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Ep31:栄えある召集式典のあいさつ


 新天地であるパヘクワードの中心部、エイドカントリーズ王国へ召集令状が下った。


 そして朝の5の時を刻む頃、俺達4人はお互いの顔を合わせる。まだ役割が何かを知らされていないし、これが最初で最後の出逢いになるかも知れない。悔いのない挨拶を心がけようと思う。指揮が乱れない様にしたい。改めて。


「よろしくな。俺はライズ・フォングラン」

「よろしく!私はイーター・アマテ」

「やぁ、今後とも世話になるよ。僕はジグル・ウィナート」

「初めまして。私はミヘル・アントレア。貴族の出です」


 部屋の掃除は終わり、これで何時でも城内・城外を行き来できる。使いの者からは式典が始まるまで王の指示を待てと言われている。俺達はお互いの意見を交わしつつも新天地計画について大まかな予想をする。マジェス陛下の真意を知りたい。そして、それぞれの道を確かめたい。そうでもしないと、いざ式典が終わった後も大臣に示しが付かない可能性があるからだ。


「そういえば、皆はマジェス陛下の姿を見てどう思っている?」

「中太りでやや背の高い美男子という感じかしら?」

「平民に対する知識はあるだろうねぇ」

「忠義ある人物だと思います」


 イーター、ジグル、ミヘルは3人揃ってそれぞれの意見を述べた。俺の意見は「誠実な人物像」だと述べるに留めた。つまり、マジェス陛下は正義だ。もしも意見が違えば、計画に対する不満を述べてお互いの見解の違う状況に追い込まれるだろう。大臣を納得させない内は、下手な動向を与える訳にはいかない。俺達はまだ、お互いを知り得ていない。今、信用すべきは計画の事だ。


「皆は、これからの動向についてどう対応するんだ?」

「そんなの、決まっているでしょう?マジェス陛下の打ち出した計画に則って、自分自身の意志を尊重するの。駄目なら下手な詮索はしないこと!変更がでる筈よ、」

「王族は自らの権力を平らにして僕達と正面を切ると思うよ。大臣含め、貴族は何かと自らの権力に固着するから、計画性は無に還すだろうけど?」

「陛下は貴族も平民も差別なく見ていました。計画について。ですが、貧困には届かなかったのでしょう」


 今度は意見が離れている。つまり、新天地計画のマジェス陛下の周りの動向における、打開策がまだ見えないまま放置されているという状態なのだろう。俺は「計画は形よりも己の意志と絆によるものだ」と答えた。皆、平然そうにそれを聞くのだが、「それなら式典が終わった後にマジェス陛下に聞いてみればいい」と示唆するのだった。


 まるで、俺達の中に表に出せない意志がマジェス陛下に感じられそうな予感がする。


 一体、何が起きるのか予測は出来ないが、きっと貧困から平等的な答えが得られるだろう、と勝手に考えてしまう。イーターは平民出だが、貴族の教えによってこの場に立っている。ジグルは貧困出だし、平民区で暮らした仲だが、知識が高く兵士の修羅場を超えている。ミヘルは貴族出なのに、まるで感じさせない。若さよりも強さを身に付けて、基礎を磨き続ける才がある。


 俺はもっと学ばなければならない。彼等の様に目指すべきものを捉えなければならない。


「ライズ、迷うなら試せばいいのよ」

「そうだね。君は案外、神経質な方かも知れないよ?」

「私は如何なる事態も動じなくてよいと考えます」

「そうだな。イーター、ジグルの言う通り。ミヘルは鬼門に居る様だけどアテにしているよ」


 幾つになっても気持ちは変わらない。お互いの腹を探り合っていても、俺には仲間という形式が必要だった。頼まれた事は少しずつの成長と共にあり、導かなければならない。それはまるで冒険者のようだった。例え、貧困という事実を裏切られたとしても、俺達は決して変わる事のない状況を良い意味で産んでしまうだろう。


「ライズ一行様、そろそろ式典の準備を終えておりますか?」

「整いました」


 朝の7の時を刻む頃、俺達一行は式典へと招かれた。


 そこは、城下町の中心部の噴水広場で行われる式典だ。


 広くそして金の装飾の在る赤い式布が敷かれている。


 俺達4人は中央に居るマジェス陛下の下に式典の証を受け取る。


 それは、栄誉ある出来事。総勢350人の町人、55名の騎士・兵士に囲まれ行われる。


 不思議と理解できない緊張が辺りを灯す。そして、王の側近の言葉が響く。


「ライズ、ジグル、イーター、ミヘルをこの王国エイドカントリーズの一隊員として、そして新天地計画の先導者として称える。その第一人者としてライズ・フォングラン、前に出よ!」


“ワーワー、ヒュー、ガヤガヤ・・・”


 凄い声援だ。それに皆、国王の決め事だから騒いでいる。俺達は召集令状によって選ばれた。それだけで、これだ。そして、式典となる舞台の前でマジェス陛下と側近、そしてもう一人、小さな女の子が座っている。彼女は誰だ?何か共鳴するものを感じる。だが、そんな間もなく側近である大臣がラッパを取り、声を上げた。


――――さぁ君達4人の功績を受取るがよい―――ッ!


 功績と言っても、まだ、俺達一行の名前を呼ばれただけだ。陛下からの挨拶は一人一人に与えられると使用人から聞いている。俺達は名前を呼ばれたらどうしようか、とヒソヒソ議論をしていた。


「ねぇ、名前呼ばれるよ?この出逢い、絶対大切にしないとね~」

「そうですよ、私達はあなたの仲間なのです。だから自分の名前も覚えておいて下さい」

「まったく君は必ず名前につまづく。呼ばれたら気を付けておくれよ?」


――――ライズ・フォングラン此処ここへ!――――


「俺は子供なのか?行ってきます“―スサッ”」


 俺は噴水前にある式典舞台まで歩み寄り、登壇する。マジェス陛下は栄誉ある功績を収めたとして、これまでの経歴を述べる。


「聞くがよい!我が、ヴァン・ディルタ族は王家の者として古い歴史を刻んだ。勇者を呼んでな。しかし、その勇者は時代と共にアルファンス大陸へと戻った。それも古い歴史の事だ。だが!現在は貧困たる歴史を払拭せねばならぬ・・・。分かってくれるか国民よ!?貧困たる場があればあるほど、同じ民が分別される事になる。新たな地へ向かうべきだろう。違うか??」


“ザワザワ・・・”


「驚くのも無理はない!だが、新たな時代を巡り我々も変わらなくてはならない。今、此処に居る、4人の勇者、ライズ・フォングランを代表格として我が紡ぎ出す、新天地計画を託そうと思う!彼は信頼ある人物だ。残りの3名も由緒正しき功績を与えるに相応しい!」


“ワーワー、ライズ一行に栄誉ある褒美をもたらせッ”


 マジェス陛下は歴史を述べた後に、側近から兵士を経て大きな箱を出してもらう。その箱を開けると、勲章の様な剣を出した。そして、円形状の冠を目の前に差し出す。


「では、ライズ・フォングランよ。我が前にひざまづけ!そして、剣を手に取るのだ!」

「ははッ!!」


 俺はマジェス陛下の前で跪き、冠を頭へ通してもらう。そしてそのまま両手で剣を受け取る。勿論、エディーヌ・サリバン校長の鍛冶屋から得た長剣と短剣は備えてあるままだ。


「食料は幾つか準備してある。当然、家族の下へ分け与えてもよい事とする」


 側近である執事がそう告げる。

 あとは、他の仲間が栄誉と褒美を受入れる番だ。


 まず、ジグルの栄誉について陛下から言葉を与えられる事となった。朝の8と35の時を刻む頃である。式典場でジグルが大臣に呼ばれた。言葉はマジェス陛下でなく、大臣自身だったのが妙だった。何故だ?


「ジグル・ウィナートよ。お前は元・貴族で両親を失い、ここまで来たのだ。貧困の層からよくぞ生命理論と機械文明での功績を得た。王国に招かれた栄誉を称え、改めて貴族の冠を与えよう。その証を受け取るがよい!」

「ははッ!!」


 初めて知った。ジグルの功績は俺が虹の鉱石で得られなかった知識を豊富に持っていた。それだけじゃない。元・貴族であったことも、この式典で知ることが出来た。あの貧困区から紛れて来て俺の家族と同居していた頃のジグルと異なる。体は細いが、天地の差を感じる。


 次に、イーターの栄誉について陛下の付き人である執務大臣から言葉を受け取る。彼女も陛下から直々に挨拶が無い。式典場という大舞台において、儚く小さな形である。俺の知らないイーターがここに居る。


「イーター・アマテよ。貴殿は平民区の上流階級でありながら、貴族との間に和を調えた。特に生活学部門における成績が優秀だった。剣技の腕も中々であるが、王族に迎えられるに相応しい功績を残している。生命学にも準ずる。その証を受け取るがよい!」

「はいッ!!」


 あのガキ大将でおしとやかになったイーターが王族に迎えられる。それも大臣の下で教養を受けて居たかの様な錯覚にさえ感じられる。知識も高く、冷酷な目線と共に新たな感性を得ている事に気付かされる。その姿はスラっとしていて逞しい。まるで中間的な役割だ。


 そして、ミヘルの栄誉について陛下の傍に居た騎士長から挨拶があった。どうやら陛下と共に栄誉を受け取る形らしい。ジグルとイーターとは対照的だ。その小さな体で受け取れる褒美は何だろうか。気にはなるが、貴族由縁のものだろう。


「ミヘル・アントレアよ。貴殿は貴族でありながら、その小さな身で学問と剣術並びに作法も極めたと聞く。それは各国での取り組みに大変、貢献したそうな。特にそのしなやかな剣術は騎士以上と聞く。その功績は大人以上。必ずしや、計画の要となるだろう。よいか、守るのだ。必ずな。さぁ、その証を受け取るがよい!」

「はいッ!」


 そのか細い体に小さな運動。どこまでも俺達の教えとなる人物である。その彼女が王族の一端となる。昔よりも明らかにその才を磨いているが、中身は少女のままで強さを感じる。確実に任命されるだろう事を俺は感じていた。俺達よりも若く逞しく成長している。


「以上で、式典を終えるッ!!」

「国民たちよ、彼等を出迎える様に!」


“ワーワー、新たな英雄、新たな希望、ライズ一行、万歳――ッ!!”


 こうして式典の幕は閉じた。皆、解散し、俺達4人はそのまま城内の部屋へ戻っていく。


 マジェス陛下達も国民達もその場から去ってゆく。装飾関係のものは翌日閉まうらしい。そして、これからが本番かも知れない、新天地計画の一隊員として選ばれ、その話が陛下から直々に話される事だろう。


 そう。ゆっくりと、じっくり、王族と肩を並べる。


 褒美は得られたが、未だ解決しない貧困を今後、話し合う事とする。


 それには、彼等の用件を優先させるべきで、私情を挟んではいけない。


 だが、きっと叶える。民を救う!


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