第113話 庭球延命記
九月下旬のとある土曜日。コーリンはピコリとトツカといっしょに病院へ来ていた。
「……何故に?」
「それは行く前に話しただろピコリ。
オレの部活の部長が弁当のカキフライであたって入院したんだよ。
いつだかオレがやたらと早く帰ってきた日があっただろ? あれは練習中に部長がオエってやっちゃって、周りのことも考えてと帰らされたんだ」
コーリンの説明を受けて、ピコリは一時納得し、
「なるほど、ここから二話前(※つまり第111話参照)のときね。
生ならまだしもフライで当たるなんて、それはお気の毒に。
……なのはわかるんだけど、何でウチとトツカも来なきゃいけないの? ってのを聞きたくてさっき『何故に』って言ったんだけど」
再度、コーリンに問いかける。
トツカもこれに続いて、
「そうです。同じ高校に通ってるからかろうじて付き合いがありそうなピコリはまだしも、そもそもまだ高校に通えてすらいない俺もお見舞いに付き添う必要はありますか?」
「あるとも。だってお見舞いなんだぞ。多少はにぎやかな方があっちが嬉しいだろ?」
「確かに、何人かと一緒に動いてたほうが話が進みやすいかもしれないけどさー」
「そんなバカみたいな理由で呼ばないでくださいよ」
廊下に貼られた『院内ではお静かに』のポスターの前を三人は横切り、清楚な雰囲気の女子高生――部長が入院している病室に入る。
「部長! お見舞いに来ましたぜ!」
と、ポスターの警告ガン無視のボリュームでコーリンが挨拶すると、ベッドの上でスマホをいじっていた部長は三人の方を見る。
「あ、コーリンさん。わざわざ大人数で来てくれてありがとう」
「どういたしまして! ほらーお前ら、やっぱちゃんと喜んでくれただろうが」
「多分思いやりで喜んでくれたと思うけどね」
コーリンはお見舞いの品として持ってきたアップルパイを、部長のベッドの傍に置いて、
「あの翌日からは副部長と顧問の先生が頑張ってくれるから、あと一年くらいはここでぐっすり寝てても大丈夫だぜ」
「それだと今度はエコノミー症候群になりますよ、コーリンねーさん」
「ありがとう、コーリンさん。けど、大丈夫。お医者さんが言ってた通り一週間後には戻るから。
……あと、ここでずっと休んでるのって本当に暇だから。今はあまりにも暇すぎて、世界仰天の応募フォームに打ち込んでるし」
「あの番組だとカキであたったエピソードは弱いと思うけどね、部長さん……」
「そっか! 一週間後には戻ってくるのか! わかった、じゃあそれまでオレも頑張るからよ!
戻ってきたら、その前の日にある練習試合の結果、じっくり教えてあげますから!」
「そうだったね。ごめん、フライのせいで生で見れなくなって……わかった、じゃあその時まで私、楽しみに待ってるから!」
「おう! まかしといてくださいッ!」
「フライと生のジョークは……俺たちが拾うべきですか?」
「それ質問した時点でもう鮮度が落ちちゃってるから、無視していいよ」
それからコーリンは部長の暇を少しでも紛らわせようと、ピコリとトツカにまつわる話を、本人の許可なく話し続けた。
「あのー、コーリン姉さん。話止めるか、ウチら帰ってもよくするか、どっちか決めてくれない?」
「でさー、そんでさ……え、ダメに決まってんだろ。さもないと部長がかわいそうだろ」
「ならせめて自分のエピソードで勝負してくださいよ」
「はいはい、わかったよ。それでトツカはな……」
(駄目だこの脳筋長女、まるで話を聞いてない……)
(もうマジで帰らせて欲しいんだけど……話される内容が恥ずいとかよりも、ほぼ初対面の上の人と、姉さんが話してるの見ててもただただ暇でしょうがないんけど……)
「……いいよね。アンタたちはそんなつまんない話が出来るくらい暇で」
「ああっ!? ピコリ! 部長の前でオレ以上に配慮が足りてないこと言うな!」
「配慮が足りてない自覚はあったの!? って、そうじゃなくて……違う違う! 今の台詞はウチじゃなくて、あっち!」
コーリンはピコリが指さした、斜向かいのベッドの方を見る。
そこには小学校高学年くらいの、いかにも病弱そうな女の子がいた。
「誰だお前!?」
数日ほど一緒の病室にいた故に、部長は彼女のことをコーリンらに話してあげる。
「あの子は薄氷ホノカちゃん。小五の初めくらいに、学校に行けないくらいの難病にかかっている子なの」
ホノカは部長を睨みつけて、
「無駄なこと言わないでよお姉さん」
「ホノカちゃんこそそういう暗いこと言わない方がいいと思うよ。そんなことばっかり言ってるとますます気持ちが暗くなっちゃうから……」
「もう暗いとか明るいとか、アタシには関係ないんだよ!」
と、ホノカは部長にめがけ憤り叫ぶ。
「うわ、びっくりした……けど、コーリンねーさんの入室時よりは小さい。根はよく出来てる子だ」
ホノカは呪詛を唱えるようにつぶやく。
「もうアタシは、いなくなるんだよ……一週間後の難しい手術に失敗して……」
「それ斜向かいから聞いてたから知ってるよ、私。
けどそれはホノカちゃんのお医者さんが、ホノカちゃんが成功するって信じてればきっと成功する手術だよ」
この二人のやり取りを見て、ピコリは思う。
(うわー、大変失礼だけど、すごいベタなドラマみたい……)
「……嘘だよそれは! そんなドラマみたいなくだらない話、現実にあるわけない!」
(とか思ってたら自分から回収に行ってる!?)
「だからもう、お父さんお母さんには手術しないでって何回も言ってる! もうアタシはこのまま死ぬつもりだから!」
そうホノカが叫んだ後、部長は困り果てて黙ってしまった。
一方で、コーリンは椅子から立ち、ホノカの手前まで来て、
「おいこらお前、いくら死ぬのがわかってるからって、そこまでやさぐれるのはどうかしてるぞ」
「だって仕方ないんだもん! 一年前に入院した時、お医者さんは初めに『あと一ヶ月で帰れる』って言ってたのに、後から二ヶ月、三ヶ月って嘘ばっか言って……
お父さんもお母さんも『その時まで頑張れば学校に行ける』って言ってたから頑張ったのに……
だからもうアタシはお医者さんもお父さんもお母さんも、あそこにいるお姉さんも信じない!」
「だったらオレを信じろ!
確かに、見返りがわからないのに頑張るのは辛いかもしれないが、一年生きるのと一年一週間生きるのなんて、どっちもおんなじもんだろ!
だからオレを信じて、オレみたいに向こう見ずに一週間頑張って、学校に行こうぜ! ホノカッ!」
叫びと叫びの応酬の末、部長とホノカの病室は反動で一気に静かになる。
ホノカの散歩の手伝いを担当する看護師たちも、二人の気迫に気圧され病室の入り口前で立ち尽くす。
それから間もなく、ホノカが口を開く。
「これもドラマとかでよくあるよね……『野球選手がホームラン打って、手術を受ける予定の子供を勇気づける』話」
「ああ、オレもなんとなくだが聞いたことある」
「金髪のお姉さん、さっき六日後に練習試合があるって言ったよね?」
「おう、言ったとも」
「じゃあその時に、ホームランみたいなすごいことしてみてよ。そしたら手術を受けてあげる。それでいい?」
コーリンは一瞬の迷いも無く、首を縦に振る。
「おうとも! オレは絶対にお前を学校に行かせてやるからな!」
こうして約束をこぎつけたコーリンは、部長のベッドの方へ戻り、ホノカは看護師に支えられ、日課の散歩のために病室を出る。
「コーリンねーさん、ああいう時はキシっと真面目に決められるんですね」
「あったり前だ! オレとてやる時はやるんだよ!」
「そうですか。でしたら六日後の試合、頑張るしか無いですね。オレも陰ながら応援します」
「ありがとよトツカ! お前もこういう時はいい奴になるんだな……そんでピコリは?」
ピコリからも頑張れと言わせたいコーリンは、彼女と目を合わせる。
するとピコリは、部長を一瞥し、自分と似たようなことを考えてると確認して、
「あ、うん、ウチももちろんコーリン姉さんのことを応援するよ……けど」
「けど?」
「コーリン姉さんってテニス部だよね? あの子、『ホームランみたいなすごいこと』を要求してたよね。
それでだけど、テニスにホームラン的な、成功確率レアだけどリターンが大きい技って、あったっけ?」
「……あ」
*
帰宅後。コーリンはソファに陣取り、Wi-Fiの環境下の中で、『テニス すごい技』を真剣に検索しまくっていた。
そんな様子を見て、マジナとサバキが彼女の後ろからやってくる。
「姉御、そんな真剣にスマホなんかいじってどうしたんだい? さては発散するのにふさわしいサイトを調べてたりして……?」
「よく見ろマジナ殿。普通にテニスのことを調べているぞ。
……いや、それはそれで意外だな!? まさかコーリン殿がテニスを真剣に学ぶなんて……」
「急にどうしちゃったんだい姉御。さてはここから帰ってくるまでに色々あって賢者になったのかな?」
コーリンは自分のスマホ画面を凝視したまま、
「わりぃ二人とも。オレは今忙しいから他行ってくれないか?」
「そうか、忙しいのか……?」
「ごめんね姉御。それじゃあ他行くよ……」
と、言って二人は少し横に移動し、フツーに動画を見てるピコリの背後に立ち、
「ピコリ、コーリン殿がやたらと真剣にテニスの勉強をしている理由を教えてくれないか?」
「そういうと思ってましたよ! コーリン姉さんが真剣になってるのは……」
ピコリは二人にカクカクシカジカ説明する。
「てなわけ」
「なるほど。だから姉御がテニスの、テクニックのことを調べているのか。
サッカーとかだとコーナーキックシュートとかルールの制限に則った派手な技あるけど、テニスにはそういうのはないからね。テニスにはね。それならテニス調べるしかないよね」
ここでマジナは身構えるサバキを一瞥する。
「私は普通にテニスって言ってるだけなのに、どうしてそんな物々しくなってるんだい?」
構えを気づかれた途端、サバキは軽く謝って、
「お前なら、しでかすかもしれないと思ったからだ」
「そんなまさか、流石の私でもしでかすわけない。というより『しでかす』って何? 私が何か下品なこと言い出すと思ってたの?」
「ああそうだ。何度もテニステニスといってたからな」
「え? テニスってそんなやらしい隠語とかだったっけ? 何がどうしてそう下品なことに繋がってるの? ねぇ、教えてよサバキ……」
「い、言うわけないだろそんなもの!」
「言ってよサバキぃ。でないと私、これからテニスの話がしづらくなるじゃないかぁ。 ねぇ、御託はいいから話してよぉ」
と、マジナがサバキに詰め寄り尋問している最中、
「そうだ!」
コーリンは立ち上がりこう叫んだ。
「ほら、姉御も言ってほしいって言ってるよ?」
「え、あ、オレは今、お目当ての情報が見つかって閃いたから『そうだ!』って言っただけだ」
「全く、紛らわしいところでそんなこと言わないでくれコーリン殿、自分はてっきりお前まで加勢してくると思って一瞬驚いたぞ」
「あ、ところでサバキ。今お前テニスって聞いてなんか変なこと考えてたらしいが、それは一体……」
「結局そうなるのか貴様ら」
*
それからコーリンは、ホノカを勇気づけるため、部活や家など、使える時間はとことん使い、『すごい技』の練習を続けた。
そして六日後。
コーリンは他校のテニス部員との練習試合を迎えた。
出だしからの付き合いということで、ピコリとトツカは観客席に座り、コーリンの活躍を見ている。
ちなみに観客席は他校同士の練習試合ということで、二校のテニス部関係者と、部員の身内のみが集まり、だいぶガラガラであった。
「まぁ、そりゃ総体とかじゃなくて、普通の練習試合だもんね」
そんな観客がまばらなテニスコート周辺を、トツカは見渡して、
「ホノカちゃん、どこにも見当たらないな……」
「え、マジで? うわー、それはちょっと怖いなぁ。せっかくコーリン姉さんがあれだけ頑張ったってのに」
当然ながらこの試合が、病気の子供一人の命の分岐点になっていることを、満月姉妹三人を除いて知る人はいない。
なのでコーリンの練習試合は、ホノカの到着を待たずして始まる。
最初に、今日の肝であるサーブ権を獲得できたのはコーリンであった。
「うっし、見てろよホノカ! オレの練習の成果、とくと見やがれ!」
コーリンは高くボールを上げて、全身を大きくひねるようにしてラケットを振るい、サーブを放つ。
そしてそのサーブはヘロヘロと白線外に落ちた。
「ちいっ、やっぱりそう簡単には成功できないか、けど、オレは何度だってやるぞ!」
二球目、コーリンはさっきと同じフォームでサーブを打つ。
今度は線の中に入った、だがまたしても勢いが物足りないため、相手に簡単に拾われて反撃を食らってしまう。
「くっそ、結局、本番になっても出来ないのかオレ……」
と、コーリンは詰めきれなかった自分を情けなく思いながら、三度目のサーブの体勢に入る。
「やっぱり、ツイストサーブは難しいんだ……」
「ツイストサーブ……ピコリねーさん、それは一体」
ここで一つ解説を入れるとしよう。
ツイストサーブとは、サーブ時にボールへ横回転をかけ、ボールが着地時、打ち手の利き手と同方向(コーリンの場合は右)へバウンドするという技である……というのを作者は最近漫画で知った。
しかしこの技は難易度が高い。
本作は決してテニスを題材としている作品ではないため、詳細は説明しない(本音を言うとやったことないからしんどい)が、簡単に言うと『ラケットの握り方にいたるまで相当なテクニックを必要とする』からである。
それに加えてコーリンの場合は、本人の得意分野と技の性質が噛み合っていないのである。
「コーリン姉さんは普段、高い身長とフィジカルを生かしてスタミナガン無視でコートを駆けては、一球一球フルパワーで相手に返すパワータイプのプレイをしている。
だからなおさらツイストサーブが難しいんだよ。コーリン姉さんはもうパワータイプのプレイが身に染み付いてるから」
「……あのー、ピコリ姉さん?」
「はい、どうしたのトツカ」
「そもそも、ボールが横に転がることのどこが強いんですか?」
「え、そりゃ、普通のサーブは前方向に飛んでいくから、横に飛ぶのはなかなかレアだからで……」
「ああ、ごめんなさい。でしたらそもそもの問題でした。
今更のカミングアウトなんですけど、俺、とことんスポーツに興味なかったからテニスのルールがさっぱりわからなくて……」
「マジで今更だね!?」
それから、ピコリはトツカにテニスの基本ルールを、やってないながらも教えてあげた。
その間、コーリンは度重なるサーブミスと、無理にツイストサーブを打とうとした弊害でついた悪いクセで思うようなプレーができなくなり、あっさりと二ゲーム奪われた。
「それで、試合形式は、先に三ゲーム勝ったほうが勝ちの『七ゲームマッチ』と、先に二ゲーム勝ったほうが勝ちの『五ゲームマッチ』があるの。
で、今コーリン姉さんがやってるのは『五ゲームマッチ』」
「なるほど……でしたら今、コーリンねーさんはまずいことになってませんか?」
ピコリはコーリンがプレイしているコートの得点板を確認して、
「あ……本当だ」
「あれだけ練習したにも関わらず技は決まらず、その一番の目標は来ず……コーリンねーさん、もうバックレてもいいと思いますよ」
このままではホノカにツイストサーブを見せる前に、みっともない負け方を晒してしまう。
二ゲーム前とは段違いなプレッシャーを背負いながら、コーリンはサーブを打つ位置へ向かう。
最中、相手の選手はコーリンを気づかって、
「あの、顧問とか誰かに言われてそうしているのなら聞き流してくれてもいいのですが……もう少し無駄なこと考えないでプレイしたほうがいいと思いますよ?」
と、アドバイスを送った。
しかし今のコーリンにおいてこのアドバイスは――当人にしては悪意はないのは承知だが――悪口に聞こえた。
和と妖が入り混じる戦国時代な異世界『センランド』にいた頃、コーリンは華々しい武功を上げると同時に見ていた物がある。
それは死にゆく定を持った者たち――弱き者や、及ばない者、運が無い者。そのような者たちを、コーリンは敵や味方に何度も見てきた。
けれどもその者たち全てが、悲哀に塗れて死んだとは断じて無いとコーリンは思っている。
打算無くとも抗った者、時代のために命を燃やすものを決めた者、そして最後の最後で幸せを掴んだ者……そのような宿命を持った者も大勢見てきた。
(そもそもアイツは定まったわけではない。だから、言い出しっぺの俺が諦めて、そのままアイツがオレに倣ってきたらたまったもんじゃないってんだよ……)
コーリンはサーブ位置に立ち、ボールを何回かバウンドさせて呼吸と精神を整え、
「つまり、アイツにならわせるのは、こういうことだ!」
ボールを宙へ投げ、それを全身のひねりを使って打つ。
まずボールは相手のモロに正面で一度コートに付く。
これは楽勝……と、相手が思った矢先、ボールは、左へ――コーリンから見て右へ勢いよく跳ねて、白線を超える。
「……あんがとよ、今までの失敗。ここまで来るまでにオレをならしてくれて」
「す、すごい……これが、奇跡なんだ……」
と、会場に来たてのホノカは、直後に見たコーリンの奥義に絶句した。
「さぁて、ツイストサーブ見せは終わった。こっからは好き放題やらせて勝たせて貰うぞ!」
この後、コーリンは宣言通りにいつもの、やりなれた超パワープレイで相手を圧倒。
残り三ゲームをぶち勝ち抜き、逆転勝利を果たしたのだった。
*
試合終了後。コーリンはすぐに観客席のピコリとトツカ、それとホノカがいる所へ向かった。
「おい、見てたかお前! まばたきしてたとかつまんない冗談言ったら叩くからな! ピコリを!」
「流石にホノカちゃんを叩くのは自重したか……いやそれでもウチ叩くのやめてくれない!?」
「あの横に跳ねるボールでしょ? うん、見てたよ。ギリギリだったけど」
「そうか。そりゃよかったな! ……じゃあ、約束、覚えてるよな?」
約束。コーリンから発せられたこの二文字を聞いて、ホノカはしどろもどろに、
「あ、うん……覚えてる……けど……えっと……その……」
「あ、何だ? まさか不服か? もっと凄い技見せないと勇気が出ないのか?」
「いや……違うの……もう、勇気でたの。手術、昨日にしちゃったの」
「あ?」
「へ?」
「はい?」
六日前。散歩に出かけた時、ホノカは外の爽やかな空気を吸ったためか、三人から距離を取ったためか、
(よくよく考えたら、アタシわがまま言い過ぎちゃったかも……)
と、だんだんと冷静になり、やがて反省し、両親や担当医に『手術を受けると決めた』ことを話した。
すると偶然にも病院とホノカ本人のコンディションが噛み合い、予定より一日早く手術を受けることになったのだ。
なお、今日遅刻したのは、手術後の体力回復のため、病院で決められた時間、安静に休んでいたからだったのだ。
「……てことは、今までのコーリン姉さんの努力は」
「……水の泡になったってわけですか」
「いやいや! ちげぇよお前ら! 見方を変えろ見方を! これならこれで、さっきのツイストサーブは手術成功のお祝いになったじゃねえか! なら最高だろ? 元気になった直後にあんなもの見られてよ」
「うん、凄かったよ! ところでテニスって、どういうスポーツなの?」
「こっちも今更!?」
「……やっぱり、水の泡になったってわけですか」
【完】




