Ep67:火刑
ああ、サンシャインよ!
新天地計画を間近に迫ったであろう状況下、裏で別の計画が発案された。人工生命体の上位互換である機械生命体による支配、魔道による支配であった。これは虹の鉱石のエネルギーをライト・オブ・ホールの逆流、ダーク・オブ・ホールによって生み出された最高傑作ともされた。その様子を大いなる意志は見守り、宇宙の神・マーズと共に見送る。無知から有知とされる出来事が、今ここに始まろうとしている。最古に眠る儀式を、ライズ・フォングランの居ない場所で、しかも、終わりのない闘いへ生贄を差し出そうとしたのは、一人の男であった。
――1年後、エイドカントリーズの中央区
“七つ”と呼ばれた一人の騎士と20名の兵士が武装し高台へと上がり告げた。
15歳の少女である国王ヴァン・スタヴァー・ディルタ第一皇女殿下の処分が決められた。
大臣達はライズの帰還を待たずに、議員並びに七つの騎士等が民へ新天地計画の責任をすべて、先代国王マジェスの血を引継ぐスタヴァー王女へと一任するとした。ついては闇の魔道をも操る魔女、イデア・サンシャインとして公開処刑とすること、処刑後に王国の平穏を象徴することを民に約束すると述べ、何か異論あれば一言聞いておこうと王国側の意見を称えた。
「ほんとうにスタヴァー王女が魔道で我々民を目論んでいたのかい?」
「先々代国王の意向から謀反を示した通りである!」
「では、どうして15歳の少女を国王の座から降ろさなかったのだ?」
「内密の元に在る通り!」
「先代マジェス殿下は謀反・内密などしなかったぞ!」
「逝ける血は死す。たとえそれが罪でなくとも!」
「アンタ等が責任とれよ!どうしてあのような“未知なる子”が公開処刑されるのさ!?」
「民の声を募らせた決議にある!」
“ワーワー、どうせお前らが・・・ザシュ――・・・ヒッ、イイィ――”
「民と言えど共謀するなら我らが道の礎となるがよいッ!“ポイッ”」
「“ドッ、ゴロ”―首ィイイ――!?」
“な・・・七つの騎士がしゃべったァァ――・・・これは呪いだ、終わりだァ”
王国は民の反感を買った。だがその反感は民の声として王国エイドカントリーズの後始末要素として取り入れられた。スタヴァーは侍女にも見送られる形でその身を拘束される。そして大臣ジグルの号令が下され、7日間の審議猶予期間を牢屋で過ごすこととなった。
―――――ふ。これでこの国は私のモノだ、お前など帰って来なくてもね―――――
“カッ、コッ、カツ、カ、スタスタスタ、ピタ―・・・”
「ここですね?」
「はい、確かにスタヴァー王女を預かっております。おい、ここへ・・・」
“ス―、スサ、スサ、スサ、サ、ス、タ・・・”
「姫様、具合は如何です・・・?」
「ええ。別室を用意して頂けてありがとう、ミヘルそれにイーター、監視長たちよ」
ライズ不在の今、スタヴァーは自らの身を呈してまで、あらゆる面で今後の在り方を伝える事にした。亡きマジェスの意志を継ぎ、これまでの計画が如何に重要な導きを意味していたのか、何故、王国は新たな王を迎えるべきなのかそれらを告知していく。彼女の話すそれはまるで、おとぎ話の様な視点をもたらしていた。もう大人となったミヘルとイーターは耳を凝らしては何度も確認するように最後までスタヴァーに向き合った。
「そういう事なら引き受けます!」
それから7日の朝8の時に、スタヴァーは監視員に連れられ処刑台へと登壇する。
“ザワザワ・・・あの痩せた少女がスタヴァー王女?”
“ヒソヒソ・・・私の娘と同年、そんな姫様が死ぬなんて!”
“ワーワー、降ろせ、姫を降ろすんだァァ――”
“このぉ、無能大臣ジグルめぇ!――ビュッ―ン”
「っふ、民の声が私にも届く・・・何と素晴らしい日なのだァ!」
「大臣、このような愚行、赦してはなりません・・・放っておきましょう」
「ジグル殿、貴方の地位こそ民の声。更なる高みへと向う事でしょう」
“ギャーワー、スタヴァー様を崇めろォ!スタヴァー様を称賛しろぉ!”
“ワーワー、無能大臣、無向議員、殺人騎士など降ろしてしまえぇぇ!”
「アマテ次期皇妃、もはや彼は戻らない。ライズ不在のまま助けなくてよいの?」
「剣士アントレア、貴女は次期騎士。この日をその眼に留めて置くのです」
――――最後にスタヴァーたる魔女、イデア・サンシャインよ!せめてもの懺悔、言い残す事はあるか!――――
“民よ!”
王国の兵士、騎士、議員、大臣を含め、350名もの大勢の民の前でスタヴァーは告げる。それは王国のひとつの意志として預言を告知するかのように、ライズ・フォングランという人物に初めて庭園に連れられ、城下町で触れ合った民達と語らった日々を愛するが故、このように宣告する。
“我が魂は貴方がた意志、愛と絆は現世の滅びよりも後世の復活を遂げるでしょう!必ずや虹の元にその魂が!意志が赦されることを願い、私は魔女、イデア・サンシャインとなります!”
彼女は宣告した、我が名は魔道に満たされし魔女、イデアであることを。だが民達はそんなスタヴァーを見捨てることなく寧ろ、称え見送るように温かな言葉を投げかける。そこに王族と民の境など不要であった。10年前から度々顔を、声を、歌を覗かせていたあの頃の少女を我が同志のように称えるのである。
“共に称えようっ!・・・”
“スタヴァー!我等が意志!共にゆこう!私の姉妹!私の娘!俺のかつての兄!待つよ!”
そこには魂の呼びかけ、意志の集い、年齢、性別、形を変えた3,500を産みし祖先、親、きょうだい、生命が漂う。その数39京6,089兆1,345億通りの数がスタヴァーの意志へ感応・共鳴・交信が行われるのだった。赤き糸を辿るように最早、世界線をも越えていた。それは闇と光を通り抜ける程に眩く、虹色に輝いていたのだった。
「では、イデアを串刺しにしろ!そして焼くのだ!」
“この畜生共め!お前達など民の模範となれ!この愚臣共の破棄を!更なる外へ届け!”
――――さようなら。また会いましょう、数多なる意志よ――――
「姫様・・・、私達も後を追ってゆきましょう。ね、ミヘル、ライズ、そして闇よ!」
“魔女イデアにかかれぇぇえ――ッ”
“スタヴァー、魔女、イデア・サンシャインに栄光あれ――ッ”
――ドッ、ブシュッ―、ヒュン―、ズシュッ、ズブゥ―
幾多の槍、剣、そして弓矢が彼女を引き裂いた。この強き意志を誰もが認めた。中には絶対正義と絶対悪が潜んでおり、心なしかその魂をも貪る。そして――
バシャッ、バチャアァ――ッ、ボゥッ―パキ、パ、チ・・・
その息のない遺体へ、多くの油が注がれ、火が灯された。
あまりの惨さに民達は輪を取り王国を恨んだ。
恨んだが何処か温かな炎となった。
その日、魔女、イデア・サンシャインの公開処刑が行われた。その剣と矢の数165本、既にその身は原型を留めていなかった。その身に敷かれる枝葉、その身に浸されるストルセント油に松明が灯された。それが眩い太陽と見紛うほどの強い閃火であろうとも、民達は魔女とされたスタヴァーであるイデアを囲う形を募らせひとつの命に対する称賛の歌を唱えていた。燃え盛る太陽のように。




