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第144話 10/2クラス(姉妹)対抗文化祭③―シャイン、ダーク、アンド・ダンス―

 文化祭まであと一週間となったある日の、百式高校の1-E教室にて。

 そこでこのクラスの男子生徒十数人が、一日目『ステージ発表』の際にやるダンスの練習をしていた。


 1-Eのステージ発表をプロデュースしているのはクラス内の陽キャたち。

 彼らは若年層に大受けしている男性アイドルのものの曲をチョイスし、本家PVや人気踊り手の動画を見せたりして、同胞への練習を主導していく。


「てな感じです。トツカさんは一回見ただけでわかるよね」


「流石の俺でも一回見て踊るのは……無理です」


 なお、その男子陽キャ組の中にはトツカもいる。

 彼女は根は陰キャなのだが、その別格のスタイルを是非ダンスで映えさせたいという、クラス幹部からの熱いラブコールを嫌々引き受けたのだ。


 さらに、1-Eのステージ発表は『男子、女子』の二ブロックで行う『予定』なのだが、トツカはその男子グループに属している。


 トツカ様には、可愛い系のダンスより、格好いい系のダンスが似合うからという、男子と女子の陽キャ双方から熱望されたためだ。


 教室の女子グループが練習しているエリアから、トツカのいる男子グループの練習エリアへ、一人の女子がこう叫ぶ。

「トツカ様〜! そっちさっさと覚えたら、こっちに来てくださ〜い!」


「変な期待しないでください……俺はそこまで万能じゃないんで……」


「頑張るのじゃぞ〜! トツカ〜!」

 と、女子グループに混ざっているルシェヌも、トツカを茶化してきた。


「はいはい、わかってるってルシェヌ。アンタも頑張れよ……アンタ運動できるイメージないんだから」


 そして男子・女子グループは、それぞれのリーダーが流すダンス動画に合わせて練習する。


(この曲全編ネイティブ英語で何言ってるかわかんないな……ピコリねーさん然り、最近の陽キャにはこういう曲が流行っているのか?)

 と、トツカは陰キャとして、陽キャのカルチャーを理解できないまま、機械的に練習に付き合っていく。


 余談だが、ピコリの聞いているポスト・ハードコアの楽曲は、時たまにネイティブでも聞き取れないと言われている。


「あれ、トツカさんもう結構踊れてません?」

「さては元々好きだったり、昨日夜が明けるまで練習してたりしてたとか?」

「いーやそれとも、やっぱ完璧超人らしく見た瞬間に覚えたとか……」


「違いますって、背丈デカいから雰囲気が良く見えただけですって……」

 と、卑下するトツカだが、ここである男子が、見返す用に撮っておいたスマホの動画を見せてくる。

 そこには基本的な部分を押さえ、慣れない曲ながら周りの男子と同等にキレよく踊れているトツカの姿が。


「あー! ほら、やっぱ出来てるじゃん!」

「ほんとだ、もう一線級に仕上がってる!」

「やっぱ完璧超人なんだなトツカさんって!」


「違います……もうそういうお世辞はやめてください……」


 その後、男子グループは、動画を見ながらの練習、振り返り、トツカの覚えの早さの褒めちぎりのサイクルを回して、ステージ発表を仕上げていく。


 一方その頃、女子グループにいる、かねてから運動音痴寄りなルシェヌは、普通に練習についていけていた。


「トツカ様もだけど、ルシェヌさんもわりと踊れてる……」

「もしかして満月家って、ダンサーの一族なのかな?」


「そ、そうなのじゃ? えっへんなのじゃ!」

 ルシェヌは運動音痴だが、ダンスには強いタイプの運動音痴だったようだ。


*


 練習開始から二十五分――授業時間の半分が経った頃。


「おい女子グループさんたち、そろそろ五分くらい休憩したくね?」


「そうだね! カツカツに詰め込んでも本気でないもんね!」


「うっし、じゃあみんな休憩ってことで……」

 男女両リーダーがそう決めて、教室にいる1-Eの生徒は、水分補給なり、動画の見直しなどをして休憩し始めた。


 トツカも自分のカバンから麦茶入りの水筒を出して、それを教室の隅で座って飲む。

 と、そこへ女子グループのリーダーがやってくる。


「ねぇトツカっち、やっぱりこっちのグループにも入ってみない?」


 トツカは刹那で即答する。

「嫌です」


「えーなんでー? トツカっちがこっちきたら、この1-Eの戦闘力が三倍になるのに」


「このステージ発表、戦闘力うんぬんの話だったんですか? あーっと、とにかく……嫌です。そもそも物理的に無理です」


 あのダンス曲のアイドルが着ていたような、ガッツリメンズな荒っぽい服装に揃えよう。という、練習が弾んだ勢いで出てきた話を、トツカは説明して、

「後ろから聞こえてましたけど、その曲、本当に可愛い系のアイドルのですよね? そん中に絶対、黒赤の服着たおっかない野郎はいませんから……雰囲気の維持の関係で、続けざまに出れないと思いますよ俺」


「トツカっち、歌舞伎役者みたいに早着替えできないの!?」


「できませんって、しかも歌舞伎のあれはそういう細工した服だって聞いたことありますし」


「じゃあ、今ちょっと男子グループが揃えようとしてる衣装教えて!? アタシたちもそれで統一するから!」


「本末転倒ですよそれ!」


 どうしてもトツカ様と踊りたい女子グループのリーダーは、トツカを物理的に揺さぶって、

「いいからお願いー! トツカ様もアタシたちと一緒にやろーよ!」


「こちらこそお願いですからやめてくださいー! 男子グループだけで十分ですからー!」


「そんな貧乏くさいこと言わないでよー!」


 さらに、女子リーダーはルシェヌを手招きして、


「ほらー! 妹のルシェヌっちも一緒に踊りたいって言ってるよー!」


「え……アタシそんなこと言ってないのじゃ」


「言ってないって言ってますよ!」


「そんなことない! だから一緒に踊ろ!」


「トツカとか……それはなんか嫌じゃの。アタシの存在感が薄れそうだからの」


「思いきし理由述べて否定されてますよー!」


 女子リーダーの執拗な勧誘から逃げるべく、トツカは教室の外へ脱出する。


「「「……」」」

 すると、1-Eの教室前の廊下に体育座りで集結していた、全員揃って暗そうな男女たちに、無言で睨まれた。


 何か自分が悪いことをしたのでは……と、謎の罪悪感を覚えたトツカは、

「あ……どうも……」

 ひとまず、軽めに挨拶した。


 するとその根暗な方々は、無言でトツカから目をそらし、自分の足元を見始めた。


 トツカは思う。

(やっぱりか……教室内の人数が少ないと思ったら、こいつら廊下にいたのか……)


 この廊下で体育座りしているのは、1-Eの陰キャたちである。


「ねぇトツカっちー、そろそろ素直にアタシたちとダンスしたいって……」


 トツカは女子リーダーの勧誘を遮りながら、彼女に尋ねる。

「あの、すみません。コイツらここで何してたんですか?」


「あ、それ知らない」


「知らないんですか?」


「うん知らない。これらはこれらでなんかするんでしょ?」


 なんかする――その適当な物言いからして、本当に知らないんだな。と、トツカは思い、

「そうですか」

 教室に戻った。その直後、練習が再開された。


 トツカはダンスを物にしていく最中、陰キャたちのことを気にかけ、廊下の外へ耳を傾ける。

(廊下の外だってことを踏まえても声が小さすぎるが……合唱してるな)


 外の陰キャたちは、卒業式などで歌うような、しんみりとした合唱の練習をし始めた。


「……悪い、ちょっと待って」


 男子リーダーは突然、音楽を止めた。教室の戸を開けて、廊下の方へ、

「あのさ、何考えてるんのお前ら? 文化祭で合唱されてもしらけるってわかんないの? もっと頭使えっての」

 と、注意して戸を閉める。


 そして男子リーダーはダンス練習を再開する。その間、廊下の方からは、何も聞こえなくなっていた。


*


 さらに二十五分後。この時限の終了のチャイムが鳴る。


「終わりかー。女子の方は今どのあたり?」


「だいぶできてる。あとは細かいところの修正とか、一連の発表の流れの確認とかかな?」


「俺たちもそんなもんだな。じゃあ、今日の放課後、集まれる人は集まって練習な」


「へーい」

「はーい」

「わかったのじゃー」


 男子リーダーが連絡を終えた後、トツカは彼の元に近づいて、


「すみません。聞きたいことがあります」


「おう、連絡先でもなんでも答えてやるぞ」


「あの廊下にいた人たちは、ステージ発表で何をするんですか?」


 男子リーダーは一瞬、不快そうな顔をして、

「それは、あいつら本人に聞いてくださいよ」


「それは……そうですね。じゃあ質問を変えます。どうして彼らも俺たちと一緒に練習させないんですか?」


「それはあいつらの勝手。なんか俺たちと一緒に踊りたくないから、別でやるんだと」


「あそこには女子もいましたけど、そっちも同じ感じですか?」


「多分そうだな」


「にしては、まだ何も決まってなさそうでしたけど。大丈夫ですか? 本番まであと一週間ですけど……」


「それもあいつらの勝手。あいつらが別でやりたいって言ったんだから、別で考えてやるのが当然の義務だろ」


 それから男子は二カッと笑って、

「ま、細かいこと気にしないで、頑張ってこうぜ、トツカさん」


「あ、ああ……わかった」

 と、トツカは返事した。内心、釈然としない様子で。


*


 昼休み。トツカはルシェヌと二人でお弁当を食べることにした。


「で、何を企んでおるんじゃ?」


「企み……急にどうした?」


「根暗な貴様が他の誰かとご飯食べたいなんて言い出すのが異常じゃからの。さ、早く自白せい」


「……別に企みって言っても、そこまで重いものじゃない。ちょっと他の誰かに聞きづらい質問をしようとしただけだ。さっきの練習時間、外に行ってた奴らに何があったか知らないか?」


 と、これまでクラスメートとの縁が薄かったトツカは、自分とは反対に顔が広いルシェヌへ問いかけた。


「知らんのう。なんか練習が始まってから、もう勝手に廊下に出て行ってたぞい」


「ルシェヌでも知らんのか……けど、これはこれでわかった気がする。

 やっぱ陰キャと陽キャの溝は深いんだなって」


 ノリの良い陽キャにとっては、『見栄えが悪くなる』、『世話するのが根本的に嫌』といったことを当然に思ったこと。

 後ろ向きな陰キャにとっては、『やる気がでない』、『いなくなったほうが楽』と自覚的に思ったこと。

 

 そういった感情が無意識に働いて、結果誰もこれぞという経緯を知らないまま、教室と廊下の隔たりができたのだろう。

 と、トツカは経験者として思った。


「悪い意味で懐かしい。

 俺が中学の頃、運動会で、綱引きがあるからフォーメーションを考えようって話になった時、明るい奴らの集まりは綿密に作戦を練って、各々叩き込んでた。

 けど、俺とかみたいな根暗な奴は、特に何の指示もでなかった。

 いざ本番になった時、当然俺らは適当に縄の空いたところを掴まされて、そして負けた。

 俺は負けたことはあんまり悔しくなかった。競技には勝ち負けはつきものだとわかってたから。

 けど、それで上の連中に何も言われなかったのは、本当に悲しかった。俺たち陰キャは最初っから何とも思われてなかったんだ。ってな」


「ほう、それは悲しい話じゃな。けどそれは過去の話じゃ。今の貴様は――引っ込み思案なのは今もそうかもしれんが――陽キャの類じゃろ? だからまたそんな悔しい思いはせんだろうに……」


「逆だ。今は今なりに悔しい思いをするかもしれないからだ。ルシェヌ、一日目のステージ発表の評価基準は何だったか覚えているか?」


「もちろんじゃ。『面白いパフォーマンスができたかどうか』と『クラスが団結してるかどうか』じゃろ?」


「今の現状、『1-Eは』団結していると思うか? いいか、『1-Eとしては』だぞ」


「1-Eとしては……出来て、ないのじゃな。あの陰キャどもは、今んとこまともに参加しておらんからの」


「そうだ。だから今俺たちだけが頑張って、本番当日にどれだけキレキレで踊っても、『ダンスがすごかった』と言われるだけで、優勝には届かない。これが俺が懸念してるところだ」


「ほう、そういうクラス全体としてのことを考えておったのか貴様。優しいのう!」


「……そうだ。だからこれ以上、全体としての練習時間を無駄にしないように、何とかしたいんだよ俺は……」


(……本当は、俺が異世界で経験した悲劇を踏まえて、もっと懸念してることがあるんだが、これはあまりにも感情的だから言わないでおこう)


 と、トツカはルシェヌに、話の流れである程度本心を伝えた。

 するとルシェヌはやれやれと言いたそうに苦笑いして、

「だったら、早いところ貴様が何とかすればいいのじゃ。今この時において、一番クラスへの影響力を持ってるのは、貴様なんじゃから」


「……どういうことだ?」


「なんでそんなとこだけ察しが悪いのかえ……?」

 マウントを取ってやろうと、ルシェヌは自分が考えた『クラスの不和の打開策』を伝えようとする。だが、


「もう自分で考えろなのじゃ。こちらも魔王としてわかるぞい。貴様のような力を持ってるやつが、他人から指図されてばっかりだとムカついてしょうがないとな」


 このルシェヌの、説明を面倒くさがった故の言葉を、

「……そうか。わかった、ありがとうルシェヌ」

 トツカは激励だと解釈して受け取った。


*


 翌日、LHRの時間。1-Eは昨日と同じくステージ発表の練習をすることにした。


「よーし、今日も頑張ろうね、ルシェヌっち!」


「はいなのじゃ!」


「俺たち男子グループも頑張ろうな! 今日も期待してるぞ、トツカ!」

 と、男子リーダーはトツカに呼びかけるが、残念ながら教室のどこにもトツカはいない。


「あれ、さっきの時間はいたよな?」

「いたいた。休み時間にガッツリ確認してた」

「急にどこいったんだ、俺たちのエースさんはよ……」


 男子グループは教室を見渡し、

「やっぱいないな……」

「トイレとか行ったのかな?」

「だとしたら報連相するっしょトツカさんは」

「とりま、もっと探してみるか」


 さらに捜索範囲を広げ、手始めに廊下へ出る。


「あ、普通にいた」


 トツカは廊下の陰キャグループに混ざって、体育座りしてた。


「こんなところで何してんだよトツカさぁん」

「今日も魅せてくださいよトツカさんのダンス!」


 ニタニタしつつ自分を呼び戻そうとする男子グループを、トツカは睨みつけた後、床の方へ目線を移して、

「……やだ。やりたくない」


 すると男子グループはさらに笑って、

「やめてくださいよそのジョーク!」

「昨日ノリノリでやってたのに、急にそんな態度変えたふりしないでくださいよ!」

「そうだよ。わけわかんないボケしないでくれよ!」


「……本当に参加してほしいの……?」


「うん本当だ!」

「頼みますから戻ってきてください!」

「トツカ、アンタはクラスの大事な一員なんだよ!」


「……わかった」

 男子グループによる熱烈な説得を聞き届け、トツカは立ち上がって、彼らの元へ行き、


「して、それをなんで後ろのみんなに言ってやらなかったんですか?」

 若干威圧を込めて男子グループに尋ねた。


「え、なにを……誰に……?」


「昨日もずっと廊下にいた、この俺の後ろにいるクラスメートに、どうして『戻ってこい』と言ってやらなかったんですか?」


 どうしよう。と言いたげに男子グループの面々は他人の顔をしばし伺う。

 その後、代表して男子リーダーは答える。


「それは昨日も言いましたよね? こいつらは勝手に『別でやる』って言い出したからここにいたわけで、俺たちはその意思を尊重して……」


「その『意思の尊重』ってのは、クラス全体のことを考えてのことですか。それとも、嫌とか面倒だとか『マイナスな感情』でのことですか?」


「そりゃクラスのことを考えてだ。学校生活で大事な文化祭だから、各々やりたいことを悔いなくやるためだ」


「なるほど、そうですか……だったらアンタら、ひどいこと考えてますね」


 ひどい――と、これまで親しくやってきたトツカに思い切り非難された男子グループは面食らう。

 戸惑う人。憤る人……グループ内で意見が別れようとしてる中、トツカははっきりと言い続ける。


「アンタらのいう『各々やりたいこと悔いなくやる』って、言い換えれば『自分たちの好きなようにしたい』ってことだろ。

 自分たちが気に入った面子で集まって、そうじゃない奴らはクラス外に追いやって……

 だから俺が全力で中に戻そうとしていたとき、周りの連中はそんなの無視して、俺だけ戻そうとしたんだろ?」


「違う! 俺は本当にクラスと優勝のことを考えてたんだよ! だからまず、みんなが好きなトツカを呼ぼうと思って……」


「そうやって優先順位をつけてる時点で、アンタの言い分は瓦解してるんだよ。ま、そのボロが出なくとも、昨日、後ろのこいつらが合唱始めようとしたのを妨害した時点で、『気に食わない』ってのはわかってたけどな」


 ここで、何やら廊下と教室の間で揉めごとが発生していることを気にかけた女子グループが、教室のもう一つの出入口から顔を出す。

「え、どうしたのトツカっち? もしかしてストライキ?」


「なんかトツカが、『俺ばっかかまってないで、廊下のにもかまえ』って言い出してるんだよ……」


「あーそうなのね。じゃあごめんねトツカっち。はいじゃあ、こういう細かいことは水に流して練習戻ろうよ」


 トツカは女子グループのリーダーを睨んで、

「アンタもアンタだ! 『細かいこと』だとか理由つけて無関心でいれば安全だと思うな!」


「ひぃぃっ、ご、ごめんなさい……」


 本当に心の底から謝っているのか――と、トツカは女子リーダーを疑うが、これは今主題ではないと、ひとまず置いておくことにして、男子グループへ向き直す。


「『俺ばっかにかまわないで、後ろのこいつらにも構え』……って言ったつもりはないからな。

 俺が言いたいのは、『真の意味でクラス一致団結しろ』ってことだ。

 今の状態でステージ上がっても優勝は出来ないぞ。『そうじゃない』と言われる。クラスという括りではなく、仲いいグループ二つが踊ってるだけだからな」


「……じゃあつまり、俺たちはどうすればいいんだよ?」


 トツカは即答する。

「簡単な話だろうが……後ろのこいつらを独自行動させず、しっかり指示出すなり、グループに組み込むなりして、クラスの一員にすればいいだけだ」


「……けど、こいつら本当にやる気がないから……」


「だったら今度はクラスの一員になるように無理強いさせればいい。これもこれで見栄えが悪いかも知れないが、少なくとも部外者扱いするより遥かにマシだろ」


 トツカは一旦、後ろでうつむき続ける陰キャたちへ踵を返して、

「アンタらにも非はあるからな。やる気がないとか性格が合わないとか、理由にならない理由を取り繕って、クラスの一員としての役割から逃げるな!

 そんなんばっか続けても、ますます居場所がなくなって、ますます鬱憤が溜まるだけだからな!」


 そしてトツカは全員に言い放つ。

「とにかくみんな、今後とも楽しく、仲良く文化祭を過ごしたい。あわよくば優勝も狙いたい。というのなら、クラスのことを第一に考えて動け! さもなくば俺はボイコットでもなんでもするつもりだ!」


 このトツカの演説を聞き終え、男子グループ、女子グループ、陰キャたちは、

「「「は、はい……!」」」

 彼女の熱い思いに気圧され、一切の戸惑いなく返事した。


*


 それから、男子リーダーと女子リーダーは協力して、陰キャグループが踊れそうな曲――ちょっと前に流行ったドラマの主題歌――を選定し、その練習をやらせた。

 その関係上、1-Eのステージ発表の構成も『男子、陰キャ、女子』の順に変わった。


 これにて陰キャたちは、クラスから浮いたところを引き戻され、陽キャたちも目の上のたんこぶが取れ、本当の意味で、『団結』して文化祭を楽しめるようになってきたのだった。


「ふふふ、やはりアタシが見込んでいた通り、トツカはやれば出来る奴なのじゃ!」


 また、この勇気を振り絞ってこの改革を成し遂げた英雄、トツカは男子・女子、陽キャ・陰キャ関係なしに尊敬と言えるほどの評価を集め……


「アタシも、トツカっちはやれば出来る人だって信じてるよ! だからアタシたちのパートも頑張ってね!」


「俺も以下同文だ! だから忘れないでくれよ、俺たちんとこの振り付け!」


「僕からもお願いします! センターで僕たちのチームの華添えと引っ張りがんばってください!」


 ……1-Eの勝利の女神として、三グループ全てのダンスに参加することになった。


「は、はい……」

 あれだけ好き放題説教垂れて、今更引っ込むわけいけないトツカは、この三方からの誘いを渋々引き受けた。

 そして三つのダンス全て、きっちり踊れるようになったという。


【続く】

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