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Ep49:再会


「おぅ~い、ミヘルぅぅ――ッ」


「ライズ・・・ッ、無事だったのですねッ!」


 俺達4人は二つの隊に分けて追っ手から逃れることが出来た。そうはいっても殆ど撃退したし、他国からの密偵という事で報告する方針とする。そして何より喜んでいたのはイーターだった。ジグルはともかくミヘルというソウルメイトに再会できる事は何よりの朗報だったらしい。ミヘルも俺とイーターへ向かって微笑んでいたが、ジグルは内股で何かを訴えたそうだった。ミヘルに何か言ってはいけない事をしたのかも知れない。


「ここでいい」


「もう少しでエイドカントリーズに到着するからね」


「呑気だね、君達は。もう少し急いでも良いんだよ?」


「ジグル、その足で走れる?」


「ふん、今は黙っておいてやる・・・覚えておきなよ?」


 俺達一行は森林付近の洞窟の中に布を張り、一時の休憩場を作った。その洞窟の中には水路もあり、湧き水も沢山あった。食料に関しては俺とミヘル側で生肉と香草を用意している。そして洞窟の中には様々な根菜が生えていた。これで腹の足しにはなるだろうと、俺は見込んでいたのだが、何より、一つの成功を基にワインを酌み交わしたかった。


1、ワイン酒

「お~い、イーター、ミヘルぅ、ダイヴァー国王殿に乾杯!」


 それは成功の祝杯だった。僅かに残るワインを飲み明かしたいとライズは言っている。大丈夫か、と考えても見たけど、彼の事だから収まる気配がない。常に人に気遣う方だから鬱憤が溜まっていたのだろう。そしてジグルはミヘルに書簡を任せたまま自分の空間へと逃げたままだった。


 ――あなたは酒豪なのね。


「ねえ、ミヘルも酔っちゃった」


「よォ、ミヘルなんか放っとけよォ?」


 私がライズの酒癖の悪さに対して、就寝を促すようにと伝えているのに、彼は未だに新天地計画が済んだと言い張る。それも酒に酔っている為かと思っていたのに一向に止めようとしない。これではミヘルの書簡が間に合わなくなるため、彼の話を反らす事にした。


「俺も、こいつも、まだまだァ飲めるぞォ~ッ!?」


「はァ・・・まったくもう!今日は血の気が多いわねぇ、あなたは特に・・・」


 ほんとうに呆れる程のライズによる発言の醜態。彼はこの新天地計画の導きを受け、長い旅を経ている。先導者として。それなのにまだ飲めると言い張るし、何故か私はそれ等を受入れるのだった。ジグルも彼に付き合う度、次第に眠りを催すだけ。私はライズに対して密かな想いを告げたくて仕方がなかった筈なのに―――、


「あのね、いい?明日はまた計画を進めないといけないのよ?」


 と、告げてしまう。


 ―――私は素直になれない。あの時に小屋でバアルと暖を組み、あの日に私は毒に侵され彼はその頼りない背中へおぶさせてまで小屋を探してくれた。その昼には意識を失わないように声を掛けては汗を拭きとってくれ、夜には水を持ってきては熱を冷まそうと試みてくれ、医者をも連れて来てくれた。そこまでして私を思ってくれていたので、人としての大きな存在を感じ得て―――、


「そろそろ彼も解放させて寝させてあげなさいよねぇ!?」


「なんだとォォ~俺は皆でやっと、やっと王国にィイッ!?」


「もう、まだ終わってないって言っているでしょッ!?」


「僕はもうぅ~~終わってキミだけ・・・・ムニャムニャ~~」


「ああッ寝たァァ!なぁイータァァ、一緒に飲もうよォォオ――!?」


「あッ、この馬鹿ッ寄るんじゃないわよ!キャッ?ちょッ、どこ触ってんのよォ!」


”――ドカッ、ぐっ?ポカッ――痛ぇえ!やめ、ゲシッ―おい、イーターァァ”


 本当に、あのライズなのか確かめたくても攻撃的な言葉で返してしまう。心はこれ程にあなたを欲しているのに、どうして気付いてくれないのか、と苛立ちを隠せなくなっていた。それでミヘルやジグルを自分の子供の様に庇ってまで、妻の様にライズを従わせようと考えてしまう。だからか、私自身が穏やかに居られるのは彼のお陰なのだとするのは。


「ふぅ、力の強いイーターへ、乾っ杯ィ~~!」


「さ!もうそろそろいい加減にしなさいっ!!」


「はあぁ?飲めよ、美味い酒なんだぁ~~げぷっ、」


 本当に素直な時は私を気遣ってくれる。歩くのは平地なのに“足は痛くないか、荷物を持ってやろうか、地図を貸せよ、俺の傍から離れるな”と、こんな風に色々と声を掛けてくれる。あの優しさは彼の生まれ故郷から家族を守る様子から浮き上がっている。お酒があっても、食材が少なくても、私は彼に気遣いたくて仕方がなかった。この命の恩人に。


“ケラケラ・・・イヒヒ・・・”


「なぁイーター頼む、ぐぶっ」


「ノグエイジの干し肉くれ!ヒック」


「もしかして俺が好き?」


―バチンッ―



2、ミヘルの夜勤


“シュ、サラ~サ、シュ―シュウ~、シュスッサシュ・・・”


「まだ書かなくては――、」


 ジグルの指示通り私は書簡の返事を纏めていた。だけど彼は相変わらずもミスをする。どこが正しくてどこが間違っていたのか、なぜ私に付きまとう様に訂正を求めていくのか、どんどん注文が増えてゆく。私は貴族でこのような文章の書き直しを延々としている。なのに教えてくれない。マジェス殿下から護衛を頼まれた筈の私。それがインクに筆を突いて持ち手を振っては言葉を記し伸びる様に文にする。


“スラッ、スッ―シュウ~、ススゥ~スラ~ジャ、ササ~、ザザ――、スゥッ”


 インクにペンを浸し、ペンで紙に記す。


 緩やかに。


 その技は剣の道を行く為のモノではなかったの?


「やぁ、ミヘル出来たかい?」


「いえ、まだ途中。大丈夫だから任せて」


「じゃあもう少しだけ僕の注文を聞いてくれるかな?」



―国王エイドカントリーズ、ヴァン・マジェス・ディルタ国王陛下へ報告―


私、ライズ・フォングランは書簡を各国へ与え、その計画の旨をジグル・ウィナートへ代筆任命、許可をしました。彼の代官的な交渉はたいへん有意義であり、新天地計画に対する各国の第一歩を更なる一歩として進められたことを約束し報告という形にて述べます。


・一つ目の国、ダイヴァー王国

更なる新天地へ向かうため、虹の鉱石の採掘を急ぐ助力を得たい事を要請すると、新天地計画とは虹の鉱石を横取りするための話し合いだと答えた。城下町を調査した処、食材は不足していないが採掘工夫が不足。兵士7名、衛兵5名、騎士3名と僅か15名である。


・二つ目の国、カーフ王女

生命と虹の鉱石の反応を早期に調べてほしい事を願い出るとマジェス王は私へ虹の鉱石に眠る力を与えると願い出たという幻惑を装い返答をした。城下には装飾品加工の職人がたくさんいる為、虹の鉱石にある微生物から薬品を作る事も可能、兵は存在しない。


・三つ目の国、ギュネズ王

我々は民の先導者として、虹の鉱石による力を示したい事を告知してほしい事を尋ねると、更なる新天地へ民を導くが王の身内が選ばれたのだと狂言を述べ返答を避けた。農夫309名、衛兵54名と騎士189名で構成され主に食料品調達、規律指導を民へと促す。


・四つ目の国、ダネル皇妃殿下

生命と自然が虹の鉱石により、逆再生を促すことが解明されたので、直ちに計画における協力を要請する事について虹の鉱石による超自然の技術を、提供して貰えるありがたき用意があるという協力的な返事であった。自然考古学者208名に衛兵100名で構成されており、地形分析調査には詳しい様子。


各国とものような意見、事情があるご様子で、事を踏まえていきますと、


ダイヴァー国王は“新天地は採掘の競技場”と鑑み、

カーフ王女は“新天地へ行けば価値のある薬品効果を見込める”と模索、

ギュネズ王は“食料品として加工の出来る新天地を求められる”と期待しており、

ダネル皇妃殿下は“自然的実験が可能な新天地を迎えよう”と協定を申し出た。


そして、各国とも我が王国エイドカントリーズの真意の先を述べると共に、返答を以って協力の意を深めており、新天地計画は成功するといっても過言ではないと考えます。

以上、新天地計画の各国返答、報告を終えます。


―新天地計画、先導者ライズ・フォングラン一行―



「・・・ジグル・・・こんな・・・」


「うん、こんなの簡単だろう?フフフ、さぁ頼むよ~」


“フフフフン、フン、楽しいねぇ、いつまでも僕達は仲間同士なんだぁ~”


「・・・そう、訂正すればいいのね」



―国王エイドカントリーズ、ヴァン・マジェス・ディルタ国王陛下へ報告―


新天地計画先導者、ライズ・フォングランはミヘルの護衛とイーターの適切な衛生管理の元、各国の謁見に参上致しました。


ダイヴァー国王は採掘した虹の鉱石をカーフ王女へ引継ぎ、点検頂くとギュネズ王で加工する事を申し立てダネル皇女が自然へ還す技術を施すことを約束されます。


その総兵力875名で我が王国は202名。


これなら王族と貴族は領地を率い更なる新天地へと向かうことも出来るでしょう。

但し各国同士で、虹の鉱石を巡って争うと思われます。その新天地で同士討ちをも促すことを教えたなら各国はきっと、マジェス殿下のとおり新天地計画への結束を固める事でしょう。どうか協議、検討の程、宜しくお願い致します。


―新天地計画、先導代行責任者ジグル・ウィナート―



「そう。いいねぇ、短く纏める能力は流石だよ」


「う・・・っ」


3、出立


 いい朝だ。あと1の月を歩けばエイドカントリーズへ到着する。ジグルは機嫌がよく、イーターは何やらソワソワしており、ミヘルは規律を正す様に表情を固める。追っ手の心配も少なからずあるが、気配はしない。


「私が付いているから安心してください」


「ジグル、妙な事はしていないでしょうね?」


「書簡は僕が持っている。安心するといいよ」


 4人で一つ、何事もなく行動を共にし、エイドカントリーズの帰還へ向かう。「きっと、成功するさ」とマジェス殿下の面影を浮かべつつ、俺達はお互いの意志を交わすのだった。

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