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Ep48:毒


―ハァ、ぁッ、ハァ、ん―


「イーターッ!!」

「あ・・・、熱い・・・。ライズ、二人に、会えるわよね・・・。あぅ、助けて・・・」


 ジグル達と別れたのち、俺とイーターは彼等と別の書簡をどう伝えるのか、と話し合っていた。もしかするとジグルの事だからマジェス殿下よりも自身の意で言葉を選ぶかもしれない。それをミヘルに託したのはいいが、アイツの思想だと新天地計画とは別の内容となる様なので審議という形をとった。そんな時に岩場に隠れていた蛇がイーターの腕に絡みつく。彼女はそのまま意識を保っていたものの、時が経つにつれて神経熱に苛まれてゆく。血管を通って神経にまで何かが注入された様子。


「うぅ・・・熱い・・・よぉ・・・水を・・・」


「毒はもう絞り出したぞ!もう少しの我慢だイーター、必ず医者が来てくれる!!」


「ねぇ、このまま私達は、あの二人と・・・別れたままでいいのよね・・・」


「なに言ってんだよッ!心配するなよォ!!今は俺と“君”だけでも報告できればいい!だから二人ともきっと俺達と同じ道を進んでいるよッ!だから安心しろよ!!・・・ほら、イーター・・・ほら――、水だ!この水を飲め!!」


「ゴクゴク・・・、うぅ、まだ熱い!・・・毒だなんて・・・うぅッ苦しい!・・・はぁっ、はぁ・・・っ!!」


 俺はこの山岳地帯に佇む小屋に医者を呼んでいた。7の朝日を待ちつつ今は夜である。最初は刺された痛みを訴える程度だったのに、3の朝日が昇る頃に熱を出し、息を乱し始める。その次から腕に腫れが生じてきて局所から全体に段々とコブ状に膨らみ始める。イーターは辛うじて水を含む事ができ、命を取り留めている状態まで変化。このままの状態を放置していると対処すら出来ないだろう。元が頑丈なだけに頭脳が冴えている筈。それでも彼女はこうして苦しんでいる。俺が医者を待っている間に現状を維持してくれているといいが、この痛々しい表情を見る限り、そう長くは持ちそうにない。どうか、早く辿り着いてほしい。そうしないと、彼女は――ッ



“ドンドンドンッ、ライズ殿、開けてください!”


「はっ!やっと来たかァ――ッ、はぁ――い、今開けます!!・・・大丈夫だイーター、今直ぐ来るからそこで待っていろ――ッ!?“ズサ、ズサズサ、サ、サ、はぁ~い”」


 この小屋には光体連絡線というモノがあり、各国ごとに番号が設けられている。その番号を伝って俺は医者のほうへ連絡をした。ここには生命科学の他に機械生命という虹の鉱石を使用した電磁波が通るのだった。そして扉を開け、白髪交じりの中年位の男を迎えた。


“ハァ、ファ、遅れました!すみません、ァ、ハア、フウ、道が擦れていてぇ、ゼェ”


“ユーシプ先生!?いいから、早くこっちへ来てください!!”


“・・・さぁ患者はどこへ・・・っ!?”


“ここですッ!!”



「おい?イーターッ医者が来たぞ!!」



 ――彼の名はユーシプ・ファクラン、毒に使役されたという意を込めてその名を語っている。その一方で毒医学に没頭する、いち学者でもある。彼は“薬とは毒であり使役するもの”と謳っている人だ。彼の場合『薬液、物体は生命に宿ると溶け合う仲となるし、お互い離れる服用期間なる反応をも示す』と伝える。薬だけでなく人体における解剖技術をも持ち合わせており、生物の切開・縫合・処置をも扱うことも出来るとの噂で有名だった。


“カチャ、チョキ、ジュク、ドロドロ”


――――切開しました。


「うっ!なんだ、この血に混じっている液体は・・・」


「サングラプ、狂喜の歌と呼ばれる毒ですね。この膿と混じった青いモノは大変危険なんですよ―“ジュ~ゥワ”―ほら、布が溶ける!このように全身の血液に混じると酸性を持ち、骨と肉をも溶かすのです・・・」


 ユーシブは“何とか一命をとりとめた”と教えてくれた。もしもイーターがここで倒れてしまうと王国間の様子を窺うのは困難だった。それに彼女が居なければ俺は・・・


「さぁ、次は傷口から毒を抜き取ります!旦那さん、口に布切れを噛ませてください!」


「旦那・・・あ、ああ・・・ほらァ踏ん張れよぉ―ッ!!」


“ビジブチビチャァ――あ”ぎァあ“あああぁ―――ァァ・・・”


 医者であるユーシブはコブ状となった腕の神経と血管をナイフで肉ごと引き千切り、中に溜まった毒ごと放り投げた。すると地面が溶けて馬一頭分ほどの範囲を彼は火で焼き尽くしたのである。恐ろしい。俺はもう少しでイーター諸共溶けていたのだろう。そしてユーシブは自前の薬草をすり潰し、ジグル持参のワインと混ぜそれをイーターの切り刻まれた腕に浸す。すると何故か肉や神経・血管ごと傷口を修復し始めたのである。


「・・・これは・・・縫合もなく何故こういう治り方に・・・?」


「ある本書から学びました。その一行に人工生命体、再生の原理が記されていたのです」


「え――、あのそれは、彼女の傷の再生?のような・・・人と違う?」


「その一行の内容はこのように解釈できたのです」


―――いいですか?


“毒は地形をも変えてゆくが、その毒を更に薄めてゆくと酸素ができるというのです。その酸素を人が取り込むと生命の一部が死滅し、新たな一部が形成されるとの事でした。形成とは再生という恰好を意図します。人をこの新天地よりも遥かに高い無酸素領域にまで到達させることをも意味していました。たった一掴みの毒をワインと混ぜれば人は新たな生命を生むことを示しています。それが虹の鉱石を食べてきた“蛇”の末路なのです“


「ユーシプ先生ィ!“妻”の腕が元に戻りました!熱もないですよォ!」


“要するに“再起”を意味するのです“


「再起・・・?先生・・・?」


“その記憶は“最古の伝説”なのです“


「最古とは、あの伝記の・・・?」


“じき、良くなるでしょう!”


 ――こうして、俺達は危機を脱し、数日間ユーシブの看病の下、無事回復するに至った。これも虹の鉱石の再生するエネルギーによって救われたのだと再確認したのだ。彼の云う毒素の末路が最古の伝記と如何に関わるのか、理解に乏しい状況だったものの、どうにか一命を取り留めることが出来たのは事実である。そしてイーターはいつも通り元気になり、山へ一礼をして二人で下山するのだった。追っ手の気配も薄れていて、ミヘル達と再会することも出来ることを感じ、目的も達成できることに胸を躍らせるのだった。


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