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北宋の悪女、1986年の男  作者: ひまえび
第一章――「清河県の美しい毒、追う男たち」

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第5話(前編2)――「300騎と消える女」

 1223年11月初め。


 金軍との戦に勝ちながら、矢傷の悪化によって阿爾布罕(アルブハン)は死亡した。


 夫を失った耶律玉蘭(イェリュ・ユーラン)には、阿爾布罕とともに戦ってきた契丹騎兵300人が残された。


 彼らは玉蘭の耶律家と古くからつながる者たちである。


 一方、倉達也(ツァン・ダーイエ)には別の事情があった。


 蒙古軍の内情はかなり分かったが、蒙古との関係をここで切るつもりはない。将来は南宋軍のために大量の軍馬を買う必要があり、その時には再び交易商人として蒙古へ入ることも考えていた。


 阿爾布罕の妻と300騎を自分が連れ去ったと知られるわけにはいかない。


 達也と玉蘭は、誰にも知らせず別々に蒙古を離れる方法を考える。

 (1223年11月初め、蒙古軍交易所)


 阿爾布罕(アルブハン)が死亡した翌朝、交易所の地面には白い霜が降りていた。


 夜の冷え込みが残り、水桶の表面には薄い氷が張っている。兵たちは声を抑え、阿爾布罕の遺体を運び出す準備をしていた。


 耶律玉蘭(イェリュ・ユーラン)は夜が明けても夫のそばにいた。


 倉達也(ツァン・ダーイエ)は部屋へ入ったが、声をかけずに引き返した。


 今は玉蘭と今後について話す時ではない。


 阿爾布罕を葬る方が先だった。


 昼前になると、交易所の外へ兵たちが集まった。


 阿爾布罕の部下だけではなく、近くの軍営からも知り合いの将兵が来ている。


 遺体が運び出されると、兵たちは馬を降りた。


 阿爾布罕が使っていた馬も引かれていた。主人の姿を探すように首を動かし、何度も鼻を鳴らしている。


 玉蘭は遺体の後ろを歩いた。


 達也も参列した。


 阿爾布罕は大軍を率いる将ではなかったが、長く戦場で暮らし、部下と同じ物を食べ、勝てば一緒に酒を飲んだ男だった。


 最後の戦でも1000騎を率いて約1800の金軍を破っている。


 そのため、阿爾布罕の死を惜しむ兵は多かった。


 葬送が終わったあとも、玉蘭は墓の前に残った。


 達也は離れたところで待った。


 やがて玉蘭は墓へ頭を下げ、こちらへ歩いてきた。


「お待たせしました」


「構いません」


 2人は交易所へ戻った。


 途中で玉蘭が尋ねた。


「主人は、あなたをかなり気に入っていました」


「私も阿爾布罕とは気が合いました」


「最初は怪しい商人だと言っていたのですよ」


「最後まで怪しいと思っていたでしょう」


「ええ。ただ、悪い男ではないとも言っていました」


 達也は少し笑った。


「それなら十分です」


 玉蘭は前を向いた。


「もう一度、一緒に酒を飲ませてあげたかった」


 達也は慰める言葉を口にしなかった。


 玉蘭もそれを求めてはいなかった。


 夫を失った事実は、言葉で軽くできるものではなかった。


 ◇ ◇ ◇


 翌日、阿爾布罕の部隊をどう扱うかという話が始まった。


 阿爾布罕が率いていた兵の大半は蒙古軍から預けられた者である。


 将が死ねば、別の部隊へ移される。


 そこに大きな問題はなかった。


 問題は300人の契丹騎兵だった。


 彼らは玉蘭が阿爾布罕へ嫁いだ際、耶律家とのつながりによって同行した者たちを中心としている。


 その後、戦が続く中で阿爾布罕の部隊へ組み込まれたが、もともと蒙古軍から阿爾布罕へ預けられた兵ではない。


 玉蘭は午後になると、その300人を交易所の外へ集めた。


 達也は少し離れた場所から見ていた。


 玉蘭は兵たちの前へ立った。


「主人は死にました」


 誰も声を出さなかった。


「阿爾布罕は最後まで皆を自分の兵として扱いました。契丹人だからと軽く扱ったこともありません」


 兵たちは玉蘭を見ている。


「ですが、主人はもういません」


 冷たい風が吹き、兵たちの外套を揺らした。


「私はこれから、自分の行き先を決めます」


 年配の騎兵が尋ねた。


「玉蘭様は蒙古軍に残られるのですか」


「まだ決めていません」


「我々はどうなりますか」


「皆が自分で決めてください」


 兵たちの間にざわめきが起きた。


 玉蘭は続けた。


「蒙古軍へ残りたい者は残って構いません。別の将の下へ入りたい者も止めません」


「玉蘭様についていくこともできますか」


 別の男が尋ねた。


「そのつもりがある者は、私と来てください」


「どこへ?」


「今は言えません」


 兵たちが顔を見合わせた。


 玉蘭は余計な説明をしなかった。


「行き先を聞かなければ従えない者は、ここへ残ってください。私は恨みません」


 最初に年配の騎兵が前へ出た。


「私は玉蘭様についてまいります」


 続いて、その隣の男も出た。


「私も参ります」


「私もです」


 次々と兵が前へ出た。


 最後まで残る者はいなかった。


 300人全員だった。


 玉蘭は並んだ兵たちを見た。


「本当にいいのですか」


 年配の騎兵が答えた。


「我々は阿爾布罕将軍に仕えました。しかし、その前から耶律家との縁で生きてきた者です」


 別の兵も言った。


「将軍が亡くなられた今、玉蘭様を残して別の将へ仕える理由はありません」


 玉蘭は300人を見渡した。


「分かりました」


 声に迷いはなかった。


「では、全員連れていきます」


 兵たちが頭を下げた。


 達也はそれを見届けると、その場を離れた。


 300人全員が玉蘭を選んだ。


 これなら使える。


 ただし、動かし方を間違えれば達也自身が蒙古から疑われる。


 そこが問題だった。


 ◇ ◇ ◇


 その日の夜。


 玉蘭は達也を自分の部屋へ呼んだ。


 火鉢には炭が入っていたが、室内はまだ冷えている。


 達也が入ると、玉蘭は戸を閉めた。


「300人全員、私についてくることになりました」


「見ていました」


「驚きませんでしたか」


「少しは驚きました。何人か残ると思っていましたから」


「私もです」


 玉蘭は達也へ座るよう勧めた。


 達也は卓を挟んで向かいへ座った。


「それで、玉蘭さんはどうするつもりですか」


「それをあなたに聞きたいのです」


「私に?」


「昨日、南へ帰るとおっしゃいましたね」


「はい」


「私も一緒に行けますか」


 達也は玉蘭を見た。


「300人も一緒に?」


「全員です」


「蒙古を捨てるつもりですか」


「主人は死にました」


「それは理由になりません」


「分かっています」


 玉蘭は答えた。


「ですが、ここへ残っても、私は誰かの妻になるか、誰かの部隊の世話をするだけです」


「そうとは限らないでしょう」


「いいえ。かなり高い確率でそうなります」


 玉蘭は自分の立場を分かっていた。


 旧遼王家につながる耶律家の女であり、蒙古将の未亡人である。


 利用価値があるからこそ、自由にしてもらえるとは限らない。


「私は自分で兵を率ちたい」


 玉蘭は続けた。


「今日、初めて300人が私自身についてくると言いました」


「はい」


「この者たちを誰かへ渡すつもりはありません」


「なら、私と来ますか」


 玉蘭は達也を見た。


「連れていってくれるのですか」


 達也は少し考えた。


 ここまで来れば、正体を隠したまま話を進めることはできない。


「その前に、話しておくことがあります」


「やはり何かあるのですね」


「あります」


「何ですか」


 達也は玉蘭の顔を見た。


「倉大業という名は、交易をするために使った名です」


 玉蘭の表情が変わった。


「では、本当の名前は?」


「倉達也(ツァン・ダーイエ)です」


 玉蘭はすぐには反応しなかった。


 名前を頭の中で確かめたらしい。


 やがて目を見開いた。


「倉達也……」


「知っていますか」


「南宋の将でしょう」


「そうです」


「蒙古兵を破った?」


「2106人です」


「宿州を奪ったのも?」


「私です」


「徐州まで取った?」


「それも私です」


 玉蘭は椅子に座ったまま達也を見た。


「あなたが?」


「はい」


「倉大業という交易商人ではなく?」


「最初から南宋の将です」


 玉蘭の顔に怒りが表れた。


「では、主人を騙していたのですか」


「そうなります」


「蒙古軍の中へ入ったのも、商売のためではなかった?」


「商売もしました。ただ、本当の目的は蒙古軍を見ることです」


「主人はあなたを友人だと思っていました」


「私も阿爾布罕を友人だと思っています」


「それで騙したのですか」


「敵になる可能性がある相手だからです」


 達也は言い訳をしなかった。


「私は南宋の将です。蒙古軍がどう戦うのか、どう移動するのか、自分で見る必要がありました」


 玉蘭は黙った。


「主人が生きていたら、この話をしましたか」


「しません」


「やはり」


「阿爾布罕を裏切らせる気はありませんでした」


 玉蘭が達也を見る。


「では、私にはなぜ話すのですか」


「私と来たいと言ったからです」


 達也は答えた。


「正体を隠したまま連れていくつもりはありません」


「私が主人へ話す心配は、もうないから?」


「それもあります」


 玉蘭は不快そうな顔をした。


 達也は続けた。


「もう1つあります。私は玉蘭さんの能力を買っています」


「私を?」


「はい」


「何に使うつもりですか」


「私の副官になってもらいたい」


 玉蘭が黙った。


「副官?」


「そうです」


「南宋軍の?」


「私直属です」


「女ですよ」


「知っています」


「契丹人です」


「それも知っています」


「蒙古将の妻だった女です」


「今は未亡人でしょう」


 玉蘭は達也の顔を見た。


「何を任せるつもりですか」


「兵です」


「300人だけ?」


「最初はな」


 達也の言葉遣いが変わった。


 玉蘭が副官になるなら、もう客でも協力者でもない。


 自分の部下になる。


「軍馬も任せる。必要ならもっと兵を付ける。戦場でも俺の命令を受けて動け」


 玉蘭はその変化に気付いた。


「急に言い方が変わりましたね」


「副官になれと言ったからな」


「まだ受けるとは言っていません」


「では、どうする」


 玉蘭は達也を見た。


 先ほどまで交易商人だと思っていた男が、南宋軍の将だった。


 蒙古軍2106人を破った男でもある。


 宿州を取り、金軍約2万人を破り、徐州まで奪った将軍であることも知っている。


「私が副官になれば、300人も受け入れるのですね」


「全員受け入れる」


「契丹兵として?」


「俺の兵としてだ。契丹人であることは変える必要がない」


「私が指揮しても?」


「そのために連れてくる」


 玉蘭は考えた。


「分かりました」


「受けるのか」


「はい」


「なら今日から俺の副官だ」


 玉蘭は達也を見た。


「本当に遠慮がなくなりましたね」


「部下に遠慮する必要はない」


「分かりました」


「敬語を使えとは言わん。だが命令には従え」


「承知しました」


 達也はそこで本題へ入った。


「ただし、今すぐ一緒には出ない」


「なぜ?」


「俺はまた蒙古へ来る」


 玉蘭が意外そうな顔をした。


「南宋の将なのに?」


「軍馬を買いに来る」


「軍馬?」


「ああ。南宋には馬が足りない。蒙古の馬は使える。交易で買えるなら買う」


「あなたがまた倉大業として来るの?」


「そのつもりだ」


 達也は続けた。


「だから、お前と300人を俺が連れ出したと知られるわけにはいかない」


 玉蘭はすぐに意味を理解した。


「私たちを連れて一緒に南へ行けば、あなたが疑われる」


「ああ」


「主人の妻を奪い、その兵まで持っていったと思われる」


「それでは二度とここへ入れない」


「軍馬も買えない」


「そういうことだ」


 玉蘭は考え込んだ。


「では、どうする?」


「俺は予定どおり交易商人として先に出る」


「私は残る?」


「ああ」


「いつまで?」


「数日だ」


 達也は卓へ身を乗り出した。


「俺がここを出たあと、お前たちは勝手に消えろ」


「蒙古軍には何も言わずに?」


「言うな」


「逃亡ですね」


「そうだ」


 達也は平然と答えた。


「俺が連れ出した形にはするな。耶律玉蘭が阿爾布罕の死後、自分の兵300人を連れて勝手に逃げた。それでいい」


「追手が出ます」


「出るだろうな」


「300騎なら隠れて動くのは難しい」


「だから速く走れ」


 玉蘭は達也を見た。


「簡単に言う」


「300騎全部が騎兵なんだろう。荷車を大量に引いて逃げるわけじゃない」


「馬は替えられます」


「ならなおさらだ」


「どこへ行けばいい?」


「徐州だ」


 玉蘭の顔が変わった。


「南宋が取った徐州?」


「そうだ」


「あなたが取った城ですね」


「ああ」


「そこまで行けば?」


「俺が待つ」


「あなたは先に交易商人として南へ戻る」


「そうだ」


「私たちは数日後にここを抜け、別に徐州へ向かう」


「その通りだ」


 玉蘭はしばらく考えた。


「分かった」


「300人には、俺の正体をまだ話すな」


「徐州へ行くことも?」


「出発直前まで必要ない」


「途中で逃げる者が出れば、蒙古へ知られるから?」


「そうだ」


 達也は続けた。


「全員がお前についてくると決めた。それでも話すのは遅い方がいい」


「分かった」


「出る日はお前が決めろ。俺が出てから最低でも3日は空けろ」


「3日?」


「あまり早く消えると俺との関係を疑われる」


「なるほど」


「俺は普通に南へ帰った。お前たちはそのあと勝手に逃げた。それで通せ」


「主人の部下たちには?」


「蒙古兵は置いていけ。連れていくのはお前の300騎だけだ」


「当然です」


「武器と自分たちの馬は持っていけ」


「それで十分です」


 達也は立ち上がった。


「では決まりだ」


 玉蘭も立った。


「徐州で会いましょう」


「遅れるな」


「追手を振り切る時間くらいはください」


「死ななければ構わん」


「副官への最初の言葉がそれですか」


「死んだ副官は使えないからな」


 玉蘭は呆れた顔をした。


「主人よりひどい人の下へ入った気がします」


「今ごろ気付いたか」


 玉蘭は笑った。


 夫を失ってから初めて、以前と同じような笑い方だった。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝。


 達也は交易商人の倉大業として、交易所を出る準備を始めた。


 売れ残った茶、絹、薬材、陶器を積み直す。


 北で得た品も荷へ加えた。


 外から見れば、商売を終えて南へ戻る商隊にしか見えない。


 玉蘭も見送りに出た。


 周囲には蒙古兵がいる。


 2人は昨夜の話を顔に出さなかった。


「もうお帰りになるのですね」


 玉蘭が尋ねた。


「はい。冬が深くなる前に南へ戻ります」


「主人が亡くなるまで、いろいろありがとうございました」


「阿爾布罕には私も世話になりました」


「またこちらへ来ますか」


「商売になりますからね。また来るかもしれません」


「その時は、お元気で」


「玉蘭さんも」


 それだけだった。


 達也は馬へ乗った。


 商隊が動き出す。


 交易所を離れ、南へ向かう。


 振り返らなかった。


 玉蘭も追わなかった。


 蒙古兵たちから見れば、阿爾布罕と親しくなった南方の交易商人が、将の死を見届けたあと帰っていくだけだった。


 達也はその形を崩すつもりはなかった。


 また蒙古へ来る可能性がある。


 次は偵察ではなく、大量の軍馬を買うためかもしれない。


 その時に交易所へ入り、以前と同じ相手と商売できる道を残しておく必要がある。


 玉蘭と300騎は別だった。


 達也が連れ出したのではない。


 数日後、自分たちの意思で蒙古から消える。


 その形にする。


 ◇ ◇ ◇


 達也が交易所を出て4日後。


 夜が深くなるのを待ち、玉蘭は300騎を集めた。


 余計な荷車はない。


 各自が武器と必要な食料を持ち、馬に乗っている。


 全員が出発の理由を知っていた。


 玉蘭は兵たちを見渡した。


「今から蒙古軍を離れます」


 誰も動かなかった。


「戻るつもりはありません」


 兵たちは黙って聞いている。


「行き先は南です」


 年配の騎兵が尋ねた。


「どこまで参りますか」


「徐州です」


 何人かが顔を見合わせた。


 南宋軍が金から奪った城である。


 玉蘭は続けた。


「徐州には、私たちを受け入れる者がいます」


「誰でしょうか」


「南宋の将、倉達也(ツァン・ダーイエ)です」


 兵たちの間に驚きが広がった。


「倉達也?」


「蒙古兵を破った将ではありませんか」


「その男がなぜ?」


 玉蘭は答えた。


「倉大業です」


 兵たちが黙った。


「交易商人の倉大業が、倉達也だったのですか」


「そうです」


 玉蘭は全員を見渡した。


「私はあの人の副官になります」


「南宋軍へ入られるのですか」


「そうです」


「我々も?」


「嫌なら今残ってください」


 誰も動かなかった。


「倉達也は300人全員を私の兵として受け入れると言いました」


 年配の騎兵が尋ねた。


「玉蘭様は、その男を信用されるのですか」


「信用しています」


「阿爾布罕将軍を騙していた男でも?」


「それも知っています」


 玉蘭は答えた。


「ですが、主人を殺した男ではありません。主人を蒙古から裏切らせようともしませんでした」


 兵たちは聞いていた。


「倉達也が何者であろうと、私は南へ行きます」


 玉蘭は馬へ乗った。


「ついてくる者は来てください」


 300人全員が馬へ乗った。


 残る者はいなかった。


 玉蘭は南へ馬首を向けた。


「出ます」


 蹄が凍った地面を叩いた。


 300騎は交易所から離れていった。


 蒙古軍へ届けは出していない。


 許可も求めていない。


 阿爾布罕の未亡人耶律玉蘭(イェリュ・ユーラン)は、自分を選んだ契丹騎兵300人を率いて蒙古から逃亡した。


 目指すのは徐州である。


 そこでは、先に南へ戻った達也が待っている。

 阿爾布罕の死後、玉蘭と古くから耶律家につながる契丹騎兵300人は、自分たちの今後を決めることになった。


 300人全員が玉蘭についていくことを選ぶ。


 玉蘭は達也へ同行を求め、達也も初めて自分が交易商人の倉大業ではなく、南宋の将倉達也(ツァン・ダーイエ)であると明かした。


 達也は玉蘭を自分の副官として迎え、300騎もそのまま玉蘭の部隊として受け入れる。


 ただし、達也には蒙古との交易路を残しておく必要があった。


 南宋軍には軍馬が不足しており、将来、達也自身が再び蒙古へ入り、大量の馬を買う可能性がある。


 阿爾布罕の妻と契丹騎兵300人を達也が連れ去ったと知られれば、その道は閉ざされる。


 そこで達也は先に交易商人として蒙古を離れ、玉蘭は4日後、蒙古軍へ何も告げず300騎を率いて逃亡した。


 2人が再び会う場所は徐州である。


 達也は蒙古との交易路を残したまま、玉蘭と契丹騎兵300人を自軍へ迎えようとしていた。

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