10話
【登場人物】
《超人》
●あずさ……日本/水使い
水を操作するだけでなくアンノウンをペットにしている。現在はあずさの能力による水槽にはタコのクラーケンがいる。そのクラーケンは氷狼という氷系のアンノウンを水槽にぶちこんだ結果、氷属性がクラーケンについた
●レーン……アメリカ/雷、電気系
雷を操作するだけでなく電気耐性のあるサンダーバードをペットにしており、移動はそれに乗って飛ぶ。そして速い。
●ルーシー……アメリカ/光使い
攻撃系能力ではなく相手を弱体化させる能力
●ジェニー……移動系
屋内であることとドアを起点にどこにでも移動する能力。戦闘向きでなく大型アンノウンには使えない
●ドイツ人の《超人》……火使い・死亡
●ユエ……中国/転生術
●サラン……モンゴル/存在透明化
五感全てを断絶、音も視界も臭いも認識されない。
●『白い悪魔』……フィンランド/風使い
●ペデルセン……ノルウェー/植物使い
ロシアを覆った闇が消え去り、レベル4のチェルノボーグを《超人》あずさが倒したというニュースはまたたく間に広がり、それはユエやサランがいる中国にまで届いた。
「まさかレベル4のアンノウンを倒したとは」サランが感心する横でユエは「化け物かあいつ」と本音をこぼした。
電化製品の店の前を通り過ぎ、ユエはどんどん進んでいく。
「北京はさ、ソ連との対立が激化した時に毛沢東が地下を掘らせ、地下施設を作らせたんだ。まぁ、地下城は一部観光にもなったりしてる。その中には勝手に拡張したり新しく作ったりして、当局も知らない地下がここにはある」
サランはユエにその場所でなら機械タイプのアンノウンについて話しをしてもいいと言った。その前にと携帯はユエに没収されたが構わなかった。今はサランの能力で私達を隠し移動をしている。
サランが街の中にある建物一階の女子トイレに入る。異臭と黒ずんだタイルのあまりいい感じでないトイレだが、ここへ連れてきたのには勿論理由がある。奥にある掃除用具入れのドアを開けると、用具を足でどけて床を見た。段ボールが敷いてありそれをどけると穴があってそこに梯子がかかっていた。
「ここの清掃員はさ買収済みなんだよね」
「なんでこんな場所に」
「元々この建物が建つ前に地下が掘られたんだ。でも、土地が売りに出され、それを知らずにこの上に今のが建った。で、この辺りだって分かって床を削ってみるとビンゴ。以降、知る者が使用してる。お先にどうぞ」
「……」
サランは言われた通り梯子を使って降りた。そこは洞窟のトンネルが続いているみたいな場所だった。ユエが降り終わると「こっち」と案内した。
「お目当ての機械タイプのアンノウンは軍の地下施設にいる。私の知る限りでは大型、素材は不明、そして頑丈。動かしているエネルギーも不明。軍や政府でも知っているものはごく一部の超機密情報」
「エネルギー源が不明ということだけど、それならどうやってエネルギーを補給してるの?」
「補給はしていない」
「まさか!? 永久機関ということ!?」
「さぁ? でもそうなんじゃないの?」
「それでそいつはどんな武器や性能を持ってるの?」
「未知数」
「知っている範囲で」
「攻撃に対してシールドみたいなのをはれる。理屈は分からない。あと、頭脳は多分量子コンピューター並み。ハッキングは無理。逆にやられて人類の情報が盗まれた」
「アンノウンに人類の情報が渡ったというの!? なにやってるの!」
「それは同感。そのせいで核兵器の場所まで知られてしまった」
「何故中国はそれを黙っているというの!」
「中国の人口は約14億人。天才を集結させ対応してみせる、それが中国という威厳。他国に頭を下げて助けを求めたりはしない」
「腐敗の間違いでしょ。今の話しだと中国はコントロール下に置けてないんじゃない?」
「逆に訊くけどアンノウンがその気ならとっくに人類滅ぼしてない?」
「それがコントロール下に置いてることにはならないでしょ」
「本当につくづく私達相性悪いわよね」
そう言って着いたのはドアの前だった。
「ここよ」
そう言ってユエはドアを開けた。
ドアを開けると、病室のベッドに横になっている風使いの『白い悪魔』がいた。
「おや、珍しい面会者だ」
それはあずさだった。
「君のおかげで私は命拾いをした。感謝するよ」
「なんで一人であんな場所へ行ってたのさ。おかげで私は旅行を切り上げてロシアへ行ったんだから」
「それは悪いことをした。いやなに、人語を喋る怪物達が群れをなしていると知って、そいつの王を倒せれば自分がその王になれると思ったんだが」
「嘘つき。あんたの付き添いも同じこと言ってたよ」
「嘘つき呼ばわりか」
「答えたくないなら別にいいよ。皆さ、自分勝手だし秘密が多いし」
「それは君もだろ、日本の《超人》にして英雄と呼ばれるあずさもさ」
「……まぁ、否定はしないよ。人間ってろくでもないね。こんな時でも一致しないんだから」
「人というカテゴリーと、個人は違うってことじゃないのかな」
「個人主義? まぁ、私もそうか」
「その割には世界を救ってるじゃないか」
「嫌々やってるのさ」
『白い悪魔』は何も言わなかった。
「ねぇ、あなたにとってのロシアってなんだった?」
「そうだね……ロシアがウクライナに侵攻した事実は良くないことだった。かといってロシアが天罰を受けたと言う気はない。そんな都合よく神を扱う気にはなれない。むしろ、アンノウンは人間の味方ではないだろう。となるとチェルノボーグがしたことは偶然ウクライナにとって都合がよかったというだけになる。天罰でないならなんなのか、それはアンノウンの視点を考えればアンノウンは侵略する側であり、大国を狙うだろう。そしてロシアは大国だ。ロシアだけじゃない。中国にもアンノウンがいると噂されているが恐らくいるだろう。アメリカもだ。NYで起きている現象は恐らくアンノウンによるものだ。そして日本も例外ではないだろう」
「富士山か」
「ああ、そうさ」
「富士山の調査はしたよ。その時アンノウンは始末した。したけど」
「異変は続いたままだ。NYもだろ?」
あずさは頷いた。
「でも、アンノウンはアンノウン同士で繋がってるのかは疑問。まるで個体で縄張りがあるみたいで」
「それは思ったよ。そこで君に訊きたい。全てのアンノウンを倒しきれると思うか?」
「さぁ? 私は自分が全てやろうだなんて思ってない」
「だが、君は《超人》の中で強い。だが、それはいつからになる?」
「ん?」
「君はアンノウンと戦う間に徐々に強くなっているんじゃないのか?」
「まるで経験値積んでレベルアップしたみたいな言い方だね」
「実際はそうなんじゃないのか?」
「さぁ? どうだろうね」
(そうかもしれない)
ロシアはあずさによってチェルノボーグが倒されて以降、空はいつも通りを取り戻し化け物達の姿はチェルノボーグがやられてから姿が全く消えたように現れなくなった。
一方でロシア国民が戻ってくることはなかった。
現在もロシア国内の調査は続いている。
あずさは面会を終え病院を出るとスマホが鳴り出した。
(嫌な予感がする)
そう思って見てみたら案の定ダナムからだった。電話出ないでいようかと思ったがダナムがしつこいのを思い出して観念すると電話に出た。
「もしもし」
「あ、もしもし。あずささ、旅行に行かない? 北海道途中になったしさ。奢るからさ」
「断る」
「そう言わずに。今度はエジプトだよ」
「断る」
(ほらね)




