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Ep69:―切なる約束―

 スタヴァー様、貴女を愛しています。例えマジェス殿下の告げた通りの出来事よりも先に起きた肉体の滅びが起きたとしても、きっと貴方を迎えに行くでしょう。


『ライズ、約束ですよ』

『はい、姫様』


 女王様、あれから2年経ちました。なのに、俺は間に合わず、あなたが火刑になるのを全く知らずにこの墓地へ来た。俺が居れば、あなたを逃がしていた筈が、叶わなかったのです。もし、万が一希望があれば、二人で逃げられた、変容すればよかった・・・。だが、無情にも俺と貴女は離れ離れとなってしまった。人類の頂きとは何か、生命学理論における新天地計画と虹の鉱石における移民とは何か、俺達が紡がれる貧困から救うであろう愛とは如何なるものか。雨が降ります。スタヴァー様を追悼する様に俺は貴女が創り出した虹を浴びてみましょう。


“ザアアァ―――”


―――魔女は死んだァアアァ―――ッ


 四角くも黒い傘。その支柱は細めの丸い木で出来ている。それから頭に残るその惨状なる言葉。国民から聞いた事、それが“魔女の死”というものだった。だのにジグル本人から告げられたのがスタヴァー様の死。この大雨の中でミヘルとその墓石へと立つ。何故、ジグルは貴女を守れずに、大臣としての働きを優先させたのか、何故、ジグルの反旗に周りの誰も止める事をしなかったのか、どうして生命の尊さを皆で訴えなかったのか、国民と違う言葉、行動が示された。スタヴァー様の想いをかき消してまで、貴女を今、想います。


 ですが、俺は悔やみます。

 ――なんてことだ・・・と。


「俺がもっと早く気付いていれば・・・」

「ううん、それはあなたの責任じゃ・・・ないのよ・・・」


“ザアアァ――――”


 いいや――ッ、

 早く気付いていれば

 必ず眩い閃光のなかの向こうまで、

 彼女の手を引いていた筈だ―――ッ!

 ――ばか。皆、馬鹿だ・・・


「ライズ・・・彼女は待っていた。けれどそれ自体は別れじゃないと仰られた。王国の咎めとして罪を償おうにも身体は震えていたの。僅か15歳ですべての責を抱えるなど瘴気に触れたも同然・・・ッ!民は理解している。そしてライズ、あなたまで嘆かないでね」

「俺はイシュペータス王国の領地の平民区で生まれた・・・だが、貧困に対する間違いを正せなかった・・・だからミヘル、その“意”を、貴族としての誇りを以って言ってくれ」

「ライズ、これはスタヴァー様の遺言・・・私には貴族の誇りなどもう無いの・・・。でも、ありがとう。今こそ私個人の意を、スタヴァー様の“意志”を伝えるわ」


 俺はミヘルからスタヴァー様の身に何があり、どういう事を伝えていたのかを聞かされた。


「あのね、ライズ、私は只の貴族じゃなかったの」

「どういう意味だ?」

「騎士としてエイドカントリーズに仕えた。これは、あなたの言い伝えであり、スタヴァー様とは違う意志で構成された出来事なの。あなたは王たる可能性を秘めていた。私自身が王に仕える騎士として、貴族の家に生まれた。どこかの次元の、どこかのヒロインとして――」

「ヒロイン?」

「アクスドリーマヌ村の領主、ビオ・ダルムの恋人。このペンダントがそう告げるの」

「あぁ、このペンダントはお前が幼少の頃から着けていたな。それが?」

「私は次元フォレスに佇む住人だった。そして、最古では王だった」

「フォレス?王?お前が?」

「スタヴァー様は見抜いていた。ブラックホールを止めろという私の使命を。そして私はブレトーナ。フォレスからこの世界線で調査を行っている。このペンダントは発信機・・・でも、今は使えないの」

「じゃぁ、その超人的な強さの秘密は、遺伝粒子の流れに沿って変容していた為なのか?」

「そう。そして、この国の、世界の未来をスタヴァー様は全て話してくれたの。ライズを残して、先に往くことを占っていた」


“キュイン”


 ミヘルの胸元のペンダントが一瞬だけ光ったように感じる。

 ミヘルはそう言うと、俺の額に自らの額をつける。その瞬間、俺とミヘルの意志が魂を超えてリンクがる。スタヴァー様だけでなく、ミヘル、イーター、看守の姿が見える。訪れる処分を目の当たりに俺は蒼黒い空間の中で一人立っているのである。


“キュ―イン”


 それは処刑の7日前の事だった。

 彼女は地下牢の部屋の奥で匿って貰っていた。

 そこで次期騎士であるミヘルと国王王妃候補であるイーターを呼んだ。

 ミヘルには次期騎士に昇進する頃に決してジグルの前で剣を離さない様に伝えた。

 イーターには国王王妃に選ばれず、そのままジグルの指示へ従ってほしいと伝えた。

 そんな彼女自身が魂を以って皆に意志を称えると伝えていたのだという。

 だが、俺には事の経緯を伝えておき、変容を迎える頃を待っている事をも伝えていた。

 それがエイドカントリーズ国王ヴァン・スタヴァー・ディルタの役目であると。


「代用品かぁ~」

“ふふふ・・・僕の判断は魔道に準ずるのだ”


 各国が既にジグルの手によってマジェス殿下の意を摩り替えられていた。俺が再びジグルの策略へ掛かっており新天地計画の書簡の訂正に向かったのにもかかわらず、その手によって王国の抹消を言い渡されていた。そんな事も知らずにスタヴァー様ご自身が“国王の務め”だから火刑の台へと向かうと告げていた。そして俺に迎えに来るようにと言い残していた。変容という名の“再生の意”を称え、その約束をきっと憶えて置いてほしいと話した。


「最後に“ライズ、あなたを、愛して居ます”と言い残して」


 そうか・・・

 俺は間に合わなくなった訳ではない。

 ――スタヴァー様、俺は決してあなたを見捨てたりはしません。


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