8話 後編
「どういうこと!?」とあずさは思わず声をあげた。対するダナムは冷静に答える。
「あの寄生タイプのアンノウン、完全に死滅出来ていなかったのよ。むしろ、増殖を始めている」
すっかり楽勝で倒したと思っていたところにダナムから予想外の報告にすっかり面食らった。
「でも効果はあったんでしょ!?」
「ええ。でもあのアンノウンは適応してしまったみたい」
2人の会話にペデルセンが入ってきた。
「となると寄生型アンノウンの対処法を本当に考えないとだな」
「氷が駄目なら熱とかは?滅菌消毒みたいに」
「忘れたの? ドイツの《超人》は炎系だったでしょ」
「ああ、そうだった」
熱処理が最も効果的だと思っていたがあの寄生タイプはどうもそれでは死んでくれないらしい。
「どうするんだよ」
「今、専門家チームで対策を練ってるところよ」
「そりゃいい。アンノウンに寄生するアンノウンの専門家がいるならな。そんなの意味ないでしょ。あれは私達の常識をこえてくる」
「そうね。なら他になにかある?」
「寄生部分を取り除いて宇宙に飛ばす。奴に新しい寄生できるものを与えるの」
「それは難しいな」とペデルセンが言った。
「既にあの辺りの土地は汚染して拡大に向かっている。今更肉体を得るよりこのまま土地ごと侵食した方が被害は大きいしなにより巨大な根を張ることになる。問題は海にまで奴の拡大を許したら人類はいよいよ終わる」
「なによ、途中まで上手くいってたのに」
「私達にはあまり時間は残されていないわ。無責任だと思うかもしれないけど私達大人では何も出来ないの。あなた達《超人》が頼りなの」
「クソっ!」
「あとどれくらい時間があると思います」とペデルセンは訊いた。
「それはなんとも」ダナムは苦い顔をした。
「時間を稼ぐ方法ならある」
「あずさ、それは何?」
「ルーシーよ。あの子の光は寄生アンノウンを弱らせられる筈よ」
「それなら奴を倒せる?」
「どうだろう……確証はない」
「とにかくルーシーを呼ぶわ」
するとペデルセンは言う。
「ルーシーはアメリカにいるんだろ? 間に合わないだろ」
「大丈夫。死滅出来なかったと分かった時点でルーシーとレーンを呼んでおいたの。彼のサンダーバードは最速よ」
「そうなのか」
「それよりこれからよ」
するとあずさが言う。
「今思いついたんだけど奴が寄生するとしたら可能性のあるものが一つある」
「本当に!?」
「でも、ダナムは反対すると思うよ」
「何よそれは」
「ネットさ」
「駄目よ!」
「ほらね。だけどルーシーの能力によって動きが遅く、しかも弱ったウイルスを退治すると思ったらどう? 奴にはまだ耐性のない攻撃になると思わない?」
ダナムは少し考えた。
「分かった。上に話しをしてみるわ」
それから間もなくしてルーシーとレーンがサンダーバードに乗って現れた。
あずさはサンダーバードから降りてきた2人に駆け寄った。それにルーシーがまず先に気がついた。
「久しぶり。といってもそんなに経ってないけどね」
「本当だよ。実はルーシーの力が早速必要なんだ」
「うん、分かった」
「なんだあずさ、俺は無視か?」
「やぁレーン。ルーシーを連れて来てくれてありがとう」
「なんか運び屋みたいな言われ方だな」
「実際作戦はルーシーの能力がメインなんだよ」
「どういうことだ?」
あずさは2人に状況を説明した。
「なる程な。レベル3と聞いていたからどんな強さかと思ったら厄介な寄生タイプだったとは。しかし、同じアンノウンに寄生するアンノウンとは」
「私は汚染箇所に光を当てればいいんだよね」
「そう」
「だがよ、なんでネットなんだ? 奴の実体はデジタルじゃないだろ」
「どんなものにも寄生するならその実体も変えられると思う。生物、アンノウン、それから自然。敵は受けた攻撃の耐性を身に着けることからもその能力は自身を作りかえてるんだと思う」
「進化してるってわけか。その進化をルーシーの能力で極限まで遅くし、更に弱らせた上で破壊ねぇ。それじゃあれか、パソコン持ってきて有線を地面に突き刺すのか? どうやるんだ」
「え? 今あんたが答えたじゃん」
「マジか。冗談で言ったんだぞこっちは。概念とかどうなってるんだよ」
「そんなの知るか。だからアンノウンなんだろ」
「おいおい大人はそんな話しをまともに聞いたのかよ」
「政府の連中じゃ何も出来ないでしょ。知ってる? ニュースではイタリアに続きドイツまでもが落ちた。このまま世界はアンノウンの手に渡るのか? とか言われてるの」
「終末論かなにかか」
「私達《超人》が頑張ってるっていうのにネットとか暇人は死を先駆的に考えるのに忙しいみたいね」
「アホらしい。勝手に死んどけよ。それで作戦は上手くいくのか」
「いかなきゃネットはアンノウンに渡ることになる」
「まぁ、変わらないな。俺はルーシーの能力で弱体化させたらその場所に核兵器を撃ち込んで確実に殺す案を提案するんだが」
「アメリカらしいね」
「日本人は核兵器がどんな理由でも使用はすべきでないと?」
「核兵器が解決案なら世界中あちこちで核兵器が使用されるでしょうね」
「まぁレベル4はそうなるだろうな。実際、いつでも狙えるようにはしているようだが」
「ねぇ、レーン。あなたのサンダーバードで空を飛んでそこから光を当てたいの。空からなら対象が見えるから」
「いいぜ」
それからダナムの方の準備も整った。デジタル上、アンノウンの容量がどれほどかは知らないが乗り移ってくれたらあとはこちらの作業だ。運がよければアンノウンの情報を得られるかもしれない。
「それじゃ行くぞ」
サンダーバードが飛び立ち、ルーシーは空から能力で光を当て始めた。
「本当に上手くいくんでしょうか」作業員は有線を地面に突き刺した。
すると、パソコンは一瞬でフリーズ、完全にかたまった。
「本当にかかった」
クソみたいなパソコンに入ってしまったアンノウンは処理落ちし、更にルーシーの能力で防御は最低。
アンノウンのデータを破壊するのは容易だった。
「アンノウン消滅。汚染箇所も消えたわ」
ダナムは今回作戦に関わった全員に無線でそう報告した。
レベル3/寄生 除去完了。




