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Ep38:新天地と地上の距離

「え!?」

「予想外だね。マジェス陛下からそんな話がねぇ」

「仕方ありません。これも新天地計画の要としての役割です」

「すまないな。頼りにしているよ」


 マジェスと謁見を通されたライズ一行。彼等は計画の第一線として、ランガスモー及びパヘクワードの大地に眠る質度調査を依頼された。それは遥かに遠き宇宙より出でる生命の行き場所がどこまで辿られているのか、という形式の下で考えられた事だった。


 また、地上と空中の距離、水質と虹の鉱石による上流軌道調査。それによって水の転送だけではなく、新たな遺伝物質の流れが更なる新天地から、どの位の速さで転送可能となるのかを調べる、大まかな計算方式を研究者たちが示す。


『パヘクワードより遥かに上空となれば、大気圏を突き抜けるだろう。その、更に上の上流軌道から得られるポイント形式を計算すれば、虹の鉱石のエネルギーが磁石の様に遺伝粒子を吸い取る』


『では、科学的にも天文学的にも酸素が届かないその場所で?』


『新たな新天地の可能性を探る為だ。崩壊するだろう、この地を改めて評価する』


『それは――』


『苦しい旅だが、引き受けてくれるな?』


『ハッ!』


 マジェスを取り巻く大臣からの報告によると、上空には僅かな光から微細粒子と遺伝子が混じった香料が取れていた事が分かった。そこから出る生命を再構成・再構築させる様々な再生能力がパヘクワードの自然を空中分離によって補い、穏やかに育てていたという。


 地上には降り注がない光が、僅か5,000メートルの上空を中心に届くよう設計された様に、虹の鉱石の光は、お互いを結び付け合い届かせている様だったとも話していた。それも『闇の煌めき』という伝記に記されていた通り、次元から現れ出でる、“サンシャイン”という宇宙の向こうから放出されるエネルギーによって、その地上と上空の距離が保たれ形状が、変わらぬように遺伝子が交じり合っているのだと推測。それらの報告と調査を生命の交信と呼ぶべきか、とライズは仲間と考えた。


 その水質から出ると更なる空間飛躍が期待できるからだ。新天地へ赴くためには、虹の鉱石の再生能力と水分による吸収が必要不可欠となるだろう。地上に在る山々の合間を抜ける気流がパヘクワードの浮遊推進量に達したなら、そこから虹の鉱石の再構築の成分に混じり、水分によって吸収されると、更なる上空への浮遊が可能かも知れないとも各国の科学者達は言っていた。


 「それは新たな完全なる地を示す」と。


『手掛かりは主に古書にある世界線との関りで、学士と吟遊詩人がそれを象っているとも云われている』


『マジェス殿下は彼等との関りがあるのですか?』


『うん。私の古き友人で、このエイドカントリーズの情報網の集大成とも呼べる付き合いなのだ。ライズ達は彼等と逢い、虹の鉱石の法則を解読させるのに助力して貰う』


 マジェスは、ライズ一行に存在し得るかどうか不明な人物を並べた。何故なら一人は既に死去しており、この世を漂っているとされていて、一人はランガスモーの海底の中で息しているともされており、それが果たして浮力の原理的要素となるのか不明であるからだ。


 ライズ達は試行錯誤しながらも、マジェスの放つ通りの意見に沿って各地へ行動するのだが、風に吹かれ、海に瀕し、生物すら現れるかも知れぬ場所へ、その身を費やす事となる。例え、それがライズ達の命にかかわる事で在ろうとも、エイドカントリーズの国務大臣達が中心になって、研究者と共に新たな実験材料として情報を基に虹の鉱石を分析し、新たなる物質として生み出すだろう。


 それでもライズ達はマジェスの下へと戻り、一切の報告漏れの無いように王国へ戻るのだ。何れにしても貧困なる世界では生き永らえる事は困難であろうとした新天地計画である。必ず成功を収めなければならない。


 だが、ジグルはライズのその報告に対して考えがあるような素振りを見せる。


 彼自身も、貧困区から王族へ近付くための距離感を感じていた為だ。


 ライズに対し、もう少しだけ自らの成功を期してゆくには学生時代に漁った本書の力が、必要不可欠だと言い出した。そこで『次元との干渉』という著書を脳裏に置いておく。


「ライズ、少しいいかな?」


「どうした?ジグル」


「マジェス陛下には、学士の事を伝えられたのだったね?」


「そうだが。そういえば名前を知らないな・・・」


「王国パイルに知り合いが居るんだけど、詳しいらしいんだ」


「パイル?あの、虹の鉱石について研究を促しているという交渉国に?」


「うん。一度、書簡を手配して貰って学士について話を進めてみよう」


「あぁ、伝えてみるよ」


 ジグルは2週の日時を費やして、学士についての書簡をマジェスに用意させる事にした。マジェスの古い知り合いといっても、名前すら分からないのでは手掛かりにすら成らない事を踏まえての事である。新天地を生み出した次元。それは宇宙の真実と中身に触れる事であり、一つの世界線の理解を得るための行為ともいえる。ジグルは得意の学問を基に王国パイルへ連絡の内容をエイドカントリーズの執務室を介し掲げてみせる。


 ――公益都市王国パイル

 パヘクワードの北北西に位置する場所にある、虹の鉱石の研究に没頭する一つの国があった。そこは主たる4王国の中でも最小である領土とも云われている。かつて地上大陸ランガスモーに位置していたパイルであったが、崩壊と共にパヘクワードへと第二の王国として建設された。虹の鉱石による公益を基に都市の規模としては並であるし、つまりは劣化王国ともされているのが現状である。


「なんと、エイドカントリーズから書簡が来たのか?」


「ハッ。中身には学士の名前と新天地の謎について情報が欲しいとの事です」


「ふむぅ・・・彼は既に・・・」


「ハ・・・ッ。オード・ナスワイ様は生きる化石とも云われている伝説の学士でございます。他国との意見交換は極力避ける程では無いにしろ、居場所を教えてしまえば、他の国との関係が気まずくなるかも知れません・・・」


「むむぅ・・・我が国も新天地計画の要となるか・・・」


「パイル・デニル様によろしくと・・・」


“我等で落としたウィナートの名は全国に知れている・・・のだな”


 王たる王、国たる国の風向き。

 一人の人物によって動かされて往く。

 この天と地の異なる動きは一つの計画によって突き動かされる。


「ジグル・ウィナート」

「ハ・・・ッ」

「そなたをライズの書簡係とするが、よいか?」

「ありがたき、お言葉です」

「マジェス殿下、では・・・」

「地上のパイルに向かえ。そして朗報を頼むぞ」

「ハッ!」


 こうして一つ動いた新天地計画の要。ジグルにまつわる呪いにより、マジェスが看過するものの、調査報告の猶予は2年間とする。マジェスはライズ一行に充分な荷を持たせ、パイル・デニルの情報を基に地上大陸ランガスモーへと向かうのであった。


「では、船に乗ってください」

「頼むよ」


―ギュイイイィン―


「ライズ、よかったわね!」

「ジグルのお陰ですよ」

「っふ・・・」


これで、僕の使命の第一歩が果たされるんだぁ~・・・。

いいねぇ~・・・ククククク・・・。


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