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北宋の悪女、1986年の男  作者: ひまえび
第一章――「清河県の美しい毒、追う男たち」

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第5話(中編2)――「4疋を4疋と記す」

 崔麗華(ツイ・リーファ)が6人部屋へ戻ると、李月娥(リー・ユエオ)と張玉蘭(ジャン・ユーラン)が先に戻されていた。月娥は寝台に腰を下ろし、玉蘭は戸口の近くに立っていた。


「絹が見つかったと聞きました。私たちはもう、盗んだと疑われずに済むのでございますね」

 玉蘭が尋ねた。

「4疋とも裁縫場にございました。盗みの疑いはなくなりましたが、受け取りを確かめずに戻った責任は残ると、彩雲様から言われました」


 玉蘭は喜びかけた顔を曇らせた。それでも、盗んだことにされるよりはよいと、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。


「それなら、なぜ受取帳には3疋と記されていたのですか」

 月娥が尋ねた。

「そのことを私から話してよいか、まだ分かりません。皆が揃えば、玉英様からお話があると思います」

「一緒に疑われた私たちにも、話せないのですか」

「私の判断で広めてよいことか分からないのです。申し訳ございません」


 月娥が何か言いかけた時、廊下から足音が聞こえた。呉春燕(ウー・チュンイェン)、周小蓮(ジョウ・シャオリエン)、沈香児(シェン・シャンアル)が見張りに連れられて戻ってきた。


 香児は麗華に駆け寄り、もう別々に調べられずに済むのかと尋ねた。盗みの調べは終わったと聞くと、寝台の柱へ手をついた。


「よかった……。家へ帰されるのかと思いました」

「帰されるだけなら、まだよい方です。宮中の品を盗んだとされれば、その前に罰を受けます」

 月娥の言葉に、香児は顔をしかめた。

「せっかく見つかったのでございますから、そのような話はやめてください」

「見つかったから言えるのです。次も同じように助かるとは限りません」


 戸が開き、孫玉英(スン・ユーイン)が入ってきた。6人は話をやめて並んだ。


「緋色の絹は4疋とも裁縫場で見つかりました。お前たちが盗んだのではありません。ただ、荷や寝所を調べ、仕事から外して別々に話を聞いたことは、必要な調べだったと理解しなさい」


 6人が返事をすると、玉英は全員の顔を見渡した。


「一方で、お前たちは裁縫場で数を確かめる前に戻っています。戻るよう命じられたとしても、相手が4疋受け取ったと確認しなければ、倉の品を正しく渡したことにはなりません」


 月娥が頭を下げた。


「申し訳ございませんでした」

「お前は3年働き、新しく入った者へ教える立場です。受け取りを確かめずに済ませた理由を申してみなさい」

「戸を閉める時刻で、芳華様から戻るよう命じられました。これまでも、数を確かめるのを翌朝に回すことがございました。正しいとは思っておりませんでしたが、裁縫場の方に急ぐよう言われれば、従うものだと考えておりました」

「相手が上の者なら、数を確かめなくてもよいということにはなりません」


 月娥は頭を下げたまま黙った。玉英は麗華にも目を向けた。


「お前は倉で4疋を見て、帳面にも記しています。それなのに、渡す時の確認はしなかったのですね」

「はい。入ったばかりの私から、確かめていただきたいと申し上げてよいか分かりませんでした」

「分からなければ、月娥に尋ねることはできたでしょう」


 麗華は絹を運んだ時の自分を振り返った。木枠を置けば仕事は終わり、あとの記録は女官同士で行うものだと考えていた。余計な口を利き、上の者へ逆らったと受け取られることも恐れていた。


「私の仕事は、裁縫場まで運ぶことだと考えておりました。受け取りまで確かめるべきだと、月娥さんに尋ねようともしませんでした」

「命じられた数を、命じられた場所へ渡すまでが仕事です。置くだけでは済みません」

「承知いたしました。相手が受け取った数を確かめるところまで、務めます」


 玉英はほかの者にも同じように言い聞かせた。


「次からは、渡す時にその場で数を読み上げなさい。相手が忙しくても、数だけは確かめてもらいます。誰であっても同じです。拒まれた場合は、そのまま帰らず、私へ知らせなさい」


 6人の返事を聞くと、玉英は明朝から倉の仕事へ戻るよう命じた。そして、麗華にだけ同行を求めた。


「彩雲様がお呼びです」

「まだ何か、疑われているのでございますか」

 香児が不安そうに尋ねたが、玉英は関係のないことだと退けた。


 麗華は5人を部屋に残し、玉英と廊下へ出た。


 ◇ ◇ ◇


 劉彩雲(リウ・ツァイユン)は布の倉で、戸を閉める前の確認をしていた。棚には白絹、染めた絹、麻布が分けて積まれ、それぞれに木札が下がっている。帳場には麗華の帳面が置かれていた。


 麗華が前に立つと、玉英は彩雲の隣へ移った。


「帳面を初めから読みました。家族の名や住所に続いて、宮中で会った者や運んだ品の数、布の傷まで記されています。誰かに命じられたのですか」

「誰からも命じられておりません。忘れないために書きました。自分の身を守るためでもあり、同じ間違いを繰り返さないためでもございます」

「華宝舗でも、そのように記録を残していたのですね」

「店では品ごとに帳簿を分け、受け取った日や相手、数と銀、売れた数と残りを記しておりました。数が合わなければ、その日のうちに品と銀を数え直し、受け渡しをした者へ確かめます」


 彩雲は帳面を開いたまま聞いていた。


「それでも原因が分からなければ、翌日へ持ち越すのでしょう」

「はい。ただし、分からないまま数字だけを直すことはいたしません。あとで品が見つかれば、今度は帳簿が合わなくなります。誰かが持ち去った場合も、数字を合わせてしまえば、調べる手掛かりを失います」


 彩雲は緋色の絹について記した頁を示した。


「ここには倉で見た数と、木枠への載せ方だけが書かれています。裁縫場へ4疋渡したと記しておけば、自分に有利だったでしょうに」

「受け取りの確認を見ておりませんので、書けませんでした」

「誰かに見せるつもりで付けた帳面ではないのでしょう。それでも、確かめたことしか書かないのですね」

「あとで自分が読んだ時、見た事実と、自分がそう思っただけのことを区別できなくなるからでございます」


 彩雲は帳面を閉じた。


「芳華と秀芳が何をしたか、聞いていた範囲で説明しなさい」

「秀芳様は、手続きを取らずに緋色の絹を使いました。芳華様は裁ち残しを別の布で包んで隠し、新しく届いた4疋のうち1疋を移して、受取帳には3疋と記されました」

「なぜ、そうしたと考えますか」

「叱られるのを避けようとしたのだと思います。ただ、お2人からお気持ちを直接聞いたわけではございません」

「お前は、そこまで分けて答えるのですね。ですが、人に命じる時には、自分で見ていないことも判断しなければなりません」

「その時は、分かっている事実をもとに、最も無理のない判断をいたします。あとで違うと分かれば、改めます。間違いを認めずに続ければ、損が増えますので」


 彩雲は玉英へ顔を向けた。


「店を持っていたという話は、誇張ではなさそうですね」

「女官選びでも、品書きの誤りを3か所見つけたと聞いております。琴は2か月しか習っていないと、自分から申したそうです」

「宮中へ入ろうとする娘なら、少しでもよく見せようとするものですが」

「あとで嘘と分かることを避けたのでしょう」


 麗華が黙って聞いていると、彩雲は帳面を差し出した。


「返します。ただし、今後は宮中の布について、私物の帳面へ勝手に書いてはなりません。品の数を外へ持ち出せば、それだけで疑われます。帳面を失い、誰かに拾われても、お前だけの問題では済みません」


 麗華は両手で受け取った。


「承知いたしました」

「人の名を書き並べることも控えなさい。誰がどこで働き、誰の命令を受けているかが分かる記録は、使い方によっては危険です」


 父母と兄の名を忘れないために、文亮(ウェンリャン)がくれた帳面だった。仕事のことを書き続けた結果、家族から贈られた物まで取り上げられるのは避けたかった。


「宮中の仕事については、今後は書きません」

「ですが、品の数をすべて覚えておくのも無理でしょう。仕事の記録には、こちらを使いなさい」


 彩雲は卓の端から竹札を取った。


「決められた竹札へ書き、仕事が終われば倉へ残します。寝所へ持ち帰ってはなりません」


 麗華はすぐには手を出さず、命じられる仕事を確かめた。


「私が数を記すのでございますね。これまでは、月娥さんが担当しておられましたが」

「月娥には、運ぶ者の組み合わせと戻った時刻を見てもらいます。お前は倉から出す数と、裁縫場が受け取った数を記しなさい。入ったばかりだからこそ、勝手なやり方を覚える前に教えます」

「相手が数の確認を拒まれた時は、玉英様へ申し上げます。ご不在の場合や、呼ぶほどのことではないと言われた場合の扱いも、お教えください」

「玉英がいなければ私を呼びなさい。呼ぶ必要があるかどうかを、裁縫場に決めさせることはありません」


 彩雲は竹札を差し出した。


「倉から4疋を出したなら、裁縫場でも4疋を受け取ったと確かめる。それを記すのです」


 麗華は今度こそ受け取り、承知したと答えた。


「任せるのは竹札への記録だけです。帳簿へ書き込んだり、品に触れる者を勝手に調べたり、裁縫場へ命令したりすることは許しません。お前は引き続き、品を運ぶ下働きです」

「承知しております」

「その割には、うれしそうですね」


 麗華は思わず自分の顔へ手を当てた。


「仕事を1つ任せていただけましたので」

「位が上がるわけではありませんよ」

「それでも、数に間違いがあれば、その日のうちに分かります」


 彩雲は棚の札へ目を移した。


「明朝、日の出前に来なさい。初めは白絹と麻布だけを記します。遅れれば、竹札は月娥へ戻します」

「遅れずに参ります」


 玉英に部屋へ戻すよう命じられ、麗華は竹札を帳場へ置こうとした。彩雲が手元を見た。


「まだ何も書いていませんよ」

「仕事が終われば倉へ残し、寝所へ持ち帰ってはならないと伺いましたので」


 彩雲が玉英を見ると、玉英は口元に出かかった笑いを抑えた。


「そこへ置いていきなさい。明朝使います」


 麗華は竹札を帳場の端へ置き、礼をして倉を出た。


 ◇ ◇ ◇


 部屋へ戻ると、夕食が届いていた。粥のほかに豆腐と葱を煮た椀が付き、生姜の匂いが冷えた室内に広がっていた。


 香児に何を聞かれたのか尋ねられ、麗華は帳面に仕事を書いた理由を問われたことと、今後は宮中の品や人について私物に記してはならないと教えられたことを話した。


 寝台に座って帳面を開くと、緋色の絹を記した頁が目に入った。疑いを深める材料にもなった記録だが、倉で4疋を見たことを確かめる助けにもなった。それでも、同じように書き続けるわけにはいかない。


 麗華は頁を破らずに残した。破れば、今度は何かを隠したと疑われかねない。今後は書き加えず、失わないようにするしかなかった。


「絹が見つかったことも、記さないのですか」

 月娥が尋ねた。

「はい。この帳面は宮中の帳簿ではございませんので」

「あとで忘れることもあるでしょうに」

「それでも、書いてよいことと悪いことは分けなければなりません」


 麗華は帳面を閉じ、寝台の下の箱へ戻した。


 食事をしながら、香児と玉蘭は取り調べで聞かれたことを話し始めた。春燕も、裁ち台の緋色の布を見たと答えた経緯を話した。麗華は止めなかったが、芳華と秀芳については口にしなかった。玉英が説明していない以上、自分から広める必要はなかった。


 粥を食べ終えた月娥が、麗華へ目を向けた。


「明日からも6人で働くと聞いていますが、あなたには別の仕事も命じられたのでしょう。戻ってきた時の顔が、取り調べを受けた者の顔ではありませんでした」

「そのように見えましたか」

「店で新しい品を仕入れた時も、あのような顔をするのではありませんか。あなたの店は見たことがありませんけれど」


 麗華は箸で豆腐を分けた。


「明日から、倉が出す数と裁縫場が受け取る数を、竹札へ記すよう命じられました」


 月娥の箸が止まった。


「それは、これまで私がしていた仕事です」

「そのことは彩雲様にも申し上げました。月娥さんには運ぶ者と戻った時刻を確かめていただき、私が品の数を記すとのことでございます」

「数も私が見ていたのに……」

「彩雲様に、改めてお申し出になりますか」


 月娥は言いよどみ、椀へ目を落とした。麗華には、数を書く仕事を惜しんでいるだけには見えなかった。入ったばかりの者が彩雲から直接仕事を任され、自分の立場が損なわれたと感じているのだろう。


「私は、宮中の仕事の順序をまだ知りません。月娥さんには、これまでの運び方を教えていただきとうございます」

「数を書くのでしたら、私が教えることはないでしょう」

「どの作業場がいつ忙しくなるのか、誰が受け取りを担当するのか、私には分かりません。どなたへ申し出ればよいかも、教えていただく必要がございます」


 月娥は返事をしなかった。麗華は続けた。


「これは彩雲様の命令ではなく、私からのお願いです。月娥さんが数を確かめる時は、私も手伝います。糸の残りが合わなければ、受け取った分と渡した分を一緒に調べます」

「それでは、今までと同じではありませんか」

「はい。決められた竹札へ書き、倉へ残すようになるだけでございます」


 月娥はしばらく考えたあと、明朝、裁縫場へ向かう前に受け取りの担当者を教えると答えた。


「ただし、私に相談せず、勝手に相手を引き止めてはなりません」

「承知いたしました。数が合わなければ、まず月娥さんへ申し上げます」


 月娥がようやく箸を動かすと、香児が2人を見比べた。


「では、麗華さんも私たちへ仕事を命じるようになるのでございますか」

「なりません」


 麗華と月娥の声が重なった。玉蘭が笑い、それにつられて香児の頬も緩んだ。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝、麗華は日の出前に布の倉へ入った。乾いた絹と木棚の匂いがし、薄暗い倉内には灯明が2つともされていた。彩雲は帳簿を開き、玉英は棚の札を確かめている。帳場の端には、昨夕置いた竹札があった。


「間に合いましたね。白絹から始めます。棚の札と品を確かめなさい」


 麗華は木札を読み、積まれた白絹を数えた。


「18疋ございます。本日は4疋を裁縫場へ出しますので、残りは14疋でございます」


 命じられて筆を取り、日付と品名、倉にある数、出す数、残りを記した。彩雲は竹札を確かめ、受け取りの欄は空けておくよう念を押した。


 月娥たち5人が来ると、玉英は白絹4疋を木枠へ載せるよう命じた。緋色の絹を運んだ時と同じ2台を使い、前は月娥と玉蘭、後ろは麗華と香児が持った。春燕と小蓮は左右に付いた。


 出発する前に、麗華が数を読み上げた。


「白絹4疋、木枠は2台で、1台に2疋ずつ載せております」


 月娥が確認したと答え、ほかの4人も目で数えた。6人は木枠を持ち上げ、倉を出た。


 通路には掃除をする女や炭を運ぶ者が行き来していた。濡れた石敷きに木枠の脚を当てないよう、歩幅をそろえて進んだ。


 裁縫場の戸は開いていた。受け取りに出てきたのは芳華ではなく、30歳ほどの女官だった。指示された場所へ木枠を置くと、女官は奥へ戻ろうとした。


 月娥が麗華を見た。麗華は竹札を持って待ち、月娥が一歩前へ出た。


「恐れ入ります。白絹4疋をお持ちいたしました。数をお確かめください」

「今は手が離せません。置いて戻りなさい」

「玉英様から、その場で数を確かめるよう命じられております。1台に2疋ずつ、合計4疋でございます」


 女官は顔をしかめた。


「木枠が2台あるのは、見れば分かるでしょう。朝から面倒なことを申しますね」


 月娥の顔に迷いが表れた。麗華は口を挟まずに待った。確認を拒まれれば玉英か彩雲を呼ぶ決まりだが、今、相手と話しているのは月娥だった。


「申し訳ございません。お確かめいただけない場合は、玉英様をお呼びするよう命じられております」


 女官は不満そうに木枠へ戻り、白絹に手を置いて数えた。


「こちらに2疋、こちらにも2疋。4疋、確かに受け取りました」


 麗華は竹札の受け取りの欄へ4疋と記した。


「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」

「私の名まで書くのですか」

「受け取ってくださった方の名を残すよう、命じられております」


 言ってから、麗華は手を止めた。数を記すようには命じられたが、受取人の名については聞いていなかった。


「申し訳ございません。お名前を記すべきかは、まだ確かめておりませんでした。玉英様へ尋ねてからにいたします」


 女官は呆れたように麗華を見た。


「楊桂香(ヤン・グイシャン)です。書くかどうかは、戻ってから決めなさい」


 麗華は礼を述べ、6人は空の木枠を持って裁縫場を出た。


 通路へ出ると、月娥が声をかけた。


「名前を聞いてから言い直すので、桂香様も変な娘だと思ったでしょうね」

「命じられたと申したあとで、数のことしか伺っていないと気づきました。次からは、先に玉英様へ確かめます」

「相手の機嫌を損ねることもありますよ」

「嫌われたくはございません。ですが、命じられていないことを、命令だと言い張るわけにも参りません」


 月娥は麗華を見てから、前へ向き直った。


「母上から厳しく教えられたようですね」

「勝手なことをすれば、その日のうちに直されました。店では、間違えれば銀も減ります」

「宮中では銀だけでは済みません」

「昨日、よく分かりました」


 倉へ戻った麗華は竹札を彩雲へ渡し、受取人の名を尋ねた際のことも報告した。


「名を残すよう命じられたと申し上げてしまいましたが、そのようには伺っていないと気づき、玉英様に確かめてから決めると言い直しました」

「相手は誰でしたか」

「楊桂香様でございます」


 玉英が彩雲へ、受け取った者の名も記した方がよいと進言した。


「下働きから名を尋ねられるのを嫌う者もいるでしょう」

 彩雲が言うと、玉英は答えた。

「竹札を見せ、私の命令だと伝えさせます」


 彩雲は桂香の名を書き加え、竹札を麗華へ返した。


「次からは、受け取った者の名も記しなさい。今度は命じました」

「承知いたしました」

「ただし、何でも疑ってかかる必要はありません。相手が忙しければ待ち、数が合えば余計な質問はしないこと。合わない時だけ、月娥と玉英へ知らせなさい」


 麗華が返事をすると、次は麻布を確かめるよう命じられた。


 棚の束を数え、木札と照らし合わせる間に、月娥が運ぶ者を決めた。香児と玉蘭は木枠を用意し、春燕と小蓮は縄が傷んでいないか確かめていた。


 麗華の衣服も寝所も、下働きという身分も変わらない。皇帝へ近づいたわけでもなかった。それでも、倉から出た数と、作業場が受け取った数を記す仕事が加わった。


 4疋を運べば、相手にも4疋と確かめてもらう。上の女官に急かされても、その確認を済ませてから戻る。麗華は竹札を手元へ置き、次に運ぶ麻布の数を書き入れた。

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