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Ep72:ジグルの遺言

 ジグルの背景。そこには極秘で連ねる意志と魂の変容を迎える前の状況を調べたものがある。各国へ送る書簡よりも大切なもので、自我崩壊を促すような内容だった。


 王国エイドカントリーズは新たな王を出迎えた。侍女は身を守るため兵法を学ぶようになり、騎士は器用さを鍛錬するため農作物を育て、大臣および議員は何かと体格を気にしていたので城内の見回りを行い、兵士は能力を均等にするため各部屋の掃除係となっていた。そこで見つけたのは――、


「うん?これは・・・ウィナート殿下の書簡?」

「おいフルド!お前いいのか?見つかったらイデアみたいに・・・ッ」

「・・・いや、極秘で。アーズ、お前は見張っていてくれ」


―魔道の影響―


闇を崇める住人達は“ダーク・オブ・ホール”を虹の鉱石で造っている。それは鏡に宇宙空間の色を映し出して呪文を唱えるという方法であるけど、その鏡とは虹の鉱石を粉末にして磨いたモノだった。その力を体に宿すには虹の鉱石を自らの血液を用い、乳鉢でトロみを出すまで擦り合わせる。それを死骸の腐った骨へ塗り付けてそれを更に粉末にしたモノを体全体へ擦り付けると体が眩く発光し、痛みを覚える様だった。僕も実際に真似をしてみると余りの痛みに絶叫しかけた。それがダーク・オブ・ホールの正体だったのだ。


―――へぇっ?

「魔道は、虹の鉱石に自らの体液を混入するだと?発光とはトロみ?」

「臭いそれが、擦り合わせるダーク・オブ・ホールの正体?それで痛みを伴うの?」

「それは、真似をして絶叫するモノ・・・うん?デッズお前いつの間に居たのだ?」

「退屈だから。でも陛下って変質者だったんだね!では次ィ―、」


―ダーク・オブ・ホールの影響―


体に擦りこむと皮膚の奥深くまで浸透するために、神経系を焼き切るほどの痛みを発する。その絶頂たる咆哮が体全体から現れると、その発光するモノが意志と記憶を辿り意識の奥底に眠る言葉を連ねることが分かった。その言葉を対象物へ与えるとソレの成長速度が速まり枯れるか破裂する現象も起きてゆく。つまりダーク・オブ・ホールを備えたままライト・オブ・ホールへ身を投げてしまうと、線状の塊が体を突き破るだろう予想もついた。僅か0.9hgハグで10人分の痛みとエネルギーが現れるなら、大木さえ持ち上げられるに違いない。


―――こりゃ、大変・・・

「疼けば浸みては焼ける・・・」

「絶頂するの、咆哮するほど?」

「ソレの成長速度、枯れる・・・身を投げるほどに!」

「陛下は大木を相手にしていた!!」


――――流石我等の陛下だ!!!


「まて、まだ何かあるぞ?」

「どれどれ・・・」


イーターへ。

確か、君はこうも言っていた。

『私には愛する人が居る』のだと。

僕を受け入れないまま、かつての姿に戻ろうとしている。

最古で起きた事、畏怖なる出来事を通過しなかった事。

それぞれが、天文学での宇宙の理に、パイルで調べた出来事と一致している。


まだ議員だった大臣達が僕を見張っているようだ。これでは新天地計画の真相が示せなくなる。早く虹の鉱石の動力源に替わる鉱石を造っておかないと。せめて人工生命体の設計図を頭に入れて置くとしよう。あとはこれ等を機械生命体として扱うための参考資料も、図解してみよう。これには魔道の波動が欠かせない。それは虹の鉱石を粉末化させなくてはいけない。そこへイーターの血液と、遺伝子から培養した液体を混ぜて置く。それを釜戸の上で温めて溶かすと魔核鉱石の出来上がりだ。まずはイーターの協力を得なければいけないな。


『つまり、それって私がお母さんになるってこと?』

『悪いけど、変容を遂げたら遺伝子変化を起こすので、君は母体になる。頼めない?』

『まァ、いいけどさ、でもそれってジグルがその子の、お父さんになるって事よね?そうねぇ、名前は何にしようか、お父さん?一応ココでは国王と王妃って形をとるんだけど。あ!そうだ―“ジリッ”―ジグルが名前付けてよ?例えばイーターとジグルの名前の間を取って、「“イグル”」なんて名前はどぉう?“ジリジリ”それでね、こう云うの。「“必ず合図をして親を呼ぶのよ”」ってね!“ジリジリジリ”・・・それで、変容を遂げるなら融合しちゃうとか?“ググイ”こう呼ぶのパパは臭くて犬みたい、ママは綺麗で料理が上手い人だと!』

『・・・あのぉ、どうか幾度と話しかけてこない様にして?集中できないから!』


僕は再びイーターに魔核鉱石の使用方法を説明した。まずは血管へ魔核鉱石から抽出した液体を注ぐこと、それから子宮注入も行うこと、それが微小の玉程に成長したら疼きだすのでワイヤ・プレスト(極小の掴み手)で取り出し、水の在る処へ漬け込んでおくように教えた。だがイーターは余りに前向きな姿勢で興味津々と聞いてくれた。だけど問題は変容によって記憶を失い、身体年齢が変化する可能性の高いことが判明している事だった。


『一応、確認だよ?』

『どうぞ、何も言わないから聞かせて』


魔核鉱石に含まれるその“闇”と呼称するエネルギーは、体中の血液と粘膜に到達するので耐え切れない痛みを与える事を伝えた。それは陣痛よりも痛くて出血を伴うことも説明した。そして胎児となるソレを早く取り出せない場合、イーター自身の下肢から破裂することも説明した。でも彼女の顔はまるで棒の様にたたずむ。それは針をも通さぬ鉱石よりも固い決意の表れだろう。


『もし、あなたが変容して居たなら、しっかり父親を演じてよ?』

『ぅフンっ!・・・じゃあ、注射を始めるよ・・・“プズ―”』


だが、彼女は怒った。僕に執拗に絡むように自らの身でなく、スタヴァーだったイデアを庇う様に裏切りだと表現する。それは何故だか訳としては一切、理解できない。


『何て人!私を裏切っておいてまだそんな戯言を!?よくも姫様を・・・』

『裏切りなんて・・・全て計画として上手くいったんだよ。それでいいだろう?』


僕は蹴られた。幾度となく踏みつけられた。それはまるで汚れた何かの生き物をひれ伏させるように、代用品として扱ったのだろう。この女もなんてつまらない人形なのか。


“あはは!そうだよ、母さん!!”


『うッ・・・あな・・たは!?』

『おかえり、僕のママ、お母さん!』


“ペラッ”


――つまり、陛下は母を求めていた。

――過去を求める以前に、自分の繋がりを新たに設けようと?

――多妻を再現しようとしたんだよッ!

――っく、さすがは我が陛下殿ォォ――ッ!!


「まだ、何かあるな・・・?」

「どれどれ・・・?」


“ペラッ”


ライズへ。

君は何かと警戒的だ。いつ僕が君に対して攻撃的だったというんだい?出来る限り内政からあらゆる国政について、いろいろと調べてみたんだよ。そしたら、議員と大臣達が手を組んで僕を貶めようとしたって言うんだよ?もう少し信頼して欲しいな。確かにミヘルと書簡を作って、見事に演じてみたけど、スタヴァー様を火刑に掛けた張本人は闇の存在だった。


『実はスタヴァー様の事なんだけど、兵が来る前に言うよ?』

『何だよ、お前が火刑を企てたんじゃないかよ!』

『だってミヘルには殺されかけるし、イーターが僕を蹴るからさァ』

『・・・それで、何だよ。聞いてやるよ』

『ああ、実はね・・・』


僕は大きな皮紙を広げた。一応指示した筈なんだけど・・・。

そこには円形の図と幾つもの言葉が、記されている事も見せた筈さ。


『何だコレは?設計図かよォ?』

『いいから、説明するよ!』


そこで僕は説明を始めた。つまり、スタヴァー様の身には既に闇の魔道という名の“ダーク・オブ・ホール”の印が記されていた事を教えた。そこに僕が見たのはその印呪、彼女と新天地も形を変えて再生するという形。スタヴァーの背筋の右下側には円=周囲、10本の槍=世界線の数が記されていて、7つの十字=虹、預言が染み付けられていた。それ等の中央には太陽の印=大いなる意志が示されていた事を君に教えた。『これ等が示すのは?』と君は僕に尋ねてきた。


『地平線に眩き太陽が灯す時、七本の色が数多なる宇宙を満たすだろう・・・と』

『つまりここは5番目の世界線、輝きを満たす生命のヨリドコロだと?』

『うん。虹はヨリドコロを移す。そして――』


――創造主、宇宙、眩き魂、神、聖域、人類、文明――、


―――それらは、王の帰還を示すのだそうだ―――


そう伝えて、僕達はお互い機械を通じて連絡する事にした。


――――


「そうか、これは陛下の独自の計画で、研究資料だったんだ」

「恐らくは、陰で動く闇の支配によって、陛下も警戒していたに違いない」


――これは、遺言だな。

――きっと我等の陛下は無敵的な創造を行うに違いない。

――新天地計画は上々だ。イデアは無く、ジグル有りだッ!


 この様にして、ライズ一行は追い詰められ、ジグルだけが称えられた。

 時の首謀者として・・・。

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