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超人あずさ  作者: アズ
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4話 ロバはバカ 上

 コロニアル様式の大きな家に招待されたあずさはメイドに案内され二階にあがり、書斎へと案内された。そこでツインテールの人形みたいな子どもが木製の椅子に座り背もたれにもたれかかって指を咥えクマが出来た大きな目で下から見あげるような鋭い目線を向けられあずさはゾッと戦慄した。部屋には分厚い古書の他に鳥籠があり、そこに赤い鳥が入っていた。

(特急ひのとりなーんてね……)

 自分の名前やサンダーバード、ルーシーときたものだからなんとなく列車関連を探してしまう。

 今、私は韓国にいる。何故かというと目の前にいる女に呼ばれたからだ。行く気はなかったし呼び出されるような関係でもない。

(それになんなの、人をわざわざ日本から呼びつけて歓迎の挨拶もしないでじっと私なんか見ちゃって。変な子)

 あずさはこの女と面識はあるものの会議の時くらいしかない。つまり、この子はあずさと同じ《超人》である。しかし、アンノウン討伐数はゼロ。名はリリー。本名じゃないのは確か。まぁ名前なんて呼び名の記号みたいなものだからどうだっていいんだけど。

「あのさ、呼びつけたのはそっちなんだから何か言ったらどうなの? それとも黙り?」

「……」

「そういえばさ玄関入って直ぐに頭をもぎ取られたペッパーくんがいたんだけどさ、なんで頭ないの? 随分酷いことするね。可愛そうペッパーくん」

「……」

「なんか喋れや」

「……」

(なんなのこの子。前から不気味だとは思ってたけど)

「用がないなら帰る」

 あずさはそう言って書斎を出ると目の前の廊下の壁にかけられてあった絵画に目がいく。広場みたいな場所に沢山の人がいる風景画だが、全員頭が絵の上に絵の具で塗り潰されてあった。

「キモっ」

(サイコパス演じたい痛い子なのね。はいはい)

 あずさは階段を降りて入ってきた玄関からドアを開けて出ようとした。

「は?」

 だが、ドアを開けた先はあの書斎だった。後ろを振り返るといつの間にか二階の廊下になっていた。

「なる程、それがあんたの能力ってわけね。でもさ、それ外では使えないよね。つまり、あんたの能力じゃアンノウン討伐には使えものにならない」

「……」

「図星だった? てか、私を帰らせろ。あんたが私を閉じ込める気でいるっていうなら強引にこの家ブッ壊して出てくだけ。で、どうする?」

「おやめ下さい」

 いきなり後ろから声がかかりビクッとした。いたのはメイドだった。

「リリー様は人見知りで人とお話をするのが苦手なだけなのです。リリー様があずさ様をお呼びしたのはイタリアに出現したというアンノウンについてです」

「イタリア? そういえばロバの頭がケルベロスみたいに三つある化け物が現れたってダナムが言ってたな」

「ええ、そうです。ロバの頭に馬のような二本脚で立ち、人間のような長い両腕、そしてあずさ様が仰ったとおり頭は三つある化け物のことです」

「だけどあれはなんというか……」

「ええ、アンノウンではありますが人間や街を襲うわけでもなくただ水遊びしたりしている今までいなかったタイプのアンノウンです。それでもアンノウンはアンノウン。討伐の対象です」

「確か前回はモンゴルの《超人》が討伐に出たけど失敗して帰ってきたんだったよな」

「はい。日本にクラーケンのようなアンノウンが出現する前の時になります。その時は他の《超人》が集まることもなくあずさ様に至っては会議にすら出席をなさらず一人で向かわれたのです」

(ギクッ……それ、今言うのか)

「イタリアからは再度あのアンノウン討伐の要請を出す予定のようです。そこであずさ様には是非ともアンノウン討伐に出てもらいたいのです。アンノウン討伐数トップをもつあずさ様に」

「あのさ、なんで韓国のリリーがイタリアを気にかけるの?」

「韓国とイタリアは」

「あんたに訊いてない。私はリリーに訊いてるの。政治になんてどうせあなたも興味はないんでしょ? それなのにイタリアの為になんであんたじゃなく私をわざわざ呼び出して私にお願いすることになるのかなぁ。そこんとこがよく分からないのよね」

「……」

「あくまで沈黙を貫くか……いいぜ。なら私は今度こそ帰る。次邪魔したら容赦しないから」

 そう言って踵を返し玄関へ向かいドアを開けた。今度は外だった。でも、外を出て直ぐに異変に気づく。違う外に出ていたのだ。

「ここどこ?」

 あずさが振り返った時には時遅し、さっきまでいたあの家が消えてなくなっていた。

「あの野郎!!」

 あずさは大声で吠えた。通行人はその声に驚き立ち止まるとあずさを見た。

 ここはイタリア、ナポリだった。





 あずさはとりあえずお腹が空いたのでレストランに入りサラダつきのカルボナーラを頼んだ。サラダはトマトがみずみずしくて全体が美味しく、カルボナーラは日本のサッパリ系とは違った味でそれはそれで美味しかった。その間にあずさはダナムに電話をかける。ダナムが直ぐに出たので状況をダナムに伝えた。

「つまり、イタリアにいるってことね。ならイタリアへ向かうわ。それまではイタリアにいる日本大使館とアメリカ大使館から数名がそっちに人手を送るから、あと現地政府にも此方から宜しく言っとくわ。しかし、あのリリーっていう不思議ちゃんに会う前に事前に私に言っておいてもらわないと」

「でも、私を見張ってたんでしょ?」

「いえ、韓国に到着してからあなたを見失ったと報告があったわ。でも、尾行を巻いたのではなくあれもリリーの仕業だってことがこれで分かったわ」

「あいつなんなの。次会ったらぶっ殺す!」

「やめなさいよ。此方からは韓国政府に対し抗議をしといたわ。米日韓の同盟関係に傷でもつけたいのかって。まぁ韓国にその気がないことくらいは察しがつくわ。役立たずのあの子の能力じゃ、我々に強きになるわけもないわ」

「分からないのはあのリリーが何故私を呼びつけたのか」

「むしろそれより私は何故あなたがリリーの呼びつけに応じたのかよ」

「ああ、それは気まぐれ。暇だったから」

「あのねぇ……もういいわ。とにかく私が到着するまでイタリアにいるアンノウンとは戦わないように」

「分かった。まぁ、でも今はナポリじゃなくミラノにいるみたいだけどね」

「どっちだっていいわよ。私の言うことさえ守ってくれさえすれば」

(随分苛立ってるね。まぁいいや)






 ダナムがイタリアに向かうというならその間観光するまで。ピサの斜塔は昔イタリアに旅行に行った時に観光で行ったが正直つまらなかった。中に入れて階段を登ったが、それだけだ。あれは一回行ったらもう充分だ。あれ以上得るものはない。美術館にも行った。そのときは結構作品数もあってあんまりじっくり観た感じではなかったかもしれない。料理は正直アメリカより美味い。例えばパンは日本の方が柔らかい、アメリカのホテルで出たベーコンは脂っこくしょっぱい。私が《超人》と知らなければ全然アメリカ人学生のバカな男子どもはイエローモンキとかバカにしてくる。でも、ユニバーサルとかに行った時は日本より並ばないなと思ったりはしたけど。

(まぁ、適当にまだ見てないイタリア観光でもしますか)






 ダナムがイタリアに現地入りしたのは暗い時間。ホテルのロビーで合流するなり、ダナムはついでと言わんばかりにイタリアにいるアンノウン討伐の要請をしてきた。

「まぁ、どうせそうなるんだろうなとは思っていたけど」

「なら、尚更宜しくね」

 あずさは深い溜め息を漏らした。



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