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Ep35:新天地計画の要

 部屋を離れてホッとしたのもつかの間、兵士と使用人から用件を言い渡された。俺達に対する議論の場を持ちたいとの事で、大臣達よりも下の位である議員達が新天地計画について要である意見交換を求めてきた。まったく、直ぐにでも話を進めればいいものを、規則的に行えないのだろうか。


「ライズ、少し変だと思わない?」

「あぁ。変だ。直接的ではない」

「出来れば、ライズ一人と話したいという感じですね」

「そうかなぁ?僕はみんな仲良く話をしたいのだと感じたよ?」


 弱みを握られたような感触だ。まだ若い俺達4人が大臣にすら話を受付けて貰えないとは、人選的にどうだろうか、と思う。折角の計画にマジェス陛下との謁見まで余りにも長すぎる。もし、虹の鉱石の事で報告が出来ていないのであれば、また修正をしなくてはならない。どう出る?


「議員達が僕達と話す。もしかすると虹の鉱石について秘密を握っている。異変的に新天地計画の中身を知ることも出来る。陛下よりもはっきりとね」


「ミヘル、そうなのか?」


「はい。ジグルの言い分は最もでしょう。ですが、具体的な状況を知る筈もありませんし、私達に関係のない形で情報が手に入るかと・・・」


「ライズ。ミヘルの言う通りよ。とにかく議員の前に出ましょう」


「分かった」


―コンコン―


「うん?」


「誰かしら?」


――ライズ様、ジグル様、イーター様、ミヘル様、いらっしゃいますか?――


「ああ、居るよ」


――失礼します――


 入ってきたのは女兵士だった。話によると大臣に代わり議員達との意見交換の場へ招待するとの事だった。俺達は彼女に引き連れられ早速、部屋を出て所定の場所へと向かう。廊下を渡り、大広間に出ると巨大な扉の前に兵士が二人、対に立っている。


「ライズ一行様を連れてきました」

「ご苦労。議員に告げて来よう」


 一人の兵士は合図とともに中で使用人へと話を通す。

 俺達が来たことを知らせる為にだ。


「さぁ、ライズ一行様。こちらへどうぞ」


 こうして議会場の部屋の中へ通されるのだが、エイドカントリーズの住宅1階分の広さだ。部屋には大きな円形の机が二つあり、それぞれに10名ずつの議員が座っている。どうしてか緊張が走る。対等には話させて貰え無さそうでもある。


「諸君、ここは円卓の場である」

「ライズ一行殿、陛下の謁見前に呼び出して済まない。宜しく頼むよ」

「宜しくお願いします」

「さて、議題だが――」


 数々の議員達が一斉に話し掛ける。新天地計画における人員の配置について。それから大臣に代わってマジェス陛下の示す様子について。俺達に詳細は行き渡っている筈もなく次々と内容に無い議題ばかりが飛び交う。それを親睦とするなら様子だけでも窺っておこうと思う。これまでに苦しんだ民の“雑談”として。


「これも、一つの親睦であると認めるとしよう・・・」

「折角ですみません。新天地計画の前に雑談を、一つ入れといて下さい」

「なんです?まだ計画の始まりなのに、若造が・・・つまらない話は止してほしい」


 アクスドリーマヌの村での話だ。認める筈も無いが、王国エイドカントリーズが取り仕切っている筈の食材の規則のことでどうしても議員から話を聞いてみたい。訳を。


「報告通り、世帯を4人にしたのは食糧庫が不足しているからですよ」


「一体どうしたのだ。ライズ・フォングラン殿?」


「いえ?おかしいと思って」


「何が言いたい?」


「まず、不足の事態を起こしているのはこの王国でしょう?貴族、平民、貧困などと分けていたのは。それに町や村の食料の分配を要することが何故、ここでは必要ないんです?」


「ここが王国の元だからです。食糧庫が尽きぬよう各町村ごとに振り分けていたのです」


「それは間違っているのでは。350人もの城下町の人口であれば無尽蔵に食材を手にしているようなモノでしょう?例えばここに留まる兵士達、あなた方と大臣を含めても500人余りは居る計算になる。一体どこから食材が溢れてくるんです?俺の村は700人でした。小さな子でさえ食糧不足なのに分け与えていた。だが・・・それで死んだのです」


「ライズ、それは愚問だよ」


「同感ね」


―ザワザワ―


“何を言っているのだ、彼等は?”

“さぁ。仲間割れかな”


「失礼します。おい、ジグル覚えているのか?お前も同様に食材に困っていた筈だろう?」


「ライズ、それは今の新天地計画を無にする事柄だ。僕は新たな第一歩を踏みたいんだ」


「イーターはどうだ?お前も困っては居なかったのか?」


「優先すべきは新天地計画における輪の形。貧困どころではないでしょう」


「ミヘルは?」


「ごめんなさい。看過できません。貴族は王族の中に親睦を深めているわ。平民などの村には目もくれずに。その中で必死に私達は生きているのではないの?元は同じ民だったはず。ライズ。落着くべきはあなた」


 円卓なる形が崩れ去ろうとしている。ここに協調性という言葉が存在しない。仲間とは何だ?お互い身を寄せて心を連ねて往くのではないのか?俺達の意志は何処へと向かっている?


「向かうは新天地。逆らうは貧困。そうだったねライズ・フォングラン君」


 聞き覚えのある声。そこに座っていたのはアンジェル高等学校での仮面である。教師よ、貴族と王族というのは、何故こうも出逢わせるのか。再来するのは再会の合図か?


「アイザル・ディナール・・・」なぜ、あなたがここへ居る?

「エディーヌ校長を覚えているかな?」君を再び陥れる為にだ。


 水質が食を作り、食の元は生物だった。それも虹の鉱石を使った微細生物の再生から成る食材の保管だ。その生物は動物として取り扱われた。だが、その成果は順調ではない。では、彼は誰なのだ?


「闇だよ」前国王から選ばれた。

「闇だと?」前国王と現国王との違いは何だ?


 アイザルは知らぬ方が良い、と俺を罵った。


「王に頼めばよいだろう。どのみち私が君を教えてきたとしても、王族の前ではひれ伏さなくてはならない。王国によって選ばれたから?・・・違うんだよォ~」


「貴様の家系が関わった!それを見ず、聞かずに居られた民は幾ついたと思う!?」


「まぁ、落ち着きたまえよ。ここは新天地計画を叶えるための場だ。私達が出来る事は計画だけなんだよォ」


 ジグル達を無視して俺は憤りを放った。だが、議員達は親睦を深めたい目的以外はなく、鼻で笑うように笑みを溢している。俺は一体、何と話しているのだろうか。


―パン、パン―


―パチ、パチパチパチ―


 円卓の場に拍手喝采が起きる。それは俺に向けている訳ではない。話に対してだ。この場でのたった一つの雑談に起きる筈の情報交換が、俺の勝手な感情に皆が冷たい眼差しを向けてくる。かつて、デザースという同僚が『持論に溺れるな』と言っていた事の意味がようやく分かってしまう。


『時に弱く在れ。そして、一定の評価に溺れない事だ・・・』


(分かったよ。王族に招かれたなら、弱く在れ)


 計画。俺は民でなく、人類の存亡に関わっていく。計画に貧困は関係ない。

 そこで遂にデミューラ・マキシマスの言葉も思い出す。


『知識を使い過ぎると、次は礼儀を忘れてしまうものさ・・・』


(そうか。過去の出来事を推論しすぎると、計画の道が閉ざされるのか)


 笑いと静まり。近くにはアイザル・ディナール。

 幼馴染で同期だった3人。今は違う。ようやく冷静になる事を思い出す。

 俺の持論は彼等に対する一歩を衰退させる。

 注意しよう。


「失礼しました」

「了解した。折角だ。マジェス陛下に一言告げておくよ」

「はっはっはっは!救われたねィ~?フォングラン殿ぅ~~」


 俺は恥を忍んだ。だが、これも王族の礼儀であり規則なのだ。

 親睦を深めておこう。


「ライズ。よく堪えたわね」

「そうだね。嫌いな事を好きに変える」

「議員も貧困。だから新天地に移動する。そういう事です」


 あぁ・・・頼もしいよ。

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