第105話 シェイプオブ・ツインブレイブ
ある日の満月家にて。
「よぉっしゃぁぁぁぁ!」
と、ピコリは田舎の実家の火災報知器が暴発したくらいの音量で歓喜していた。
「どうしたんだピコリ?」
「如何なる運命に遭遇したのです? ピコリ姉上?」
奇遇にもハモりを見せつつ尋ねてきたコーリンとネロアに対して、ピコリは訳を説明する。
「Mutterで一般の方がやってたプレゼント企画に当選したんだよ! いやー、こういう系のって大抵捨てアカを当選扱いして結局誰にも配んないのが自然の摂理かと思ってたけど、ガチで当たる時もあるんだ〜!」
「なんと、それは紛うこと無き幸運でありましたな」
「で、一体何が当たったんだ?」
「『ACTIVEパーク』の百二十分遊び放題チケット三人分だよ。あ、『ACTIVEパーク』ってのはね……地の文さん、いつものアレお願いします」
ここで一つ解説を入れるとしよう。
ACTIVEパークとは、まるでバラエティ番組のようなスポーツアトラクションが多く集まるエンターテインメント施設のことである。以上。
「ありがとうございます! って感じの施設なの」
「あー、なんか思い出してきたぞ。あの遠めのショッピングモールに入ってる滅茶苦茶うるさいあれか。外から見てると物がごちゃごちゃしててわかりづらかったが、あれそういう施設だったのか!」
「そうそう、あれあれ!」
「左様か。イマイチ全容が掌握しきれんが、さぞ愉快なのでしょうな」
「まあまあ入場料金高いからウチも行ったこと無いけど……もうメチャンコ楽しいらしいよ!
そうだ、偶然か作劇の都合か知らないけど、チケットが三名分あるから、週末にこの三人で行ってみない!?」
「おう、そう言ってくれると思ったぜピコリ!」
「是非も無しです!」
「もちろん行くっスよ!」
「ようし、じゃあ今週末は『ACTIVEパーク』にみんなでレッツゴー!」
「「「おーっ!!」」っス!」
こうして週末に大きな楽しみができた、ピコリたち四人であっ……
「いや待って、何故にワノが湧いてるの!?」
「え、駄目っスか? タダというこの世で最も甘露な言葉に誘われて……?」
「本来はお金の匂いが強いワノの方が似合う台詞だけど、状況が状況だからウチが言お。
……悪いなワノ。このチケットは三人分なんだ」
*
土曜日。コーリン、ピコリ、ネロアの三人は電車に揺られまくってショッピングモール内にあるACTIVEパークにやってきた。
「やっぱガコンガコンうるせぇなぁー!」
入場直後、開口一番にコーリンはぼやき、
「だからKYなことは言わないでよ、姉さん!」
ピコリは注意として彼女を近くにあった謎キャラのオブジェへ押し飛ばす。
謎キャラのオブジェは風船だったので、コーリンは当たった際の反動で即、体勢を直した。
ピコリはネロアの方を向いて、
「とまぁ、こんなふうに色々楽しいところだよ」
「ほほう。天元突破に解しやすい伝承ですね」
「だな……ちなみにピコリ、これは計算してやったのか?」
「二重の意味でその場のノリだよ」
三人はACTIVEパーク内を歩いて周り、まず何で遊ぼうか考える。
途中、コーリンは三角形や星型などの奇妙な形のテーブルが集まった場所を見つける。
「おいピコリ、あのヘンテコで面白そうなのは何だ?」
ピコリはフロアマップを見つつ答える。
「あれは……ビリヤードコーナーだね。普通のビリヤードと違って変わった形のテーブルでプレイできるんだって」
「へー」
三人は星型のビリヤード台に寄り、コーリンは九ボールを手に取り、
「玉がいっぱいあるな……で、これはどうやって遊べばいいんだ? わかるかピコリ?」
「え、ウチもビリヤードはちょっとわかんないかなー」
「じゃあネロアはわかるか?」
「僕にも答を出すことは叶わない」
「二人にもわからないか……でもまぁ面白そうなのは確かだから、とりあえずやってみようぜ!」
コーリンは台に九ボールを置き、手始めにほぼ真っ白のボールを指で弾いた。
「応! さすれば僕が相手をしよう!」
ネロアはコーリンの向かいに立ち、八ボールをほぼ真っ白のボールへ弾いて飛ばす。
「……あのさぁ、二人とも?」
「何だピコリ?」
「どうかしましたかピコリお姉さん?」
「時間制限ありのアクティビティに来て、概ね他所でもできそうなルールがわからないゲームしてもったいないと思わなくない?」
「これ他でもできんのか? こんな凝った机にこんな沢山のキレイな玉並べた遊びを!?」
「えっ、これってこうやってボールを弾く遊びじゃなかったんですか!? 小学生の男の子がよくやってたアレじゃないんですか!?
こういう玉をカードの上に乗せて、パカッと変形させる……」
「ビリヤード知らなすぎでしょ二人とも!?
えー、じゃあ一人ずつ解決していこうかな……
そうだよコーリン姉さん! 台は四角限定だけどできるよ! 銭湯とか専用のお店とかで!
違うよネロア! これはキューっていう棒でボールを弾く遊びだよ! あとよくそんな古めの小学生男児のオモチャ知ってるね!?」
「そうなのか」
「そうなのですね……否、それが真実か」
「二人まとめてツッコミ取るの疲れるなぁ……うん、そう。
あとネロア、これからは厨ニモードOFFにして喋って。
すぐレスポンスできないし、こんだけ派手派手な空間で、ダークファンタジーな世界観広げられると違和感有りすぎてかゆいから」
*
というわけで、ビリヤードはまた別の回のネタにするとして、三人はこのパークの中で最も大きいコーナーに来た。
宙ぶらりんの板やパイプが多く、まともな足場の代わりに、足元にはスポンジのプールが広がっているコーナーだ。
「僕これどこかで見たことあります」
「あれだ、年末とかにやってたマッチョな男どもが変な建物登ってるあの番組だ!」
「そうそう、それそれ」
シノビコーナー。
跳ぶ、捕まる、登るなど、身体能力をフル活用してゴールを目指すアクティビティである。
まるでバラエティ番組のようなアクティビティを楽しむというこの施設のコンセプトに最も適っているコーナーだ。
なので先ほどのビリヤードコーナーとは違い、入口前には列ができていた。
三人はこれに並び、順番が回ってくるまで雑談して時間をつぶす。
「あれはあんまり見ないけど、実際にやれるとなると面白そうだな! な、ネロア!」
「はい、僕はおぼろげな記憶しかありませんがワクワクします!」
(二人とも本格めの異世界でアクションしてたから、『何を今更』とか言うと思ってたけど、楽しんでくれてよかったなぁ……)
運で引き当てたチケットで連れてったことによる上からの目線で、はしゃぐ姉と妹を見てピコリは微笑んだ。
そして数分後、満月姉妹の番が回ってきて、
「うおおおらあああ!」
コーリンは自慢のフィジカルで数々の障害物を力任せに突破、超スピードでゴールし、
「こっちと、あっちと、そっちで……」
ネロアは絶対正規ルートではないところを掴み、跳び、鮮やかに素早くゴールし、
「……実質『何を今更』って言ったようなもんじゃんこれ」
ピコリは二人のウルトラクリアに度肝を抜かれ、立ち尽くした。
「どうぞ始めてください! 僕も応援しています!」
「あ、はい、ごめんなさい」
その後ピコリは、スタッフにやんわり急かされ、心の準備ができないままスタートする。
そして、モチーフの番組内でありがちな、シンプルに練度が足りない故のミスで、スポンジプールに落下した。
*
続いて三人が行ったのはチャンバラコーナー。
参加者四人はそれぞれ頭と両腕に計三枚の電子パネルを装備する。
相手のパネル三枚をスポンジの剣で叩いて倒し、最後の一人を目指すバトルロイヤル形式のアクティビティである。
「おおー! これはさっきのよりも熱いな! 並ぼうぜ、ピコリ、ネロア!」
「はい! コーリンお姉さん!」
(相変わらずはしゃいでるなぁ。チャンバラなんて二人とも散々やってきたはずなのに……)
数分後、三人の順番が回ってくる。
入口付近でパネル付きのヘルメットと籠手、それといくつか種類があるスポンジ剣を選んで取る。
コーリンとネロアは中くらいの長さの――二人本来の得物に近いタイプの剣一本を、ピコリは直感のかっこよさで二刀流を選ぶ。
「あれ、ネロアって二刀流じゃないの?」
「僕は一刀流ですよ。だいーぶ幼いころには二刀流をしていたことがありますけど、一本を集中して操ったほうが、手数も力も出やすいと気づいて、それからはずっと一刀流です」
「へぇ……ごめんね、VRMMOゲームやってたからって偏見しちゃって」
そして、ネットに囲まれた円形バトルフィールドで、満月姉妹三人と完全初対面の青年一人はお互いを視界に据えて佇む。場が整うや否や、試合開始の音が鳴る。
「どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ! 猪突猛進ッッ!」
一番早く行動したのはピコリだった。ピコリは両手の剣を飛行機の翼めいてピーンと伸ばした状態で、コーリンへ猛突進する。
(さっきの会話からしてネロアの剣術はかなりヤバい!
だからここはコーリン姉さんを狙う!)
コーリンはネロアと同じ剣士キャラだが、どちらかというと専用武器の強さに依存していそう。つまり剣術の方は比較的に弱そう。
つまり速攻して押し切ればヘナチョコ一般人のピコリでも勝てる――と、彼女は浅はかに目論んだ。
「せい、へい、あほい」
そしてピコリはコーリンの的確な三段突きでパネル三枚を鳴らされ、秒で敗北した。
コーリンは、刀と妖が物をいう戦国時代風の異世界『センランド』に転生した。
確かに彼女は技より力な気風ではある。しかし一般人の突撃に一本取られるようなやわな腕ではないのだ。
「こ、こんなあっさり……」
「わりぃなピコリ。オレはあんまり手加減ができないタチなんでな。
あと、別な用事があるんでな」
邪魔にならないようにフィールド外へ移動するピコリから、拍手しつつ隙を感じさせないゆったりとした歩みで迫りくるネロアへ、コーリンは目線と剣先を移す。
「お前とチャンバラやるのは……修学旅行の時以来だな?」
「はい。正直あれが最初で最後だと思っていましたが、世の中何が起こるかわからないものですね」
「残念だが真剣じゃないけどな」
「スポンジ剣でもいいじゃないですか」
「まあな。どのみちチャンバラ勝負が出来るんだからいっか!」
「ええ、コーリン姉さん!」
二人はほぼ同時に床を強く蹴り、フィールドの中央で激突、お互いの得物で鍔迫合わせ、ギュピギュピ音を鳴らす。
コーリンは持ち前のパワーでネロアを後方へとジワジワ倒す。
このまま倒されれば一気に三パネル破られてしまう。
そう確信したネロアはコーリンの剣を自分の左腕で代わりに受ける。
当然コーリンは左腕のパネルを鳴らす。
刹那、ネロアは片足を軸に一回転し、最中にコーリンの右腕のパネルを叩く。
「転んでもタダでは起きないか……」
「ええ、ついでにおまけもいただきます!」
コーリンと目を合わせた時、ネロアは素早く二太刀目をコーリンの左腕へ繰り出す。
「そこまではいらねぇよ」
コーリンはこれを見切っていた。
二本のスポンジ剣がポスッと音を立てて交差する。
「……見応えある試合なんだけどなぁ。スポンジの音がすごい脱力感を誘っちゃってる……」
それから二人は一進一退の剣戟を繰り広げ、フィールドに何度もポスポス音を鳴らしていく。
「二対二……差は広げられませんか」
「そんな焦るなってネロア。もうちょい気ままにやろうぜ」
しかし、最中、スタッフがブブーっと警告のブザーを鳴らして、
「すみません、お二人さん。もう一人の方とも遊んでくれませんかー?」
と、フィールドの隅で棒立ちしている青年を指して二人に注意した。
「「あ、すみません……」」
という訳で二人は一時休戦し、青年の方へ向き、小声で話し合う。
「どうする、二人がかりでパッパとどかしてしまおうか?」
「それではあの方が可愛そうですよ。ここはまず、二人がかりでやんわり襲いかかって、徐々に混戦模様を出して……あとはその場に合わせてやりましょう」
「半分八百長に漬かっているような気もする作戦だが、オレの考えより遥かにいいから……それで行こう」
というわけで、二人は青年の方へ、普段なら絶対しないような、付け入る隙だらけの体で歩く。
「おい二人さん、それは僕に対する舐めプかい?」
「は、舐めプ?」
「舐めプレイ。相手を自分より格下と決めつけて、わざと手を抜いて動くことです」
さっきの打ち合わせの時点で実質舐めプレイであるのは明白だが、二人は気を使って首を横に振る。
しかし青年はその否定を否定する。
「嘘だね。だって君たち、あまりにも殺気がないもの」
「何だその勝手な決めつけ。それと何故にお前が殺気があるないわかるんだよ?」
「わかるんだよそれが。だって僕は……『剣皇』だからさ」
剣皇――青年がこの言葉を口にした途端、スタッフが彼の素性を思い出し、驚嘆する。
「ああ、思い出した! あの人は三年前くらいに全国のACTIVEパーク・チャンバラコーナーで無敗を誇ったという伝説の『ACTIVEパークの剣皇』こと、剣城ヤイバさんだ!」
「な、剣城ヤイバだと!」
「実在したのかアイツ!」
「嘘だろ……まさかアイツが復活するなんて!」
剣皇、剣城ヤイバの帰還。その事実がACTIVEパーク周辺の人々を大いに震わせる。
「武勇伝が局地的過ぎっ!? あと名前がギャグマンガばりに雑すぎるって!」
ピコリのツッコミをかき消すぐらいに。
「剣皇か。そうか、だからオレたちの殺気を感じ取れたのか!?」
「剣皇……お、お見逸れしました!」
「こらこら二人とも、そんな井の中の蛙の模範解答みたいな人なんかに気圧されちゃ駄目だって!」
そんなピコリのツッコミもこれまた虚しく騒音にかき消され、コーリンとネロアはガチの警戒体勢を取る。
「ようやく僕と真剣に取り組む気になったんだね。いいさ……そうでなきゃ僕の相手は務まらない!」
ヤイバは手に持つスポンジ剣を縦に二分割し、二本の剣を作る。
さらに二本の剣の刃を二つに展開し、双刃の剣に変える。
「で、出た! 剣皇しか使いこなせない双刃剣二刀流だ!」
「まさか生で拝める日がくるなんて……!」
「ああいうタイプの剣も取り揃えてるとか、この施設すご……」
ヤイバは両手の双刃剣を器用に回転させつつ、
「さっきの君たちの殺陣を見て思った……君たちは剣聖復活の狼煙上げにふさわしいと! 故に……」
二人に言い放ち、
「全身全霊本気でかかってこい! 僕はそれを凌駕する力でもてなしてやる!」
そのまま二人に突撃する。
計四つの刃による変則的な連撃が二人を同時に襲いかかり、二人はその対処に追われる。剣皇の名前は伊達ではなかったのだ。
「なんていう絶え間ない攻撃!? ここまで強いとは予想外でした!」
「ちくしょう、震撼剣があればこんな奴イチコロなのに……!」
ここで一つ解説を入れるとしよう。
震撼剣とは柄に銃とよく似た機構を仕込み、引き金を引いて火薬を炸裂させることで爆発的威力を生み出せる、コーリンの愛刀である。
普段はお札にしてコンパクトに携帯しているのだが、今はフィールドの入口のロッカーに置いてあるため使用不可能である。
「仮に持ってたとしてもゲームルールと銃刀法のダブルアウトになってたけどね」
ヤイバの剣技にジリジリと押され、フィールドの隅まで追いやられるコーリンとネロア。
流石の二人でも剣皇は分が悪かったか、と、観客たちが二人の敗北を予想し始めたその時。コーリンが剣皇の双剣を大きく弾く。
「やっぱ震撼剣いらねぇや。こんな奴に使うのもったいねぇや」
「僕もスキルを発動しようかと考えました。危うかったです」
ヤイバは手放しかけた剣を握り直して、
「おお、さては僕の隠しきれない弱点に気づいたか……」
ヤイバの攻撃は二本の双刃剣を使っているため、手数は多い。
その代わりに一撃一撃はさほど重くないのである。しかし……
「いや、それは興味ない」
「何ッ!?」
「別にお前なんか弱点突かなくても倒せるんだよ。オレ『ら』ならな!」
ネロアはコーリンの前に立ち、ヤイバに乱れ突きを繰り出す。
ヤイバはこれを圧倒的な数を誇る連撃で押し返し、攻勢に転じる。
その矢先、ネロアの前にコーリンが割って入る。豪快に双剣を弾き、ヤイバをのけぞらせる。
「生憎だがオレは力押しには自信があるんだ。ただし仕上げは……」
コーリンは速やかに横へ移り、
「僕がやります!」
ヤイバが体勢を立て直す前に、道を譲られたネロアが素早く、右腕パネル、左腕パネルを鳴らす。
そしてトドメに頭のパネルを鳴らす……前に、ヤイバが双剣で防御する。
「パネル二枚を破ったことは純粋に褒めてあげる。だが、それだけじゃあ勝利にはまだほど遠い、よ!」
ヤイバは双剣を力いっぱい振り、ネロアの剣を脇へ飛ばす。
これで防御手段がなくなったネロアへ、ヤイバは情け無用に双剣を振りかざす。
「まだだ!」
その前に再びコーリンが立ちはだかり、ネロアへの攻撃は遮られる。
だがこれはヤイバの想定内。ネロアが剣を拾う前にコーリン一人を追い詰めることこそ、真の狙いなのだから。
しかしネロアは、ヤイバの想定を遥かに上回る早さで剣を回収し、コーリンの助太刀へ行く。
ヤイバは最後のパネルを守るため、全身全霊で連撃の壁を作る。しかし二人の気概と熱量はそれを遥かに上回る。
最後は二人で戦う……その願いを叶えるため、二人は同時にヤイバの剣それぞれを叩き飛ばし、
「しまっ……」
「食らいやがれェ! 『朱ざ……くおおおおお!」
「お相手ありがとうございました! 【堕落のしょ……りゃぁ!」
「二人とも今、技名言いかけたよね!?」
摩擦熱で火を帯びそうだけどそうでもなかった一刀。
闇を帯びている気もしなくもない剣閃。
この二つが十字に交差し、ヤイバの三枚目のパネルを叩き鳴らした。
「……二人がかりで戦うなんて、どうかしてるって……!」
「その断末魔、色々と今更過ぎだって」
剣皇、敗れる――衝撃的事実によるどよめきに囲まれたフィールドを、ヤイバがとぼとぼと出ていく中、コーリンとネロアは向き合い、お互いの右拳を合わせて、
「何も言ってないのによく共闘してくれたな。ありがとう、ネロア」
「こちらこそありがとうございます、コーリンお姉さん。特に連絡もなく護衛のタイミングを合わせてくれまして」
お互いの健闘を褒め称えたのだった。
その様を見て、ピコリは思う。
「すごいなぁ。これぞ絆の力っていうのかな。こんな打ち合わせ不足を補えるなんて」
かくて邪魔者はいなくなった……二人きりになったところで、二人は剣を構え直す。
「さぁ、勝負再開と行こうか、ネロア!」
「是非も無しですよ、コーリンお姉さん!」
しかしここでスタッフがブザーを鳴らす。
「ごめんなさい、並んでいる方が非常に多いので、中断してください!」
「えー、そんなー」
「あらら、そこまで長時間戦っていたのですか」
「切実だけどやむを得ないかなぁ。あの二人だと小一時間は戦っちゃうと思うし」
*
その後、試合を中断されやるせなくなった二人は、チャンバラ以外のアクティビティをたんと楽しみ、入場時間を満足に使い切った。
「いやー、遊んだ遊んだ。また懸賞当てて連れてってくれよなピコリ」
「うん! って、懸賞当て前提なんだ……」
「特にチャンバラコーナーは楽しかったですね。コーリンさんと手合わせできましたし、何よりヤイバさんへ一緒に立ち向かえましたし」
「そうそう、姉妹仲良くやれて楽しかったぜ!」
そして二人はハイタッチ。これを見てピコリはシンプルに、
(息合ってるなぁ。わりと属性逆なキャラ同士なのに)
と、思った。
ACTIVEパークを出てからすぐ、三人はフードコートにやってくる。
「もうお昼だし、ここで食べて行こうぜ」
「いいですよ」
「だね! じゃあウチはあそこのラーメン頼む!」
ピコリは現在位置から見て、フードコートの真ん中辺りにあるラーメン屋を指さし、
「じゃあオレはあそこにする」
コーリンはだいぶ右にあるそば屋を指し、
「僕はあちらで頼みたいと思います」
ネロアはだいぶ左にある親子丼屋を指し、各々注文しに行った。
約十分後。
(だいぶ並んだなー。あそこ人気だからかな)
ピコリは注文したラーメンを持って、姉妹がいる場所を探し、混雑するフードコートを右へ右へと歩く。
「おーい、こっちだピコリ」
四人テーブルに座っているコーリンが手招きしてくれた。
「あ、今行くー……ってあれ? ネロアはどうしたの?」
「多分、まだ並んでるか、オレらのこと探してるかじゃねぇの?」
「そうかもね。今日は滅茶苦茶混んでるし。じゃあウチが呼んでくる」
ピコリはテーブルにラーメンを置いて、ネロアを探して混雑するフードコートを左へ左へと進む。
「待ってましたよ、ピコリお姉さん」
開放感あるガラス張りの壁の近くにある四人テーブルに座るネロアが手招きする。
「え、ネロアも座ってたの……!?」
「はい、運良く雰囲気のいい空席を見つけまして。
きっとお二方もここを狙っていると思って、待っていました」
「ああそう。じゃあコーリン姉さんのとこに行ってくる」
そう言ってピコリはコーリンの席に戻っていく。
その最中、ピコリはぼやく。
「絆の力も、流石にこんな細かいところでは働かないか」
【完】




