第110話 満月姉妹withゲーム 〜島づくりゲー編〜
前回に引き続き満月家にて。入学前の暇を持て余しすぎたネロア、ワノ、イバラ、トツカの四人は、ロスイから送られたゲームを遊んでいた。
「……じゃあつぎ、これやろ……」
イバラはかねてから気になっていたゲームを、段ボールから出して見せる。
何匹かの動物が描かれた、ほのぼのとしたパッケージのゲームソフトだ。
「これはアタイも知ってるっス。確か島を発展させるゲームっスよね?」
「俺もCMで何度も見たんでよく知ってます」
「これだけ流行っているゲームをプレゼントしてくれるなんて、ロスイさんは粋なことをしてくれますね」
「……はやくやろ……はやくやろ……」
前回のゲームでネロア以外の三人は鬱憤が溜まっていたこともあり、彼女たちはすみやかにそのゲームをプレイする。
その前に、またしてもしれっとコントローラーを握っていたワノがあることに気づく。
「あ、このゲーム、一つの島の中でキャラクターを八人作れるらしいっス。
どうするっス? 家造りとかの経済活動を別々で出来るように一人ずつキャラ作らないっスか?」
「いいですね、そうしましょう!」
「……さんせい……」
「はい、それにしてください……そうした方がお金使うとき、ワノねーさんに気を使わなくてすむんで」
というわけで、四人はそれぞれ自分のキャラクターを作り、以降は十五分ごとにワノ、イバラ、トツカ、ネロアの順で交代してプレイすることにした。
ワノは一番手に島へ到着し、ガイド役から島での生活についてのチュートリアルを受ける。
それから今作の第一目標の『マイホーム建設』が始まり、まずワノは土地探しをする。
「家の移設は出来るらしいっスけどそこまでめんどくさいらしいっスからねー。一発でいい土地見つけないとっス。
できれば前の異世界みたいな森に囲まれた丘の上に建てたいんスけど、このゲームは丘の概念がないのが残念っスね」
広めの島を歩き回っている間、暇なワノは他三人に問いかける。
「そういえばみんなは前の異世界で、どんな家に住んでたんスか?」
「……わたしは……まちなかのアジト……」
「俺は『表』ではボロ家、『裏』では王宮でした。ま、遠征多かったんでそんな長居は出来てなかったですけど」
「僕は三つほど家を持ってました。
一つは死国トードイスムカ【化神官】が住めるホイプペメギリ神殿。
一つは仕事場兼自宅として使っているギルドハウス。
もう一つは【自由区】滞在時用の別荘です」
「ふんふん、なるほど。アタイは森に囲まれた丘の上に五階建ての本社兼自宅の豪邸を構えていたっス! 会社の業務が活発化してくにつれて、周囲に関連会社の建物がどんどん出来ていく様は圧巻だったっス!」
「その自慢話したかったがためにその話題振ったんですか?」
ワノは自信満々に答える。
「そうっスよ!」
この時一瞬、トツカは電撃を出しそうになった。
それからワノは悩みに悩んだ後、木々が生い茂る中に家を建てる。という、大方の予想通りのしょうもない決断をした。
この後、三人もチュートリアルと土地探しを終え、ワノの二巡目が始まる。
続いてするのは家を建てるための資金集め。ワノは黙々と虫や魚を釣ってその額を目指す。しかし……
「……ワノおねえちゃん……つぎ……もうじゅうごふん……」
「え、もう十五分経ったんスか!? まだ目標金額まで半分っスのに!?」
「ワノさん。約束は約束ですから、ここは素直にイバラさんに交代してあげましょう」
「むむむ。しゃあないっス、ここは黙って見といてやるっス。ここは」
ワノは不本意ながら、コントローラーをイバラに託し、彼女とトツカとネロアがお金を稼ぐ様を、宣言通り黙って見る。
なお、イバラやトツカもワノと同じく、十五分内に資金の半分くらいしか稼ぎきれなかった。
しかし、ネロアは元々のゲームに関するセンスを生かし、効率よくレアな魚や虫を捕る方法を発見し、資金の七十五パーセント程を稼いだ。
「それでは十五分経ちましたので、ワノさんどうぞ」
「あ、アタイの代わりに続けて十五分やっていいっス。ちょっと色々疲れてるっスから」
「そうですか、ありがとうございます。あ、ですがそれではせっかくのワノさんの番がもったいないような……」
「お構いなくやっていいっスよ。この十五分で稼いだ金額の半分は、アタイのテントの前に置いてくれるのならっスけど」
「わかりました」
「「おいこらまて」」
と、イバラとトツカは同時にツッコむ。
「え、何が待てなんスか?」
「……ネロアおねえちゃん……はたらかせてる……」
「ワノねーさん、自分がやるよりも稼ぎが良いからって、十五分をネロアねーさんに任せようとしてません?」
「え、普通に疲れてるからネロアに働かせてるだけっスよ。五割のマージンはネロアにただ得をさせたくないからってだけで……」
「一瞬言い訳になってそうに聞こえてまるで言い訳になってない言い訳するのやめてくれませんかワノねーさん」
「トツカさん、あんまりワノさんを責めるのはやめてください」
「いやアンタが音頭取ってワノねーさんを責めてくださいよ」
十五分後、ネロアと、彼女から五割の利益を得たワノは同時に目標額を達成した。
さらにその後、イバラとトツカも『自力で』資金を稼ぎ終えた。
それで迎えたワノの三巡目(※さっき番をやっていれば四巡目)。ワノは集めてもらったお金をガイド役に渡して、これにて家が建つことになった。が……
「へ? 『明日になったら家が建つ』……え、これってリアル時間っスか?」
「はい、そうみたいです。本体に設定された時間に合わせてゲームが進んでいくようです」
「なるほどっスか……」
と、言いつつワノはホーム画面に戻り、本体設定へと飛ぶ。
「「おいこらまて」」
「待ってくださいワノさん。さては本体の時間をずらしてどうこうしようとしてませんか?」
「ええそうっスよ。だって律儀に待つなんて暇っスもの」
「それはそうかもしれませんが、このゲームはそういった待ち時間も楽しむスローライフなゲームですので……」
(……やっとネロアおねえちゃん……ワノにはんぱつした……)
(いいですよネロアねーさん。そのままワノねーさんの横暴を止めてくれ)
イバラとトツカが期待を寄せる中、ネロアはワノに時間をいじらせないように説得する。
「別に明日も休みなのですから、明日もゆっくりやりましょうよ」
「いーや、明日は明日でしたいことをやるかもしれないっスから、今日中に家を建てとくのがいいっス」
「それに暇を潰すためのゲームなら他にもいっぱいありますし……」
ネロアは段ボール箱から一本のゲームソフトを取り出して、
「ほら! 『END EDEN』の続きでもしましょうよ!」
「それだったらもう時間進めてもいいっスかね!」
「……いやだそれ……!」
「ええ俺も同感ですとも! けど今はやめてください、俺たちまだお金払ってないんで」
その後、イバラ、トツカ、ネロアもお金を払い終えたところで、五巡目のワノは本体時間を一日ずらし、家が建っている状態でスタートする。
「いよいよ家具集めっスね……って、今度は『お店を島に呼ぶには住人三人が居ないとダメ』、『住人は時間が経つと現れるキャンパーを招待して集める』……よし、また時間ズラすっスか!」
もうすでに一日ずらした。だから何日ずらそうがもはやどうでもいい。
時間をずらすことに関して、すっかりタガが外れた四人は何度も時間を操作し、家やその周りを充実させた。
ネロアは前の世界で住んでいたような、不気味さを感じる古い家を、トツカも前の世界で住んでいたような……ものではなく、テーマパークめいたファンシーな家を完成させた。
「トツカさん。意外とかわいらしいモノが好きなのですね」
「これは……見た目を良くしようとしたら、たまたまそちらに寄っただけです」
続いて、イバラの家は、最初に設定される外装の家に、序盤にもらえる家具が適当に置かれてあるという、雑めな作りの家だった。
ただしその分、庭の開発には力が入っていた――イバラの家のすぐ側には、立派な野外ライブ会場が建っていた。
(ピコリおねえちゃん……よろこぶ……)
音楽が大好きなピコリが見たらきっと褒めてくれるだろう。いつも通りのおねえちゃん愛が炸裂した故の出来であった。
そして、ワノの家はというと……屋根だけが金色という外装に、内装はゴージャスなソファ一つが置かれているだけという、明らかに物が足りていなかった。
これは別のところに労力を注いだとかそういうものではなく、単純に高級な家具を集めるのが、お店の売り物がランダムだった都合上、しんどかったためである。
夕方前頃。たまたま部活がなかったピコリが帰ってきた。
「ただいまー。うわー、のんきにゲームしてる」
「おかえりです、ピコリお姉さん。学校で忙しくしているところ申し訳ありません。ですが本日、ロスイさんからゲームが届きまして、せっかくなのでそれをと……」
「……じゃま……ネロアおねえちゃん……!」
イバラはネロアをどついて黙らせた後、ピコリの手を引き、ソファに座らせる。
それからイバラはキャラクターを、例の庭がキレイに映る位置へ移動させる。
「……わたし……かいじょう……つくった……」
「へー、やるじゃんイバラ!」
「……ここでピコリおねえちゃん……うたえたら……」
「うん……そ、そうだね。ここで歌えたら最高かもしれないね」
と、ピコリはイバラに相槌を打つ。
イバラ作の野外ライブ会場は、時間を進めまくったせいで、ライブには不向きの豪雪が降り注いでいることに目を背けながら。
【完】




