Ep44:書簡の内容
俺達一行は、マジェス殿下の言伝どおり、新天地計画の要となる行動を起こす。只でさえエイドカントリーズと友好国とは言えないダイヴァー、カーフ、ギュネズ、ダネルへ向かわなくてはならない。それも4年間という期間を掛けての大行事である。俺は先導者で、ジグルは書簡を記す係、イーターは生活管理、ミヘルは護衛役として各国へと向かう。
道という道は、平坦な場所も在ったが、茨の様に山岳地帯、森林、川、そして空中に漂う陸地を経て、幾月もの時を掛けなければダイヴァー王国にすら着けなかった。
それも野生生物の居る最中に俺達は剣技や頭脳を凝らしながら、道なき道を地図と羅針盤を用いて方向を見定める。食料は足りない場合、現地で調達するしかなかった。
「ライズ、平気なの?」
「ああ。俺はお前達と別れた後に剣術を習っていた。野生生物を倒すほど、光を纏うように温かくなるんだ」
「へぇ。僕なんか頭脳だけで躱していたけど、君達は平気なんだね」
「ジグルは身の守りだけで、私達は連携していたわ」
「そうね。でも彼も計画の一端で要だから、従うしかないわ。それとライズ、流石ね。見直した」
「ミヘルの剣の仕込みが役に立っている。いざとなれば俺が皆を守って使命を果たさないといけないから・・・」
そうこうしている間に俺達の歩は進む。
どう在ってもマジェス殿下の意向を心に留めなくてはいけない。
それが意志というもので、魂という礎なのだろうとして――。
――1年目。
一つ目の国、ダイヴァー王国。
~エイドカントリーズ王国の文~
新天地へ向かうため、虹の鉱石の採掘を急ぐ助力を得たい。
我が国にもアントマニーヌ鉱山、エクスドラーズ洞窟、マクリル採掘所など45か所も虹の鉱石の汎用箇所があるが、大体の数だと450個体は存在する。これら虹の鉱石を採掘し、パヘクワードの外壁部に装備したい。助力願えるか?
山岳地帯に位置する大きく長い蛇の様な長道が、丸い外壁として王国を守る形で整地されている。これでは野生生物どころか戦争など仕掛けてしまうと、この鉄壁の守りによって疲弊してしまうだろう。
「かなりの時を掛けたな、ジグル」
「うん。でも内容は的確だよ」
「本当に?急な願いでダイヴァー様が応援してくれる?」
「イーター、大丈夫よ。書簡の内容は確かだわ」
返答。更なる新天地へ向かうため、虹の鉱石の採掘を急ぐ助力を得たい事を要請すると、新天地計画とは虹の鉱石の所有をパヘクワード全体のエネルギー源として使用するための話し合いとする。城下町を調査した処、食材は不足していないがエイドカントリーズと同じく、貧困的な事態になっている。そして採掘工夫が充分であり、是非とも協力をしたいと申し出てくれる。兵士1,200名、衛兵105名、騎士54名と359名で尽力を尽くすための行動は確かである。つまり、新天地に向かうための民の誘導やまとめ役にはなりそうである。再び、マジェス殿下の求めるその計画において、意見交換などの出来る舞台を楽しみにしているよ。
「ジグル、何と書いてあるんだ?」
「これはね、古代文字を応用したものだよ。あとで読んでおくから、君は次の王国への配慮をしておいて欲しい」
「なんで?ライズは私達の先導者よ?なぜ、読んであげないの?」
「イーター。これは僕の仕事なんだ。殿下に報せるのは僕の役目なんだよ。ね、ミヘル?」
「え・・・そ、そうね」
「うん?そうするほか無いのか?まぁ、俺の責任だし、マジェス殿下の願いだ。お前達に任せるよ」
俺達は直ちに次の王国、カーフへと向かった。新天地計画における要であり、民達が新たなる世界へ足を踏み入れるための大事な役目だ。少し休んでは道を切り分け進んでゆく。年齢的な問題もあるが、俺達はまだ若い。ナイフで髭を反りながらも仲を保ちつつ調査した虹の鉱石について各国に応援を貰う事にする。
――2年目。
二つ目の国、カーフ王女の下へ辿り着いた。
~エイドカントリーズ王国の文~
生命と虹の鉱石の反応を早期に調べてほしい。エイドカントリーズでの研究者達による専門的な判断では、生命における由縁たる状態は虹の鉱石の再生能力を灯したエネルギーの原理を応用した工法である、と調査している。今少しずつ新天地へと向かうための力があるかどうか、確かめたい。貴国にて虹の鉱石の反応率がパヘクワードに対し、どの位なら浮力を得られるのかを、教えて欲しい。
カーフ王国の中に入ると、女性ばかりの民達が俺達を出迎えてくれる。たちどころに王女の下へと招待してくれ、手料理を振る舞ってくれる。この様子から平和を望む環境を作っているのだと実感させられる。もし、内政などで衝突しようものなら、この優雅な一時によって和を呈する事だろう。
「ジグル、書簡の中身をちょっとだけ見せてくれよ?」
「シッ、シッ・・・もう、君は直ぐ話を直立させようとするから作戦での指揮以外を任されないんだよ?」
「ジグル・・・何か隠していない?」
「何を言っているんだ、イーター。僕は現時点にも過去とは違う人材となったんだ。妙な事を言うと、君を仲間から外すことだって出来るんだよ?・・・まぁ、ミヘルを連れてきてよかったとも思っているけどねぇ~」
「イーター、何でもないわ。私の勘がそう言っている」
返答。生命と虹の鉱石の反応を早期に調べてほしい事を願い出ることに対して、マジェス王は私、ネビュル・カーフ・ハネイ王女へ虹の鉱石に眠る力を新たなる天地のもとへ与えると共に、その豊富なる浮力と再生能力を灯しているのだと考えるとする。城下には装飾品加工の職人がたくさんいる為、別の天地へ行ったとしても、人体に及ぼす酸素、再構成、再構築、再生能力を身に付ける事の出来る要素がある事が知らされている。虹の鉱石にある微生物から薬品を作る事も可能で、兵こそは存在しないが、細工による何らかの役には立てると推理する。
「カーフ王女は何て答えているんだ?」
「この字はね、虹の鉱石のエネルギーを液体化した象形文字の様なもので書かれている。ライズ、君は確かに言動と語学における成績は優秀だったかもしれないけど、これは才のある僕にしか解読できないんだよ」
「ねぇ、ダイヴァーの時もそうだったけど、本当に象形文字なんかで書かれているの?何なら私が見てもいいんだけど??」
「これは古来、パイルの象形文字にも近い。解読するには貴族の深み、王族の深みが必要だ。その点、ミヘルになら見せられるけど多分、僕じゃないとねぇ~~・・・」
「大丈夫。ライズ、イーター、彼に任せましょう」
「お前達、まるで飼い主と忠義ある犬のような関係だな・・・」
マジェス殿下の命令は絶対だ。今は、ジグルのような人物に書簡の整理を任せるほうが良い。時には休み、時には宿を作り、そこで内容の整理を任せておけば、俺は王族との話し合いに集中することができる。イーターもその点で補填をしてくれて、野生生物が出てきた時にはミヘルの剣技と俺の剣技で牽制するか、退治するだけでいい。そして、次はギュネズ王国へと向かい、エイドカントリーズとの仲を保たなければならない。
――3年目。
三つ目の国、ギュネズ王の居城へと向かう。
~エイドカントリーズ王国の文~
私、ヴァン・マジェス・ディルタの照会の下、使者を寄越す。虹の鉱石における管理・状況などを知りたい。我々はこの新天地における更なる上空を目指している。民の先導者として、虹の鉱石による力を示したい事を告知してほしい。理解していると思うが、この度の貧困は年々と増えている。この空中大陸の浮力を用いて更なるエネルギー源となる貴国の協力が必要だ。更には、食に関する事は貴国が詳しい。よろしく頼み願う。
ギュネズ王国へ入ると、体格のよい者達が多かった。民衆的で俺達がやって来る報せを聞き入れてくれ、ギュネズ王の下へと通してくれた。城外は農作物で溢れて、周りは森に囲まれており、如何なる戦力をも無力にするだろう温かみがある。夜になると国内を光沢で放つ現象が現われ、それが虹の鉱石のエネルギーで出来ている事を知らされる。まるで魔法の様な国だ。そのエネルギーで作物が育つことから管理面は確かで、無法地帯という訳でもなさそうだ。
「随分と豪快な王だったな」
「当り前だよ。君の話術にかなり平坦的で優しい程にね・・・」
「本当、怖かったわ。でも、温かい国ね」
「ジグル、書簡をまとめて」
返答。エイドカントリーズは民の先導者として、虹の鉱石による力を示したい事を告知してほしい事を寧ろ本国のほうから願い出たい次第である。更なる新天地への興味が湧いてくるため、確かに協力を惜しまない様にしたいと考えたいとする。民を導くが王の身内以上の存在と考え、少しでも虹の鉱石の研究から食料における確保を行える。中には穏やかで資力を尽くすと述べるに値する。農夫1,509名、衛兵151名と騎士93名で構成されているが、主に食料品確保と規律指導を民へと促すのなら、必ずや協力しよう。
「俺は書簡を見ていないが、あの話しぶりからするとマジェス殿下の計画に協力することは間違いないな」
「君は変わらないな。様子見だ。あくまで政治干渉だよ。食材は確かだが、さほど詳しくない。もう少しライズも筆記の内容を理解出来る事を祈るよ」
「でも、ジグルが書簡の内容を言えば済む用事じゃない?あなた、ミヘルと何かしているような素振りで話をするじゃないの?」
「何を言っているのかな?僕達は2人1体のようなもの。才と才。言わば、僕の学問とミヘルの剣術。時々イーターはライズと違って興奮しやすい体質なんだね」
「私もマジェス殿下に召集された。ごはん抜きにしてもいいなら、その身で調達しなさい。ミヘルを頼らずにね」
「二人とも、次の目的地をライズが示すわ。お互い熱を冷ます事ね」
「次はダネルだ。それにミヘル。先導者は常に心技一体だ。そうだろう?」
「はい・・・」
時折、ミヘルは俺に従うような姿勢を見せる。その態度も中身も小さな少女の身である。それなのに、俺達大人は彼女の成長を見守るより先に、新天地計画の要として長い期間、共に旅をし、時には裸の向き合いをしなくては事は成らなかった。あれから何時経っただろうか・・・時が長くも短く感じる。上空の変革と共に意志が研ぎ澄まされる様に。
――そして4年目。
ようやく、四つ目の国、ダネル皇妃殿下の居城へと足を運んだ。
~エイドカントリーズ王国の文~
貴国があらゆる研究施設を携えていると調べてある。特に生命と自然が虹の鉱石により、再生を促すことが解明されたので、遥かなる上空へ達するとされる新天地計画において自然科学という技法が必要となる。我が国においても記憶に新しい貧困。直ちに協力を要請する願いである。貴国は超自然生命について更なる研究の見込みがある事を理解しているつもりである。これも私達、民の為なのだ。よろしく頼む。
一見、腐敗しているかのような街並みに囲まれた国。他国と違い一本の橋によって陸地が繋がれている。岩場に囲まれた森の中でひっそりとダネル皇妃の館が佇む。まるで誰も寄せ付けないような雰囲気だった。余りにも不気味であるが、温かな自然に守られていて川の水も美味しい。王国といっても城壁なども無い。それでも俺達を温かく迎え入れてくれたのは、マジェス殿下と同等の威光によるものだと信じてしまう。
「薄暗いあの場所で研究をしている国王。ある意味凄い人だった」
「君が失礼の無いように言葉を繋げてくれたからだと思う。僕はその補助をしただけ」
「ジグル、一人だけ偉く頑張っているような口ぶりね。もう少し仲間というものを認めたらどうなの?昔と違う。けど縁はずっと繋がれている。違う?」
「君には敵わないね。その冷酷な視線を僕に浴びせたところで、今回の計画の一つの中にも入らない。偶には黙って事をこなしているミヘルを見習ったらどうかな?」
「・・・ジグル、言い過ぎ」
返答。エイドカントリーズにおいて生命と自然が虹の鉱石により、再生を促すことが解明された事は我が国の理解に相当する。我が国の虹の鉱石の技術はいわば魔法的なもの。直ちに協力を要請する事について虹の鉱石による超自然の技術を、新天地計画に提供する用意がある。是非とも協力をしたい。我が国は自然考古学者3,000名に衛兵120名で構成されており、地形分析調査には詳しいが、新天地の要として役立てて欲しい。
「ジグル。今回は成功したんだよな。俺達・・・」
「うん、勿論だよ。君が大人しく僕とマジェス殿下の言伝を守った様に、新たに書簡を得られた。ライズが先導者でよかったよ」
「へぇ。話が住んだと思ったら、今度は大人しく仲間と認めるのね。ジグル、あなたって調子がいいのかしら。それとも繋がりが欲しくて寂しかったのかしら?」
「イーター。君は頭脳的行動には長けている様だけど、時には操られるような態度を持たなくてはいけないよ。4つの国の書簡。これで成功したから、あとはマジェス殿下に届けられたらそれでいい・・・」
「ミヘルが護衛してくれたお陰ね」
「そうね。でも、あなた達に幸が在ったからでしょう」
次はエイドカントリーズに戻るための道のりだ。
長い期間を掛けた分、一本道ではない。
しかし、彼等が居てくれたからこそ、俺自身も成長できた。
ありがとう。ジグル、イーター、ミヘル。
皆を信じて居て良かった・・・。




