Ep46:小屋の周辺
俺達2人は一人、二人と追っ手を捌きながら、ミヘル達と別れ、どうにか気配を消す事に成功した。これ以上関わると、俺達の命が危ない。もう少しの猶予だけエイドカントリーズに到着する間だけでも命を守らなくてはならない。そうしないと新天地計画の要にも成れないし、マジェス殿下はおろか、貧困にも救いの手を伸ばすことは出来ないだろうと鑑みる。
―タタタタタッ―
――ハァ、フゥ、ハァ――
暗闇の中を突き抜ける。
草を切り分けながら進行方向を作る。
逃げ場を作る様に、俺達は一つの小屋を発見する。
火を灯さなければ凍え死ぬ。
だが、朝が来れば・・・。
“―――ウメェ――メ―ェ!”
「ねぇ、ライズぅ~この子ったら迷ったみたいよ?」
「なァんだ、パアルの子供じゃないか。どれ抱っこしてやるかな・・・ヨイショ」
「重くないの?子供のバアルって重量30znもあるんだけど?」
「大丈夫だ、ははっ!これじゃまるで俺達は親子だな!」
「親子・・・じゃあ私は、ライズの・・・ふぅん」
――――それって――、
告白の――つもり――よね?
―――さァ、そんな感じ――だろう――?
“メヘヘエぇぇ~~――――”
俺とイーター、二人になるなど初めてだ。この大人3人ほどしか入らない小屋で暖を汲み鍋を前にしている。火は弾けて静かな炎を焚きつける。パキ、パチ、パチチ、と俺達を歓迎しているのか、二人の顔がボウッと灯す。この匂いに反応しているのだろう、温かい。
「偶にはいいよな?」
「ええ、いいわよ」
「追っ手を撒いた事だし」
「今は安心してもいいわね」
“パキ、パチッ、パチチ、ボォ~、パキッキ、”
私とライズ、二人になるなんて思いもよらなかった。まさか初恋だった相手を目前にするなんて顔が炎よりも熱くなるのを感じられる。きっと旅の疲れがたまったのだろう、火は私の心臓を躍らせ、炎をもそんな二人を歓迎する様に照らしてくれている。いい匂いだ。
“グ、ポコ、グツ、グッ、グ、コポッ、グラグラ、”
「ねぇ、食べない?」
「うん、食べたいね」
「きっと美味しいわよ」
「勿論、旨そうだ・・・きっと、な」
“グ、グツ―グ、ツ―グツ”
二人で見つめる。それはきっと“ボクを食べて、必ずいい土になるから、美味しく食べてね”と呼び掛けるよう。俺は火を眺めた。あいつはきっと望まれて生まれてきたのだと。そして私は火を見つめた。彼はきっと愛する親の子に生まれ変わったんだと、二人を歓迎するように、そのフォークとナイフが皿を叩こうとする。
“カチャ、チャ、モグ、モシャ、パク、ズスゥ――ッ”
「なぁ、この肉は芋と合うんだな」
「ええ、きっとこれも“新天地計画”だったのよ」
「俺達は託されたんだ。代わりに生きてねってさ」
「いつかは子供を産むのね。このお腹、温かい・・・」
なぜ、命を食べなくてはならないのか。それはこの大地から浮く新天地を踏んで新たな命を生むためだからだ。貧困と呼ばれたあのアクスドリーマヌの地で得られた食料は僅かだった。そこで死んでゆく命に見守られるように二人はこうして生きてきた。幼馴染、生きて再び食べる。それは単なる言葉だけで済ませられるのだろうか。食されるモノ、音を立てて鳴き、こうして棺の中に居るように燃えてゆく。
“カチャン、クツクツクツ、ジュル、サクッ、モクモク、カチョン、”
「俺は王国を恨んだよ。騎士もこうして切るのかな?って」
「私の友達もそう。血は流れていたのに、助けにも来なかった」
「なぁ、アイツ・・・なにか言っていたのか?」
「聞こえてしまったの。そして、手足を振っていたわ・・・キイィ~って」
―――ねぇ、泣かないで。キミはボクと遊んでくれたよね!
ボクとキミで周りを囲ってそこからすり抜けては追いかけて、尖った冷たいモノで突いてくれて嬉しくなる遊び!あの時はねぇ、とても興奮してハラハラしたよぉ~!?
「そうかぁ~騎士もそんな体験をするのかなァ・・・」
「誰かと会っていたのね、こうも言ってた。きっと寂しかったでしょうに」
―――あ、それでね!キミと遊んでいて思い出したことがあるの・・・。
実はボクのお母さんは大きなカルソンに追われて、崖から飛び落ちてしまってボクは遂にお乳を吸えなくなってしまったんだ。足が震えたよ?その時からボクは独りぼっちで。
「きっと大きな力に屈してしまったんだ!・・・彼等も騎士になると辛いよなぁ~」
「恨みなんて言わなかったわ。謙虚よねぇ彼は・・・」
―――ホントだよ!人が来ても小さな4本足の動物だからって言われて寂しかった。
それからボクはこの山を歩いた。大きな道と落ち葉を歩いたんだ。でね、長くそこで草を食べている内に気付いたんだぁ~。抱かれた瞬間、ボクは食べられるってね!
“ハフハフ、ガツガツ、カッカッカッカッカ、ぷはァ~~”
「イーター、お前、料理美味いんだな~ご馳走様!あの子に感謝しようぜッ」
「うふ、素直ね。(ぽッ)感謝しなくちゃ、あのバアルの子供にご馳走さま!」
―――うん、とても痛かったよぉ―――
キランッ




