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Ep71:崩壊=再生へ

 俺達はもう、後がない。新天地計画が成功したと思えば、失敗の烙印を押されてしまい、俺達一行に襲い掛かる魔道の闇が行く先を阻むのである。まず、俺達が行く先が決まっていない。それはジグルの指示によって天命が左右される程に、だ。


 俺は未だに王国から外に出られず、各国との交渉にすら出掛けられない、とジグルから聞いている。本来であれば無視してでも、俺が皆を連れて出国の手配をする予定で居る。この新鮮な空気に彷徨いながらも、暗殺されてしまうよりはまだマシだと感じられる。


 もう、家族とは会えない。だが、意志は通じている筈。家族だけでも民と貧困から一緒に逃れる手立てがある事を信じて居たい。それに、いつか変容するのならば、俺達は一緒になり、どこかで出逢っているのだろう。この静かな環境で魔道が扱われるなど、闇に浸るのと同然だ。


 ジグルが言うに、変容する先で記憶を保って居れば、新たな体を手に入れられ、元の自分に戻れると話していた。そうなれば、スタヴァー様とも再会できるし、別の世界線での働きが可能で、パヘクワードを築くことが出来るかも知れない――のだと。


 そしてなぜ、ジグルが変容という言葉を知っているのだろう。

 あれは、マジェス殿下と話していた事なのに、なぜジグルがそれを知っているのか、不思議でならない。それに――そう思う矢先、イーターから声が掛かる。

 それも機械で通じるように発信されてきた。


《イーター、聞こえるかい?》

「ライズ。ジグルの指示が来たわ!」

「何と言っている?」

《これから僕から伝える事を、ライズ達と共有してね》


――まずはライト・オブ・ホールのある方向へと向かってほしい。虹の鉱石のエネルギーが突然変異したことでダーク・オブ・ホールが多数現れてしまった。その磁気嵐から抜けて、魔道を携えた連中の向かってくる方向を逆に歩み、なるべく戦闘を牽制しながら、目的地へ到着して欲しい。


――俺はその事をお前と、イーター、ミヘルへ伝えつつも目的地に向かえばいいんだな?そして、ライト・オブ・ホールの発生場所を特定できればいいが、どこか分かるか?


――X―z205方向に現われた事を研究員から聞いてある。勿論、議員や大臣には黙っているさ。もし見つかれば、僕だって火刑に処されるかも知れないからね。君達を先に逃がして後を追って、その基軸で落ち合おう。


 そう話すとジグルから発信が切れる。

 その事でイーターが不安に感じる。

 これまでの栄光も何も失ったかのように、裸になった様子を見せる。


「ライズ・・・私達はもう・・・」

「もう、俺達には居場所がなくなったんだ・・・逃げよう・・・」

「大丈夫、私が守ってあげる。ライズも騎士の位に近い剣術を持っているから、後ろを任せられるわ」

「そうだ。安心してくれ。俺も随分と旅を重ねてきたし、大丈夫だよ」

「でも・・・」

「言葉を交わすなら今の内だ。俺達が変容する場所で、これまで培った技術の内容と、状況を交換し、訪れる出逢い先で再び前を向こう」


 俺達は急ぎ、王国エイドカントリーズから脱走する。一般兵や侍女、一部の騎士には俺達の状況が知らされていないため、王国外から街、そして門番を駆け抜けることが出来た。これもジグルの計らいが在ってこその脱出。前を見て、後ろを振り返らず、たちまちに現れる魔道を持った連中と遭遇。ミヘルと俺が連携し、この温まる体で剣技を披露した。イーターも後方に回り、弓矢や投てき道具で連中を牽制した。そしてエイドカントリーズから40キロメートル離れた先でライト・オブ・ホールのある陥没地帯に到着したのだった。


―ゴッゴッゴゴゴゴゴォォ―

「ライズ・・・ジグルは来ないの?」

「あぁ。暫くして来ると言っていたが、どうやら俺達が先にライト・オブ・ホールでの変容を果たさなければならないらしい」


 切なる思いを乗せて、このパヘクワードに未来を託す。

 それなのに、何故かミヘルは平静を装っている。

 イーターは不穏な笑みを浮かべている様にも見える。

 なぜ、俺と意志を共にできないのだろう?


「ライズ、イーター。私達が先なら、ジグルは後から来るわ」

「そうだけど、何か策を思い付いたのか?」

「ライズ・・・覚えていてくれたらよかったのに・・・」

「何を言っている?」

「スタヴァー様は全てを見出し、認めていた。だけど消されたの」

「ミヘル?何を言っているのかしら?私達は反逆罪として追い詰められているのよ。それを亡きスタヴァー様が全てを見出して、認めてくれたと?おかしな事を言うんじゃないわ!」

「ライズ・・・このペンダントを覚えている?・・・再起をきたす前に私の最後を見取ってくれる?」


 ミヘルは突如、不思議な事を言い始めた。まるで、俺が誰かに操られていたかのような話し方である。以前にペンダントの事を話したのはパヘクティ学園での時だけ。それを最近になって伝えたという。スタヴァー様がミヘルが生まれる前からこのペンダントを持っていて、そして、その中身がある物であることを示す。


「そう。覚えていないわね、この通信機が誰から貰ったのかを・・・」

「通信機ですって?」

「私は別の次元から訪れた調査員。そして、どこかの世界線に辿り着いたら、その居場所から宇宙軸を示すように言われていたわ。マクスエル総督・・・あなたと同じ名前のライズ・インバルス・・・全て別次元での物語・・・彼等と別れて今に至る!」


 ミヘルはライト・オブ・ホールを前に別次元の存在である事を示す。つまり、起き得る筈のない別次元との干渉と世界線との融合を果たし、己の意志と記憶を保ちつつ魂を変容させたという。それも自らの意志を以ってして。そしてしばらく俯いたと思えば、古文書にある最古の時代の話を持ち掛けた。


「ライズ、私達は同じ姿で、同じ人を愛した」

「何を言っている?俺達は違う存在だが、召集によって同じ志を得たのだろう?」

「ライズ、話の続きよ。私達はね・・・“王”だった」

「ミヘルは少し錯乱しているわね。でも聞いてあげる。別れる前にね」

「ありがとう。それで、王が愛したのは、そこに居るフォダネスという闇の女王だったの」

「・・・うっ、ミヘルぅ・・・何を言っている?お、俺達は・・・」


 瞬間、俺は何かを思い出し掛けた。

 そして、ゆっくりと顔を上げる。

 惑星フォライズという場所で、神々の末裔ヴェシェベルという名。

 そこが構築される前の宇宙にスタヴァー・マーズという神が誕生した事。

 人類が食い合って、文化を経て文明共闘を行い、大事な息子を失った事。

 そして、彼等の名は――・・・


「父は眩き王ブレトル、息子は光の王インシュビーと名乗っていたわ」

「・・・あ、ぐぅ・・・み、ミヘルぅ・・・」

「眩き王は二つに分かれ、畏怖の世界線で別々の存在となった。これも大いなる意志の表れ、マーズだったビグヴァル・・・そして、私達全員がスタヴァー様の意志の分身。それに逆らうは、インシュビーという光を閉ざす者。真なる闇」

「ど・・・どうして、それを・・・」

「マジェス殿下の真の名は、ヴェシェベル、サンシャイン、そしてビクヴァ――“グシュッ”」


 瞬時にして、意志と意志、魂と魂の共鳴らしき状態が解除された。現実に目を向けると、イーターがミヘルの胴をミヘルの剣で突き刺していた。


「これで、再構成、再構築、再生が間に合うといいわね。ミヘル・ブレトーナ」

「な・・・なぜ・・・イーター・・・いえ、王よ。その名前を・・・知って・・・」

「ジグルから教えて貰ったのォ~」

「イーター、お前一体、何をしているッ!?」

「ジグルと私の関係に首を突っ込まないで。それにフォレスからの刺客が、これ以上パヘクワードの事情に突っ込まれると厄介なのよ」


 俺は何も出来なかった。

 いや、止めようと思えば止められた。

 ミヘルを突き刺す前にイーターの行動を見破る事さえ出来ていた。

 イーターの冷酷な目はそれを許さなかった。

 ミヘルは俺だけにスタヴァー様の言伝を覚えさせようとして、わざと・・・。


「ライズ・・・私はジグルを恨んだ。何故なら彼の示す計画のすべてが偏っていたから、姫様は火刑のもと、この世を去ったの・・・。彼に『お前さえ居なければ』と伝えていたら、光に包まれた・・・眩き光よりも更に強く、七色の砂に――ッぐぅ」

「さっさと堕ちなさい。この紛い者め!――ゲシッ」


 ミヘルはイーターに蹴られて、そのままライト・オブ・ホールへその身を包まれた。瞬間、“ジュッ”という音と共にミヘルの姿は消え去った。ペンダントを着けたまま。それに、イーターについて何かを伝えたかったようだ。闇たる出来事、それに一人を愛したとは一体・・・?


 そこで都合が良くなったのか理解は出来ないが、イーターが俺に微笑みこう言った。ずっと二人でこうして居たかったかの様な素振りにも近かった。顔を近付けてきて・・・。


「ライズ・・・愛してる」

「一体何を・・・」


“チュ”


「大丈夫。実はミヘルは、変容を先にしたいと願い出ていたの。それで、妙な事を話しだしたら、ライズがジグルに言っちゃうでしょ?そしたらジグルの事だから、大臣達に全て言伝してしまうかも知れないから、だから先に変容させてあげたの」

「だ、だがなぁ・・・」


 イーターの様子は確かに怪しく感じた。

 だが、俺達二人では追っ手である魔道の者達を牽制するのは厳しい。

 状況を阻む連中を落とすか、それとも仲間を疑うか。

 俺には二つに一つしか答えを与えて貰えない。

 こんな時に神頼みだなんて、俺も・・・。


「ふふ。ジグルとはね、昔に関係があったの。でも、昔みたいにいかないと断った」

「さっきのミヘルの言っていた事・・・」

「ライズ。ジグルが来たわよ」


 後ろを向くと、茶緑の髪の毛の中年が現れた。

 なぜ、このタイミングでここに現われる?

 落ち合うと言っても、アイツ一人じゃ無理だろうと何故疑わなかった?


「やぁ、ライズ」

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