11話 雪降るエジプト
急遽エジプトへ行くことになったあずさは成田空港から一度イスラエルへ向かい、約12時間と45分で着き、そこからエジプトへと向かう。かつて、大異変がなければエジプトへ直でプライベートジェットで向かっていたところだが、エジプトは年中雪が振り続けている。天候がよめず飛行機を飛ばすのをどこも避けている。範囲はエジプト全土。雪が振り続けるもので天井が抜け崩壊した建物が相次いだ。雪かきは毎日ずっとやり続けても終わらず、視界も悪いから救助支援も遅れてしまう。既に雪のせいで国を脱出し避難する人が今も続いている。それでもエジプトはピラミッドや遺跡を守る為、各国の協力を求め雪を溶かす設備、建造を続けている。
そしてそのエジプトへは原因を突き止めるべく調査団が派遣されていた。それはあずさがロシアへ向かう前の話しである。
ダナムがあずさを招集したのはまさにその原因を突き止めたからである。そして、予想は的中した。つまり、原因というのはアンノウン。エジプト全土の気候を変えてしまう程の影響を与え続ける元凶、直ぐにレベル4と断定された。では、誰が援軍として来るのかというと中国とモンゴルの《超人》はまず来ないことが分かった。むしろ中国ではきな臭いことになっていて、アメリカが密かに軍事作戦を計画、当然アメリカの《超人》2人は待機となった。モンゴルの《超人》は既にアメリカと協力的で現状報告が軍を通じ伝わっている。
「それならさ、中国の方を優先した方がいいんじゃないの?」
あずさは隣にいるダナムに訊いた。そのダナムは防寒はばっちしであずさも同じく対策していた。因みにエジプトの周辺国も気温が大異変前の平均気温より下がっているなど影響も起きていた。
「中国の方はまだ此方からは動かないわ。サランはあなたの協力を求めてきたけど、あなたが動けば中国は動かざるを得ない。そしたら情報が不足したままレベル4といきなり戦うことになる」
「中国がアンノウンを完全にコントロールしたってことじゃないでしょ」
「ええ、情報によればそういうことになる。むしろ中国はだいぶやらかしている」
「どういうこと?」
「アンノウンに核兵器の情報が抜かれたかもしれない」
「は?」
「今、世界中にある核兵器の監視を厳戒態勢で強化している。つまり、もしアンノウンが中国に反し人類を滅ぼしに動いた場合」
「ターミネーターのように核兵器が一斉に発射されるかもしれない?」
「そうはならないんだけどね。それでも警戒をしないわけにはいかない」
「そんな話しを聞かされたらますますエジプトどころじゃないんじゃない?」
「だからってエジプトを放置は出来ない」
「二つのレベル4を相手にするつもり!?」
「そうならないよう先にエジプトの方をやるのよ。いえ、やるしかないの」
「そんな無茶な」
「ロシアの件を思い出して。ロシア国民は消え、広大な廃虚が広がっている。地球で国レベルで人が消えていいわけがない」
「うーん」
それは分からないわけでもなかったが…… 。
「なんか大変なことになってるなぁ」
「中国はいざという時は中国にいるサランに対処してもらう。そこに援軍というかたちで2人が向かう。中国の《超人》が協力するかはちょっと期待出来ないけど」
「そもそもさ、機械とか生物じゃなくない? アンノウンってなんなのさ」
「それはこっちが知りたいくらいよ」
「知ったこともあるんじゃないの?」
「あら、隠してると疑われてる?」
「さぁ?」
「言っとくけど私が把握してることはあなたに伝えてます」
「知らされてない可能性はないの?」
「そうだったら私はあなたに上司を突き出すわ。私だって命張ってるんだから」
「まぁ確かに」
「そもそもアンノウンは人間の知識をもってしても説明することが出来ない存在よ」
「それが起きている原因なのにね」
それからイスラエルに滞在中の米軍と共に車両に乗り込みエジプトへと向かった。
「それじゃ早速エジプトに現れたっていうアンノウンについて教えて」
「いいわ。まず、発見のきっかけはエジプトで大異変と同時に奇妙なメロディーがどこからか突然聴こえだすという不思議体験をしたという通報が幾つも起きるようになったの。最初は警察も政府もまともに相手にしなかったけれど、その後も通報は続いてあまりにも奇妙だから地元警察が原因を突き止める為に捜査に出たの。その時の警察も確かに屋外のしかも雪が降る空の方から聴こえたと証言し、大異変との関連を含め調査団が調査を行ったの」
「そのメロディーってのはどんな?」
「証言の共通点は美しいメロディーが空から聴こえてきた」
「美しい? アンノウンは空にいたわけ?」
「いいえ。正確には空に響き渡っていたのよ。メロディーが聴こえたというのはカイロ市内の一部。その場所は時々変わるけど、決まってピラミッドのある方角から聴こえてきたという」
「つまり、アンノウンはその近く? でも随分近いのになんで分からなかったの?」
「それはピラミッド周辺は逆にメロディーが聴こえたという話しが全くなかったからよ」
「それはおかしいね」
「ええ。理屈に合わない。アンノウンがピンポイントで場所ごとにメロディーが聴こえる音を放っていたとならない限りはね」
「何の為に? いや、誘い込むとかかな」
「それは調査団や私も考えたわ。答えは分からないけど、とにかく調査団は砂漠近くを調査した。正確にはピラミッドより先の激しい吹雪地帯を」
「そこにいたんだ」
「ええ。アンノウンがね」
「なにこれ?」
エジプトに着いて驚くのは積もった雪の高さもそうだが、市民達がアンノウンを神とたたえピラミッドの方角に向け祈りを捧げていたからだ。
「なんでアンノウンが神になるわけ」
「使徒か何かだと言ってるのはあちこちの世界でも同じ現象はあるわよ」
「まぁ確かにそうだけど」
カイロ市の道には赤外線融雪ヒーターが外灯のように等間隔に設置されて道の雪を溶かしていた。
そしてカイロから見えるピラミッドは天辺あたりに薄く雪が積もっていて、ほとんどの雪は装置によって溶かされていた。
「雪を降らすアンノウンとなると氷系のアンノウンになるのかな。そうなると富士山であった氷狼みたいなアンノウン以来かな」
「さぁ、まずはエジプトにいる《超人》と合流しましょ」
「そういえばまだ会ったことなかったな」
天候を理由にいつも会議に出て来なかったからだ。
「協力的なら誰だっていいや」
しかし、これが必ずしもそうとは言いきれないのであった。




