13 表と裏 1
「では、エドワード様、その上着を脱いでください……貴方の馬車も今この瞬間から『ガルディア王族の備品』ではなく、我々の『軍資金』に姿を変えます」
ハンス(ユージン)は、呆然とするエドワードを余所に、モラン、ガストンと輜重部隊を呼んで馬車の査定を始めた。
「ガストン、いいですか。この馬車を丸ごと売ってはいけません、目立ちすぎるし、これは一応谷底に埋まったことになっていますから。……まずはこの『ガルディア王家の紋章が入った銀の装飾』を全て剥がします。これは地金の価値に、歴史的価値という色を付けてロドニアの収集家にでも流しましょう。次にこの『高級な車軸とバネ』これはバラして、アステリオンで建設予定の『特急運搬車』の試作パーツに転用します。残りの高級木材は、ギルドの家具職人にでも……単体で売るより、三倍の利益になります」
モランはロドニアで【トキノカケラ】という古物商をやっていた。こういったことは、長年の商売や諜報活動で培われた経験がものをいう。ユージンにとっても重鎮なのだ。
エドワードが着ていた刺繡入りの正装。モランはそれをエドワードの手に押し付けた。
「これは、『全滅したはずの貴方の、最期の遺品』として、闇オークションにかけましょう。ヴァルガス王への反感を抱く貴族や逆に悲劇を好むマニアにはたまらない逸品だ」
聞いてたハンス(ユージン)がおどけて意地悪そうに囁いた。
「エドワード、お前の血痕を少しつけておくといい。その一滴で『悲劇の王子』として落札価格が金貨十枚は跳ね上がるぞ」
「……ユージン、お前は鬼だな」
それでもエドワードは、ため息交じりに笑っていた。
それからハンス(ユージン)は手元の台帳に、流れるような速さで数字を書き込んでいった。
着々と準備は進む。




