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超人あずさ  作者: アズ
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3話 自由との戦い 上

「な、なんなんだこりゃいったい……」

 院生のケビンは世界各地で起きた大異変をテーマに論文を書こうとしていた。これほど面白いテーマはないだろう。これまで富士山近く、浮上するNYをヘリから見て、そこにあった自由の女神も写真を撮った。更に近くと巨大な穴を見たり、色んな不思議を目撃しては写真を撮って記録におさめる。そして、ケビンは飛行機に乗ってオランダ上空を飛んでいた。その飛行機の窓から見えるその下は巨大なお花畑だった。

 噂には聞いていたが本当に巨大な花がそこにある。菊の長さはビルをこえた高さだし、緑の葉は巨大な傘となって地上に日陰を生み出していた。まるでオランダに出来た天井。

 「自由の国」としても知られる(アンネ・フランクなどユダヤ人迫害に加担した歴史以降その自由は揺らいだりもした)オランダは花でも有名だが、なんでこうなるのか。

 やはり世界は面白いとケビンは思った。だが、異常な成長をする自然はそこにいる人々の生活を奪った。

 火器を使えばそれを察知した植物が意思を持った根っこにやられ、多くの犠牲と恐怖を与えた。

「自由は自然によって人間は追いやられたみたいだ」





「は?」

「だから今度の要請はオランダからよ」

「オランダってお花畑になっちゃったんでしょ」

「オランダはあります」

「はいはいそれで?」

「オランダはあの植物をどうにかならないかって植物退治を各《超人》に要請しているの」

「なら、他の《超人》にやらせればいいじゃん」

「あのね、《超人》のいないオランダもそれ以外の国も国連もあなたの働きに期待を寄せてるのよ。最近もアンノウンを始末したでしょ。ここまで協力的な《超人》はレーンとルーシー、そしてあなたくらいよ」

「だからって勝手に期待されてもね、毎回毎回こたえる気にはなれないね」

「意地悪言わないで。あの異常な植物は花粉を放つの。それは大気中を舞い風に乗ればより遠くの広範囲に届き、微量でも吸い込めば影響をもたらす。それは果てしなき欲望。多食多飲や性欲、薬物、様々な欲が強くなり理性を忘れ暴走状態へとなった人々はそのうち、おさえられない欲望とそれを叶える能力の不均衡さに苦しみ始め不幸となり、現実が嫌になると眠気が襲い、永遠に目覚めなくなる。そういったヤバい花粉なの」

「そりゃ現実逃避じゃん」

「そうさせてるの。その花粉は判断力をどうも弱らせるみたい」

「それ、私達が近づくのも危険じゃん」

「まぁ、対策として防護服があるんだけどね。オランダにいる無事な人達は防護服で対応してる」

「話は分かったけどさ、流石に私の水の能力じゃ植物と相性悪いでしょ」

「あら、氷のアンノウンを捕らえたでしょ。氷漬けにしてしまえばいいのよ」

「あんた私をなんだと思ってるの? 便利屋じゃないんだから。とにかく私は引き受けないから。レーンなら空から一方的に雷撃しまくって楽勝でしょ」

「あなたも参加すれば恩を売れるわよ」

「いいよ」

「あっそ」

 あずさの言う通りレーンが植物相手に派手に圧倒するだろうとダナムは思っていたのは本当だ。だからあずさを参加させるのはそこまで本気ではなかった。日米関係、それさえ守れればとりあえずそれで良かった。

 だが、それが甘かったと後に思い知らされる。






「は?」

「だからオランダに向かったレーンが花粉にやられ眠りについちゃったのよ。ということだから今回はアメリカからも要請ということになるわ」

「はぁ……そうなったか。だけどさなんで雷の能力者が植物に負けてんの?」

「それなんだけどレーンがオランダに着いた直後に巨大アンノウンが出現したの。レーンはそいつと戦ってて伸びるつるに気が回らなかった。足を掴まれ防護用マスクを外されたレーンは花粉を吸って眠りについてしまったというわけ」

「人間には無理だな。ようは欲のない人間ならあの植物も脅威にはならないでしょけどそんな人間はいない」

「そう簡単に諦められるわけないでしょ。アメリカ側の《超人》が被害にあったのよ」

「ちょっと待ってよ。新日米安保はアメリカに害があった場合でしょ、《超人》を保護救出は含まれない」

「そういうずる賢いところは頭が回るのね。でも、それで納得するアメリカじゃないわ」

「アメリカが納得しようがしなかろうが私には関係ないね。第一、逆の立場だったらアメリカは私を救出に《超人》へ要請出したと思う? 絶対にない。だから今回も絶対にない」

「するわ」

「しない」

「なら、それを新たにアメリカ政府と条約を結んでもいいわ」

「それ程までにレーンがやられたのが想定外だったわけ? あんな大異変の起きた場所へ送り込んどいて。アメリカがオランダを助けようとした理由はなんなの?」

「いいわ、教える。実は少し前アメリカからオランダ行きの飛行機が向かったの。オランダの空港周辺は大異変の影響下じゃなかったんだけど、着陸と同時に急にその一帯も植物にのまれてしまった。飛行機には一般市民が含まれるわ。大学の調査隊と手伝いに院生が何人か。あと民間の調査チーム。政府からは数名が。表向きは原因と植物の調査。裏は資源の話でオランダとアメリカが極秘に大異変で発見された未知の鉱物の権利を得る為」

 あずさは溜め息をもらした。

「欲をかいた結果がこれか」

「国益を考えてのことだし相手もアメリカの救いを求めていたのよ。ただ、アメリカはタダで正義は執行しない。それを責められるいわれはないわね」

「その尻拭いを日本がやれと」

「日本でなくあなたによ。そうでなければあなたは話を聞こうとしない。国家に対する国益も忠誠もあなたにはどうでもいいことなんでしょ?」

「そうだけどなんかムカつく」

「図星だから? それじゃ訊くけどあなたにとって国家はなに?」

「大層立派な国家論や思想があるわけじゃないんで別にいいその話は」

「そうでしょうね。だからあなた個人にこれは要請するわ。勿論、一様日本にも利益のある話よ」

「金ならある。リスクをとってまでやることじゃあない」

「お金よりもあなたにとって価値があるものよ」

「?」

 妙な言い方だ。私個人には価値があるみたいな言い方。脅迫か? それならもう慣れている。今更アメリカがそれをするのか? 散々協力してアンノウンも始末してる私が自分の命を優先したからといってそれをしてアメリカが得するとは思えない。そもそも私はずっと一人だ。愛する者も家族もいないのに脅迫する要素はそうあるとは思えない。となると私の自由とか。

「なによそれは」

「あなたが欲しがっていた《例の本》よ」






 結論を言うとあずさはダナムの話にのり米軍の持つヘリでオランダへと向かった。オランダには初めて行く。ヘリの中にはダナム他米兵が乗り込んでいた。とはいえオランダで火器は使えない。植物が反応するからだ。

 あずさはオランダにつくまでヘリの中で政府関係者が持つタブレットからオランダの現在の様子を撮影された写真を見ていた。

「欲望に従い自由を失った人々か。夢の中で幸せならそれもいいかもしれないけど」

「あなたはどんな夢を見るの?」

「覚えてない。ダナムは?」

「私もそうね、子どもの頃自分が大統領になる夢とか見てたけど、大人になってからは夢は覚えてないかな」

「大統領になりたかったんだ。今も?」

 ダナムは笑った。それ以上は言わなかった。




 自由とは思うだけなら自由という者もいるが、実現されなければ自由を獲得したか否かの判断に至らない。故に自由は実現したかで自由であると言える。その上で能力に見合ってない欲望は自由から遠ざかる。その不均衡は不幸をもたらす。だから幸せは小さい欲望におさえる必要がある。






 オランダのまだ植物に侵食されていない場所にヘリが着地するとあずさとダナムはヘリを降りた。その外ではスーツ姿のオランダ政府が出迎えてくれた。

「あなたが《超人》あずさですね?」

 私が返事をすると政府は歓迎し案内をした。それは政府の施設で植物を24時間交代制で監視している場所だった。

「異変が現れたのはアムステルダム。巨大なチューリップのような植物が地面から出現、それから人間も喰らう肉食植物や見たことのない植物が次から次へと出現。その際、通常兵器を使用しましたが効果はなく、むしろ植物を怒らせ凶暴化する事態となりました。ミサイル攻撃も効果無しです」

「アンノウンみたいな強度だけど」

「我々もあの植物事態が巨大なアンノウンではないかと考えています」

「植物系アンノウンか」

「現在はアムステルダムを中心に侵食が拡大、ハーグ、アルメレ、ロッテルダム、エイセル湖まで拡大。現在も範囲を拡大しています」

「その侵食は海の方は全然なんだね」

「そうですね。一様海水を当てると植物の動きが鈍くなる時がありますが環境適応能力があるのか海水が効いたのは僅かでそれ以降は効果は見られません。新たに生まれた植物に限定するなら効果は最初だけあります」

「なる程ねぇ」

「ですので薬品を撒いて試してもだいたい最初だけの効果になります」

「ルーシーを呼べば光の能力で植物の動きを遅らせ耐性を弱らせることは出来ると思う。その間に一気に植物を一掃する」

「しかし、その一帯には植物に眠らされた民間人もいまして」

「ああそうだった」

「我々はそれよりもアムステルダムあたりにある植物のどこかにこの植物を伸ばし拡大する元凶があるのではないかと考えています」

「アムステルダムを中心に拡大してるからだよね」

「はい、その通りです」

「一様聞いておきたいんだけど現在集められる戦力はどれくらい?」

「ドイツをはじめとしたEUから協力は得られます」

「もう一つ、私をそのアムステルダムまで近づくことは可能?」

「上空から飛び降りるかたちか、海から近づくことになると思いますがどちらもリスクはあります。勿論、我々が全力で援護を行い植物をこちら側に向けることは出来るかと」

「ダナム、この作戦にはルーシーがいるわ」

「分かった。というより言うのを忘れたけどルーシーも参加するわ。今、少し到着が遅れてるだけだから安心して」

「それじゃルーシーが到着次第、作戦会議としよう」



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