第106話 Kakerarete Kuyashiiwa 〜呪裁接続、ハツノカラアゲ〜
ある日の夕方。
今日はチヨの帰りが遅くなるということで、イバラはユノスから借りたタブレットを見つつ、夕飯の支度をしていた。
今晩の献立はから揚げ。
前いた世界にはから揚げという料理は存在しなかったので、イバラはきっちりレシピに目を通し、フリーザーバッグに適量な鶏肉とつけダレを入れ、下味が付くまで揉み続ける。
その間、イバラはキッチンの向こう側にいるコーリンら六人の様子を観察する。
このような料理中にある暇な時間、イバラはよく六人の様子を観察している。
本当なら大好きなピコリだけを見ていたが、チヨからの説教があるので、他の全員も観察する。
「……ふつー……」
正直、半分飽きたという気持ちもあるが、この観察には意義がある。と思ってもいる。
その理由は、ピコリ以外の六姉妹の性格を知れたから。
「おーいピコリ、暇だから胸かケツか太もも揉ませろよ」
「いーやです! てか何故にウチがターゲットになるし!?」
長女、コーリン。アホの脳筋の女好き侍。
「おいピコリよ! お前もお母さんに『早く帰ってきてー』って急がせるよう連絡するのじゃ!」
「駄目でしょそれは! 数に物を言わせて無理させるのやめなって!」
末っ子、ルシェヌ。ワガママ、母親好き、自称魔王。
「三人ともうるさい。気が散るからやめて」
「ほら、だってよピコリ」
「声がデカいのじゃピコリ」
「ごめんねユノス……何で全責任ウチが負わされてるの?」
五女、ユノス。何考えてるのかわかんない仕事中毒、あとお絵かき大好き。
……とのように、何となくイバラは六人の性格を把握しつつある。
「何度言えばいいんだ、いい加減理解しろ貴様!」
「そっちが何度も言う必要ないことを繰り返してるかじゃないのかい!?」
絶対ルール順守主義の元警察。三女、サバキ。
自由すぎるド変態の元怪盗。次女、マジナ。
中でも特に、イバラはこの二人、特にこの二人の関係性に興味を持っている。
「家のハンドソープの使用量は二プッシュ以内だ! 自分の推定からすると貴様今、三プッシュぐらいしていただろ!」
「仕方ないでしょ。だってさっき、トイレから出たばっかりなんだから。色々出した後なんだからキッチリ洗わせてよ」
「その貴様が色々出しがちなことを考慮して、本来一プッシュで制限したいところを、二プッシュにしているのだ! なのにどうして貴様はそれを蔑ろにしてすぐルールを破る!」
「だからいいじゃないか別にぃ。半端に汚い手であちこち触りまわるよりマシでしょ?」
「それはごもっともだが……二プッシュの泡で手をキレイにすることを努力すべきだろ、マジナ殿!」
異世界を経た故に性格が尖ってしまうということもあるが……まさかここまで相性が水と油な姉妹がいるとは。
このように常日頃しょうもない理由で言い争っていることが、イバラが二人に興味を持つ理由である。
チヨはあの時、この意外な現象を教えたかったから自分にああ説教したのかもしれない。
「……けんか、おもしろいのかな……」
イバラは鶏肉に下味を揉み付けつつ、そう無意識につぶやいた。
「喧嘩じゃないぞイバラ! これは厳重注意だ!」
「喧嘩じゃないよイバラ! これは頭の硬い人が考えた変なルールを直させようとしているだけだからね!」
どうしてわたしのつぶやきを拾ったんだ。と、イバラはツッコもうとしたが、
「変なルールとはなんだ! 数ある資源を大切に使えという自然的にも経済的にも優しい立派なルールだろうが!」
「うっさいなぁ! 君そういうスケールのデカい話しないとまともに話せないのかい!?」
マジナとサバキの喧嘩が水をさせないほど炎上していたので、イバラは口を謹んで鶏肉の下味付けをする。
その後も二人は、イバラが夕食の支度を終えるまで口論を続けていた。
その間の二人の声量は、から揚げを揚げる音と同等の大きさだったので、イバラは軽く鬱陶しいと思った。
けれどもピコリを始めとする他のみんなは誰も反応していないので、『ああ、これがこの家だと当たり前なんだな。強風が吹いているのと同じぐらいの感覚なんだな』と察し、イバラはただ『料理中のながら観察』をするだけに留めた。
「うるさいっスよ、マジ姐、サバ姐」
「上の部屋からもやんわり聞こえてましたよ」
最中、上の階にいたワノとトツカが止めてくれた。実際の強風のように、流れで止んでくれたというわけである。
そんなこんなでイバラは大皿にレタスを敷き、うっすらと輝いているようにも見える、食欲そそる茶色のから揚げを盛り付ける。
そして仕上げにくし切りにしたレモンを添えて、レシピのものと全く同じような出来栄えのから揚げ十一人分を完成させたのだった。
それから十分後、チヨから『先に晩ごはん食べてて』とのメッセージが届いたので、満月十姉妹はお言葉に甘えて、十人で食卓を囲む。
余談だが、満月家は七人以上で同時に食事する時は、折りたたみ式のダイニングテーブルを追加で展開している。
「おおっ、今日はから揚げか! しかも今日のは滅茶苦茶うまそうだぞ!」
「なんせイバラシェフの料理っスもんね!」
「これ、イバラが初めて作ったから揚げなんだって。とてもそうは思えないね」
と、コーリン、ワノ、ユノスたちがまだ食べてもないにも関わらず大絶賛する。
自分の料理への信頼の高さに、イバラの顔がほころぶ。
「……えっへん……」
ただし、ルシェヌは一人、この評価の高さを卑しく思う。
「イバラが作ったからなんなのじゃ。あの根暗エルフが作った料理より、絶対お母さんが真心込めて作った料理の方がうまいはずなのじゃ」
と、イバラの愚弄とチヨの賛美を同時にこなしつつ、ルシェヌはから揚げへ箸を伸ばす。
「こら待てルシェヌ」
「何じゃサバキ。いただきますはきちんと言ったぞい。だから早く食べさせろなのじゃ」
「それは偉いな。だが待て、今すぐに終わらせる」
サバキは大皿の隅にあるレモンをつまみ、全てのから揚げへレモン汁を掛ける。
「はい。食べていいぞ」
「なんじゃそれか。ではいただくぞサバ……」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!」
「今度はなんじゃサバキ……じゃなくてマジナ!?」
マジナはテーブルの下に転がりそうになった自分の箸を、慌てて安定した位置に戻し、親の仇を見るかのような目をしてサバキへ尋ねる。
「サバキぃ、君なんてことをしてくれたんだい!?」
「何って……から揚げにレモンをかけただけだ」
「それがいけないんだよそれが!」
だからマジナは椅子から立ち上がり、サバキへ怒る。
「サバキどうして独断でレモンかけたんだい!? これじゃあ折角のイバラのから揚げが台無しじゃないか!」
サバキも椅子から立ち、マジナに反論する。
「逆にかけない道理がどこにある!? から揚げはレモンをかけて画竜点睛となるのだろうに!」
この二人の剣幕を見て、ピコリは慄きながら、
「戦争だ、から揚げレモン戦争だ……!」
ここで一つ解説を入れるとしよう。
から揚げレモン戦争とは、現在各所にて勃発している『から揚げに添えられたレモンの果汁をかけるかの是非を問う』争いのことである。
……その戦いがここ満月家にて、サバキとマジナがそれぞれ陣頭を取り、開幕してしまったのである。
「レモンには、から揚げの油っこさを中和し食べやすくする効果があるのだ。
だから自分はみんなに気兼ねなくイバラ殿のから揚げを食べて欲しいと思ってレモンをかけたのだ!
これはむしろ自分が褒められるべきではないのか、マジナ殿?」
「いーや、それは偽善だよサバキ。から揚げは油っこさも含めての料理なんだから。
実際名前に『揚げ』って油使用であることを公言しているじゃないか。
なのにそれを奪うなんておかしな話じゃあないかい?」
「とはいえ、油っこすぎるのも良くはないだろう。だからそれを規制するレモンが必要なのだ。
誤解がないように言っておく、レモンの役割は油っこさの『抹殺』ではなく『制限』だ。
レモン汁をかけたところでから揚げの油全てが霧散するわけではないのだぞ!」
「確かに油っこさは残るけど、レモンフレーバーという部外者が加わってるのはどう説明する気かい?
……いや、ごめん説明いらないや。君は私の理屈なんかまともに聞いてくれないだろうからね」
マジナは辺りの姉妹全員を見渡した後、
「みんな相手に多数決しようじゃないか。議題はもちろんレモン汁を『かける』か『かけないか』だよ」
「貴様が発起した点だけは気に入らないが、それは建設的でいい案だな。乗ろう」
かくて満月家十人による『から揚げレモン汁多数決』が始まった。
「じゃあレモンかけない派の人、手を上げてー」
かけない派はマジナを筆頭に、コーリン、トツカと、さっさと食べたい気持ちでいっぱいのルシェヌが、
「では、レモン汁かけた方がいいと思う人、挙手!」
かける派は、首魁のサバキ、ピコリ、ユノスが手を挙げる。
「四対三! 私の勝ちだよサバ……」
「おい待て! 挙手しない三人はどっちなんだ!」
「……かける……」
遅れて、イバラがピコリに合わせる形でかける派に賛同する。
「……ネロアとワノは?」
ネロアとワノは論争開幕時からずっと持っていたマヨネーズを隠して、
「僕は……どちらかというとかけない派ですかね?」
「おーっス。あ、アタイもかけない派っス!」
「これにて六対四……今度こそ私の勝ち! ねぇ、君のレモン汁かけが偽善だったことが証明されたよ、サーバーキぃ?」
サバキの顔を覗き、多数決を制して勝ち誇るマジナ。その時、サバキの目は敗者の色をしていなかった。
「多数決に関しては貴様の勝ちだ。だが、それで『今』レモンをかけないことが正しくなるとは限らないぞ」
「は、何で?」
「何故なら今さっき自分がかけたレモンは、予め皿に盛り付けられていたからだ」
サバキは冷蔵庫のほうに行ったネロアとワノへ向いて、
「ネロア、ワノ!」
「は、はいっ!?」
「なにか御用っスか!?」
「戻るついでにレモン汁を持ってきてくれないか」
「あ、それっスか」
「は、はい、わかりました!」
ネロアとワノは、冷蔵庫からマヨネーズと入れ替えて容器入りのレモン汁を持ってくる。
「家でから揚げから出てきた際、レモンをかけたい人は『これ』を持ってきて、自分が取ったから揚げのみにレモンをかける。
しかし今回はくし切りにされたレモンが『予め』同じ皿に置いてあった。
これはどういうことかわかるか? 調理者のイバラが『これはレモンをかけてくれ』というメッセージだ!」
「は、はぁ!? それは解釈が強引すぎじゃないかい!? それだったら先にかけておくべきだと思うんだけど……」
「レモンの風味の新鮮さを大事にしたかったからだろう? とにかく『今回は』レモンをかけるのがシェフ的には正確なんだ。だろ、イバラ殿?」
「……え……わたしは……」
この時、マジナ、サバキ、イバラ以外の七人は、二人に板挟みにされ、触れがたい威圧に包まれたから揚げを見て、思った。
――いい加減から揚げを食べたい。もうレモンかけるか否かとかどうでもいいから食べたい。と。
長女として、コーリンが一番に、その意志を堂々と口にする。
「おい二人とも。もう『かけちゃったものはしょうがない』ってことにして、いい加減食べ……」
「ちょっと待ってろコーリン殿。今話をつけるから」
「いやまだ駄目。あのうるさいワンコをちゃっちゃと躾するまで待ってて姉御」
「そうか、わかった」
と、コーリンが謎の納得をした直後、二人は再び激論を繰り広げようとする。
それから少し遅れて、ピコリが勇気を振り絞って、引くほど大声を上げる。
「そこまでだァア〜!!!
もうやめましょうよ!!! もうこれ以上戦うの!!! やめましょうよ!!!
から揚げがも”ったいだいっ!!!」
「「いくらなんでもうるさいッ!!」」
そしてマジナとサバキによるシンクロツッコミ平手を食らった。
「ピ、ピコリおねえちゃん……!」
その後、満月姉妹は二人を放っておいてから揚げを食べた。
「ただいま……ルシェヌ、何やってるのあの二人?」
「から揚げにレモンをかけるか否かで口喧嘩しておる」
そして二人の口喧嘩はチヨが帰ってくるまで二時間も続いた。
*
から揚げレモン戦争休戦から一時間後、食器を洗い終えたイバラは、キッチンの窓を見て黄昏れていた。
「ずーっとキッチンの窓で自分の顔見て、どうしたのイバラ?」
と、そんな彼女が気になり、ピコリが声をかける。
「……ごめんなさい、ピコリおねえちゃん……わたしがレモンおいたせいで……たたかれて……」
こうイバラは訳を説明するが、彼女特有の舌足らずのせいで、
「……はい?」
残念ながらピコリはわからなかった。
なので、ここで一つ解説を入れるとしよう。
前にいた異世界に『から揚げ』という料理が存在しないため、イバラはから揚げがどんあ料理かわからないまま、レシピの通りにそれを作っていた。
その流れで、イバラは今回の事件の火種となったレモンを『レシピ通り』置いてしまった。
そしてさっきの通り、マジナとサバキの論争の末にピコリはダブル平手を食らってしまった。
だからピコリが叩かれたのは、レモンを置いた自分が悪い。
これがイバラがションボリしている理由である。
「なるほど、そういうことね。イバラ、それは大丈夫、あの二人の叩かれは『ツッコミ』だから。
この世界にはあからさまにわざとおかしいこと――これは『ボケ』っていうの――を言った人をあんなふうに、優しさを込めて叩いて面白くする文化があるの。
だからイバラは悪くないよ」
「じゃあ、だれがわるいの……?」
「え、誰が悪いかっていうと……まぁ、あの二人だよね。
普段からキャラ真逆なせいでピリついてるけど、まさかから揚げ程度であれだけ揉めるとは思わなかったなぁ」
と、数時間前の出来事を回顧するピコリ。
その最中、イバラは物々しい雰囲気を醸し出し、銃を構える。
「あ、あのー。何故に銃出してるんですかイバラさん」
「……てんちゅうだ……あのふたりをはんごろす……」
イバラの復讐の道をピコリは必死の思いで塞ぐ。
「いやいやそこまでしなくていいからイバラ! 確かにあの二人はよくなかったけど、銃使うまではしなくていいから!」
その説得を聞いたイバラは、銃の実体化を解き、入れ替えで籠手を装備……
「拳とか蹴りとか暴力全般もしなくていいから! というよりもう何もしなくていいから!」
「……そう……?」
「そう。多分あの二人もそこまで野蛮じゃないから、『今日はやりすぎた』って思って明日は反省するだろうし。絶対仲直りはしないだろうけど。
てなわけでイバラも今日のことはケロッと忘れて、ね」
「……うん、わかった」
と、イバラは表面上はピコリの言うことを聞いてケロッと今回のことを忘れるとした。そう、表面上は。
(……きっとピコリおねえちゃんは、きょうようされているんだ……あのふたりのせいだ……)
マジナとサバキは、今回のから揚げレモン戦争の戦犯をピコリに仕立て上げ、自分たちの責任はなかったことにしようとしている。先程の暴力も正当化しようとしている。
と、イバラは予想したのである。もちろんそんな訳はないが。
だからこのままではから揚げを作る度に、ピコリが理不尽にさらされてしまう。それは紛うことなき一大事である。
(……てんちゅうだ……)
よってイバラはマジナとサバキに復讐しようと銃を構……えない。
何故なら、先程ピコリに注意されたことを思い出したから。ではなく、
(……そもそもをなくせば……)
根本の原因『から揚げ』。
これを料理人という片翼のプライドにかけて、なんとかしようと誓ったのだ。
*
翌日の夜。
今日もチヨの帰りが遅くなるということで、満月姉妹は先に夕飯をいただくことにする。
本日の献立はオムライス。それと……
「え、今日も?」
「から揚げ、なのか……」
イバラは何も言わず、から揚げ二個がのった小皿を全員に配膳する。
「……とにかく、たべて……」
「『とにかく食べて』だってよ」
「流石にそれは聞こえてるから代弁しなくていいって、コーリン姉さん」
ということで満月姉妹は小皿のから揚げを食べることにする。
「その前に、例のあれを……」
サバキは冷蔵庫にあるレモン汁を取りに行く。
それをイバラは止めようとする。
「……なにも、するな……」
しかし相変わらずの言葉足らずなお願いだったので、サバキは歩みを止めず、
「ん? どうした、レモン汁持ってくるだけだが……」
イバラは銃口をサバキに向けて、
「もってくるな! そのままたべろ!」
殺気を込めて再度求めた。
「こらこら、人に簡単に銃を向けるなと何度言われた……
はぁ、わかった、レモン汁は今日は使わん。イバラシェフがそこまで言うからには思惑があるんだろうからな」
そしてサバキは踵を返して席に戻る。
ついでに、マヨネーズ欲して立ち上がりかけたネロアとワノは、何もなかったかのように座り直す。
さっきのサバキの様子を見ていたマジナは意地悪くケラケラ笑う。
「そうだよー。イバラシェフはから揚げにレモンをかけちゃいけないと思ってるんだよー」
「……チッ、毎度性悪な奴だ」
という訳でマジナとサバキら満月姉妹は、イバラのから揚げを何もかけずに食べる。
「おっ、今日もうまいな! 流石だぜイバラ!」
「ウチもコーリン姉さんと同感。けどさ、なんか今日のから揚げ、昨日とテイスト違くない?」
(昨日と比べて油っこさが少ない。レモンをかけずとも食べやすい……)
(昨日と比べると油っこさが減っているね。けれどもから揚げの美味しさは全く変わってない……)
「ああ、おいしいな」
「うん、おいしいね」
と、二人は感想をハモらせた後、お互い『真似するな』という代わりに相手を睨みつけた。
そして二人はそれ以上は火花を散らさず、二個目のから揚げを食べる。
これにイバラはニッコリする。
「……やった、ピコリおねえちゃん……ぶじだ……」
マジナとサバキのから揚げレモン戦争を止められた故に。
「ところでイバラは、なにゆえ二日連続でから揚げを作ったのじゃ?」
そんなこと聞くな。そもそもお前なんかに教えても猫に小判だ。
と、イバラはルシェヌの問いをうざいと思う。
「あ、それ私も気になってた」
「どうしてだイバラ?」
お前らも聞くな。このハラスメントスケベとバイオレンスワンコ。
と、胸中でつぶやき、イバラは二人を無視してオムライスを食べ始める。
「イバラねーさんは、昨日のリベンジがしたかったんだと思いますよ。
料理人の名にかけて、レモンがあるない関係なく、みんな喧嘩せずに食べられるから揚げを作りたいとね」
昼間、イバラは自腹で鶏肉買ってきて、から揚げの調理方法調べて、試行錯誤していた。
最終的にフライパンに油を薄く溜め、部分的に揚げるやり方――『揚げ焼き』にたどり着き、油っこさ抑えめのから揚げを完成させた。
そしてそれを成し遂げ、大喜びしていたのを、トツカは見ていたのである。
(……ちがう、よけいだ、このトツカ……)
「へー、私たちのことを考えてね……流石だねイバラ」
(……だまれマジナ、おまえなんかにほめられたくない……)
「そうだったのか。ありがとうイバラ。そしてごめん」
(……しるかサバキ、ピコリおねえちゃんにあやまれ……)
二人の言葉を完全シャットアウトし、イバラはオムライスを食べ進める。
照れくさいんだな。と、マジナとサバキは揃って誤解し、彼女と同様にオムライスを食べるのだった。
この後、満月姉妹は昨日の殺伐さとは真逆に、仲睦まじく夕食を楽しむのだった。
*
三時間後。
チヨが買い物バックを提げて帰ってきた。
「お母さん! 先に『遅くなる』とは言っておったが、今日はいくらなんでもおそすぎるのじゃ!」
「ごめんねルシェヌ。今日はちょっと寄り道しちゃって」
チヨは買い物バックをテーブルに置き、中に入った沢山のお菓子を広げる。
「スーパーのクーポンの期限が今日までだったこと思い出して、さっきまとめて帰ってきたの。
みんなで仲良く食べてね。今は夜遅めだからダメだけど」
マジナは沢山のお菓子の中にある、一つの袋を手に取る。
「おおっ、これは『たけのこの脇道』ファミリーパックだ! 私これお菓子の中で六番目に好き」
「六番目って微妙な順位っスね」
「マジナ姉さん苦党だから、トップ五はココアゴリゴリ入りのチョコで埋まってるからね」
沢山のたけのこの横道を見つけて、六位相当にまあまあ喜ぶマジナ。
その脇にサバキは静かに立つ。
「ん、どうしたんだいサバキ? あ、言っておくけど今食べるつもりはないよ。
流石に数秒前の母さんの言いつけを守らないほど私は鳥頭じゃないからね」
サバキは沢山のお菓子をくまなく見た後、チヨに尋ねる。
「『きのこの路肩』は買わなかったのか?」
「あ、う、うん。別に『たけのこ』だけでみんな喜ぶかなーって思っちゃったから」
「おーっと、ドンマイだねーサバキ! けど恨むなら『きのこ』の不人気さを恨んでくれよ!」
「……マジナ貴様! その煽りは流石に看過できないぞぉッ!」
こうして、マジナとサバキによる第二次大戦が勃発した。
「大変だぞイバラねーさん。またマジナねーさんとサバキねーさんがまた喧嘩を……」
「……きせいひん、はんちゅうがい……」
【完】
これはわかる人にしかわかんないネタなのですが、マジナとサバキとイバラのトレードカラー的に、『接続』より『電融』の方が適切だと思いました。
ただ、電融ってなんぞやとなるのでね……




