Ep32:仲間
――新天地計画の一隊員として選ばれてから、昼の2の時を刻む頃だ。
俺達は部屋から出て城内の庭園へと向かった。そこは広くて石などが積み立てられ、4人が座ったり、対話したりするには充分な空間であった。
「ここで、いいよな」
「えぇ、充分よ」
「大丈夫だね」
「剣技も出来ます」
ジグルは元・貴族の汚名を晴らす事を許され、イーターはこれまでの功績から杖の様なものを渡され、ミヘルは当然ながら剣を渡された。式典が終わった後になってか、お互いを懐かしむ“同窓会”のような意見がぶつかり合う。俺に冠はまだ早かったかも知れない。
「それにしても久しぶりだな。この感覚、覚えているか?俺はフォングラン家に産まれてお前達の様な幼馴染と出逢い、再び別の形で結集をした・・・」
「誰に示しているの?私はイーター・アマテという清純なる者なのよ!」
「イーター、大人になったな。それにジグルはおじさんになっちゃって・・・」
「オホン!そう言う君は幼いんだね。計画についてまだ詳細は分からない。それなのに肩が抜けちゃうよ」
「そうかな。俺は一般と言うものが分からなくて、まだ新鮮な感覚がするんだが」
そう言っている内にミヘルがチョコンと間に入り込んだ。まだ、式典を済ませたばかりだ。民達は俺達の選択を間違えているとも言わない。彼女はその様な中で緊張していたのだろうか、ジグルに異論を申し出る。
「わたしはアントレアの子女。貴方は何処を目指しているのです?」
「え?僕は先程、王の式典に招かれたばかりで今は何も・・・」
「そうではないのです。例えば貴方は山のふもとの内に独り、焚火を灯しているのでは?」
「待て、ジグルはまだ何も知らされていないんだ。君だってそうだろう?」
「いいえ、事は先ず何を知るのかでなく、“自ら”を知らせる事なのです」
「ミヘル、ジグルは元・貴族だった。でもあなたの場合、貴族は未来を救う意味で『自ら』だと名乗っているの?私は身分など鑑みずこれから自らを知らせるつもり。私達は計画の一端、列を乱してはいけないの、いけない?」
「ふふ、ハハハ・・・俺達は喧嘩仲間なんだな」
「ライズ、助けておくれよ。僕は自己紹介をしたいだけなんだよ」
「巻き戻すのか?変な奴だな、お前らしくて」
そういえば・・・式典で見え隠れしていた先程の閃光は俺と、仲間を呼んだのだろうか?
ミヘル、イーター、ジグルそして俺の4人が集まったのだが、あの光の束らしきモノの正体は一体何だったのだろう。
「そういえば閃光が見えた。アレは僕達にしか見えなかったの?」
「私も見たわ。エイドカントリーズ城の後ろに上空を貫くように佇む光を、」
「パヘクワードも上空の大陸です。ランガスモーがら洩れる光かも知れません」
「お前達も見たんだな。しかし、一瞬だった」
「でも・・・」
「ん?どうしたんだ、イーター」
イーターが何らかの異変を感じだした。
この始まったばかりの新天地計画について、なぜ4人だけが選ばれて孤立感を感じているのか、それとも陛下を囲う大臣達の様子に気付けなくてはならないのか、そういった違和感を拭えなかったらしい。何かこう、冷たいものを感じていた。
そういえば、俺もこのエイドカントリーズに訪れてから髪の毛の色が変色した。まさか、虹の鉱石とあの光は関係があるのだろうか、と感じた。
「ねぇ、ライズ・・・少し休んでもいいかな?」
「・・・いいよ。おぅい、ジグルにミヘルぅ~、少しあの壁の付近で休みを取ろう!」
俺は休憩の号令をかけるとイーターがすまなそうに腰を下ろす。
20歳を過ぎるが故か、あまり自身の体の動きが思わしくない事を言い放つし、彼女の表情が新天地計画に向かうにつれ、あまり浮かないようなのだ。
「お前の事だ、何か・・・不穏を感じられたんだろう?」
「ふふ、当たっているわ・・・でもね、そうじゃないのよね~!」
だから俺はイーターの考えや思っている事、それに実年齢と身体能力の差をどうしても説かなくてはならなく感じた。そうしないと彼女の事だから納得しないだろう、と思っての事だった。
「・・・食事係って、あまり得意じゃないのにね・・・」
「君は生命に必要な栄養の摂り方を知っている筈だろう?僕の生命理論は馬の糞よりも実際の食物のほうが明らかに栄養価の少ないものだ。発酵をするものが少なすぎる。虹の鉱石がいい例だね」
「学問も剣技も同じようなもの。発酵を促すのは何も生命理論に徹したことではない筈です」
もしかすると“人の世話のし過ぎが祟り、それが何か悪さをしたのではないか”とも感じ取れる仕草だったのだ。そこでジグルの言い分に耳を通す。彼に聞けば何か学問的な意見を聞けるかも知れなかったからだ。
一方、ミヘルは才能が更に開花しつつある。だからジグルの言い分を纏め、イーターの異変を告げられるだろうと、信じてみた。彼女の面倒見のよさは一目置かれるとマジェス陛下も語っていた為だ。
「生命とは各意志に応じた命令に沿って体が衰えるいわば、能力の問題を起こすんだよ」
「え?生命学的に身体能力よりも遅れる現象とは、その魂が衰退を始めるというの?何だか辻褄が合わない・・・」
「いいえ、ジグルの言う事を纏めると、体に見合う頭脳が生まれない、という事なのです」
「頭脳なァ。イーターって本当は30歳位じゃないのか?結構、神経質だしな~」
「おいライズゥ~ちょっとォ――、それは言い過ぎなんじゃない?」
「いいか?辻褄なんて自己都合だろう?そんなの信じるのかよ。大体、身体能力と言うのは、俺の様に20歳を超えると重くなるモノなんだ。お前だって体重増えて垂れてくるだろう?」
「な・・・馬鹿言わないで!失礼ね・・・あなた、再会したと思えばいきなり何よォ!」
確かに、再会して間もない。だが彼女の場合は意表を突くことを嫌うため、直接的に伝えてあげないと余り納得しないのだ。あのガキの頃の様に大将じみてしまうだろう。
「そりゃさ、誰だって実際の年齢なんて生まれてすぐ言ってはくれないよねぇ~」
「私はねぇ今21歳と数えてきたのよ!そう言うライズは?実年齢30歳位だとしたら?」
「僕は光の束の名称を“ライト・オブ・ホール”と学問で習った。意識と組織の形が変化するとも。実年齢も変化する原理はまだ分からない。だが、電磁波を放つとのことだよ」
「そこですが、話によるとライト・オブ・ホールの電磁波を浴びるほど実年齢よりも若くなるとか老けてしまうと言います。進行と衰退という状態。私は貴族なのだけど今16歳と数えているのだし、生命は役目を終えると魂が変容を遂げるといいます。書物で調べる限りそのように位置付けられますよね」
「ミヘルの結論が正しくて僕の結論が推論だとすると、それは機械生命の域だよ?」
「そうね。成長可能な人工生命体だって作られているなら年齢設定は自由―――」
「そうそう、辻褄なんて自己都合で実際は誰にも分からない。どうせ役目を終えたら魂になるんだ。変容したどこかで位置付けられ、誰かと成長する自由が与えられるのなら――」
――よし、結論だ!
「実際の名前や年数なんて、誰かの記憶から出したモノだろう。だから心配ないさ!」
そう。記憶の中から出したモノ。新天地計画に必要な生命理論が完成すると恐らく人類は更に上空にある宇宙空間へと昇る事が可能だ。そこに機械工学的な要素で虹の鉱石のエネルギーを発動させると更に浮遊力が増し、この大陸ごと空気を得たまま上空へ昇れるかも知れない。
それはアントマニーヌ鉱山の責任者、デミューラ・マキシマスの考察から産まれた知恵だが、本当に存在するなら貧困的な要素は確実に減るだろう。新たな生命を受け入れるのだから。
「ライズ、あと一点です」
「何だ?」
「貴方へ教えを与えたデミューラ・マキシマスという方は、虹の鉱石について如何なる効果を伝えているのです?」
「そうだな・・・確か、光を帯びた力を受けて輝き“威力を増す”代物にも代えてくれると教えてくれた。擦れて鋭くなり、溶けあう事で虹色状のエネルギーを放出すると、生命に影響を与え続けるとか。それに育てた魚が大きくなるのもそのせいだそうだ」
「そのエネルギーでパヘクワードが浮き、更に宇宙まで浮いてしまうとすれば?」
「俺の推測だと、地上大陸ランガスモーに蓄えられた虹の鉱石が大地を浮かせているという感じかな。例えば孤独な星が空を漂っているのと同じ現象だと言える」
「すみません。思う処によると問題は地上からなのですね」
ミヘルは随分と時間を掛けて虹の鉱石について色々と考えていた。
もし、ライト・オブ・ホールの電磁波がその虹の鉱石の効果を強めてエネルギーを発しているとすれば、やがて新天地である地表は分解し、世界ごと崩壊を始めるだろうと。それは食材にも同じ事がいえる。
そして、新天地計画が本当に民の希望となるなら、星まで移動するという意味をもたらす。もしかすると酸素量も増える仕組みを作るかも知れない。
「ライズ、君は深く考えすぎると頭脳が追い付かなくなるから、気を付けなよ?」
「あぁ、分かっている。これから多分、マジェス陛下は計画の作戦を俺達に伝えてくるだろうから、また、虹の鉱石について話があれば、それに対応するのもいい」
「無理ね、」
「イーター?」
「機密事項だから。あとはハメられない様に注意する事ね。大臣達に・・・」
ライト・オブ・ホールと虹の鉱石について様々な考え方がある事を話している内に、仲間という意味が少しずつ分かってきたように思う。
それは、信頼という形で報われるのだろう。
多分、きっと・・・。




