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Ep63:それぞれの役割

 ライズは地上大陸ランガスモーから帰還し、再び4カ国協議に向けて伝令的に行動を開始する。異質生命体とするマイクオ・シーブルの血液を研究員へ渡し、学士オード・ナスワイの伝記を大臣秘書官達へと提出する。それに伴い、エイドカントリーズではライズ一行の昇進祝いを行った。形だけであるが、それもまた新天地の新たなる頂きを得るために必要な工程とした。


 それぞれの役目として――。


・騎士

 今は亡きマジェス殿下の側近である王国総括士官から騎士の称号を得た。剣もまともに振れないような俺が騎士と言われると、ミヘルを思い浮かべてしまう。何故に俺が騎士なのかというと、スタヴァー様を守る意を込めていると殿下は答えた。だが、彼女の側近として七つの騎士が居る。それらの要素を、マジェス殿下は生前こう言い表した。


『騎士は九つ必要なのだ。つまり君とミヘルが次期を担うと、あの議員や騎士の苦手だったスタヴァーも安心してくれそうなのだ。すまないが今暫く勤めてくれないか?』


 当時は思いもよらなかったお言葉だが、今のスタヴァー様へ安心を求めるのは分かる。詰まるところ、民との交流があまりに少ないと真意を問われた時に、彼女が口籠るのだろう。殿下も遅く王妃と婚約したが為に己が娘を連れて、3人の関係を深める事さえ無理があるのだろう。そうすると俺が勤められるのは彼等親子の側近として護衛すべきなのだろう。


『承りました。そこで俺からも提案します』

『記憶のままに』

『剣技をミヘル・アントレアに習いたいのです。それなら俺にも何らかの才が与えられるかと思われるのです。それでスタヴァー様も安心するなら喜んで騎士を勤めたいと』

『よろしい。言うまでもなくライズに任せるよ』


 こうして、俺は大臣職をジグル、イーターへ任せる。

 書簡については2年間の期日に4カ国へ送るとの見通し。

 地上大陸の事があってから、俺自身がダイヴァー、ギュネズ、カーフ、ダネル各国へ赴く期間は延期される。何故かは分からない。分からないが闇を感じる。学士オード・ナスワイの通り注意しなくては、サンシャイン現象とモノゴトリーの闇が襲ってくる預言が起きるかも知れない。


 あの、ジグルの不敵な笑みを少し思い出す。

 時折、スタヴァー様と謁見し、茶飲み相手となりつつも、新天地計画の要として働く事となる。同じ境遇、同じ出来事に対し連携していれば、自ずと民達が一同となって、各国の導きに従うだろう。


 階段のごとく、虹の鉱石を配置するとして。


・第一大臣

 先代国王マジェス殿下の王国総括士官からこの位を言い渡された、第一大臣という立場は議員達よりも上だとか。だけど僕は貴族。彼等の様に自らの部屋に閉じこもり、そして用件があればその言葉を書記に纏めるのが第一大臣の役目と聞いた。だけど本来は彼等の意見を聞き纏めるのも、副大臣であるイーターの役割だろうに、何故そこまでする必要があるのだろう。そんな事よりも周辺の事に声を挙げるべきで指示を下す立場にある。それなのに新人だからと周辺の兵士はともかく騎士にも頭を下げなければならない。陛下はそれを許すという。

 このジグル・ウィナート第一大臣の様子を密かに見つめる何かが通る。


“コッ、カッ、コッ、カッ、カ、ツ、カッ、カツ・・・ピタ”


「おや・・・君は・・・?」

「やぁ、大臣かい?私はこの日も調べモノをしなくてはいけなくてねぇ」

「ほう、その割には僕に黙って書物を漁るのかい?それ、元・陛下のモノだろう?」

「え、あ・・・あぁ、コレはだ、亡きマジェス様から頂いたのだ。いけないかぃ?」


 僕が大臣に就任したばかりだというのに、この横柄ぶりはなんとも不快だ。これが貴族の冠を取り戻した者へ対する礼儀という名の作法だと?こいつは新天地計画にすら参加していないではないか。馬の糞でも与えてやろうか。


「君は若いねぇ。何を好んでいるのかな?例えば食事など聞いておきたいものだ」

「確かに、23歳だと異論を訴える者も居るよ。だがネズミの死骸を食すよりもいいから、ここへ辿り着けた。君はなぜそれよりも高い馬を好むのかな?」

「糞が美味いからだよ。ネズミは馬の糞より大きいだろう?」

「糞、死骸より大きい糞・・・」

「ふふふ・・・クク、気が合うねぇ」

「フフ、いいだろう?・・・気が合うのでは、交友の証を渡すしかない」

「交友の証・・・それは愛なのか?それとも情けかなぁ?」

「この書物だ。一時期だけ大臣へ託そう。コレにはね・・・」


 何とも不潔な内容なのだろう。これが貴族の下で働く者の行く末なのか。王国エイドカントリーズもマジェス殿下という駒の有無かかわらず何とも醜く歪んだ性質か。この書物に記されているのは、糞がいかに臭く、柔らかくも素材として使えるのか、それが如何なる役目を果たしてくれるのか等、多く図解と共に文章を示してある。


――翌昼、3の時。

「王国なら虹の鉱石があるだろう。それを糞で培養しないのかい?」

「ばいよう?それは糞を更に伸ばす行為を示すのかな?そして育てると?」


 やはり外道を極めし者だった。それを国王は飼っていたのだから、少数遠征で新天地計画へ向かわせていたのだろう。彼では飢え死にするに違いなく、兵を連れても足手まといになるだけだ。


 ――暫くして、王国総括士官との謁見でこの王国の議員と、騎士達の主導役を願い渡された。やることが多い。だから周辺に僕が“第一大臣”と認知するよう、手紙を与え趣味を共有し、媚びを売るなど何かと工夫を凝らし、我こそは現王スタヴァ―殿下の“側近”であることを伝えなくてはならない。さあ、僕の“居場所”が益々増えそうだぞ。


“カッ、コッ、カツ、コ、カッ・・・”


 何やら僕が第一大臣に就任したばかりな為か、後ろを付けて来る者が一つだけ居るようだ。足を速めると同じ歩幅で攻めてくるし、廊下を曲がると慌てて身を回らせる動作を行う。その僕を付けてくるソレは一体、僕の何者なのだろうかと振り向く。


「よォ、あ・・・第一大臣殿・・・俺、いや~私めを覚えておいででしょうォ?」

「(鎧が無い)さて、私は覚えておりませんよ・・・あなたは何者でしょう?」

「へ・・・、ヘリングですよォ~~。鎧は熱くて腕が鈍っちゃうんですよ?」


 へリング。上級兵士だったお前がこの王国エイドカントリーズの騎士だと?そういえばコイツは僕の本を、身体を、意志も魂をも汚したヤツだ。僕は革帯の柄に手を取る。


「さて、君は僕の知り合いですか?」

「お知り合い・・・親子でしょう?」


――ザザァ――

 ――それは僕が27歳であった頃だ。王国兵としての使命として他国へ書簡を届けに行くため、上級兵5名は衛兵3名に従い49名で編成をしていた。食料は野獣と木の実に川の水、動物の皮で紡いだ囲い、これで僕等は435という朝日を迎える予定だった。だけど、


“―――ボコ、ドガッ、いいかぁ!”


『これでも“王国”なんだよォ~テメぇ!上級兵の掟をその身に教えてやるよォ!』

『や、ズボォッ、やめ・・てぇ、あ“ゥ、ボトボト・・・ゴッ、ドボッォ―ぐはッ!?』

『なんだコレは?この赤い汁は!テメぇは、このへリングにコレを付ける前に吸えイ!』

『ズズウゥ~・・・ご、ぶ・・ぅ、ジュルジュルゥ――ごれでぇ、許じでぇ――ッ』


“ウィナートお前は元・貴族で貧困だったァ!泥水だって飲めたんだろうがァ――ゴチッ”


―――だでがァ(誰か)・・・

わ、あ・・・ぁ、だずげでぇ(助けて)・・・ボロッ


何という・・・ヘリング貴様ぁ、何をやっていた?上官を無視しての行為か?


私の行為は酒に酔った、のです。


何故にこの様な怪我を負わせているか!!あと何度の朝を迎えるかァァ!!


241です!飲み仲間だった彼がその間に私物を盗みましたァ!


 ―なぜッ!

 ―なぜなんだッ!?


そうか・・・。直ちに手当てをして置け。後は任せる・・・。


はッ!了解しました!!・・・おら、ウィナートぉ・・・来~いィ


あ゛ぁ・・・!ズル、ズリ、


 ――分からない・・・。


“ゴキンッ”


 ――分からないけどッ、


“メキョ・・・ッ”


 ――折れた骨と裂けた肉体が再生していた?


“ポキン、”


 ―――なのに・・・ッ!


『えへへへへぇ~~・・・ウィナートぉォオッ!!』


(――コレが?王国の上級兵で今に至るのに遂に親子だと?――)


 僕はヘリングのこの態度が罪を示すのか、幾度も弄られてきた思いを馳せる。だがコイツは何も無かったかのように答えを裏返す。つまりこの王国での稼ぎだけでは満足いかず、美味しい餌を求めて騎士として待っていた。では、七つの騎士は単なる人形か?


「親子・・・といいましたね?親子・・・親と子、男。目的は借金返済でしょう?」

「なぜそれを分かぁ~る!?」

「いえ、あなたの性癖は僕の得意分野で、何かと世話になりまして、そこで裸になりまして、確か――、そう!へリング騎士殿、あなたは馬の糞より臭いのですよ・・・グィッ」


 僕は25歳を超えてコイツの属する兵士となった。だけど学問をしないと言葉さえ不自由だのに、僕を笑い、本を破り捨て、公開処罰を下した張本人だ。それで僕がソイツの言い分で元・貴族だという苦痛を与えられてきた。尚且つ失った過去を貧困者と罵り、目立っていたのだ。それで僕を追い掛けてきて金銭目当て?何故コレを生かす必要があるの?


「へリング隊長、覚えていますよ。僕の事を教えてくれるんですよね?」

「そんな挑発、乗りませんよ?教えたのは馬なので!」

「では“馬”隊長に一つ伺います。馬はどの様に“金をくれ”と教えます?“チャキ”」

「なぁ、頼むよォ~!そんな事言わないで助けてくれよォォ、昔の事は――“ズボッ”」


“ドス、ズパッ、ズシュ―、ビュッッシャアアァ――・・・”


 ――翌朝

 確か、騎士が馬の様に暴れていた気がする。その様子を覚えていないまま僕は寝床へ伏せていた。何ら騒がしい声なども無く、事なき得たようだ。この手に残る感触はミヘルも同じなのだろうか。どうせあの馬を飼うならライズでなくミヘルを騎士とすべきでないか。


・第二大臣

 私は第二大臣として任命された。ライズが第一大臣の任を降りて、ジグルが任命された。私が第二大臣となったのは、生命学に準じた能力を買われたからだった。

 ライズ、あなたに光を感じていたのはね、幼い頃からずっと守ってくれたからなのよ。


「あら、ライズ。元気にしてた?」

「うん、まぁ、忙しいけどな」

「そう。元気出して。あなたが居ないと皆、散らばっちゃう」

「分かっている。俺達は仲間だ」


 スタヴァー様の世話係として常に彼女の近くへ向かわなくてはならなかった。でも、ライズが居ると私の必要性は主に、茶汲み、配膳、そしてジグルの代わりに貴族と大臣の間を取り留めなくてはならない。書物に関しては生命学理論と人工的な生命、機械的な生命の卓越するだろう能力の判定と、これまでの4カ国の書簡の補助。そして、時間があれば好色達からこの身を守る様にしなくてはならない。必ず、魂まではあげないように気を付けなければ、突如襲ってくるかもしれない。


「イーター殿ぉ、少し用件が在るのですが、構いませんかぁ?」

「今は新天地計画について、未だに報告が終わっていないのです」

「まぁまぁ、お気に召す情報をお渡しいたしますからぁ?」

「そうもいきません。この間にも殿下の世話係をしなくては」

「あぁ~そぉう!」

「ふん。怒るなら、スタヴァー様に告げる事ですね」

「ふふ、そういうトコロがいいんですなぁ・・・ふふ」


 この汚らしい状況をジグルが請け負っていたというので、彼には感謝するしかないと感じていた。その間にも、好色との付き合いに身を呈していたという。それもライズとの関係を取り持つための情報交換。私も只では身を呈する事はしない。だって、ライズが心配だもの。時折、スタヴァー様に嫉妬する。


・剣士

 今は亡きマジェス殿下の遺言として騎士の称号を与えられるも、私は自らの生き方を貫くことにした。だから剣士の称号で鍛錬を行いたい事を、王国総括士官へ伝えると、快く了承して頂けた。それに騎士とは鎧で身を覆うのだし、余りにも剣技の要素を防いでしまう様だった。私の場合は軽装、胸当てさえ在ればよい。そして現王スタヴァー殿下様にもこの勇士を是非とも拝見して頂きたく思う。そこでライズの剣技が幼く、その穴埋めとして彼にも付き合ってもらうつもりだ。騎士と剣士の交流として、エイドカントリーズ城の皆に理解を促しておこう。

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