り注ぐ様が映っていた。
これを死神ネロアがどう攻略するか――マジナは固唾を飲んで見守る。
「ははあ、こういう遠距離特化の敵は……このパターンを試してみましょうか」
ネロアはブースターを操作し、思い切り宙へ舞い上がった。
そしてヘリと同じ高度へ到達し、そこで前後左右に動き回るヘリを追い回す。
このハエじみた機敏な動きにもネロアは食らいつき、間合いに入るたびに剣を振りかざした。
するとヘリの武装が徐々に崩れ去り、動きが鈍る。近距離への対抗手段も失われていく。
敵のHPが五割を切ったあとは楽勝だった。タコ殴りで危うげ無く勝利し、ネロアは海へと落下するヘリのムービーを見届けた。
「まさかの一回で卒業試験終了とは、やはりやるねぇ、ネロアは」
「お見事! まるで攻略動画を見てるみたいでした!」
ソファの二人は拍手を送り、ネロアは一旦振り向いて、はにかんでみせた。
ただし内心はまだ笑っていない。
(今日までには、あの『社歌シンガー』というボスを倒してみたいですからね)
あの二人は昼休みに、執拗に話していた。
『最初のチャプターの、社歌シンガーってボスが超絶おもしろいんですよこれが!』
『ここだけはぜひ覚えて下さい! 絶対ゲーム史に残るボスですから!』
言われた通り、ネロアはそれを覚えていた。そして楽しみにしていた。
(ゲームに残るボス。どれだけ歯ごたえがあるか……)
ここまでの道中でも、実際に巨大ロボを操作するかのような重たい操作感もあり、ネロアとしてもやり甲斐のある難易度だった。
果たしてそんな作品の大ボスは、どれだけの壁となるのか。
ネロアは胸を躍らせて、道中の雑魚機を蹴散らしていく。
午後八時十五分――あと十五分ほどでゲームをやめなければならない、焦りを誘う時間に、ストーリームービーが流れた。
主人公機の前にあった廃墟ビルが縦に割れる。
まるで孵化したように現れたそれは、ビルの全高の倍ほどある、巨大ロボットだった。
『ご覧ください! 『フェニックス・インダストリアル』の余命を削って建造した新製品を! 必ずや! 我が社の名に恥じぬよう、不死鳥の如く蘇らせて見せましょう!』
フェニックス・インダストリアルの営業部長が駆る、『モダン・ティタノマキア』である。
主人公機が人形のようにも見えるほどの体格差のあるそれが、ムービーからシームレスに襲いかかった。
(全高からして、最高出力でブースターを飛ばしても、腰までしかいけないでしょうから、まずは脚部を崩すのでしょう)
ネロアは先ほどのヘリの比ではない、カーテンのように降り注ぐ弾幕を的確にかいくぐり、脚部にダメージを与えていく。
するとネロアの読み通り、敵機は片膝をついて、その場から動かなくなった。
だが上半身は問題なく動いている。最初から使っていた重火器を振り撒くのはもちろん、両腕をブンブン振り回したりして、第二ラウンドを続行した。
『おのれぃ……! 士気を上げるぞ! スピーカー作動!』
このタイミングで、BGMに変化が現れた。大企業らしい荘厳な詞と曲調の、社歌と思しきものが流れ始めた。
これに合わせて時折、ひときわ強烈な攻撃とともに、ティタノマキアの内部にいる営業部長が、印象的な歌詞を合いの手めいて叫んだ。
「そう、これが社歌シンガーのあだ名の由来だよ、マジナ姉さん」
「はは、なるほど……これは確かに印象的だね。けど」
ネロアは真面目な表情のまま、敵の大技を避けて、道中集めていた武装を交換・駆使してダメージを与えた。
ネロアは、このボスのゲーム上の役割が、『武装の種類の使い分け』と見抜いていた。
敵が社歌へ合いの手を入れるのは、大技への合図であり、それがどの技かを見破り、適切な武器で反撃する。
それを初見で実行して、ネロアは攻撃を刻みまくった。
残りHPが一割となったところで、BGMが元通りになる。
これは敵機の崩壊寸前の表現の一つ。画面内の敵機も、子どもの駄々こねのような技とも呼べない技ばかり繰り出すようになった。
パターンがないため、読みづらくはなったが、
元の世界で数々の死線を乗り切ったネロアにとっては大したことはない。
安全圏から遠距離武器を連射しまくり、見事、
『負けは負けだが、本製品の有用性は示せた! さらば同僚よ! 量産された本機を駆り、我が社歌を轟かせるの……』
営業部長の捨て台詞を無情に途切れさせ、ティタノマキアはスクラップになった。
MISSION COMPLETEの文字がデカデカと映る中、ネロアは一旦コントローラーを置き、ソファに向いて、
「ここでいう社歌って、いわゆる凱旋の軍歌みたいなものだと思いますかね」
急に話を振られたことにしばし面食らう二人。
先に口を開いたのはマジナの方。
「だ、だろうね……きっと」
「ですよね」
(なんか思ったよりすんなり納得してくれた)
と、ピコリは思った。
ネロアはセーブをし、ゲーム機を片付けながら言った。
「今の段階だと、あの人の台詞からして、フェニックス・インダストリアルが追い詰められたが故の空元気であの社歌を流したり口ずさんでいるので、そういうストーリーの表現だと思いましたが……
あの二人は、これをギャグだと思って面白がっていたのでしょうか?」
(実際そうだろうね)
と、マジナは思う。
これだけ真面目で硬派なゲームで、あんな表現をぶち込まれたら、そりゃ笑うだろうと考える。実際、自分もBGMの変化時にはクスリと笑った。
けれどもネロアは、それを最初から冷静に世界観の表現として捉えていた。
ネロアがどれだけ真摯にゲームに向き合っているか。それをマジナは改めて目の当たりにし、感心するのだった。
「それは知らないけど、まあ、色んな意味で印象に残るボスだったでしょ、ネロア?」
「そうですね、ピコリお姉さん。中ボスのヘリもそうですが、このゲームの武器変更の大切さを教えてくれる良ボスだったと思います」
「やっぱりすごいゲーマーだね、ネロア」
翌日。ネロアはあの二人と会って、営業部長との戦闘経験と、フレーバーの秀逸性を語った。
すると二人は、
「「お、おう……」」とだけ返した。
その日の帰宅後、またネロアはテレビの空き時間にゲームを起動し、『CHIZAKURA2』の続きをした。
「レアメタル・ハートも面白かったですが、自分の思ったように好きなゲームをするのが一番ですね」
「私からすると、どちらも苦行に見えるけどね」
ちなみに、レアメタル・ハートは、味変感覚でCHIZAKURA2の合間に進めて、十一月内にクリアした。やはり面白かったらしい。
【完】




