第118話 魔王が引っ張る地球道中
秋休みのとある日の夜、ピコリとルシェヌとトツカは、自然にぐるっと囲まれた、若干手入れがなっていない展望台で夜空を見上げていた。
ピコリとルシェヌら、百式高校の一年生は理科の先生から、秋休みの課題を出された。
その内訳は『天体観測の感想』、『秋の虫の観察』、『自宅で出来る科学実験をする』という、実践式の選択制のものだ。
二人はその内の『天体観測の感想』を選び、わざわざ遠くの山にある人気のない展望台まで来て、夜空を見に来たのである。
「あれがペガスス座、それからアンドロメダ座、ペルセウス座、カシオペヤ座……はぁ、やーっと秋の大四辺形が全部見れた」
「むむむ、資料と違って線が書いてないからどれがどの星座のパーツかわからないのじゃー!」
宿題があるわけではないが、何となく二人が気になってついてきたトツカは、これまでの様子を総括して一言。
「二人とも、他の課題やったほうがスムーズにいけたんじゃないですか?」
ピコリは課題のプリントに感想を書き込みながら、
「それは言えてる。けど課題決める時はそこまで考えてなくってさ。ただ星見るだけなら楽勝っしょって甘く見てたんだよ……」
「実際概略聞いただけなら一番楽そうなのはそれですけどね……ちなみにルシェヌはどうしてこの課題を?」
「星ってロマンティックじゃなーって思ったからじゃ。けど実際見てみるとそうでもないから、今すっごいガッカリしてるのじゃ!
バカみたいに数が多いし、違いがまったくわからないし、なんかユラユラに動いてるのもあるし……おいピコリ、貴様のプリントを写させろなのじゃ!」
「それしたら多分ピコリねーさん共々大目玉食らうぞ。
あと星がユラユラに動くとか、ふざけたこと言うなって」
「アタシはふざけてないのじゃ! 見るがよい! あの辺でずっと動いてるのじゃ!」
ピコリとトツカはルシェヌが指をグルングルン回して示している辺りの星空を探す。と、彼女の言う通り、星が動いていた。
「うわ、疲れ目とかじゃなくて、本当に動いてる!? まさかあれって……UFO!?」
「UFO? 何じゃそれ、新手のカップ麺かえ?」
「お硬く言うと未確認飛行物体。俗っぽく言うと宇宙人の乗り物だ」
「宇宙人? 何じゃそれ、新手のカップ麺かえ?」
「いくらなんでも無知すぎるぞルシェヌ。あと一回目はまだしも二回目までカップ麺にあてがうな」
トツカはかったるく思いながら、ルシェヌに宇宙人の説明をする。
「で、宇宙人ってのは……まぁ、宇宙に住んでいるらしい人だ。
色々なところで『地球より優れた科学能力を持つ』とか『地球を侵略しようとしている』とか騒がれているが、今のところ『そもそも実在するか』が不明な存在だ」
「ほーん、つまり宇宙に住んでるすごい人なのじゃな。ま、どうせ魔王のアタシには敵うまいなのじゃ」
「やっぱり言うと思ったよ、その恒例の魔王マウント」
と、ピコリがツッコんだと同時に、ルシェヌは突如地面に張り手を食らわせ、
「さっきはよくもユラユラ動いてアタシをイラつかせてくれたな!
ウザい姉が四人増えたことに反抗して覚えた新魔法、食らうがよいのじゃ! 『剛き草のマージソート』!」
そこから強靭なツタを豪快に星空へと伸ばし、同様の勢いで引き戻す。
戻ってきたツタの先には、ワゴン車くらいのサイズの、いかにもな円盤が絡まっていた。
「見たかUFO! これが魔王の圧倒的な力なのじゃ!」
「うわぁ……すごいなルシェヌ。おかげでガチっぽいUFOがあることが霞んでる」
「中の電気ついてるっぽい……あ」
奇跡的にツタに阻害されていなかった出入口が、メカニカルに謎のガスを噴射しながら開く。
「おお、ウチュージンがでてくるのじゃ!?」
「タコ型かグレイか……どんなんだ宇宙人ってのは」
そしてその出入口から、先が丸い一対の触覚を頭の上から生やしていることを除けば、若手営業マンのような二人が出てくる。
「……思ってた以上に安っぽい宇宙人だな」
ドアを閉め直すや否や、先輩風の宇宙人が怒ったような言動を始める。
「ケシショ! ケショー! ケショショー!」
それを受け、後輩風の宇宙人はペコペコ頭を下げて、
「ケション! ケション!」
「言っていることが謎じゃな。見た目はただのサラリーマンっぽいが、こやつらやはり宇宙人じゃな」
「宇宙船から出てきた時点で確定してるだろ」
おそらく説教中の宇宙人たちへ、ピコリは勇気を持って声をかける。
「あのー。お取り込み中のところ失礼します。
この作品、方針上、満月姉妹以外のファンタジー要素を出さないようにしてるんで……今すぐに帰ってくれませんか」
「ケショ? ケショショ?」
「ケシシシショ。ケシショ!」
「え……ああ、ケッションション?」
と、ピコリは何となくで返す。
当然ながらこんな猿真似の会話が通用するはずがなく、宇宙人二人はキョトンとしてお互いの顔を見合った後、ネクタイを少々いじって、
「この星の言葉はこれであっていますか?」
と、先輩宇宙人が日本語で問いかけた。
自分たちの言葉を自動翻訳できるようにしたのだ。
「ああ、はい。あっています!」
「ありがとうございます。私は出身の星はコスメ星です。私の名前はスクラブンと言います。
ニュエーキ。あなたも早く名前をこの女の子たちに言ってください」
「はい。ごめんなさい。さっき上司のスクラブンに紹介されました。私の名前はニュエーキと言います」
「すっごい機械翻訳じみた台詞……あ、はい、コスメ星のスクラブンさんとニュエーキさんですね! わかりました! ところで、お二人はどうして地球に?」
「地球。それがこの星の名前です。わかりました。
私たちはもともとは仕事のために別の星に行く予定がありました。
しかし謎の植物が私たちの宇宙船へ伸びたこととニュエーキがひどい失敗をしたので地球に不時着してしまいました」
「……ルシェヌ。アンタ、いつもの魔王自慢の流れで『アタシがやったのじゃ!』とか言うなよ」
しれっと課題を再開していたルシェヌは一瞬ビクッとする。
「はいはい、わかってるのじゃ。流石にアタシもそこまでバカじゃないのじゃ」
「あはは……それは大変ですね……帰れそうですか?」
「はい、帰れます」
スクラブンはニュエーキの背中を平手で叩き、ニュエーキはドア付近のUFOの外装を、キーボードを打つように指で何度も押す。
するとUFOはみるみる縮み、ニュエーキは手のひらサイズになったUFOをスクラブンに丁寧に渡す。
そしてスクラブンはUFOを受け取った直後、それでニュエーキの頭を殴る。
痛がるニュエーキを無視して、スクラブンはピコリへ向き直す。
「このUFOは少しの時間放置すると、修理と充電が終わります」
「そっか。それはよかったですね!」
UFOを壊して帰れなくなり、最終的に宇宙戦争にならなくてよかった。と、ピコリとトツカは内心安堵した。
「はい。ですがそれが終わるまでが退屈なので、あなたがたの母親に会わせてくれませんか?」
「はぁ、なんでじゃ!? なんでお前らをお母さんに会わせねばならんのじゃ!」
「俺も同感だ。俺たちは奴らに恩を売ったとかでもないのに、急に母親に会わせてくれというのは不自然過ぎる」
「あー、確かにそうかもね。てなわけで悪いんですけど、家までついてくるのはちょっとご勘弁ください。代わりに近くのゆっくりできるお店紹介するんで」
そうピコリが二人のお願いを断ろうとすると、スクラブンが、遅れてニュエーキが土下座する。
「お願いします。母親に会わせてください。大きい理由はありませんが、会わせてください」
「私からもお願いします。そうしないと私がいろんな人たちに怒られてしまいます」
「え、ええ……ただの第一星人にここまでするの……? ねぇどうするトツカ? 本気で家に連れて行く?」
「こらーピコリ! アタシにも意見を聞けなのじゃ!」
「ちょっと黙ってろルシェヌ……まぁ、連れて行くしかない。
ここまで頼んでいるのに断ったら、それはそれでどうなるかわからないから」
「じゃあ……わかりました。けど会わせるだけですからね。ウチんち人が多いから、急に行ってもおもてなしとかできないんで」
「はい、それでも大丈夫です」
こうして宇宙人二人は、満月姉妹三人についていくことになった。
*
満月姉妹三人は天体観測のため、電車に乗り、家から遠くにある閑静な山の展望台に来ていた。
なので、彼女らの帰路に同行する宇宙人二人も電車にゆられることになる。
その最中、二人はテレパシーで会話する。(※テレパシーでの会話は自然な翻訳をしてお送りいたします)
(よし、このまま奴らの母親に会えれば、俺たちは大手柄だ)
(ただしもし会えなければ、大目玉って感じですよね!)
この二人の宇宙人の正体は、コスメ星の軍事偵察員。
それも現在コスメ星と戦争中にあるアメニテー星へのスパイである。
しかし彼らは仕事をサボって地球近辺で、今流行りのアクティビティ、『フエクヨビング』をしていた。
そこへあたかも天罰が降るように、ルシェヌのツタが伸びてきて、二人は地球に引き寄せられてしまったのだ。
ちなみに、『フエクヨビング』とは、宇宙人との関係が少ない星の住人が、デタラメな方法で異星人を呼ぼうとしているのを見ながら、ご飯を食べることである。
(得意げに言うなニュエーキ! 元はと言えばテメェのせいだろ! テメェがツタが伸びてることに早く気づいていればこんなことにならなかったんだ!)
(すみません、すみません! けど、あの時コックピット近くに座ってた先輩がすぐに反応しなかったのもよくなかったんじゃ……)
(うるさい口答えするな! 年功序列だぞ年功序列! 若い奴は黙って上の言うこと聞いて足りない頭を補えバカ!)
(すみません! すみません!)
(……ったく。今から俺は打開策を実行するけど、その俺の足までひっぱるんじゃねえぞこの野郎)
任務をサボった以上、決して何事も無く帰れるはずはない、上から処罰される。と、二人は承知している。
その処罰を避ける打開策はただ一つ。『この未知の星、地球の侵略価値を上部に報告し、恩赦を得ること』。
(きっとあのツタを作り上げたのは、魔王を自称しているあの紫色の娘だ。あんなとてつもない住民がいる星を紹介すれば、きっと上司は処罰を忘れてお喜びになるだろう!)
そんなあくどい作戦へのひと押しのため、二人はルシェヌたちの母親から情報を引き出そうとしているのだ。
(魔王なんて、子供だましのおとぎ話でしか居ないと思いましたが、まさかこんな星に実在するとは驚きましたね!
ただ……あのオレンジの娘がケッションション――コスメ星の神話に登場する恐るべき存在、『十全を支配する母君』と言っていたのが気になりますよね?)
(うるさいビビるな! それこそ利用してしまえばいいのさ! 文脈からしてそいつがあの魔王の主君だろうからな!
とにかく、この星は怪我の功名の最高峰だ! あんな軍事利用に適した人がいる割に、文明レベルがとても低くて侵略しやすそうだからな!)
(千メートルを超える建物がない。車も燃料を燃やして動かす原始的なもの。空を飛べる乗り物も数少ない)
(さらには『タバコ』という自分の体内をダメにする薬物を公然と摂取していたり、『駐輪禁止』とある場所で自転車を平気で止めていたり……)
二人は揃って車両の端にある優先席の方……レモンチューハイ片手にスポーツ新聞を大きく広げ、席一列を独占するサラリーマンを見て、
(公共の乗り物であんな横柄な態度を取るクズまでいる! むしろ何故今まで侵略されていなかったのかが不思議なくらいだ!)
(そうですよねそうですよね! それはもう、運だけは良かったんでしょうね!)
(あはは! そうだな! 何だテメェ、たまには気が利くこと言えんじゃねえか! あははは!)
「おぉいゴラァ! 何でお前ら笑ってるんだ!」
先程のサラリーマンが怒鳴り、車内のざわめきを切り裂く。
サラリーマンは席に缶と新聞を置き、たるんだ身体を立ち上がらせて宇宙人たちに近寄る。
(なんですかこの人! まさか僕たちのテレパシーを盗聴したのですか!)
(そんなわけあるか。ただ酔っ払って好戦的になっているだけだろ……)
サラリーマンは吊革に掴まるスクラブンの頭を掴み、ただ席に座っているだけの完全無関係の人へ叩きつける。
(ぎゃあ痛いィィ!)
(せ、先輩ッッ!)
「俺は今日も朝から晩まで働いて、クッタクタになったんだ! だからあそこでただ休んでただけなのに、お前らそれを馬鹿にしやがって!
名誉毀損だ名誉毀損! 早く弁償しろお前!」
と、言いつつサラリーマンは、スクラブン含む二人をドカドカ何度も蹴りつける。
このあからさまな暴力を目撃し、この車両の乗客員はパニック状態になる。同じく電車に乗っているピコリも例外ではなく、
「だ、誰かとめてー! 早く来てサバキ姉さん!」
「確かにサバキねーさんは一番こういうことに出くわしそうですけど、こんなところにいるわけないでしょう!」
「じゃあトツカが止めて!」
「あ、そう来ますか……まぁ、そりゃ止めますよ」
乗客たちが続々と別の車両へと逃げていく中、トツカはその流れに逆らって、サラリーマンと間合いを詰めて、
「おい、いい年こいたおっさんがガキみたいに暴力振るうなっての」
「うるせぇなぁ! 忠臣蔵知ってるかお前!? 悪いことしたやつにはこうやって暴力振るうのが古き良き日本人ってもんだろうが! テメェすっこんでろ」
トツカはサラリーマンの体重が乗ったパンチを軽々左手でガッチリ受け止めて、
「このまま無難に電気流して気絶させてるのが一番てっとり早いと思うが、それは『スタンガン保持疑惑とか』で後始末が面倒だし、俺は今機嫌が悪いからこれでいく……【貪婪の世戒】」
そのまま右手でコツンと床を叩く。
するとサラリーマンは、体内の栄養を稲妻としてトツカに吸収され、軽く痩せこけた状態で倒れた。
スキル【貪婪の世界】――発動地点から一メートル以内にいる、常識の範疇を超えて激情に駆られた者から、好き放題養分を吸収できる。
「すいませんね、スクラブンさん。こんな厄介な奴がいる電車に乗せちゃって」
「……いえ、こちらこそすみません」
この時、スクラブンとニュエーキは二人揃って同じことを考えた。
((やはりこの星、侵略しがいがある))
それから三人は電車のダイヤの乱れと、本事件の事情聴取で時間を食い、門限を大幅オーバーして家の前に到着した。
「はぁ、やっぱあの時トツカに成敗させずに、黙って逃げてればよかったかなぁ」
「気にしなくていいですよ。どうせ俺は何も言われずとも、憂さ晴らしに奴を痛めつけてただろうし。
それにサバキねーさんも事情を説明すれば、致し方ないとわかってくれるでしょう」
スクラブンは聞く。
「さっきから話に登場するサバキとは、どちらさまですか?」
「俺たちの姉だ。ものすごくルールに従順な頑固者だ」
「その人の強さはどのくらいですか?」
今度はルシェヌが得意げに答える。
「アタシよりは弱いのじゃ!」
「これはコイツの嘘です。少なくともルシェヌには絶対勝てます」
魔王以上の力を持つものが同じ家にいる。
そしてこの家には現段階で強大な力を持つ戦士が三人もいる。宇宙人二人の希望がますます膨らんだ。
「ところでお二人さん。やっぱり宇宙人だってことは隠しておいたほうがいいですか?」
「はい、そうしてください」
「りょーかい。そんじゃあ普通にお母さんに会いたいお客さんって感じで処理するね」
宿題も一段落し、ようやくお母さんに会える――その一心でルシェヌはウキウキして玄関を開ける。
「ただいまなのじゃー……あ……」
そして玄関にチヨの靴が無いのを見てしまい、一気に落胆する。
「あー、今日はお仕事時間かかってるパターンか。じゃあごめんなさい、二人とも一瞬玄関で待機しててください。
今みんなに事情説明してから、中に入れるようにしますので」
というわけで宇宙人二人を玄関で待たせ、ピコリたち三人はリビングへ。
「早く謝ってよワノ!」
「うるさいっス、アタイはそんなチョコしらんっス!」
「しらばっくれるのもいい加減にしろワノ! マジナが可愛そうだろ!」
「くだらないし、夜遅くなのに部屋散らかさないでよ……」
「皆様落ち着いてください!」
「ユノス殿とネロア殿の言うとおりだ! たかがチョコごときでここまでするな!」
「……うるさい……ぜんいんだまれ……」
この時リビングでは、『マジナが大事にしていたチョコをワノが食べちゃった疑惑』を発端とし、コーリン、サバキ、ユノス、ネロア、イバラを加えた、七人が各々のガチ技を入り混じらせている大喧嘩が勃発していた。
これを見てピコリは、リビングから宇宙人二人へ顔を出して、ペコリと謝る。
「ごめんなさい。今ちょっとお方づけしますので少々お待ち下さい」
そしてリビングの戸がバタンと閉まる。
そこからリビングから聞こえる音の激しさが増していく……
(この音からして、他の姉妹もやはり強いな)
(でしたらこれ、ひょっとしたら侵略はハイリスクハイリターンになるのでは……)
(……確かにそうかもしれない。
アイツら、我らコスメ星の王族にも勝るとも劣らない実力の持ち主かもしれないからな。
母船の一つや二つ、簡単に撃墜出来るかも知れない)
(しかも今恐ろしいのは、奴らには上が――十全を支配する母君がいるってことです)
(それが憶測どおりの者なら、もはや神の領域だろうな……どうしよう、やっぱりこの星を紹介するよりも、全力で土下座して、降格処分を覚悟して謝ったほうがマシかもしれない……)
そう二人がテレパシーで会話している途中、
「ただいまー。ごめん遅くなってー。あ、まだ電気付いてるし……お客さんがいる」
チヨが帰ってきた。
「は、はじめまして……どうして玄関で待っていらっしゃるのですか?」
(こ、この人が十全を支配する母君……! なんか普通の母親に見えませんか……!)
(バーカ、能ある鷹は爪を隠すって言うんだよ! あとそんなつまらんリアクションとる暇があったら、自然を装え!)
(は、はい、わかりました!)
「私たちはあなたとお話がしたくて、ピコリにここで待つように言われました」
「あ、そうなんですか……でしたら今からお茶を用意しますので、少々お待ち下さい」
と、断りを入れてチヨはリビングに入る。直後、
「ってこらー! どうしてこんなことしてるのー! お客さんも来てるっていうのにやめてよこんな危ないこと!」
九人(※実力上混ざれないピコリを除く)の喧嘩を止めに入った。
「えっ、お客さん来てたのか!」
「うん、ウチは何回も言ってたからね! けど無視したのはみんなだからね!」
「じゃあずっと部屋の隅っこでうずくまってないで、堂々として言っておくれよ!」
「そういう責任問題はもう良いから! はやく散らかった部屋片付けて、お客さんが入れる状態にして!」
「「「「「「「「「「は、はいーっ!!!!!!」」」」」」っス!」……」」なのじゃ!」
こうして満月十姉妹はチヨの一喝に従い、散らかった部屋を片付け始めた。
チヨはほっと胸をなでおろし、リビングの戸を顔だけ出るくらいに開けて玄関の方を見る。
「申し訳ございません! もうちょっとで準備ができま……あれ?」
しかし玄関にはあの二人はいなかった。
ニュエーキは全速力でUFOを操縦した。
スクラブンは『十全を支配する母君は実在した』と始まる、地球の危険性を訴える報告書を大至急作成した。
二人は、大慌てで文字通り逃げるように、母星へと帰っていったのだ。
その後、三人はこの話のトンデモ具合から誰にも話すことなく、ついには自分たちも『あれ結局ガセだったんじゃね?』と言った具合で疑いだし、ついには忘れてしまったという。
さらにその後、満月家にさんすうセットに入っているような謎の棒が山程届いた。
この棒はコスメ星の通貨であり、その総額は日本円でいうと一億に相当するもの。
しかし見た目は完全にさんすうセットの棒。素材も、特殊な金属で出来ているとかそういうわけでもなかったので、あっけなくゴミになったという。
さらにさらに、この話を書き終えて、『やはりこの作品における超常現象は満月姉妹の特権にしたい』と考え、もうこんなジャンルの話は描かないことに決めました。
【完】




